白狼救済録   作:らんらん出荷マン

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第14話 連戦―2

 

 

――SRT特殊学園ガレージ内

09:00

 

調査任務を命じられた第1小隊は、大急ぎで準備を済ませた。

 

物資を満載したハンヴィーが並んでいる。

 

整列した第1小隊の前にレンが立った。

 

「遠足は、帰るまでが遠足よ!安全第一に!

危なくなったらすぐ帰る!いいわね!?」

 

「「「「了解!!!」」」」

 

「じゃあ、いくわよ!! 全隊、乗車!!」

 

号令と共に全隊員が一斉に動き出す。

 

次々とハンヴィーに乗り込み、分厚いドアを閉め、エンジンをかける。

 

4台のエンジンが唸り、静かだったガレージにけたたましく響き渡る。

 

そして無線機が鳴り響く。

 

《よし、出発よ!!》

 

――

――ミレニアム近郊、検問所

11:00

 

第1小隊は隊列を組みながら道を進み、ミレニアム近郊の検問所に到着した。

 

フェンス前の建物周辺には、キヴォトスで警察的役割を担うヴァルキューレの生徒が数人立っていた。

 

車列がフェンスの手前で停車する。

 

守衛のヴァルキューレ生徒が、GOATチームの乗る先頭のハンヴィーに近づき敬礼した。

 

「お疲れ様です! お話は伺っております。第1小隊の皆さんですよね?」

 

小隊長のレンはハンヴィーから降り、軽く敬礼をした。

 

「えぇ! これから遊びに行ってくるわ!」

 

引きつった笑みで返すレン小隊長。

 

「……心中お察しします……では、開発部から受け取ったドローンをお渡しします」

 

フェンス横の建物からヴァルキューレ生徒が出てきた。

大きな緑色のケースを数人がかりで運び、車列中央のRAVENチームのハンヴィーに積み込み始める。

 

それを眺めて、RAVEN1が愚痴る。

 

「随分デカい……これで最後か?」

 

「はい、操作ユニットも一式入っています。予備のバッテリーも入ってますので、この大きさは仕方ないです」

 

WOLFチームは列の最後方にいる。

後席に座ったスイは、大きなケースを見つめる。

 

「ねぇ隊長。アレはちょっとデカすぎない? ハンヴィーの荷台に入りきってないみたいだよ……」

 

「試作品だからな。洗練されてないんだろう。……WOLF2、お前はミレニアム出身だったな。開発部の製品は実際どうなんだ」

 

レナの隣でハンドルを握ったリノは、一瞬悩んでから答えた。

 

「え、ええ。確かに性能は優秀ですが……開発部には悪癖がありまして……」

 

「悪癖?」

 

「はい。なんでも彼女らは『これはロマンだ!』とか言って、必要以上の機能を盛りたがるんです。なのでごく稀に……信頼性に難があるものが出来上がることがあります……」

 

『面倒は嫌いなんだ』

 

「なるほど、RAVEN1が言ってたのはコレか」

 

「隊長〜、なんだか雲行きが怪しくない❦?」

 

いつもおっとりしているメイが、不安げに落ち着きを失っている。

 

「……最悪を想定しておけ」

 

積み終わったタイミングで、先頭2列目のハンヴィーから一人走って来た。

 

TORTOISE1だ――

 

「おい、WOLF1。そろそろ出発する、しっかり付いて来いよ。現地に着いたら、指定のポイントを回りつつ、測量中に建物を捜索する手筈だ。

必ず動けないタイミングが発生する。その際、お前達の腕が必要になる」

 

 

「了解しました」

 

 

積み込みが終わるとフェンスが動き出し、道を開ける。

 

車列が動きだし、フェンスに近づく。

 

敬礼していたヴァルキューレ生の横にGOATチームのハンヴィーが止まった。

 

「もし……日が沈んでも戻って来なかったら。救出部隊をお願いね?」

 

ヴァルキューレ生は再度敬礼し、口を開いた。

 

「はッ!お任せください!」

 

「ありがとう、期待してるわ。……よし!行くわよ。コンボイ、移動開始!!」

 

レンが号令をかけると車列が前進し、フェンスをくぐる。

 

ヴァルキューレ生徒は、車列が見えなくなるまで敬礼を続けていた――

 

 

――

 

しばらく荒れ果てた道を進むと、霧が立ち込めてきた。ライトの光が滲み、先頭の車両が辛うじて視認できる。

エンジンの音が霧に吸われ、奇妙な静けさが広がる。

 

――無線機が鳴る。

 

《こちらGOAT1、霧が出てきたわ。逸れないでね。》

 

「た、隊長。霧ですよ?不気味です……」

 

「……お前は、前だけを見ていろ」

 

 

 

 

――廃墟

 

――WOLFチーム

 

11:27

 

《11……7、予定時…に間に合っ……ね。全…停車!》

 

GOAT1から通信が入ったがノイズが酷い。

ブリーフィングでは、ECMは微弱と言っていたが、話が違う。

 

《こち…GO…T1、全隊ラジ…オチェック…行う。感度…どうか?…ーバー。》

 

《こ……TORTO……E1、3b…3、ノ…ズ小、》

 

