白狼救済録   作:らんらん出荷マン

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第60話 空席

 

 

朝になっても、ユメは帰ってこなかった。

 

生徒会室の中央に並ぶ二つの机のうち、片方だけが昨日から空いたままだった。

ホシノは自分の席には座らず、ユメの机の前に立っていた。机上には二つに裂けた砂祭りのポスターが置かれている。

セロハンテープで繋ぎ直されてはいたが、中央を走る裂け目までは消えていない。

 

昨夜から何度も電話を掛けている。

 

発信。呼び出し――圏外。

 

時間を置いても、日付が変わっても、結果は同じだった。

通話履歴にはユメの名前ばかりが積み重なっていく。

 

ホシノはスマートフォンを伏せ、自分が破ったポスターへ目を落とした。

昨日ホシノが飛び出したあと、一人残されたユメはこれを繋ぎ直してから姿を消した。

 

「……ユメ先輩」

 

返事はない。

 

昨夕のうちなら、どこかへ出掛けているだけだと思えた。頭を冷やせば戻ってくるかもしれない。

いつものように何かを思いつき、その勢いのまま走り出しただけかもしれない。だが、連絡のないまま朝を迎えた。

 

ホシノはスマートフォンをポケットへ押し込み、生徒会室を出た。

 

 

 

――

 

――アビドス高等学校周辺。

 

ガレージに立ち寄った形跡はなく、ハンターカブもランドローバーも昨日と同じ場所に残されていた。

 

ユメは徒歩で出た――。

 

そう当たりを付けたホシノは校舎を離れ、周辺の住宅街へ向かった。使われなくなった道路を辿り、ユメが立ち寄りそうな場所を一つずつ潰していく。

途中で出会った住民にも声を掛けたが、目撃情報は得られなかった。

 

昼前には、捜索範囲は市街地の外まで伸びていた。建物は次第にまばらになり、道路脇に吹き溜まった砂も深くなる。

ホシノは何度も振り返って帰路の目印を確かめながら、アビドス砂漠へ足を踏み入れた。

 

風が強くなったのは、その頃だった。

 

初めは靴の周囲を細い砂が走るだけだった。

それが次第に地面から巻き上がって足首を撫で、遠くの景色を薄茶色に塗り潰していく。

ホシノは目を細め、顔の前へ手をかざした。

 

「……もうちょっとだけ」

 

リュックを下ろし、砂よけのゴーグルと水色のマフラーを取り出す。

ゴーグルを押し当て、マフラーを鼻まで引き上げると、再び風に逆らって歩き出した。

 

数十分も経たないうちに、景色は一変した。振り返るたびに確かめていた建物の輪郭が消え、道路脇の標識も砂煙へ沈んでいく。

数歩進んで振り返れば、足元の靴跡さえ半ば埋もれていた。

 

立ち止まって周囲を見回す。遠方では、巨大な砂嵐が空と地面の境目を呑み込みながら迫っていた。

 

「……そろそろ限界か」

 

呟きは風に掻き消された。

ホシノはしばらくその場から動かなかったが、やがて低く呟いた。

 

「……帰ろう」

 

最後に一度だけ周囲を見回し、足を止めた場所を目に焼き付けてから踵を返した。

 

 

 

――

 

――アビドス高等学校。

 

ホシノが戻る頃には、砂嵐は市街地の外縁まで迫っていた。廃屋の陰で身体の砂を払う。マフラーにも髪にも細かな砂粒が張り付き、口の中までざらついていた。

風に煽られながら校門を潜り、生徒会室の扉を開ける。

 

ユメの席は、朝と変わらず空いたままだった。

 

手掛かり一つ持ち帰れないまま、ホシノはリュックを床へ下ろし、ゴーグルを机の端へ放った。

 

その時、ポケットの中でスマートフォンが震えた。

 

「――ッ!」

 

反射的に取り出し、画面に表示された名前を見た瞬間、指が止まった。

 

[梔子ユメ]

 

迷わず通話ボタンを押す。

 

「ユメ先輩!」

 

『ホ……シ……ちゃ……』

 

耳元へ届いたのは、激しいノイズに削られた声だった。

 

「ユメ先輩!? 聞こえますか!」

 

『ごめ……ね……電波が、うまく……』

 

