白狼救済録   作:らんらん出荷マン

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この話は滅茶苦茶、悩みました。

悩みまくった結果、難しく考えないことにしました。

なので文章は、少ないです。


第6.5話 贖罪

 

 

試験まであと3日、ユメはまだ学校に来ない。

 

だが学生証は彼女が持っている。

……いい加減腹を括ろう、この関係にケリを付ける時だ。

 

だが許してくれるか?

 

――いや逃げてばかりではダメだ。

 

自分の下らない過去で彼女を傷付けたんだ。

 

だが俺は……どうしたらいいか分からない。

こんな経験は、今まで無かった。

 

俺は謝り方を知らない。

 

 

――死体袋に謝っても仕方がないからな。

 

 

胸の奥がざわざわする。

 

 

何かが囁いている。

 

 

 

◆

 

迷った末、ホシノに相談することにした。

 

ホシノはユメといる時間が長い、適任者は彼女以外にいないだろう。

 

 

 

――

 

 

ホシノ視点――

 

「――ということがあって……ホシノ。私はどうしたらいい……?」

 

「はぁ……?それってユメ先輩と喧嘩したってことですか?」

 

相談があると言われ、何を言うかと思えば……呆れた目を向けずにはいられない。

 

「いや……喧嘩というより、その……」

 

いつもの堂々とした態度は鳴りを潜め、顔は俯き、両手を合わせてモジモジしている。

感情が薄い戦闘マシーンのように見えたが、こういう一面もあるのか。

 

意外とレナは、人間味があるようだ。

 

彼女が何を経験し、何を思ってきたのか、私には分からない。

 

でも――あの頼りない先輩と同じく、ふと「助けたい」そう思った。

 

「はぁ、分かりましたよ。私からユメ先輩に連絡しておきます。放課後、一緒に会いに行きましょう」

 

彼女は私の返答が意外だったのか目を丸くし、その後、少しだけ――はにかんだ。

 

こんな表情もできるのか。

 

うん。

 

――結構、可愛いかもしれない。

 

 

 

◆

 

放課後

 

ユメ視点――

 

「――うん、そっか……ありがとね、ホシノちゃん。じゃ、また」

 

今、ホシノちゃんから連絡が来た。

どうやらレナちゃんが怒鳴ったことについて謝りたいらしい。

 

別にレナちゃんは悪くない。

私が、ちゃんと向き合う勇気がないだけなのに。

 

でも――あの時のレナちゃんの目が忘れられない。

なんて表現したらいいか分からない……

何かに怯えているような、追われているような――確かに、怒鳴られた瞬間は怖かったけど。

 

あの歪んだ赤い目と、何かに訴えるような声を思い出すと、胸の奥がジンジン痛む。

 

……でも、ここで会わなかったら後悔すると思う。

 

そういえば、始めて会った日は砂漠で倒れてたけど、ずっと一人だったのかな……?

 

よし、私はもう逃げない――今度こそレナちゃんと向き合う。

 

もう一人ぼっちじゃないんだから。

 

 

 

◆

 

レナ視点――

 

「――いえ別に。はい、また」

 

どうやら了承を得られたみたいだ。

 

「会ってもいいみたいですよ。寮の前で待っているらしいので、さっさと行きましょう」

 

「……ホシノ」

 

「何ですか?」

 

「すまない――」

 

「それを言うなら”ありがとう”ですよ?レナさん」

 

「……あ、ありがとう」

 

 

 

――

 

夕日を背に、しばらく歩くと、遠目にユメが立っているのが見えた。

 

小さく揺れる影。

視線が忙しなく動き、落ち着きなく足を揃え直している。

 

(……やはり、嫌われたか)

 

胸の奥が冷たく締めつけられる。

 

「……ホシノ、わ……私は――」

 

――バシン!

 

(ッ!?)

 

背中に走った衝撃で、心臓が跳ね上がった。

 

「なにウジウジしてるんですか? 情けないですよ?」

 

 

『情けないぞ? 俺が担ぐのを代わろうか?』

 

 

「……あ、ああ。そうだな。行ってくる」

 

逃げ道はない。

 

覚悟を決めろ。

腑抜けすぎだ。

 

一歩。

 

砂を踏みしめる音が、やけに大きく感じた。

 

彼女の前に立つ。

 

ユメが、俺を見る。

 

逃げ場のない距離で、真正面から。

喉が固まり。

口を開いても、息だけが零れる。

 

 

「……ユメ。私は――」

 

 

震える声。

 

 

「……すま――」

 

 

途中で言葉は遮られた。

 

ユメは、何も言わずに両手を広げ――

レナの顔を胸に埋めるように、抱きしめてきた。

 

 

「……もう、大丈夫」

 

 

――なに?

 

 

思考が止まる。

 

 

「レナちゃんは……一人じゃないよ」

 

 

……何が、起きた?

 

 

直に感じる体温。

背中に回された、小さな力。

 

 

「もう……大丈夫」

 

 

大丈夫。そう言われた瞬間――

 

――ふっと、全身の力が抜けた。

 

膝が崩れ、座り込む。

 

 

「……な、なん……で……」

 

 

視界が、にじむ。

 

 

「もう……いいの」

 

 

抑えていたものが、決壊した。

 

 

「……う、すまない……」

 

 

「うん」

 

 

「……すまない……」

 

 

「……うん」

 

 

「……す、すま……くっ……」

 

 

言葉にならない嗚咽。

ユメは何も言わず、背中を優しく撫で続けた。

 

 

あぁ、そうか。

 

 

俺は――

ずっと、赦されたかったんだ。

 

 

 

 

沈みかける夕日が、

重なった二人と、零れ落ちる涙を――

静かに、照らしていた。

 

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