白狼救済録   作:らんらん出荷マン

19 / 50
第12話 宣誓

 

――第1小隊ブリーフィングルーム

 

その室内には、珍しく第1小隊の全員が揃い、整列していた。

 

小隊長の村正レンが前に出て、これから説明を始める。

 

「休め」

 

レンが声をかけると、全隊員が一斉に「休め」の姿勢になった。

 

「明日は、めでたいことに入学式があるわ。

そして嬉しいことに優秀な子が多い。今年はこの隊にも新入生が配属されるけど――

なんと! その新入生のうち、一人は首席よ!」

 

レンがそう言った瞬間、室内が歓喜に満ちた。

 

「うおぉお!」

「レナちゃん天才!!」

「ヒュー!!」

 

室内の空気が一気に湧き立った。

 

レンはその様子を一瞬だけ見渡し――

 

片手を挙げ、声を張り上げる。

 

「静粛に!」

 

皆は口を閉じ、レンを見つめた。

 

「それでなんだけど……レナさん!」

 

「……はい!」

 

列の後方から、レナが応じた。

 

「首席であるあなたには、新入生を代表して、壇上で宣誓をしてほしいの。急な話で申し訳ないけど、あなたなりの言葉で考えてほしい」

 

「……了解、しました」

 

(宣誓か……何を言えばいいのやら。

……前に誓ったことは、結局――守れなかった)

 

その様子を見てレンは、何かを思い出したのか手をポンと叩いた。

 

「あ、そうだった。当日はクロノスが入るから、テレビ中継されると思うわ。適当なことは言わないでね?」

 

「……肝に命じておきます」

 

「それと、大事な式典だから新入生にも、SRTの制服を着てもらうわよ?

いつまでも古巣の格好じゃ、示しがつかないでしょう……ちょっと、全員分の制服を持ってきてちょうだい」

 

レンは傍にいる部下に、全員分の制服を持って来るよう指示した。

ほどなくして部下が制服を抱え、WOLFチームの前に立った。

 

その手に抱えられていた制服は――

 

他の隊員の制服とは、デザインも配色もまったく違っていた。

 

他の隊員がセーラー服を基調としているのに対し、WOLFチームに支給されたのは、装備を付けることを前提としたのか、丈の短いコンバットジャケットを羽織るブレザーだった。

 

そして、カラーは黒。ワンポイントに青が入っている。

 

「……こ、これは」

 

「連邦生徒会長が、直々に指定した制服よ。特別製でも従来通りの改造は許されてるから、その辺は好きにして」

 

(制服……というより戦闘服だ。連邦生徒会長……一体どういう風の吹き回しだ)

 

レンはざっと説明すると、大きな溜息を吐く。

 

「……はぁ……あなたたち、随分と気に入られてるわね?……ちょっと妬いちゃうわ。レナさんって、会長と仲が良いの?」

 

「いえ……少々、世間話をしただけですが」

 

リノが目を輝かせながら制服を手に取る。

 

「わぁ、かっこいいですね!エリートな雰囲気があります!」

 

「じゃあ〜それに見合った実力をつけなきゃねぇ~❦」

 

「確かに、かっこいいけど……背が低い僕に似合うかな?」

 

 

制服を眺めたまま動こうとしないWOLFチームにレンは着替えるように促す。

 

 

「はいはい、感想を言うのは構わないけど、さっさと着替えてきなさい」

 

 

――

 

着替え終わったWOLFチームが整列する。

 

「ふーん、結構いいじゃない」

 

レンは振り向き、後ろの仲間たちの意見を聞いた。

 

「みんな、どう?」

 

「あー……いいですね」

「特殊部隊って感じですね」

「何言ってんだ、私たちも特殊部隊だろ」

 

 

第1小隊は相変わらず、自由である。

 

 

 

 

――翌日

 

SRT特殊学園内――中央講堂

 

空高い天井。整然と並べられた椅子。

 

壇上の後ろに掲げられたSRTの校章が、無言の圧を放っている。

 

 

今日この場にいるのは、厳しい試験をくぐり抜け、選ばれた優秀な生徒たちであった。

 

会場内を静寂が包む。

 

その場にいる者の呼吸さえ重くさせ、厳格な振る舞いを求めた。

 

(ついに……この時が来たか)

 

レナはこの世界に来て間もない。

だが、アビドスのために尽くしてきた成果が、今結ばれようとしている。

 

アビドスと違う制服に身を包んでも、レナの目的はただ一つ。

 

 

――帰る場所を守る。

 

それだけだ。

 

 

やがて、最上級生の「SRT特殊学園総司令」が壇上に上がり、言葉を述べる。

 

