白狼救済録 作:らんらん出荷マン
ECMの演出は全編入れるとクドい気がするので、ここからカットしようと思います。
《GOAT1!こちらWOLF1だ!これより、私1人でTORTOISEの援護に行くッ!》
「なに!?――WOLF1!勝手なことは止めなさい!!WOLFチームは誰が守るの!!」
《指揮はWOLF2が、引き継いだ!》
「引き継いだ……って、ちょっと!戻りなさい!」
呼び止められるが、レナは無視を決めた。
振り返りもしない。
力強く踏み込むその瞬間――ブーツが地面にめり込んで瓦礫を蹴散らした。
レナは再加速し、TORTOISEチームが取り残された建物へと飛び込んでいった。
もう待つ時間など残されてはいない。
「あーッ!もう!!――TORTOISE1!TORTOISE1!こちらGOAT1!たった今、WOLF1が援護に向かったわ!誤射に注意して!!」
《なに、WOLF1が!?TORTOISE1、ラジャー!!――おい!WOLF1が援護に来てくれる!間違って撃つなよ!》
「ガラクタを片付けて『バカ犬』とさっさと戻ってきなさい!!GOAT1、アウトッ!!」
――
――TORTOISEチーム
「クソッ!数が多い!TORTOISE2!まだ弾はあるか!?」
「今使ったのが最後です!」
TORTOISE1は自身のマグポーチを開け、マガジンを投げ渡した。
「ほらよッ!最後のマガジンだ!大事に使え!!」
――
レナは奥から聞こえる銃声を頼りに突き進み、TORTOISEチームに近づいていた。
通路を走り抜ける途中、壁際の案内図が視界に入った。
視線を滑らせて、建物の構造を把握する。
(この先は吹き抜けになっている……銃声からして、TORTOISEチームは1階で立ち往生しているな。……よし、2階に上がれば撃ち放題な筈だ)
レナの中で結論が出た、背負ったLMGを握りしめてチャージングハンドルを引く。
通路横の階段を確認し――駆け上がる。
階段を登るたび、LMGのスリングベルトが肩に食い込む。
――無線機が鳴る。
《WOLF1!!こちらTORTOISE1!そろそろ限界だ!どこにいる!?》
「今2階に向かっている!吹き抜けから援護する!」
《TORTOISE1、ラジャー!待ってるぞ!!》
階段を上がり通路から顔を覗かせる。
2階には何もいない。
安全を確認して飛び出した瞬間、視界が広がる。
息を整えると火薬と焼けた油の臭いが鼻の奥を満たした。
レナは手すりに向かい、下を覗き込む。
(一体……何機のオートマトンを破壊したんだ……)
その視線の先には――
夥しい数のオートマトンの残骸に囲まれたTORTOISEチームが、バリケードを築いていた。
その周りには複数のオートマトンが動き、徐々に距離を詰めている。
だがTORTOISEチームは、バリケードに隠れたまま誰も反撃しようとしない。
――弾切れ。
最悪の予感が、レナの脳内を支配した。
(――クソッ!!)
銃身下部取り付けられたバイポッドを展開して、手すりにLMGを引っかける。
左手をストックに添えて安定させ、照準器を覗き込み無線機のスイッチを入れる。
「……全員、頭を低くしろ!」
――引き金を引いた。
嵐のように降り注ぐ弾丸がオートマトンに降りかかり、空気を切り裂く騒音が、吹き抜け内でこだまする。
1機、また1機と薙ぎ倒す。
オートマトンも気づき、反撃しようと上を向くが、レナは即座に照準を合わせて黙らせる。
LMGに取り付けられたボックスから供給される200連の弾帯ベルトは、みるみる短くなっていく。
絶え間なく射撃している影響で煙が立ち込め、熱を帯びた銃身は、周りの空間を歪ませて照準を困難にさせる。
「TORTOISEチーム!さっさと移動しろ!長くは撃てない!」
《あ、あぁ……助かった!もう駄目だと思っていた所だ!!――おい!今のうちだ!合流するぞ!!》
TORTOISEチームがバリケードから飛び出し、吹き抜けを横切って離脱した。
レナもそれに合わせてトリガーを離す。
継続的な射撃で腕が痺れるように震えていた。
LMGのキャリングハンドルを掴み、手すりから外す。
新手が来る前に大急ぎで階段を駆け下りた。
――
TORTOISEチームと合流する。
――間に合った。
あの日誓った通り、仲間を救うことができた。
命令違反は褒められたものではないが、レナは一切後悔していなかった。
だが、この行動を正当化しようとも思ってはいない。
部隊を危険に晒したのだ、それ相応の処分は覚悟している。
「助かった……ありがとうWOLF1」
「やっぱりレナちゃんは最高だよ!」
「し、死ぬかと思った……」