ザザッ、と耳を刺す雑音が割り込む。

 

『砂漠……砂……嵐に……巻き込……』

 

「今どこですか!? 何が見えます!? 線路でも建物でもいいです!」

 

『……ごめ……何も……見えな……くて……』

 

ノイズの向こうで風が唸っている。ユメの声に重なって、砂が何かを叩く音が断続的に響いた。

 

「コンパスは持ってますよね!? 方角は!」

 

『うん……持っ……てる。で……途中か……道が分か……らなく……って……地図を見……ても、今いる……場所……』

 

方角は分かっても、現在地が分からない。

目印になる建物も道路も砂嵐に呑まれ、どこで進路を外したのかさえ掴めていないのだ。

 

ホシノは机の上へアビドス周辺の地図を引き寄せた。

 

「最後に通った場所はどこですか!? 昨日、学校を出てからどっちへ行きました!?」

 

『昨……は……廃駅……方か……それ……』

 

激しい雑音が声を掻き消した。

 

「ユメ先輩!?」

 

『もし……し……? ……も……もし? ホ……ノちゃ……聞……えな……』

 

「先輩! ユメ先輩!」

 

『あ……ね……私……手帳』

 

「手帳? 先輩、手帳が何ですか!?」

 

『置いて……から……』

 

ザザッ、と大きな雑音がその先を呑み込む。

 

「どこですか!? もう一度!」

 

『……だよ。ホ……ちゃん……も……分か……思……』

 

「聞こえません! ユメ先輩、手帳がどこにあるんですか!」

 

『――――――』

 

返事の代わりに、砂嵐の唸りだけが続く。

 

「ユメ先輩!」

 

『……書い……ある……ら……ちゃんと……読……』

 

途切れていた声が戻った。

 

『昨……は……ごめん……』

 

その一言に重なるように、ノイズが再び膨れ上がる。

 

『ホシノちゃん……私は――』

 

「ユメ先輩? ……ユメ先輩、聞こえますか!?」

 

『――――――』

 

通話が切れた。

 

通話時間の表示が消え、画面には梔子ユメの名前だけが残る。

 

ホシノは、すぐに掛け直す。

 

『お掛けになった電話は――』

 

切る。もう一度。

 

圏外。

 

「……っ」

 

スマートフォンを握り締めたまま、地図へ目を落とす。ユメが残した断片だけでは、捜索範囲を絞り込めない。

窓の外では砂嵐が市街地を覆い始め、まだ昼だというのに空は薄暗く沈んでいた。

 

一人では無理だ。

 

ホシノは通話履歴を開き、別の名前を探した。

 

大上レナ――。

 

以前、三人で大オアシスへ探索に出掛けた。

専門の訓練を受けている彼女なら、捜索の手順も心得ているはずだ。

 

何より、ユメがいなくなったと知れば必ず駆けつけてくれる。

 

発信。

 

呼び出し音だけが続く。

 

「……レナさん、出てください」

 

十数秒待っても応答はない。一度切って掛け直したが、やはり繋がらなかった。

 

ホシノはモモトークを開き、文字を打つ。

 

『レナさん、今大丈夫ですか?』

 

『ユメ先輩が砂漠で遭難しました』

 

『早急に連絡ください。お願いします』

 

三通を送信し、画面を見つめる。

 

 

 

――

 

――

 

「……どうして?」

 

何時間経っても、返信はなかった。三通のメッセージには、既読すら付いていない。

 

ホシノは再び通話ボタンを押した。

 

一回。

二回。

三回。

 

呼び出し音だけが続き、やがて電子音とともに通話が切れる。

 

窓の外では砂嵐が校舎を包み始めていた。窓枠が細かく震え、ガラスに叩きつけられた砂が絶え間なく乾いた音を立てている。

今から一人で砂漠へ戻ることはできない。ならば、レナ本人以外から所在を確かめるしかない。

 

ホシノはSRT特殊学園の代表番号を調べ、電話を掛けた。

数度の呼び出しのあと、事務的な声が応答する。

 

『はい、こちらSRT特殊学園の相談窓口です。ご用件をお伺いします』

 

「あ、あの……アビドス高等学校の小鳥遊ホシノと申します。

大上レナさんと連絡が取れないのですが、彼女が今何をしているかだけでも確認できませんか?」

 

