白狼救済録   作:らんらん出荷マン

45 / 50

今回は7000字程度の資料回です。
アクション要素はゼロです。



第34話 表裏

 

 

昨夜の一件は、完全に伏せられた。

現場にいた隊員と司令部関係者――その全員に、箝口令が敷かれたのだ。

 

あの時――

 

姿を現したAegisの他にも、複数の“気配”があった。

 

包囲地点の配置。

周囲の物陰。

少なく見積もっても、二個小隊規模。

 

もしあの場で銃撃戦が始まっていれば、俺たちに勝ち目はなかった。

 

だが奴らは、あれほど有利な布陣を敷きながら、引いた。

あれは連邦生徒会長が一手差し込んだと見て、まず間違いない。

 

シヅキの取り乱し方からして、電撃的、しかも逆らえない“何か”が降ってきたのだろう。

 

メイが無断でSRTの試験を受けたことを、奴が知らないはずがない。

俺にメイの詳細が意図的に伏せられていた時点で、答えは出ていた。

 

最初からメイは――

 

“手札”だった。

 

そう見るべきだ。

 

またしても俺は、都合よく使われたらしい。

 

 

 

――

 

――SRT特殊学園・IOC(Integrated Operation Center)。

 

大型壁面ディスプレイが淡く発光し、鳴り止まぬコール音、絶え間ない打鍵音、現地部隊とオペレーターの声が幾重にも重なっていた。

司令部特有の張り詰めた喧騒が空間を満たす中、その一角ではレナ、総司令、そして情報管理課から呼び出された事務員の三人が、卓上に置かれた黒いUSBを囲んでいた。

 

「始めてくれ」

 

「了解しました」

 

総司令の短い指示に、事務員はUSBを手に取る。

ノートPCへ差し込み、慎重な手つきでデータを読み込ませた。

 

ウィンドウが開く。

内部ファイルが箇条書きで並び、白い画面光が三人の顔を淡く照らした。

 

 

――

 

《TEMP_CHEM》

《OUTSIDE_TRANSFER》

《DEV_ARCHIVE》

《SITE_ASSIGN》

《STAFF_ACCESS》

《INFRA_PREP》

《PJT_A.N.T.I.O.C.H.》

 

――

 

 

事務員の眉が、わずかに動く。

 

「……さあ、出てきましたよ」

 

彼女はマウスを操作し、《TEMP_CHEM(熱化学)》を開いた。

画面いっぱいに、CSV形式の記録が整然と並ぶ。

 

「日付ごとの温度管理表、搬入ロット、保管時間です……。ロット番号も一致しています。昨夜確認した現物と同一です」

 

壁面ディスプレイに該当データが拡大表示される。

 

 

 

――

 

AC-7R-1142

BC-7R-1142

 

保管場所:C棟冷蔵区画

取扱区分:対管理/分離保管

温度条件:5–15°C

搬入状態:完了

搬出状態:緊急搬出待機

担当部署:KAISER INDUSTRIES / CHEM UNIT

 

――

 

 

 

「昨日の映像記録とも一致するな……」

 

総司令が低く呟いた。

 

事務員は頷き、続けて次のフォルダを開く。

 

OUTSIDE_TRANSFER(外部転送)》――

 

黒地に白文字だけの簡素な帳票データが表示された。

 

「搬出申請番号、車両番号、担当部署、承認欄……あ、これです」

 

画面最上段。

ほんの数分前に更新された記録が浮かび上がる。

 

 

 

――

 

TRANSFER ORDER

SECTOR-C / EMERGENCY MOVE

 

ITEM:

A-COMPOUND

B-COMPOUND

 

CLASS:

THERMOBARIC WEAPON COMPONENT

 

DEST:

D.U. INDUSTRIAL BLOCK-06

KAISER INDUSTRIES / PLANT-2

 

STATUS:

LOADING

 

――

 

 

 

「これは先日、私が確認したものです」

 

レナはそう言って、画面を指で示した。

 

「……続けろ」

 

総司令に促され、事務員はカーソルを滑らせ、《DEV_ARCHIVE(開発用アーカイブ)》を開く。

 

技術資料がいくつも並んでいた。

その中から、ファイル名に“TEST”の文字があるものを選択する。

 

