剣視点
「つ、つるぎ……」
「せい、と?」
今俺は信じられないものを見た気がする。
目の前には10年前に行方不明になって以来、消息が一切分からなかった幼馴染の姿があった。
誠斗は物凄い焦ったような表情で拘束を外そうとジタバタしていたが、
俺の姿を見た瞬間、観念したように大人しくなった。
「なぁ、ほんとに誠斗なんだよな?」
「あっああ、正真正銘十六夜誠斗だ」
誠斗は俺の顔をようやく真っ直ぐ向いた。
最後に会ってから10年、かなり成長していたが、顔は子どもの頃の面影がまだ残っいる。
俺も誠斗の顔を真っ直ぐ見る。
「誠斗、まず今まで何処で何してた!」
俺は誠斗の顔を一発殴る。
誠斗は特に抵抗せず殴られた。
少し頬を抑えているが、普通に平気そうだった。
凌牙だったら能力使って威力を上乗せしてただろう。
「心配したんだぞ。俺も凌牙も咲夜も咲斗さんも、そして咲奈さん達も!」
「すまん……」
誠斗はか細い声で謝罪した。
俺は誠斗に近づく。
そして抱きしめた。
「馬鹿野郎……ずっと心配してたんだぞ。みんなお前が死んだんじゃないのか?って」
「すまん……」
「俺はお前が生きてただけでも嬉しいぞ」
そう言って俺は涙した。
しばらく抱きしめてたら、誠斗に熱苦しいと離された。
流石にやり過ぎたか。
誠斗視点
「話は終わった?」
剣を離れると霊夢が声を掛けてきた。
空気を読んでくれたようだ。
「すまん、俺達だけで話して」
「大丈夫よ、こっちだって感動の再会に水を注したくないし」
そう言ってくれて少し嬉しかった。
俺はその後、剣と霊夢と一緒に部屋に戻った。
中では紫と他がお茶を飲んで談笑していた。
「あら、戻ったのね」
「ああ戻ったぞ」
紫が俺に白玉楼に向かえと言ったのは剣と会わせるためだったらしい。
本人曰く、背中を押しただけらしい。
「さて、誠斗をここに呼んだ理由も喋ったし、自己紹介しましょうか」
そう言って始まったのは自己紹介大会だった。
「まず私からね。私は八雲紫、ここ幻想郷を創造した賢者の一人でここの管理者。
こっちは私の式の藍よ」
「八雲藍だ。十六夜誠斗、お前のことは紫様から聞いている」
狐の名前は藍というのか、どうやら俺のことはそこのスキマ妖怪から聞いているらしい。
次はピンク髪の幽霊さんが始めた。
「私は西行寺幽々子。ここ白玉楼の主よ。よろしくね誠斗くん」
「私は魂魄妖夢です。ここで庭師兼幽々子様の護衛をしています」
幽霊さんは幽々子さんというらしい、剣と一緒にいた少女は妖夢と名乗った。
「俺の名前は十六夜誠斗。よろしく幽々子さん、妖夢」
「ちょっと!何で私は呼び捨てなのに幽々子はさん付けなのよ!」
紫が謎の抗議をしてきた、だって……
「だって、お前にさんは……なんか違うなぁって」
「……!?」
紫が机に突っ伏した。
横で霊夢が口元を抑えて笑うのを堪えている。
堪えきれてないのか少し漏れてるが。
「はあ、面白いのを見れた。じゃあ次は私かしら?
私は博麗霊夢、博麗神社の巫女よ」
「ああ、俺は神田剣だ。よろしくな霊夢」
これで全員の自己紹介が終わった。
ただ霊夢が何か聞きたそうにこっちを見ている。
「どうした、霊夢?」
「いやぁ、今更なんだけどさ……あんた咲夜とどういう関係?」
急に妹の名前が出てきて面食らう。
「霊夢、お前咲夜を知っているのか!?」
「知ってるも何も咲夜は紅魔館でメイドやってる奴のことよ。
苗字が一緒だし、さっきあんたの口からも咲夜の名前が出てたから」
剣が驚いたように霊夢に問いただす。
俺は後から知ったが昨夜も行方不明になっていた。
時期は俺が丁度、幻想郷から追放された時だった。
そうか入れ違いになってたのか。
「あいつ夢叶えたんだな」
「何か言った?」
「何でもない、十六夜咲夜は俺の妹だ、綺麗な銀髪の蒼い目の娘だろ?」
「そうよ。ということは人違いってわけじゃなさそうね」
「どうやらそうらしい」
しかし、紅魔館か。
あの人のとこなら大丈夫だろうが。
「取り敢えず紅魔館へ向かおうかしら。
それで良いわよね?紫」
「ええ、特に問題ないわよ」
紫も紅魔館へ行くのは賛成らしい。
こりゃ強制的に行くことになりそうだ。
「はぁ、覚悟決めるか」
「待て誠斗、紅魔館とやらに行く前に頼みがある」
俺が変な覚悟を決めると剣が俺に頼みがあると言ってきた。
「何だ?あんま時間取るのは……」
「俺と勝負してほしい」
はっ?
