白狼救済録 作:らんらん出荷マン
皆様、お待たせしました。
14話は長編になる予定です。
――不良たちを矯正局に届けてから翌日。
日が昇り始めて間もない早朝、突然Aグループの最高責任者である「群長」から、村正レンと大上レナの二人が呼び出された。
呼び出された原因は、昨日のショッピングモールを破壊した件だろう。
レナの隣を歩くレンは、肩を落とし、胃のあたりを押さえながら項垂れていた。
会話は一切なく、ただコンバットブーツのコツコツとした音だけが廊下に響く。
廊下ですれ違う他部隊の隊員たちの視線は、困惑に染まっていた。
昨日の出来事は、すでに学園内で大きな噂へと発展している。
だが、レナは元兵士だ。
周囲の被害を最小限に抑えることを信条とする警察機関とは、発想がまったく違う。
本来なら避けるべきことであっても、躊躇することなく実行する。
それが過剰だと、理解していても。
――迷えば、負けるのだ。
しばらく歩き、「Aグループ 群長室」と書かれたドアの前に立つ。
レンがドアをノックし、口を開けた。
「村正レン、大上レナ。両名、出頭しました! 入室許可を願います!」
すると中から、あどけない雰囲気の声が返ってきた。
「入っていいですよ」
レンがドアを開ける。
顎を上げる仕草で、入室を促される。
(……先に行け、ということか)
「失礼します!」
「……失礼……します」
レンが背後でドアを閉めた。
部屋の奥には――
小柄な体に、豊かな金髪を揺らす少女が、椅子に腰掛け、大きなデスクに手を置いている。
一見するとまったくの無害で、遊園地で遊んでいても違和感はない。
(この見た目で……群長……?)
レナは困惑した。
群長の前に整列し、二人は姿勢を正す。
しばしの沈黙。
群長が口を開き、レンへと視線を向けた。
「言いたいことは色々ありますが――まずは犯人を逃さなかったこと。その点はよくやりました」
「……はい」
レンが、覇気のない声で返事をする。
「ですが、アレには驚きました。大上さんの提案ですよね? 慎重なあなたが出す指示ではありません」
「……はい。大上から意見があり、その案を採用しました。ですが、あの状況で徒歩での追跡は……取り逃がしていた可能性も否定できません……」
レンは群長の言葉を受けるたび、罪状を読み上げられる罪人のように萎縮していく。
一応反論はするが、目を逸らし、声は震えていた。
その様子を見た群長は目を細め、今度はレナへと視線を向ける。
「……大上さんは、1年生で、昨日が初陣だと聞いています。あの状況で、あの判断を下すのは――」
群長は立ち上がり、デスクに手をなぞらせながらレナの目前まで迫り、手を後ろに組んだ。
レナは反射的に身構え、半歩下がる。
(……測られている)
群長は背が低いため、自然とレナを見上げる形になる。
「――なかなかクレイジーですね。気に入りました。あなたのことは覚えておきます」
褒められているのか、貶されているのか分からない。
遠回しな評価だった。
「ですが、毎回あのように破壊の限りを尽くされては困ります。私たちは解体業者ではありませんからね。
あなたたちには、壊した分、もっと働いてもらいますよ? そうでなければ……お給料はゼロです。んふふ……ゼロ……いい数字ですね」
群長は笑ったが、目はまったく笑っていなかった。
給料ゼロ――それはレナにとって、最大級の警告だった。
アビドスの借金返済のために、ここまで来たというのに、これでは本末転倒だ。
レナはアビドスの二人の顔を思い浮かべ、群長に返事をする。
「……申し訳ありませんでした」
反論はいくらでも浮かんできた。
だが――ここでそれを口にするのは、自分の立場を危うくする。
「分かればよろしい」
そう言うと群長はレナから離れ、ゆっくりと椅子に腰掛けた。
書類を取り出し、ページをめくる。
「さて……ここから本題です。あなたたちに新たな任務を与えます」
(――そうくるか)
「第1小隊は、速やかにミレニアム近郊の廃墟へ向かい、とある地点のマッピングを行ってください」
そう告げられた瞬間、レンの顔が青ざめた。
「は、廃墟ですか……? あそこは連邦生徒会が立ち入り禁止にしたはずですが……」
