正義の未熟者「私」   作:春萌枯らし

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 先日誕生日を迎えました。ありがとうございます!

 土曜日に投稿予定でしたが、完成した勢いで投稿してしまった……。

 それでは本編どうぞ!


第9話 胸が焼ける救助訓練

 バス内

 

「こういうタイプだった、くそう!!!」

「イミなかったなー」

 

 マスコミ騒動から数日が過ぎ、私たちは2回目となるヒーロー基礎学──「救助(レスキュー)訓練」の演習場に向かうため皆でバスに乗っている。

 基本は戦闘訓練の時と同じコスチュームだが救助訓練ということもあり、動きやすいように一部装備を外している生徒がちらほらいる。かくゆう私はコートだけ置いてきてシャツの方に腕章を付け替えた。

 コルセットは付けたまましているのは、コレが見た目に反して動きを妨げないからだ。

 こうギチギチとキツく胴体を締め上げるだけでなく私の激しい動きに合わせてグニュグニュと伸縮してくれる。

 ()()()機能ではあるが食後に使用するのは、ある程度のリスクがある。

 嘔吐の前任者──麗日さんがいるのでハードルは低いが気を付けて損はない。

 

 ──そうそう。

 天哉くんは委員長としてバスの席で混雑しないよう出席番号順に座っていくように誘導していたが、バスの中が思っていたモノと異なり側面になぞって向き合うタイプの座席で通路が広く取られていたので混雑も何もなかった。

 自身の行動が空回りになったことに悔やんでいる天哉くんに芦戸さんが追い打ちを掛けたのが一連の流れだ。がんばってください天哉くん。

 

「私思った事を何でも言っちゃうの緑谷ちゃん」

「あ!? ハイ!? 蛙吹(あすい)さん!!」

梅雨(つゆ)ちゃんと呼んで──あなたの〝個性〟オールマイトに似てる」

 

 蛙女子の発言にデクくんが明らかな動揺を見せている。 オールマイトマニアに「オールマイトっぽい」という言葉は劇物なのだろうか。

 好きな人に似てると言われたら私は嬉しいがデクくんはそうでも無いらしい。

 

「待てよ梅雨ちゃん。オールマイトはケガしねえぞ。似て非なるアレだぜ。──しかし増強型のシンプルな〝個性〟はいいな! 派手で出来る事が多い! 俺の『硬化』は対人じゃ強えけど、いかんせん地味なんだよなー」

「僕はすごくかっこいいと思うよ。プロにも十分通用する〝個性〟だよ」

「プロなー! しかしやっぱヒーローは人気商売みてえなとこあるぜ!?」

「僕のネビルレーザーは派手さを強さもプロ並み」

「でもお腹壊しちゃうのはヨクナイね!」

「……」

「落ち込まないでください、キラ山くん! 射程も長いので重宝されること間違いないですよ!」

「メルシィ☆」

「まあ、私は避けれましたけど!」

「……」

 

 山の頂上から谷に落とす枝瑠職。2度も同じような事で落ち込む青山。頑張れ青山。ねばーぎぶあっぷ青山。

 

「派手で強えっつったらやっぱ轟と爆豪だな」

「ケッ」

「私はっ! 切島くん、私も派手ですごく強いですよ!!」

 

 未熟な自分を認識しているが、自らへの自信も捨てていない──というより単に褒められたいだけの枝瑠職が横からしゃしゃり出た。

 

「いや枝瑠職も強えのは知ってっけどよ……」

「枝瑠職ちゃんはコアなファンしか残らなそうだし、爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそ」

「ンナアァァァァアアアアア!!!(現実逃避)」

「んだとコラ出すわ!!」

「ホラ」

「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげぇよ。枝瑠職は枝瑠職だしな」

「てめぇのボキャブラリーの落差は何だコラ殺すぞ!!」

「(チヤホヤされたいからヒーローを目指した訳ではない! それでも……それでも──)いやだあああぁぁああ!! ルックス採用だけはぁぁァアアア!!!」

「てめぇもいつまで騒いでんだクソガキィ!!」

「二人とも静かにしたまえ!」

 

「もう着くぞ。いい加減にしとけよ……」

 

 相澤の苦労はまだまだ続く────

 

 

────────────────

 

────────

 

────

 

 

「すっげー!!」

USJ(ユーエスジェー)かよ!!?」

 

 目的地であるドームに到着して中に入ると、そこに広がっていたのは様々なエリアに仕切られたモチーフテーマパークのような空間。

 入り口付近は高台のようになっていて辺り全体を一望できるようになっており、下り階段の先には噴水のある広場が位置していてそれぞれのエリアへと道が伸びている。

 

「水難事故、土砂災害、火事……etc(エトセトラ).──あらゆる事故や災害を想定し、僕がつくった演習場です。その名も……ウソの、災害や、事故ルーム!! 略してUSJ!!」

(((USJだった!!)))