彼女らはレナに礼を言う――だが、作戦はまだ終わっていない。
外に出ると、そこには地獄が広がっていた。
辺り一帯に炎が広がり、オートマトンの残骸が山になっている。
ハンヴィーはまだ健在のようだ。
だが盾として利用したのか、フロントガラスも含めて弾痕だらけでボロボロだった。
レンがこちらを見つけると、煤だらけの顔を拭いながら叫んだ。
「早く乗って!次に移動するわよ!!」
レンの目には怒りが宿っていたが、その奥には確かな安堵が滲んでいた。
――
全員がハンヴィーに乗り込み、第3ポイントに直行する。
レナもWOLFチームのハンヴィーに戻った。
「みんな、すまない。勝手なことをした」
「まったくです!指揮を放棄するのは、二度とやらないでください!」
ハンドルを震えた手で握るリノの顔は、怒り心頭だ。
「隊長〜、もう大変だったんだからね?」
「全く……隊長も自由だね」
2人の視線がレナを射抜き、どこか居心地が悪く感じる。
「……次は気を付ける」
――
第3ポイントまで目前だ。
だがここで、悲報が入った。
《こちらRAVEN1、全隊に通達。ドローンのモーター出力が上がらない。これ以上は使えない。ドローン、フライン。繰り返す。ドローン、オフライン》
その報告に、第1小隊の全員が息を呑んだ。
これより先は――目隠しをしながら戦うことになる。
「隊長……これ結構ピンチ?」
メイにいつもの緩さがない。
「敵の大型ドローンが近くにいても分からない。出くわしたら……無事ではすまないぞ。――WOLF3、聞いていたな?もう目は使えない、警戒を緩めるな」
銃座に付いて周囲を見張るスイに注意を促す。
「アイコピー、でも隊長……この視界では分からないよ……」
――無線機が鳴る。
《GOAT1より全隊。もう日没まで時間がない、危険だけど……スピードを上げて時短を図る。
このまま私たちが先行する……かっ飛ばすわよ!!》
(……この視界不良と、荒れた道で……増速)
危険なのは、十分承知だ。
だが悠長に進むには、何もかもが不足している。
小隊長は、一か八かの賭けに出たのだ。
「WOLF2、覚悟を決めろ。アクセルを踏み込め、置いていかれるなよ」
「え!この道で!?……ッ!りょ、了解ッ!!」
車列はスピードを上げて、霧の中へ消えていった。
――
「WOLF2!次を右折だ!間違ったら戻れないぞ!」
「は、はい!!」
「WOLF3!9時方向!撃たれる前に撃てッ!!」
「うぅ……!ウィルコッ!!――ッ!?リロード!!WOLF4!予備のボックス!お願い!」
「ほら!使って!!」
現在、第1小隊の車列は激しい攻撃に晒されながらもポイントに向けて強引に突き進んでいた。
日も暮れてきて辺りは更に暗くなる。
前を走る車両を見失わないように走り続けた。
――無線機が鳴る。
《GOAT1より全隊!!方位!ツー!ファイブ!大型ドローン1機、目視で確認!!――対空射撃用意!!》
(……クソッ!キリがない!)
「WOLF3!2時の方向だ!ローターを狙え!!叩き落とせ!!」
「コピー!!」
4挺の重機関銃が一点に指向され、空に曳光弾の赤い閃光が絵を描く。
――霧の向こうで光が点滅している。
(ッ!?――ロケット弾か!)
「2!回避しろ!!!」
指示を受けたリノはハンドルを左に素早く回し、車体が大きく逸れた。
その直後――炎の軌跡を残した槍が飛んできた。
第1小隊のすぐ横で、断続的な爆発を起こす。
空気が歪み、WOLFチームのハンヴィーは激しく揺れる。
「ぐうっ……!!」
衝撃波と爆音で視界が白くなる。
「全員無事か!?」
「はい!」
「な、なんとか!――危うく投げ飛ばされる所だった!!」
「隊長ーッ!50口径弾がもうないよーッ!!」
後部座席に座っているメイが叫ぶ。
――残弾なし。
WOLFチームのハンヴィーに、一瞬の沈黙が落ちる。
(……もう重機関銃は使えない……撤退を、進言すべきか)
レナは無線機に手を伸ばし――止めた。
まだ、退く理由にはならない。
外を見ると攻撃してきたドローンは燃え盛っていた。
WOLFチームには残されていないが、他の車両にはまだ弾があるようだ。
《GOAT1より全隊へ!第3ポイントに到着!防御陣形を展開!TORTOISEチームは、ただ今をもって、オーパーツ回収任務を放棄!防衛に加わって!!》
《TORTOISE1、ラジャー!回収任務を放棄し、援護に回る!》
レナは無線機のスイッチを押す。
「ブレイク!ブレイク!ブレイク!WOLF1より、GOAT1!
我、重機関銃の残弾なし!これより、WOLFチームは全員で遊撃に出る!!」