「その連邦生徒会からの命令です。かなり危険な任務になることが予想されますが……上からの命令です。私も心苦しいですが、行ってくれますね?」
心苦しいと言いながらも、群長からは有無を言わせぬ圧が滲み出ていた。
拒否権はない――暗にそう告げていた。
「……りょ、了解しました」
「では、もう行っていいですよ。任務の詳細は追って知らせます」
「は! 失礼します」
呼び出された二人は群長室を後にし、ブリーフィングルームへと向かった。
――
――第1小隊 ブリーフィングルーム
薄暗い部屋に、第1小隊の全員が座っている。
レンがプロジェクターの前に立った。
「よし、揃っているわね。これより任務の説明を行う」
プロジェクターが作動し、壁一面に荒れ果てた市街地の航空写真が映し出される。
レンは周囲を見回し、深く息を吸った。
「今回の任務は、ミレニアム近郊――封鎖された廃墟のマッピング作業よ」
「廃墟」
その言葉が出た瞬間、誰かが息を呑んだ。
「……廃墟ってマジ?」
「これは……厳しいな」
隊員たちの間に、不穏な空気が流れる。
レンがリモコンを操作し、映像が切り替わった。
そこには「立ち入り禁止」と赤字で書かれた看板を写した現地写真と、未完成の地図が表示される。
「この地図は、まだ30%が空白になっている。この部分を埋めて、今後の調査に活かすのが、今回の任務よ。
1130時までに現地に到着し、物資が続く限り、限界まで調査を行う」
「おいおい……何時間いさせるつもりだよ」
「廃墟で長居は……自殺行為じゃない」
さらにリモコンを操作し、画面が切り替わる。
「これは副目標だけど……余裕があれば、建物内部も調査して、オーパーツの回収も行うわ」
そこに写し出されたのは、ピンク色の何かが詰まった容器だった。
「ちなみに個数の指定は……ない。『できるだけ集めて来い』ってことでしょうね……」
部屋は沈黙に包まれている。
「そして、予想される敵性勢力は……正体不明の自律機械よ。単体では大した脅威はないけど……
厄介なのは、数が非常に多いという点よ。弾がいくらあっても足りないわ。
そして現地では微弱なECMが検知されている。あまり隊から離れると孤立するわよ」
レンは周囲を一瞥し、ゆっくりと顔を伏せた。
「今回の任務は、非常に苦しい戦いを強いられるわ。でも現地の道は荒れ果ててるから、大きな車両は通れない。
みんなには申し訳ないけど……
でも切り札はある。今回の調査はミレニアムの開発部が協力してくれる」
リモコンを操作する。
「まだ試作品だけど、電波妨害に強い偵察ドローンを3機用意してくれたわ。
多分……これの実地テストもついでにやっちゃおうって魂胆ね。
このドローンは、RAVENチームに任せる。私たちの目になって、可能な限り自律機械をやり過ごす。電子戦に強い、あなたたちが頼りよ」
指名されたRAVEN1が、部屋の後ろの方から応じる。
「了解だボス。だがそのドローンは大丈夫なのか? 開発部製だろう? 面倒は嫌いなんだ」
「どうかしらね……でもあの環境で動作するのはこれくらいよ。我慢なさい。
……よし、これで以上よ。何か質問はある?」
(弾切れや通信の断絶が起きたら、帰れなくなる可能性が高い……)
「……はい」
「何? レナさん」
「もし……弾切れや通信断絶による孤立が発生した場合。どうなりますか?」
「最悪……取り残される。救出部隊が来るまで、耐えてもらうしかないわね。他には?」
「はい」
GOATチームの一人が手を上げた。
「なに?」
「調査に行く部隊は……我々だけですか?」
レンは目を逸らして、俯く。
「……そうよ。私も、部隊を増やしてほしいと抗議したけど……
群長から『人手不足だから、それはできない』と言われて一蹴されたわ……」
「でもっ! 過去の調査では大規模な部隊を投入したと聞いたことがあります!
連邦生徒会は、何を考えてこの命令を出したんですか?
群長もです! あんなに無駄を嫌う人が、なぜ今回はこの任務を承認したんですか!?」
おかしいと、部下が声を荒らげた。
そして、それに答えられない小隊長。
部屋の空気は――最悪だった。
と、言うことで新キャラの群長様です。
SRTにもモップ族がいても良いだろと思い、この見た目にしました。
……ところで皆様、おっかねぇロリは好きですか?
私は好きです。