短い沈黙が落ちた。

 

『……大変申し訳ありません。

所属隊員の現在地、任務内容、活動状況については、規則上お答えできません』

 

「緊急なんです!! お願いします!! 生徒が一人、行方不明なんです!」

 

『事情は承知しました。ですが、こちらから回答することはできません。

……代わりに、ヴァルキューレの窓口をご案内できます。いかがなさいますか?』

 

「……お願いします。でも、その前に一つだけ」

 

『はい、何でしょうか?』

 

「連邦生徒会なら、レナさんがどこにいるか……分かりますか?」

 

通話口の向こうで、短くキーを叩く音がした。

 

『連邦生徒会の担当窓口であれば、当方とは別の管理情報を保有している可能性があります。

ただし、回答の可否についてはこちらではお約束できません』

 

「……連絡先を教えてください」

 

『承知しました――』

 

案内された二つの番号をメモし、礼を告げて通話を切る。

間を置かずに連邦生徒会の番号へ掛けると、数度の呼び出しのあと、今度は女性の声が応答した。

 

『はい、お電話ありがとうございます。連邦生徒会総合窓口です』

 

「アビドス高等学校の小鳥遊ホシノと申します。

SRT特殊学園の生徒、大上レナさんについて確認したいことがあります」

 

用件を伝えると、担当者は確認すると告げ、保留音に切り替わった。窓の外では、砂がガラスを擦り続けている。

 

やがて保留音が止まった。

 

『お待たせいたしました。現在、大上レナ隊員は作戦管理下にあります。

当該隊員の所在および状態については回答できません』

 

「作戦管理下……」

 

『はい』

 

「連絡を取ることもできませんか?」

 

『申し訳ありません。当窓口から個人への連絡取次は行っておりません』

 

ホシノはスマートフォンを耳へ押し当てたまま、机上の地図を見つめた。

 

「……分かりました。ありがとうございます」

 

通話を切ると、画面にはレナへ送った三通のメッセージが並んでいた。

 

既読は、まだ付いていない。

 

「……まだ、任務なんだ」

 

小さく呟き、画面を閉じる。待っていても砂嵐は止まらず、その間にもユメは砂漠のどこかにいる。

 

ホシノはヴァルキューレの番号を呼び出し、今度は迷わず発信した。

 

『はい、こちらヴァルキューレ警察学校、生活安全局です。事件ですか? 事故ですか?』

 

「あの、行方不明者の捜索をお願いしたいんです」

 

声がわずかに上擦った。

 

『はい、行方不明者ですね。

落ち着いて、分かる範囲で結構ですので、お名前からお願いします』

 

「梔子ユメ。アビドス高等学校の……生徒会長です。昨日の夕方から帰ってきていません」

 

『最後に姿を確認した場所と時刻は分かりますか?』

 

「昨日、学校です。そのあと一人で出て行ったみたいで……今日、電話がありました」

 

受話器の向こうで、キーを打つ音が速くなる。

 

『ご本人からの連絡があったんですね。通話時刻は分かりますか?』

 

ホシノは履歴を開き、時刻を読み上げた。

 

『内容は?』

 

「砂嵐に巻き込まれていました。コンパスと地図は持っています。

でも、自分が今どこにいるのか分からないって。昨日は廃駅の方へ向かったみたいですけど、その先はノイズで聞き取れませんでした」

 

『目印になる建物、道路、線路などの情報は』

 

「何も見えないって言ってました」

 

少しの沈黙。

 

『承知しました。遭難事案として受理します。

通話記録は消さずに保存してください。こちらでも確認します』

 

「今すぐ探しに行ってもらえますか?」

 

『……現地の気象状況を確認しました。

現在、アビドス市街地外縁では砂嵐が発生しており、砂漠内部への進入には制限が掛かっています。

まず道路、交通記録、それから廃駅周辺で確認を進めます』

 

「それでは間に合いません! ユメ先輩は砂漠の中にいるんですよ!?」

 

思わず声が大きくなる。

 

『はい。ですので、進入可能になり次第、現地捜索も行います。

そのためにも、今ある情報を一つずつ確認させてください』

 

ホシノは唇を噛み、椅子へ腰を下ろした。

 