「試験報告書……ですね」

 

ディスプレイに文面が展開された。

 

 

 

――

 

案件番号:KI-BW-02

分類:Restricted

件名:高密度燃焼反応試験(第二段階)

 

結果:

・A/B反応剤による高温高圧域形成を確認

・閉所環境において効果増大

・散布条件および遅延点火条件の再検証が必要

・次段階は“大型化前提試験”へ移行

 

――

 

 

 

総司令の表情が、そこで初めてはっきりと険しくなった。

 

「大型化だと……?」

 

声音が、一段低く沈む。

 

事務員は無言のまま、次のファイルを開いた。

 

 

 

――

 

件名:

試験素材の分離保管について

 

本文:

対管理物は外部保管を利用し、主開発拠点との距離を確保すること。

 

――

 

 

 

「……なるほど。そういうことか」

 

総司令が鼻を鳴らす。

 

「BMは“売り場”ではない……」

 

事務員が振り返り、総司令とレナを交互に見た。

 

「流通ルートの開拓も兼ねつつ……摘発された時に本体を守るための緩衝材、ということですか?」

 

「例の未登録兵器も……無関係ではなさそうだな」

 

三人の視線は、壁面ディスプレイに固定されたまま動かない。

 

レナは無言で顎先に手を添えた。

 

そもそも旧整備区画は、商品を並べる売り場などではない。

リスク分散のための一次保管場所――。

 

(つまり、ミオが自爆に使った物も、売り物じゃない……?

では、一体……どこで、いつ手に入れた)

 

そうなると、マーケット内に溢れていた兵器類そのものも、連中にとっては“本命を隠すためのノイズ”だった可能性がある。

 

だが、まだ確証はない。

他企業が撒いた混乱に便乗しているだけの可能性も残っている。

 

シリアルナンバーのない、出所不明の兵器。

それ自体が重大な問題だ。

だが、今追うべき本命はそこではない。

 

「……ゴースト」

 

レナは消え入りそうな声で、ぽつりと呟いた。

 

(名無しというのは、都合がいい。

俺自身も、かつてそれを使う側の一人だった)

 

シリアルも履歴も持たず、記録の外から流れ込む Sanitized Weapon(消毒済みの兵器)

戦場では、そういう辿れない代物を“ゴースト”と呼ぶことがあった。

 

「ゴーストか……言い得て妙だな。次を開け」

 

考え込むレナを一瞥した総司令は、事務員に促した。

 

マウスが動き、カーソルが下へ滑る。

 

SITE_ASSIGN(現場の割り当て)》――

 

「施設割り当て資料ですね。建屋番号、担当部署、保安区分……」

 

事務員がファイルを開くと、簡素な施設配置表が画面に並んだ。

 

C棟。

冷蔵区画。

外部搬入口。

仮設管理棟。

搬出ルート――

 

昨夜レナが目にした光景が、今度は無機質な文字列として並んでいる。

 

そのうちの一行で、事務員の指が止まった。

 

「……これ、見てください」

 

壁面ディスプレイに該当箇所が拡大表示される。

 

 

 

――

 

運用区分:外部隔離保管区画

指定用途:一時保管

接続先:D.U. INDUSTRIAL BLOCK-06

保安区分:LEVEL-4

備考:本区画は主開発拠点との直接接続を持たないものとする

 

――

 

 

 

「やはり、切り離し前提の……尻尾切り。まるでトカゲだな」

 

総司令が低く呟いた。

 

「……次、行きます」

 

事務員は《STAFF_ACCESS(スタッフ アクセス)》を開く。

 

ずらりと並ぶ職員ID、アクセス権限、許可区画、承認印。

警備要員の識別番号に紛れ、少数だけ幹部級と思しき項目が浮かび上がっていた。

 

「選任技術者と管理権限者の一覧ですね……。

 

あ……」

 

事務員の声が止まる。

カーソルが、一点に留まった。

 

 

 

――

 

NAME:KISARAGI

ROLE:TECHNICAL SUPERVISOR

ACCESS:COLD STORAGE / TRANSFER CONTROL / DEV-ARCHIVE

AUTH LEVEL:BLACK-3

AFFILIATION:KAISER INDUSTRIES / SPECIAL MATERIALS SECTION

 