「スペースヒーロー“13号”だ! 災害救助でめざましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」

「わー! 私好きなの13号!」

 

 宇宙飛行士のような全身モコモコ宇宙服姿のヒーロー。走りやすいように脛から下はモコモコは無くして陸上用の靴を履いている。

 それでも動きにくそうだが災害救助を得意としたヒーローであることや己の〝個性〟を鑑みての特化したコスチュームなのだろう。

 

 ──今は相澤先生とヒソヒソ話をしている。

 ここに来る前に相澤先生はこの授業がオールマイト、イレイザー、あともう1人の3人体制になった事を私たちに告げていた。最後の1人が13号として、オールマイトは何処にいるのだろう。

 

(そういえば、オールマイトは1つの授業時間内でしか会えませんねぇ。い~っぱいお話ししたいのに……)

 

「えー始める前にお小言を一つ二つ……三つ……四つ……」

(((増える……)))

 

  13号が曲げていた指を1本1本伸ばしながら静かに語り始める。

 

「皆さんご存知だとは思いますが、僕の〝個性〟は『ブラックホール』──どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」

「その〝個性〟でどんな災害からも人を救い上げるんですよね」

「ええ……しかし、簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう〝個性〟がいるでしょう」

(教育チームのカウンセリングみたいですね。参加した事はありませんが、後輩たちからの評判は聞いた事があります。今から始まる話はどうですかねぇ──)

「超人社会は〝個性〟の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているようには見えます。しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せる“いきすぎた個性”を個々が持っていることを忘れないで下さい」

(ふむふむ)

「相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの戦闘訓練でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。この授業では……心機一転! 人命の為に〝個性〟をどう活用するかを学んでいきましょう」

(ふむふむ──あ、そういえば私、ゆーえすじぇーが何か知りません。元ねた?があるのでしょうか?)

「君たちの力は人を傷つける為にあるのではない。救ける為にあるのだと心得て帰って下さいな。──以上! ご清聴ありがとうございました」ペコ

「ステキー!」

「ブラボー!! ブラーボー!!」パチパチパチ

 

 13号の話を聞き終わり、みんなが拍手を送っている。それにしても災害救助なんて馴染み無いこと、しっかりやれるか心配だ。災害みたいな【彼ら】との時間が懐かしく思えてくる。

 ──余計な考え事が出来るのはこの世界に【試練】が無いから。いつ来るかも分からない致死性の塊どもを警戒して職員全員が休み暇もない。新人育成が滞りなく行われるこの世界に感謝している。

 

(さあ! 今回の訓練をしっかりとやり遂げ、立派で頼れるヒーローにまた一歩近づかなくては!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ズズズ……

 

 ────奇しくもソレは、甘い考えを持った私を嘲笑うかのように現れた。見下ろした位置にある噴水の広場に出現した黒い霧から誰かの手が出てくる。

 

「そんじゃあ、まず──」

「イレイザー!!! (てき)!!!」

「!」

 

 この場にいる人間で最も早く異常に気付いた私は、今世で初めて出した張り詰めた声で、この中で最も戦闘力が高いプロヒーロー──イレイザーヘッドへ緊急事態であることを端的に伝える。

 

「一かたまりになって動くな!!!」

「え?」

「13号!! 生徒を守れ!」

 

 初めはうちは小さかった黒い霧がどんどんと広がっていき、そこから大勢の人間が次々と出てくる。

 ある者は刃物を、ある者は鈍器を、ある者は己の異形型の体を武器にして、こちらへと害意を向けてくる。

 

(なん)だアリャ!? また入試ん時みたいな、もう始まってんぞパターン?」

「動くな!! あれは、(ヴィラン)だ!!!!」

 