「……分かりました」

 

『梔子ユメさんの年齢、身長、服装をお願いします』

 

一つずつ答えていく。

 

髪の色。

服装。

持っていた荷物。

普段使っている手帳。

昨日まで学校にいたこと。

車両はすべて校内に残っていること。

 

全てを答え、やがて聞き取りが終わった。

 

『捜索要請を正式に受理しました。

新しい連絡があった場合は、内容にかかわらずすぐこちらへ知らせてください』

 

「……お願いします」

 

『小鳥遊さん、安心して下さい。梔子さんは、私たちが必ず見つけます』

 

通話が切れ、生徒会室には砂の音だけが残った。

 

ホシノはスマートフォンを机へ置き、もう一度地図へ目を落とした。そこにあるのは、昼までに自分が歩いた範囲と、ユメの通信から拾えた断片だけだった。

ペンを置き、窓の外へ目を向ける。砂嵐は校舎の向こうまで覆い尽くしていた。

 

今は、待つしかない。

 

机上のスマートフォンには、レナへ送った三通のメッセージが並んでいる。

時間を置いて何度確かめても、既読が付くことはなかった。

 

 

 

――

 

――前日/旧聖バルバラ要塞・上部観測区画。

 

屋上の一角では、降伏したGAの生徒たちが武装解除され、一か所へ集められていた。

取り上げた銃器は離れた場所へまとめられ、その前にFOX2とFOX3が立っている。

 

「そのまま座ってて。立たないでね」

 

ニコがショットガンを下げたまま告げる。銃口は床へ落としていても、何かあれば即座に動ける間合いだけは崩していない。

座り込んだGAの生徒たちは大人しく、その周囲だけが奇妙なほど静まり返っていた。

 

クルミが、屋上を両断する観測塔の瓦礫へ視線を向けた。

 

「向こうは、大丈夫よね……?」

 

「今は任せるしかないよ」

 

そう答えたニコも、一度だけ瓦礫の向こうへ目を向けた。

崩れた観測塔の反対側では、別の戦いが続いていた。

 

 

 

――

 

――

 

「……ぁぁ……ぁ……さむ……ぃ……」

 

Aegis-2の唇が小刻みに震えていた。

白い制服の脇腹は赤黒く染まり、身体の下では血溜まりが広がり続けている。

 

「しっかりして! い、今血を止めるから!」

 

スイがAegis-2の傍へ膝をつき、腰のポーチから個人用救急キットを引きずり出した。

包装を乱暴に裂き、止血用ガーゼを掴み出す。

 

「隊長が……隊長が刺した……なんで、こんな……!」

 

声が震える。

 

キヴォトスの生徒が、ここまで血を流すことなど普通はない。銃弾を受けても、青痣か擦り傷で済むはずだった。

それが今は、ナイフで深く抉られた傷から、身体の熱ごと血が流れ出している。

 

「と、とにかく押さえよう! メイ! 手伝って!」

 

「分かった……!」

 

メイが盾を放り出してAegis-2の横へ滑り込み、スイから受け取ったガーゼを傷口へ押し当てた。

 

ベチャッ――。

 

「ッ――!? あがッ――!! いだい!! いだい!! やめで!! はなじで!!」

 

Aegis-2の身体が跳ね、喉から絶叫が迸った。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

ガーゼは瞬く間に赤黒く染まり、指の隙間から鮮血が溢れ出す。

 

「押さえて! もっと強く!」

 

「やってる!! でも、止まらない……!!」

 

メイが両手に体重を掛ける。それでも血はガーゼを飽和させ、手首まで赤く濡らしていった。

 

「駄目だ、これじゃ間に合わない……!」

 

その時、瓦礫の上から声が飛んだ。

 

「WOLF3! WOLF4!」

 

ユキノだった。

 

オトギと共に崩れた鉄骨を乗り越えてWOLF側へ降り立つと、Aegis-2の傍へ膝をつき、すぐさまキットから新しいガーゼを引き抜く。

 

「今からガーゼを傷口の奥へ詰め込む。メイ、私が合図したら手を離せ。オトギ、向こうの二人を診ろ!」

 

「りょ……了解!」

 

オトギが、別の場所で倒れているAegis-5と6へ走る。

ユキノはガーゼの端を指に巻き付け、Aegis-2の脇腹を見据えた。

 

「離せ!」

 

メイが手を引いた瞬間、圧迫を失った傷口から血が噴き出した。

 

「ッ!」

 

ユキノは躊躇なく、指ごとガーゼを裂傷の奥へ押し込んだ。

 

グチャッ――!