――

 

 

 

「キサラギ技術主任……」

 

レナが小さく呟く。

 

その名を聞いた瞬間、総司令の目が細まった。

 

事務員はスクロールを続ける。

技術主任の項目の下には、時系列でアクセス履歴が並んでいた。

 

 

 

――

 

LOG: COLD STORAGE / OPEN TRANSFER CONTROL / APPROVED DEV-ARCHIVE / VIEW INTERNAL MEMO / ACCESS INFRA_PREP / AUTHORIZED

 

――

 

 

 

「……冷蔵区画、搬出管理、開発資料に加えて、内部メモとインフラ準備までアクセスしています」

 

事務員の背後で、総司令が腕を組んだ。

 

「技術主任にしては権限が広すぎる。

ただの技術屋じゃない……プロジェクトリーダーと見ていいだろう。

……コイツはチェックリストに入れておけ。後で会長にも報告する」

 

「了解しました……次、開きます」

 

事務員は一度だけ息を整え、次のフォルダへカーソルを合わせた。

 

INFRA_PREP(インフラ準備)》――

 

「インフラ準備資料ですね。受け入れ先設備……でしょうか?」

 

クリックと同時に、画面上へ複数の設計図面と工程表が展開される。

 

簡素な平面図。

搬入口の動線図。

冷却設備の計算表。

換気系統の一覧。

電力使用量の見積。

 

どれも味気ない数字と記号の羅列だ。

だが、だからこそ異様だった。

 

「マメだな……いかにも企業らしい資料だ」

 

総司令が小さく息を吐きつつ、事務員の左側に立ち、画面へ顔を寄せて流れていく文字列を追った。

 

「……止めろ。それを開け」

 

「は、はい」

 

総司令の指示で、事務員が一枚を拡大する。

 

画面に、搬入施設の平面概略図が表示された。

 

 

 

――

 

受入区画:D.U. INDUSTRIAL BLOCK-06 / PLANT-2

区分:第2冷却搬入室

設備:密閉搬送路/耐圧扉/強制換気設備/温度調整式保管槽

備考:反応性物質搬入時、搬入口封鎖を優先

特記事項:地下区画連結準備中

 

――

 

 

 

「地下区画……?」

 

事務員が思わず読み上げる。

 

総司令の眉間に、深い皺が刻まれた。

 

「連結準備中だと……? 何を作る気だ……」

 

事務員はスクロールを下げ、関連項目を開く。

別窓に表示されたのは、設備増設の工程表だった。

 

 

 

――

 

第二工場 増設計画

Phase-1:冷却区画増設

Phase-2:搬入路拡張

Phase-3:地下収容区画接続

Phase-4:外部遮断隔壁設置

備考:第三段階以降は許可権限者のみ閲覧可

 

――

 

 

 

三人の間の空気が、さらに一段冷えた。

 

「……ただの工場では、ないですね」

 

事務員の声には、はっきりとした緊張が滲んでいた。

 

総司令は事務員から少し離れ、腕を組み直す。

 

「地下収容……外部遮断隔壁……これは……」

 

その言葉が途切れた瞬間――

 

「爆発試験……」

 

レナが、一語だけ落とした。

空気が静まり返り、IOCの喧騒が遠のくように感じる。

 

事務員が顔を上げ、目を瞬かせた。

 

「ば……爆発?」

 

「サーモバリックの特性は?」

 

唐突な問いに、事務員の思考が追いつかない。

喉から曖昧な音だけが漏れる。

 

「ぁ……? ぇ……?」

 

「急激な燃焼による急減圧。

それに伴う衝撃波。

そして、閉所空間での効果増幅……」

 

事務員を横目に、総司令が腕を組んだまま淡々と答えた。

 

レナは頷く。

 

「そうです。……安易に屋外で試せる代物じゃない」

 

呆然としていた事務員は、はっと我に返ったように顔を上げた。

 

「で、ですが! 第二工場はD.U.にあるんですよ……!? 危険すぎます!」

 

「連中には……それでも押し通せるだけの自信があるんだろう」

 

レナの声は低かった。

 