 生徒たちは理解した。これはもう訓練ではなく自分たちの運命の境目──ターニングポイントであることを。

 初めて命を狙われる感覚に生徒の間に動揺が奔る。

 

 

 ────枝瑠職は現れた敵のうちの一人に視線が奪われていた。

 脳味噌が剥き出しの頭部。筋骨隆々の肉体を覆うドス黒い皮膚。意思を感じない虚ろな目。

 溢れ出すその存在感から枝瑠職は1つの確信を得る。

 

 【ALEPH(アレフ)

 

 単騎で施設を崩壊にまで至らしめることが出来る化け物──幻想体(アブノーマリティ)の最高ランク。

 全てを呑み込む蒼い光。

 自己の膨張を求めて蠢き続ける肉の山。

 認識するだけで常人の精神を崩壊させる“なにか”。

 この世界の基準に従えば、あそこにいるヤツは紛れもなく格上の存在。

 

 アレがこの場にいる誰よりも強く、私たち全員を容易く殺すことが出来ると本能から悟る。

 ()()()()()()()()()恐怖が私の全身を強張らせる。

 二度目の死がすぐそこまで迫ってきている。

 こわい、こわい……こわい…………

 

 

 

 ────だが、(それ)すら敵わないほどの想いが胸の奥底から溢れ出てくる。

 一段劣るが、もはや愛おしく思っていた殺意。

 彼らと交わることを、強く、強く熱望して心臓の鼓動が高なっていくのが分かる。

 自分では気づかないうちに頬が紅潮して艶めかしい表情へと移ろう。

 

「ハァ……ハァ……」

「! ──大丈夫か、枝瑠職」

「ハァ……障子、くん」

 

 私の様子が変わったことに気付いた障子くんが、私の肩に手を回しながら訪ねてきた。

 その腕に少し体重を預けながらお礼を言う。

 

「ありがとう、ございます……。…………すみません! 少し落ち着けました!」

「奴らの気迫にあてられたのだろう。無理をするな」

 

「────13号避難開始! 学校に電話試せ! センサーの対策も頭にある敵だ。電波系の〝個性(やつ)〟が妨害している可能性もある。上鳴(かみなり)、おまえも〝個性〟で連絡試せ」

「っス!」

「先生は! 一人で戦うんですか!? あの数じゃいくら〝個性〟を消すっていっても!! イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ。正面戦闘は……」

「一芸だけじゃヒーローは務まらん。13号! 任せたぞ」

 

 デクくんの説得を躱してイレイザーヘッドが一人、(ヴィラン)の元に向かおうとしている。

 

「イレイザー! 少々お待ちを!」

 

 飛び出す寸前のイレイザーヘッドを呼び止めて、障子くんの腕から離れてそちらへと近づく。

 障子くんのおかげで普段の私モードに戻ったが、一度点いてしまった火がたとえ消えてもそこに熱を残すように、私の戦闘欲求はわずかに悶々として心拍数が戻らないでいた。

 ──しかし、私と先生方の立場上、私は戦闘には参加させてもらえない。そもそも退避を命じられてしまった。

 ()()()()()()()、私はどんな事でも出来るというのに。

 

 だからせめて、私の〝個性(いちぶ)〟だけでも……。

 

「──【赤い目】*1

 

 イレイザーヘッドの袖の裾を掴み、私の装備を1つ渡す。

 元々、全身黒ずくめのイレイザーヘッドのコスチュームに1つ、また1つ、と赤い目が開き始める。

 現れた赤い目のコートにはメイスが背負われている。

 私の時とは違って眼鏡が現れていないが、イレイザーヘッドがすでにゴーグルを付けているからと納得する。

 

「コートは見た目の反面、体の動きを邪魔しません! 武器はイレイザーでしたら達人のように扱えるかと」

「上出来だ。使わせてもらう」

「あの脳味噌が露出した(ヴィラン)にはくれぐれもご注意を」

「ああ」

 

 クラス担任なら生徒の〝個性〟の概要を知っているはずだから説明は最小限に抑えた。

 勝てる見込みは薄いが暫定【ALEPH】への注意喚起もしておく。

 

 イレイザーヘッドは体の調子を一瞬確認したのち広場にいる(ヴィラン)へと向かっていった。

 

「枝瑠職くん! 今のは!」

「私の〝個性〟です! 並大抵の攻撃ならアレで問題無いはずです!」

 