 

「ぎぃぃやああああぁぁぁぁッ!!!」

 

Aegis-2の身体が弓なりに反り、耳をつんざく悲鳴が上がる。

 

「押さえろ! 暴れさせるな!」

 

スイとメイが肩と脚を押さえ込む。

ユキノは額に汗を浮かべながら、ガーゼをさらに奥へ押し込んでいった。

 

「あぐッ――!! あァああッ――!!」

 

「頑張れ! 耐えろ! このまま血を失えば君は死ぬぞ!」

 

怒鳴るユキノの指先も、血で滑っていた。止血の手順は訓練で叩き込まれている。

それでも、これほどの出血を伴う刺創を実際に処置した経験は、この場の誰にもなかった。

 

「……ッ、これでは足りない! メイ、君のキットからも出せ! 私のも使っていい!」

 

「う、うん!」

 

メイが震える手で自身のポーチを開く。

 

少し離れた場所では、オトギがAegis-5と6の止血に当たっていた。

 

「ちょっと! ねぇ! 見てないで手伝ってよ!」

 

呆然と立ち尽くしていた武装解除済みのAegisたちへ怒鳴る。

 

「え、でも私たちは……」

 

「仲間が死にかけてるんだよ!? 両手空いてるでしょ! ここ、全力で押さえて!」

 

オトギはAegis-6の肩口へガーゼを当て、一人の手を掴んでその上へ押し付けた。

 

「ひぃッ……血が……!」

 

「いいから! そのまま体重掛けて!」

 

血に濡れた手で次の包装を引き裂く。普段の軽さが嘘のように、声は切羽詰まっていた。

 

「手を滑らせないでよ! 絶対に離しちゃ駄目だからね!」

 

「は、はい……!」

 

Aegisの生徒が、言われるまま血に濡れたガーゼを押さえ込む。

オトギはすぐ隣へ膝を滑らせた。Aegis-5の腕からも、まだ出血が続いている。

 

「こっちはCAT(戦闘用止血帯)! 腕、上げて!」

 

制服の袖を捲り上げ、黒い止血帯を上腕へ回す。ベルトを締め、さらにロッドを捻る。

 

「ッ、ああああぁッ!!」

 

「痛いのは分かってる! でも我慢して!」

 

止血帯が緩まないことを確かめ、Aegis-6へ振り返る。

押し当てたガーゼは、既に赤黒く染まっていた。

 

「ああッ! もうッ!」

 

オトギは膝で上腕を圧迫しながら、肩口の深い創へ別のガーゼを押し込んでいく。傷の形は明らかに、刃物で深く穿たれたものだった。

少し離れた場所では、ユキノがまだAegis-2の脇腹へガーゼを詰め続けている。

 

「……なんなの、これ」

 

思わず声が漏れた。

 

 

 

――

 

――

 

屋上のさらに奥で、リノは二人の傍を離れずにいた。

 

床へ横たえられたレナは、目を閉じたまま微動だにしない。白髪には砂埃と血がこびりつき、制服のあちこちが破れている。

右腕は腫れ上がり、呼び掛けても反応はなかった。それでも、胸は僅かに上下している。

 

リノはそれだけを何度も確かめていた。

 

すぐ横には、東雲シヅキが横たわっている。

 

「……さ……ぃ……」

 

腫れた唇が動く。

 

「ご……め……なさ……」

 

焦点の合わない瞳のまま、どこにもいない誰かへ言葉を落とし続けていた。

左脚は不自然な角度に曲がり、顔面は赤黒く腫れ上がっている。リノはその姿を冷たく見下ろした。

 

もう戦う力は残っていない。

 

それだけを確かめると、すぐにレナへ視線を戻す。

 

「隊長……」

 

呼び掛けても、睫毛はピクリとも動かない。

そっと首筋へ指を当てると、脈は弱く、不規則だった。

 