《こ…らRAV……1、3by3、若………イズあり》

 

「こちらWOLF1、3by2*1、ノイズが酷い、通信不良」

 

各隊から報告された通信環境は、基準値以下だった。

 

《GO……1、了解。短文で送…わ。

RA…EN、ドローン…用意。ここ…らは、荒野のウェスタ…ンよ…》

 

 

「WOLF3、銃座につけ。周囲を警戒しろ」

 

「……ウィルコ」

 

スイは座席から立ち上がり、天井の中央に空いた穴から上半身を出す。

 

備え付けられた重機関銃のチャージングハンドルを掴み、2回連続で引いた。

 

1回で半装填、2回で全装填だ。

 

――これで、いつでも撃てる。

 

外に出たスイの鼻に、湿り気を帯びた空気がなだれ込む。

その中には錆びた鉄のような臭いも混ざっている。

 

「うわっ臭い……嫌な空気」

 

前方のハンヴィーから隊員が降りるのが見える。

ケースを下ろし、中身のドローンを組み立て始めた。

 

 

――

 

――GOATチーム

 

「クソ、視界が悪い……目視での早期発見は困難ね……」

 

部下の一人が口を開く。

 

「小隊長……あのドローン、ホントに大丈夫ですかね?」

 

「……もし、壊れたら。誰かを先行させるしかないわね……」

 

 

GOATチームのハンヴィーの車内を沈黙が包む。

 

 

「……それは少々危険では……この通信環境で、上手く伝達できますかね?

撤退の命令が届かなかったら、取り残される可能性が……」

 

「その時は……その時よ」

 

――無線機が震える。

 

《GO……T1、こち……RAVEN1。ドローン。展開》

 

「GOAT1、了解。……全隊。北。前進。タイト。ツー、ファイブ、ゼロ、メートル。

よし、前進よ……周囲に気を配って」

 

 

――

 

――WOLFチーム

 

 

《――北…前進。タイト…ツー……ファイ……ゼロ、メー…トル》

 

 

「WOLF2、車列が動くぞ。北に250m前進だ」

 

「りょ、了解!」

 

リノがアクセルを軽く踏み、ハンヴィーが動き出す。

停止と索敵を繰り返し、着実に前に進む第1小隊。

 

しばらく進み、目標ポイントに近づいた。

 

――無線機が鳴る。

 

《RAV…N1。コ…タクト。方位……ツー、ナイナー……スリー。》

 

《GOAT1か…全隊。ホー…ド、ホ……ルド、ホールド。や…過ごす》

 

「WOLF2、停車」

 

「は、はい」

 

ブレーキが軋み車体が揺れる。

 

「WOLF3、周囲を警戒」

 

「コピー」

 

車列は完全に止まり、息を潜める。

 

すると霧の向こうで、モーターが奏でる不穏な歩行音が響く。

 

地面が揺れるが、姿は見えない。

 

知っているのは、ドローンで監視しているRAVENチームだけだ。

 

再び通信が入る。

 

《R…VEN1。進……クリア》

 

《GO…T1。了……前進。》

 

 

――

 

 

慎重に進み、ようやく指定のポイントに着いた。

 

《GOAT……全隊、通達。スキャン……始…める。TOR…TOI…Eは捜索……WO…F、RAV…EN、展開…し警戒》

 

「よし、降りるぞ。周囲に展開。道を監視する」

 

辺りは霧に包まれ、静まり返っている。

 

聞こえるのはアイドリング状態のエンジン音だけ。

 

周囲を確認する――ハンヴィーを降りて廃墟に向かうTORTOISEチームが見えた。

 

「隊長〜、まるで”静かな丘”だね❦」

 

「……なんだそれは」

 

「知らないの〜?有名なホラー映画だよ❦」

 

レナは無言で、メイから離れる。

そういったサブカルは全く知らないのだ。

 

「……さっさと行け」

 

 

展開してから7分、ただひたすら霧の向こうを眺めている。

過去にも霧が濃い中での作戦はあった。

 

だが、それは困難を極めるものばかりだった。

 

今は静かだが、胸の中が全く落ち着かない。

 

 

――無線機が鳴る。

 

 

《GOAT1、ス…キャン完了……全隊…集合》

 

思ったより早い、彼女たちも焦っている。早く帰りたいのだろう。

 

 

レナは立ち上がり、その場から離れた。

 

 

 

 

――

 

 

捜索に出たTORTOISEチームとスキャンを終えたGOATチームが、既に集まっている。

 

(TORTOISEチーム……早いな、収穫はゼロか)

 

再度集合したWOLFチームは駆け寄り、レンに報告する。

 

「WOLFチーム。集合しました」

 

レンは集まった隊員たちを一瞥し、口を開く。

 

「……まず1つ目は終わった。あと3カ所回らないといけない。

グズグズしてると日が暮れるわ。なる早に、だけど慎重に、次へ行きましょう」

 

「「「了解」」」

 

 

突如、無線機から聞こえる焦ったような声を全員の耳が捉える。

 

 

《RAVE……1だ!!コン…クト!!コ…ンタ…ト!!オー……トン7!!大型…ド…ーン4!!方……ワン、ゼ…、ファイブ!!》

*1
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