 戦闘訓練での口田くんへの貸し出しを事前に行っていたのが功を奏した、と考える。

 ぶっつけ本番でするにはあまりにもリスクが高かった。

 だが、未だ検証の余地が残っている。

 こんな状況下であったとしても完全に把握し切れていない能力を使ってしまったことに、ちょこっと悔しさを覚える。

 

 ────眼下ではイレイザーヘッドが敵の〝個性〟を消して相手に連携を取らせないようにし、得意の捕縛武器と肉弾戦──そして私が渡した【赤い目】のメイスを使って次々と敵をノックダウンさせていっている。

 

「すごい……! 多対一こそ先生の得意分野だったんだ」

「分析してる場合じゃない! 3人とも早く避難を!!」

「枝瑠職、手を貸すぞ」

「ありがとうございます! ではお言葉に甘えて!」

 

「────させませんよ」

 

 眼前、出入り口への道を塞ぐように黒い霧が広がる。

 揺らいでいる2つの光が両目のようにこちらを見ている。

 先程まで広場にコイツはイレイザーの一瞬のスキをついてワープしたようだ。

 

「初めまして。我々は『(ヴィラン)連合(れんごう)』。せんえつながら……この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは──平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

(────【伐採斧】*2

「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるハズ……ですが、何か変こ──」

「枝瑠職!!」

 

 障子くんの制止を振り切り、最後尾にいた私は皆の頭上を跳び越える。

 赤いシャツに黒いタイ。

 森に横たわる鎧のような柄の防具と人間の体を丸めて作ったようなブローチ。

 両手で刃先全体が血の模様に染まった鋼の両手斧をモヤの頭部と思しき部位に振り下ろした。

 

 Bump!!

 

「切島! 爆豪!」

 

 私の背後に来ていた2人の追撃に当たらないように目一杯開脚して地面ギリギリまで体勢を低くする。

 

 BoooooM!

 SKLIT!

 

「チッ!(出遅れた……!)」

「その前に俺たちにやられることは考えてなかったか!?」

「少しヒヤリとしましたよ……。そう……生徒といえど優秀な金の卵」

「(効いていない……【赤】無効……というより物理無効という感じですか)──便利、ですねぇ!!」

「ダメだ、どきなさい3人とも!」

 

 黒い霧は私たち全員を覆うように広がる。

 敵の反撃を予想して、斧を盾のようにして防御姿勢をとったが意味なかった。

 黒い霧は上下左右から私たちを包み込んだ。

 

「散らして(なぶ)り殺す(──? なにか一瞬抵抗が……)」

 

 

────────────────

 

────────

 

────

 

 

「ヤヤッ!」

 

 突然の浮遊感に襲われ何事かと周囲を見渡すと先程の場所ではなく、高層ビルが地震で崩れかけている場所の()()移動していた。

 すぐ隣のビルに両斧を横に食い込ませ、長い持ち手の部分を即席の足場にする。

 どうやら、目視で確認できる範囲には私以外いないようだ。

 

「あのモヤ……『ワープゲート』と言ったところですか! W社顔負けですね!」

 

 あの時、背後に皆がいたので回避を捨てて防御を選択したが、ワープ直前の13号のセリフを考えるに私、切島くん、爆豪くんが射線上に入って邪魔してしまったようだ。

 興奮していた状態で手の届く場所に敵が現れたのでつい先走ってしまった。

 

「まずは誰かと合流するとしましょう!!」

 

*1
赤0.8 白0.8 黒0.8 青2.0──母なるクモ

*2
赤0.8 白1.2 黒0.8 青1.5──暖かい心の木こり




 小説友達とキャラとか能力の設定とかを一緒に考えるのが楽しい。
 インプットとアウトプットは交互にするのは何事にも良いそうです。

 今回は改行多めで書いてみました。見にくかったら教えてくらはい。

 連絡事項:アンケート協力ありがとうございました!
      とりあえず、戦闘が交わる場面では耐性を追加しておきました!
      タグを追加したのでご確認お願いします。
      短編から連載に変更しました。
      

 

オリ主のイメージ像欲しい?(絵下手な奴がマウスで描いた)

  • 寄越せ
  • いらん
  • どけ!私が描こう
  • 自己補填できてるので大丈夫です
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