その直後、瓦礫の向こうから複数の足音が近付いてきた。

 

「お待たせしました! 救護騎士団です! 負傷者はどこですか!」

 

ナース服の一団が、崩れた観測塔を乗り越えて屋上へ姿を現す。

全員が大型のメディカルバッグを肩から提げ、折り畳み担架や固定具を抱えている。

 

先頭の騎士長は屋上へ降り立った瞬間、足を止めた。

 

鉄臭さが鼻を突く。灰色のコンクリートには、いくつもの血痕が広がっていた。

 

その目がAegis-2へ向く。

脇腹から溢れた血は制服を染めるだけでは足りず、床にまで大きな染みを作っている。

 

次にAegis-5。

上腕に巻かれた黒い止血帯の先で、血に濡れた腕をオトギが必死に押さえていた。

 

さらにAegis-6。

上腕と肩口、二か所に押し当てられたガーゼは、どちらも赤く染まっている。

 

「い、一体……」

 

後ろにいた救護騎士の一人が、小さく息を呑んだ。

 

銃撃戦の後だ。負傷者がいること自体は想定していた。骨折も打撲も、意識を失った生徒も、これまで何度も見てきた。

だが、これほど血を流した生徒が一度に三人――教本の中にしかなかったはずの光景が、目の前に広がっていた。

 

騎士長は強張りかけた表情を振り払い、屋上全体を見渡した。

 

「重傷者確認!」

 

鋭い声が飛ぶ。

その一声で、立ち尽くしかけていた救護騎士たちの顔つきが変わった。

 

「一班、側腹部創傷の一名! 彼女が最優先です! 二班、上肢外傷の二名! ミネは他の負傷者を確認! 歩ける者は後回し!」

 

「「「「はい、騎士長!」」」」

 

返事と同時に、ナース服の生徒たちが散った。

床へ降ろされたメディカルバッグから、留め具の外れる音が連続する。

 

救護騎士の二人がAegis-2の傍へ滑り込んだ。

 

「現在の処置は!?」

 

ユキノが顔を上げる。

 

「右側腹部に深い刺創! 出血多量! 創内へガーゼを詰めて圧迫中、意識あり!」

 

「分かりました! そのまま押さえていてください!」

 

一人がユキノの手の上から圧迫位置を確かめ、もう一人がAegis-2の顔を覗き込む。

 

「聞こえますか? お名前を言えますか?」

 

「……さむ……い……」

 

震える唇から、か細い声が漏れる。

白かった顔から、さらに血の気が引いていた。

 

「出血性ショック……担架をこちらへ! この子を最優先で下ろします!」

 

毛布が広げられる。

 

「もう十分です! 後は私たちが引き継ぎます!」

 

「……了解」

 

ユキノは短く答えたが、すぐには手を離さなかった。救護騎士が圧迫位置へ両手を重ね、もう一人が止血材と傷口の状態を確認する。

 

「ガーゼが……」

 

傷口を見た救護騎士は一瞬だけ黙り込んだ。

 

「……今抜けば、また出血が始まります。

いいですか? このまま私たちと交代します。手を、ゆっくり離してください」

 

「あ、ああ……任せる」

 

指を一本ずつ浮かせる。

最後の指が離れても新たな血が溢れないことを確かめてから、ユキノは立ち上がった。

 

グローブの元の色も分からないほど、両手が真っ赤に染まっている。

ユキノは黙ったまま、その掌を見つめた。

 

「ユキノ……」

 

呼ばれて顔を上げると、同じく血に塗れたスイがこちらを見ていた。

 

「……大丈夫?」

 

「あぁ……問題ない」

 

答えた声には、いつもの張りがなかった。

ユキノは血に濡れたグローブを握り込み、ゆっくりと指を開く。

 

指先はまだ震えていた。

 

「……」

 

スイは何も言わず、その手から視線を外した。

 

その間にも救護は進む。

Aegis-2は毛布ごと担架へ移され、二人の救護騎士が圧迫を維持したまま瓦礫の向こうへ運び出していく。

別の班はAegis-5と6の止血状態を確かめ、固定具を取り出していた。

 

「この止血帯、何時に巻きました?」

 

オトギが腕時計へ目を落とす。

 

「あー……多分、五分も経ってない」

 