「……いや、違うな。

自信というより、確信か。

規模が規模だ。企業単独で通せる計画じゃない。

何かもっと大きな……パトロンが裏にいる」

 

(キヴォトスで学園は……それ一つで国家のような存在だ。

だが、しかし……違法兵器の所持はリスクが高い。

露見すれば、周囲から総攻撃を受けかねない)

 

総司令は険しい顔のまま、小さく頷いた。

 

「土地の押さえ、設備の搬入、市街地近郊での試験。

そんな狂気を承認できるほどの……」

 

事務員はこめかみに指を当て、唸るように考え込む。

 

「となると対象は限られます……。

学園で言えば、ゲヘナの規模でもなければ……」

 

総司令が即座に否定した。

 

「いや……あの雷帝が、こんな回りくどいことをするとは思えん。

それに奴はもういない。仮にゲヘナが出資者でも、すでに降りているだろう」

 

「で……ではトリニティ?」

 

「淑女に、カイザーと組むメリットがない」

 

「うっ……それでは……大きな権力を持った学園なんて、他に……」

 

三人の間に、再び沈黙が落ちた。

その沈黙は、まるで部屋の温度そのものをゆっくり奪っていくようだった。

 

その重苦しい静寂を断ち切るように、レナが口を開く。

 

「そもそも――学園が関与していない可能性もある……」

 

その一言に、事務員が怪訝そうに顔を上げた。

 

「学園じゃ……ない?」

 

「キヴォトスでは、学園は一つの“国家”みたいなもの――」

 

レナの言葉の途中で、総司令が珍しく目を丸くした。

 

「上級小隊長……国家とは……?」

 

総司令の視線が一瞬だけこちらへ向く。

レナはすぐに言い直した。

 

「は……いえ、失礼しました。

学園はキヴォトスにおける最大規模の権力単位、という意味です」

 

(失念していた。ここは異世界だ……)

 

「結論から言えば……大きなことは、“学園にしかできない”というバイアスが掛かっている」

 

「バイアス?」

 

事務員が眉を寄せる。

レナは画面へ視線を向けたまま、続けた。

 

「学園は大きい。確かに大きいが……。

土地、設備、物流、危険物管理、保安、そして見つかった後の統制、情報の握り潰し、行政導線まで含めて考えれば――

 

この片棒を担ぐには、学園では重すぎる……」

 

一拍。

 

「――だが、D.U.の土地を自由に扱え、”統制権”まで持つ例外が一つだけある」

 

事務員が小さく息を呑んだ。

 

「ま、まさか……」

 

総司令の目が細まり、その名を口にした。

 

「……連邦内部の誰か……」

 

事務員は言葉を失った。

 

「ありえません……取り締まる側が、そんな……」

 

総司令がレナを睨み、その”飛躍した推測”を即座に制した。

 

「上級小隊長……。

それは、あくまで推測の範疇……断定するには情報が無さすぎる。一大事項だ。軽々しく口外はするな」

 

「はっ、心得ております」

 

「……さあ、最後のファイルだ。詮索は後にしろ」

 

総司令の言葉に、事務員は小さく息を呑み、こくりと頷いた。

 

「……了解、しました」

 

指先がわずかに震えている。

その声音には、まだ動揺が残っていた。

 

自分たちのお膝元が違法兵器の製造に関与しているなど、到底、受け入れられる話ではなかった。

 

しかも、それを隠し通せるだけの“何か”が、上にいる。

 

二人が画面に視線を戻した他所に、レナは再び思考を巡らせる。

 

(任務の目的は、裏切り者の炙り出し?……会長は、どこまで知っている……。

連邦も一枚岩ではない、ということか)

 

事務員は一度だけ深呼吸し、マウスを握った。

 

「次……開きます」

 

カーソルが滑り、《PJT_A.N.T.I.O.C.H.(アンティオキア)》に重なる。

 

――クリック音。

 

開いた瞬間、画面は一度だけ暗転した。

続いて、簡素なウィンドウが表示される。

 

 

 

――

 

A.N.T.I.O.C.H.