剣視点
誠斗は困惑している。
そりゃいきなり戦ってくれなんて誰だって困惑する。
だが、それでも……
「頼む、一生のお願いだ」
「理由は?大体わかるが」
やっぱわかるか。流石俺の幼馴染。
「今のお前と戦いたい。そんだけだ!」
「そうかい」
俺が刀を抜くと、誠斗も背中に掛けてる刀に手を付けた。
「先手必勝!」
まず俺が切り掛かる。
だが刀を振り切った時、そこには誰もいなかった。
俺は即座に後ろを向く。
案の定、刀を振ろうとしている誠斗の姿があった。
ガキンッ
俺の刀と誠斗の刀が激しくぶつかる。
俺は誠斗の刀を弾き飛ばす。
そしてできた隙を突いて刀を振るう。
目標はガラ空きの胴体。
しかし、その瞬間誠斗の姿がブレた。
刀は虚しく宙を切る。
何処へ行った……。
辺りを見回すが見つからない。
そして俺に影が差す。
そうか……
「上か!」
「遅い!」
誠斗が俺目掛けて刀を振り下ろした。
霊夢視点
煙が晴れると誠斗の攻撃を剣は受け止めていた。
そして再び剣撃の応酬を行う。
そんな中で私は疑問を紫にぶつけた。
「誠斗のやつ、加速した?」
「いえ、違うわ」
私の疑問に紫が答えた。
加速じゃなきゃなんて言うのよ。
「じゃあ何よあれ?」
「彼の能力は加速じゃないわ」
そして紫が言った。
「彼の能力は”
私達風に言うなら、時を遅延させる程度の能力」
「時を遅延?」
「ええ、そうよ。その名の通り時間を遅くする能力。
彼が能力を使用すると彼以外の時間が遅くなる。
それに咲夜の時止めと同じで能力の影響下にいるものはそれを自覚できない。
だから周りは誠斗が加速したように見える」
それが誠斗の能力。パッと聞いた感じじゃそこまで強くなさそうに聞こえる。
咲夜の時止めやレミリアの未来予知、フランの破壊など誠斗より強力な能力持ちは他にもいる。
何なら今の誠斗のスピードも天狗に比べれば遅い。
「お察しの通りそこまで強い能力ではないわ。
幻想郷にもあれより強い能力はあるし、母数が更に多い外の世界にはさらにある。
でも誠斗はそれを技量で補っている。主戦力が能力ではなく彼自身の戦闘技術なの」
確かに二人の戦闘を見てみると剣は強いがまだ荒削りな部分がある。
対して誠斗は動きが綺麗だ。
極力無駄を排除し、最小限の動きで攻撃も回避も防御もやる。
間違いなくプロの動きだった。
でも、
「あいつ急所を狙ってはズラしてる?」
「不憫ね、まだ若干振り回されてる」
「紫?」
紫は何か知ってる風に言葉を放つ。
「何か知ってるの?」
「ねぇ霊夢。あなたは力に振り回されたことはある?」
「私?そりゃ最初はそうだったけど……いきなり何?」
いきなり私に矛先が向いた。
急に何よ。
「何、あいつは力に振り回さてるの?」
「ある意味そうね、何せ彼を振り回しているのは才能なのだから」
才、能?
「あいつは才能に振り回されているの?」
「ええ、そうよ」
「そりゃまた何で?」
私は紫に質問する。
「彼が天から与えたモノは残酷なモノだった。
霊夢、誠斗はさっきから剣の何処を狙ってると思う?」
「ええっと……」
私はもう一度戦闘をよく見る。
誠斗が狙う頻度が高いのは……
首、鳩尾、アキレス腱……まさか。
「急所を狙ってる?」
「ええ、そうよ。そして、それを当たらないように狙いをズラしてる。
彼の才能は殺しの才能よ。それも殺人術の才能。
彼は無意識的に相手を効率的に殺そうとする。
あれが実戦で全く知らない相手なら容赦なく振るっているでしょうけど、
今は模擬戦、しかも相手は幼馴染の剣くん」
戦いは誠斗が優勢だ。
ある意味ハンデを負った状態で。
「大丈夫なの、それ?」
「大丈夫の筈がないから私は彼を呼んだのよ。
このままだと彼、いずれ大切なものまで殺めてしまうわ」
ガキン
音が鳴りそちらを向くと、刀が飛ばされており、剣の首元に誠斗の刀が構えられていた。
「はぁ、参った。負けちまった」
「満足したか?」
「ああ、大満足」
そうして二人がこっちに向かってくる。
最後に紫はこう言った。
「彼の心が壊れないようにするためにも、貴方達が支えてね」
そう言って紫は藍と一緒にスキマの中に消えた。
キャラ紹介
八雲紫
種族:妖怪
年齢:少なくとも1000歳以上
能力:境界を操る程度の能力
幻想郷を創造した賢者の一人。幻想郷と外の世界を唯一自由に行き来できる人物。
誠斗を幻想郷を招待したのはかつて他の管理者に危険視され、追放された彼を助けたかったから。
彼の心が壊れないようにするために、剣や凌牙を幻想入りさせた。
彼女は誠斗が幻想郷で幸せに暮らすことを望んでいる。