「分かりました。こちらで引き継ぎます」

 

救護騎士が記録を取り、Aegis-5の傍へ膝をつく。

オトギはようやく手を離したが、立ち上がろうとして膝が折れた。

 

「……うわ、やば」

 

自分の両手を見下ろす。

グローブも袖口も、乾きかけた血でまだらに染まっていた。

 

「血って、こんなに出るんだ……」

 

呟きに答える者はいない。

 

銃撃戦なら何度も経験してきた。仲間が撃たれたことも、自分が撃たれたこともある。

それでも、掌に残ったこの生温かな感触だけは初めてだった。

 

 

 

――

 

――

 

折り畳み式の担架がコンクリートの床に広げられ、短い指示が飛び交う。

先ほどまで銃声と怒号に満ちていた屋上は、今や別の慌ただしさに支配されていた。その中を、ミネは足早に残りの重傷者へ向かっていく。

 

「ミネさん! 診てください!」

 

接近に気付いたリノが声を張り上げる。

 

「今行きます!」

 

駆け寄ったミネは、床に横たわる少女を見て足を止めた。

 

「……大上さん?」

 

以前診察した時の面影は、ほとんど残っていなかった。

白髪は埃と血で固まり、制服は裂け、腫れ上がった右腕が力なく床へ投げ出されている。

 

ミネはその場に膝をつき、肩に掛けたメディカルバッグを下ろした。

 

「大上さん、聞こえますか? 大上さん!」

 

肩へ触れかけ、右腕の腫れを見て手を止める。

代わりに首元へ指を当て、呼吸と脈を確かめた。

 

「呼吸あり。脈は弱い……。意識がなくなったのはいつですか?」

 

「戦闘終了直後です。観測塔の崩落に巻き込まれ、一度瓦礫の下に埋まりましたが、その後脱出しています」

 

ミネの手が止まった。

 

「脱出……それは、自力で……?」

 

「はい。その後も複数回被弾しましたが、痛がる素振りを見せず、機械のように交戦を継続しました」

 

ミネは答えず、ペンライトを取り出した。

レナの右目を開いて光を当てると、赤い瞳がわずかに収縮する。反対側も同じで、左右差はない。

だが、光を受けてから瞳孔が縮むまでが明らかに遅い。光を外し、もう一度当てても、反応は鈍いままだった。

 

「対光反射、両側とも著しく低下……」

 

ミネの声が低くなる。

前髪の一部が赤黒く固まっているのを認め、リノへ視線を向けた。

 

「頭部外傷の疑いがあります。不用意に頸部を動かさないでください」

 

レナの顎へ手を添え、気道を確かめる。呼吸は続いているが浅い。

 

「リノさん、頭を動かさないよう支えてください。首もそのままです」

 

「了解」

 

リノがレナの頭部へ両手を添える。

ミネは頸椎カラーを取り出し、位置を合わせながら胸元へ視線を落として――表情を険しくした。

 

制服の隙間から覗く胸元から腹部にかけて、生々しい青痣が広がっている。痣は幾重にも重なり、近距離から弾丸を浴び続けた痕を刻んでいた。

ヘイローの防護があっても、これだけの衝撃を立て続けに受ければ、内部の損傷まで疑わざるを得ない。

 

「……ッ」

 

ミネは唇を噛み締め、カラーを固定した。

 

『眩暈、吐き気、視野の狭窄、反応の遅れ――どれか一つでも出れば、即座に指揮を交代すること』

 

あの時、自分は確かにそう言った。

目の前の少女は、その症状をいくつ抱えたまま戦い続けたのか。

 

「何故、ここまで……」

 

「……ねぇ」

 

リノの背中越しに、メイの声がした。

 

振り返ると、メイがシヅキの傍に膝をついていた。

顔は輪郭が変わるほど腫れ上がり、折れた左脚は不自然な方向へ曲がっている。呼吸は浅く、うわ言を零し続けていた。

 

「……この人も、診てもらえないかな」

 

抑揚のない声だった。

 

リノは無言のままミネへ視線を向ける。

ミネは一度だけ頷き、メイと入れ替わるようにシヅキの傍へ膝をついた。

 

「東雲さん、聞こえますか?」

 

「……ぁ……ご……なさ……ぃ……ご……め……」

 