A()dvanced N()eutralization and T()hermal I()nstability O()bservation for C()hemical H()andling

先進中和・熱不安定性観測化学取扱事業

 

――

 

 

 

事務員がマウスから手を離し、眉をひそめる。

 

「こ……これは……」

 

総司令が吐き捨てるように言った。

 

「……小癪な……カイザーがやりそうなことだ」

 

「完全に外様用ですね……」

 

事務員はマウスを握り直し、 画面中央の項目を開く。

次の瞬間、表示されたのは企業向けの説明資料じみた体裁の文書だった。

 

 

 

――

 

目的: 高反応性化学物質の安定化、保管安全性向上、および熱不安定性観測技術の実証。

 

事業範囲:

・分離保管手法の標準化

・搬送時安全基準の策定

・閉鎖環境下における熱反応挙動観測

・事故発生時の封鎖・換気・中和手順の策定

・関連施設における運用実証

 

事業区分: 産業安全/危険物取扱最適化/地域防災協力

備考: 本事業は公共安全上の観点から、限定情報取扱対象とする。

 

――

 

 

 

事務員の喉が、小さく鳴った。

 

「……綺麗に作ってありますね。

産業安全。危険物最適化。地域防災協力……。これだけ見れば、公共事業にしか見えません」

 

総司令が吐き捨てるように言う。

 

「兵器開発を“地域防災協力”と呼ぶか……カイザーはユーモアに溢れているらしい」

 

レナは画面に浮かび上がる文面を黙って見つめた。

 

安全。

最適化。

協力。

 

並べられた単語は、どれも正しい。

だからこそ、反吐が出るほど性質が悪い。

 

“表”では安全。

“裏”では兵器。

 

息をするように嘘を吐く――

表と裏を付け替える、大人のやり方だった。

 

(どの世界でも……人は変わらない)

 

事務員は、さらにスクロールを続ける。

説明資料の末尾には、添付ファイル一覧と、関連部署コードだけが無機質に並んでいた。

 

 

 

――

 

関連部署: KI / CHEM UNIT

KI / SPECIAL MATERIALS SECTION

KI / LOGISTICS CONTROL

EXT / COORDINATION DESK

 

補足: 本事業は外部協力機関との連携を前提とする。

詳細情報は上位権限者のみ閲覧可。

 

――

 

 

 

事務員の指が止まった。

 

「……外部協力機関……?」

 

総司令が低く言う。

 

「それだ、それを開け」

 

「は、はい」

 

事務員が『EXT / COORDINATION DESK(外部調整窓口)』のリンクをクリックする。

 

開かれたのは、カイザー・インダストリーと「外部協力機関」との間で交わされた、資金移動と許認可に関するログデータだった。

 

 

 

――

 

承認番号:AUTH-EXT-0094

申請元:KAISER INDUSTRIES / SPECIAL MATERIALS SECTION

 

承認先:[REDACTED]

件名:D.U. INDUSTRIAL BLOCK-06 区画転用許可および特別警戒エリア指定

 

備考:予備費区分より予算充当。

 

――

 

 

 

[REDACTED](黒塗り)……」

 

事務員が眉を寄せる。

承認先の名前は全て伏せられていた。

 

「徹底していますね。ですが、D.U.の土地を特別警戒エリアに指定し、しかも予算を引っ張ってこれる所なんて……」

 

「……防衛室」

 

総司令が、噛み殺すような声で零した。

 

「……ッ!」

 

事務員が息を呑む。

 

防衛室といえば、連邦生徒会の行政委員会、その中でもキヴォトスの安全保障を統括する中枢機関――

 

ヴァルキューレの上位組織でもある。

 

「認めたくはないが……該当するのは、そこだけだ。

防衛室長か……或いは、その周りの行政官……。

誰かが手引きしている……バレないようにな」

 

総司令は隣に立つレナへ一歩近寄った。

 

「必要な情報は揃った。私たちはこれを報告書に纏め、暗号文で会長に送る。早ければ今夜には令状が発行されるだろう――。

君は出動の準備を済ませろ」

 

レナはブーツの踵を揃え、敬礼した。

 

「はっ、了解しました」

 

 

こちらは盤上に白を置いた。

だが、一枚だけでは盤面は変わらない――

まだ、黒が残っている。

 

最後の一押しだ。

まだ勝負は付いていない。

 

軍事用語にルビを常時付けるべきか

  • 付けてほしい
  • 初出の一度でいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。