白狼救済録   作:らんらん出荷マン

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この話は滅茶苦茶、悩みました。

悩みまくった結果、難しく考えないことにしました。

なので文章は、少ないです。


第6.5話 贖罪

 

 

試験まであと3日、ユメはまだ学校に来ない。

 

だが学生証は彼女が持っている。

……いい加減腹を括ろう、この関係にケリを付ける時だ。

 

だが許してくれるか?

 

――いや逃げてばかりではダメだ。

 

自分の下らない過去で彼女を傷付けたんだ。

 

だが俺は……どうしたらいいか分からない。

こんな経験は、今まで無かった。

 

俺は謝り方を知らない。

 

 

――死体袋に謝っても仕方がないからな。

 

 

胸の奥がざわざわする。

 

 

何かが囁いている。

 

 

 

 

迷った末、ホシノに相談することにした。

 

ホシノはユメといる時間が長い、適任者は彼女以外にいないだろう。

 

 

 

――

 

 

ホシノ視点――

 

「――ということがあって……ホシノ。私はどうしたらいい……?」

 

「はぁ……?それってユメ先輩と喧嘩したってことですか?」

 

相談があると言われ、何を言うかと思えば……呆れた目を向けずにはいられない。

 

「いや……喧嘩というより、その……」

 

いつもの堂々とした態度は鳴りを潜め、顔は俯き、両手を合わせてモジモジしている。

感情が薄い戦闘マシーンのように見えたが、こういう一面もあるのか。

 

意外とレナは、人間味があるようだ。

 

彼女が何を経験し、何を思ってきたのか、私には分からない。

 

でも――あの頼りない先輩と同じく、ふと「助けたい」そう思った。

 

「はぁ、分かりましたよ。私からユメ先輩に連絡しておきます。放課後、一緒に会いに行きましょう」

 

彼女は私の返答が意外だったのか目を丸くし、その後、少しだけ――はにかんだ。

 

こんな表情もできるのか。

 

うん。

 

――結構、可愛いかもしれない。

 

 

 

 

放課後

 

ユメ視点――

 

「――うん、そっか……ありがとね、ホシノちゃん。じゃ、また」

 

今、ホシノちゃんから連絡が来た。

どうやらレナちゃんが怒鳴ったことについて謝りたいらしい。

 

別にレナちゃんは悪くない。

私が、ちゃんと向き合う勇気がないだけなのに。

 

でも――あの時のレナちゃんの目が忘れられない。

なんて表現したらいいか分からない……

何かに怯えているような、追われているような――確かに、怒鳴られた瞬間は怖かったけど。

 

あの歪んだ赤い目と、何かに訴えるような声を思い出すと、胸の奥がジンジン痛む。

 

……でも、ここで会わなかったら後悔すると思う。

 

そういえば、始めて会った日は砂漠で倒れてたけど、ずっと一人だったのかな……?

 

よし、私はもう逃げない――今度こそレナちゃんと向き合う。

 

もう一人ぼっちじゃないんだから。

 

 

 

 

レナ視点――

 

「――いえ別に。はい、また」

 

どうやら了承を得られたみたいだ。

 

「会ってもいいみたいですよ。寮の前で待っているらしいので、さっさと行きましょう」

 

「……ホシノ」

 

「何ですか?」

 

「すまない――」

 

「それを言うなら”ありがとう”ですよ?レナさん」

 

「……あ、ありがとう」

 

 

 

――

 

夕日を背に、しばらく歩くと、遠目にユメが立っているのが見えた。

 

小さく揺れる影。

視線が忙しなく動き、落ち着きなく足を揃え直している。

 

(……やはり、嫌われたか)

 

胸の奥が冷たく締めつけられる。

 

「……ホシノ、わ……私は――」

 

――バシン!

 

(ッ!?)

 

背中に走った衝撃で、心臓が跳ね上がった。

 

「なにウジウジしてるんですか? 情けないですよ?」

 

 

『情けないぞ? 俺が担ぐのを代わろうか?』

 

 

「……あ、ああ。そうだな。行ってくる」

 

逃げ道はない。

 

覚悟を決めろ。

腑抜けすぎだ。

 

一歩。

 

砂を踏みしめる音が、やけに大きく感じた。

 

彼女の前に立つ。

 

ユメが、俺を見る。

 

逃げ場のない距離で、真正面から。

喉が固まり。

口を開いても、息だけが零れる。

 

 

「……ユメ。私は――」

 

 

震える声。

 

 

「……すま――」

 

 

途中で言葉は遮られた。

 

ユメは、何も言わずに両手を広げ――

レナの顔を胸に埋めるように、抱きしめてきた。

 

 

「……もう、大丈夫」

 

 

――なに?

 

 

思考が止まる。

 

 

「レナちゃんは……一人じゃないよ」

 

 

……何が、起きた?

 

 

直に感じる体温。

背中に回された、小さな力。

 

 

「もう……大丈夫」

 

 

大丈夫。そう言われた瞬間――

 

――ふっと、全身の力が抜けた。

 

膝が崩れ、座り込む。

 

 

「……な、なん……で……」

 

 

視界が、にじむ。

 

 

「もう……いいの」

 

 

抑えていたものが、決壊した。

 

 

「……う、すまない……」

 

 

「うん」

 

 

「……すまない……」

 

 

「……うん」

 

 

「……す、すま……くっ……」

 

 

言葉にならない嗚咽。

ユメは何も言わず、背中を優しく撫で続けた。

 

 

あぁ、そうか。

 

 

俺は――

ずっと、赦されたかったんだ。

 

 

 

 

沈みかける夕日が、

重なった二人と、零れ落ちる涙を――

静かに、照らしていた。

 

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