「これより、SRT特殊学園入学式及び新入生成績上位者の宣誓式を行う……総員!起立!!」

 

 

その掛け声とともに、会場内の全員が立ち上がった。

 

「本日、ここに集まった新入生諸君、まずは入学おめでとう――」

 

総司令の淡々とした祝辞が続く。

使命、責任、希望。

ありふれた言葉だが、どこか威厳に満ちた総司令の言葉を、レナは一語一句逃さず聞いていた。

 

(総司令は信頼に足る人物のようだ。彼女がいる限り、暴力装置のSRTは秩序を保ち、キヴォトスの守護者であり続けるだろう)

 

そして式は進み――

 

新入生の呼名が始まる。

 

一人またひとりと呼ばれ、短い返事が続く。

 

「大上レナ!」

 

その名が呼ばれた瞬間、誰かが息を呑む音がはっきりと聞こえた。

 

「……はい!」

 

レナが立ち上がると、小さなざわめきが起きた。

 

「……首席だ」

「……あの子があの試験を?」

 

レナは壇上に上がり、総司令の前まで行って一礼する。

 

顔を上げると、一瞬だけ総司令の視線が鋭くなった。

 

(なんだ……今のは)

 

「大上さん。期待しているぞ」

 

「はっ、最善を尽くします」

 

レナは席に戻り、着席する。

 

その後も呼名は続き――

 

「続いて、宣誓式を行う!まずは次席、七度ユキノ!」

 

「はい!」

 

呼ばれて立ち上がったのは、試験の時に好成績を出していた狐耳の生徒だった。

 

(……あの時の狐か……!)

 

彼女は壇上に上がり、マイクを取る。

 

「私、七度ユキノは!」

 

「SRT特殊学園の生徒としてここに宣誓します!」

 

ユキノは背筋を伸ばし、周りを見据える。

 

「私は、規律を重んじ。組織の一員として最善の限りを尽くします!」

 

淀みなく、自信に溢れた表情で続ける。

 

「私は、命令と状況を正しく理解し、ここキヴォトスに貢献します!」

 

誰もが頷く、素晴らしい内容だ。

 

「仲間とともに歩み、頼られる存在として、SRTの名に恥じぬ行動を心がけることを、ここに誓います!」

 

 

ユキノは言い切り、辺りは静まる。

 

その直後、大きな拍手が会場を包んだ。

 

 

ユキノは壇上を降りた。

 

 

「首席!大上レナ!」

 

(……さぁ、俺の番だ。)

 

「……はい!」

 

 

レナは壇上に上がり、会場全体を見渡す。

すると奥の方で、大きなカメラを操作している生徒が目に入った。

 

(……嫌な視線を感じる)

 

辺りは物音一つ立てず、静まり返っている。

 

大きく息を吸う。

 

「私は、大上レナ」

 

冷たいマイクを握りしめる。

 

(俺が誓うのは、未来じゃない――仲間だ)

 

 

 

 

 

――アビドス高等学校

 

「ホシノちゃん!始まったよ!」

 

「……ッ!今行きます!」

 

ホシノがテレビに駆け寄り、ユメと二人で中継を見る。

 

 

 

――

 

《SRT特殊学園の生徒として……ここに宣誓する》

 

《私は決して任務を放棄しない》

 

《どのような危機的状態でも、決して判断を放棄しない》

 

《私は……仲間の命を最優先とし、自身を投げ打ってでも守り抜く》

 

《そのために必要な行動を、選択する》

 

《私は必ず、仲間を無事に返す》

 

《そのために、私は迷わない》

 

《その誓いを今、ここに立てる》

 

 

――

 

 

中継を観ていた二人は、言葉を失った。

 

ユメは震えた声で、なんとか言葉を紡いだ。

 

「……あの時の目に戻ってる。行かせるべきじゃ……なかった」

 

 

 

 

 

 

「自己犠牲」――その誓いは、決して称賛されるものではなかった。

 

だが戦場では、確かに「必要な誓い」だった。

 

 

――彼女は称賛など求めてはいない。

 

 

もう誰かが死ぬのは、見たくはなかった。

 

 

 

 

 

連邦生徒会――生徒会長室

 

 

《その誓いを今、ここに立てる》

 

 

 

「花丸です、レナさん!私が見込んだだけはありますね!」





やっと主人公のビジュアルが揃いました。

イメージしやすいようにAIさんに画像を出してもらうことも考えてます。

なのでアンケートを取ります。

大上レナのイメージ画像

  • イメージ画像ほしい
  • 自分のイメージを壊したくないからいらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。