意味を結ばない謝罪が、腫れた唇から漏れ続けている。

 

「東雲さん、私の声が聞こえますか。目を開けてください」

 

呼び掛けると、シヅキの瞼がわずかに動いた。右目は腫れでほとんど塞がり、左目も焦点が定まらない。

口元には乾き始めた血がこびりつき、頬から顎にかけて紫色の腫れが広がっている。

 

ミネは呼吸を確かめ、口腔内を覗いた。気道を塞ぐほどの出血はない。

首元へ指を当てて脈を数える間も、淡いヘイローの輪郭が不規則に揺らいでいた。

 

「意識レベル低下。顔面に多発外傷……左脚にも明らかな変形があります」

 

折れた脚へ触れないよう白いスカートの裾を避ける。膝周辺は大きく腫れ、下腿は本来の位置から外れていた。

 

「この位置のまま脚を固定します。今は無理に戻さない方がいいでしょう」

 

メディカルバッグから副木を取り出し、慎重に脚を挟み込む。

 

「東雲さん。少し痛みますよ」

 

「……め……ぃ……」

 

シヅキの唇が動いた。数歩後ろにいたメイの肩が、小さく揺れる。

 

「……ごめ……ん……なさ……」

 

「もう……喋らないで」

 

ミネはシヅキの肩へ手を添え、顔を近付けた。

 

「救護騎士団です。これから貴女を運びます。動かないで、そのまま呼吸を続けてください」

 

「……め……ぃ……」

 

掠れた声が、もう一度だけ名前を呼ぶ。

メイは数歩離れた場所に立ったまま、答えなかった。

 

ミネが視線だけを上げる。

 

「担架を一つ、こちらへ! 左脚はこの位置で固定したまま運びます!」

 

「はい!」

 

駆け寄ってきた二人の救護騎士がシヅキの横へ担架を広げ、固定具を追加して、身体を支えながら慎重に移していく。

 

床から離れる寸前、シヅキの指先が小さく宙を掻いた。

 

「……ごめ……」

 

メイの手が僅かに動く。それでも、伸ばさなかった。

 

「……反省してくださいまし。それが貴女の罰ですわ」

 

それだけを返した直後、シヅキの瞼が微かに揺れ、紫の瞳から涙が零れた。

 

「上げますよ!」

 

「「せーのッ!」」

 

担架が持ち上げられ、救護騎士たちが瓦礫の向こうへ運び出していく。

メイはその背中を数秒だけ見送り、やがて視線を落とした。

 

「……ミネさん」

 

リノに呼ばれ、ミネが顔を上げる。

 

「隊長の搬送先はどこですか?」

 

「トリニティの総合病院です。既に搬送車両を手配しています。

頭部と胸腹部に重い損傷が疑われますので、到着後は直ちに詳しい検査が必要です」

 

リノはレナへ目を落とした。胸は浅く上下している。

ミネが処置を始めてから、レナは一度も目を開けていなかった。

 

「少し、本部と連絡を取ります」

 

「ええ。ですが、搬送を遅らせることはできませんよ」

 

「はい、承知しています」

 

リノは立ち上がり、無線機の送信スイッチを押した。

 

「ギャヴェル、こちらWOLF2。応答願います」

 

短い雑音の後、聞き慣れた声が返ってきた。

 

『こちらギャヴェル。WOLF2、状況を報告しろ』

 

「SITREP(状況報告)。東雲シヅキの身柄を確保。屋上の残存GAは武装解除を完了しました。

現在、救護騎士団が負傷者の処置と後送準備を進めています」

 

一瞬、応答が途切れた。

 

『…………首謀者の確保はこちらでもたった今確認したが、一つ聞きたい。

WOLF1ではなく、貴様が報告しているのは何故だ。彼女に何かあったのか?』

 

リノの指が、送信スイッチの上で僅かに強張った。

 

「隊長は現在……重篤です」

 

『何?』

 

「観測塔の崩落に巻き込まれた後も戦闘を継続し、現在は意識不明。頭部外傷、右上肢の損傷、多発打撲が確認されています。

救護騎士団の判断により、トリニティの総合病院へ緊急搬送する予定です」

 

通信の向こうが静まり返った。

 

『……分かった。こちらで搬送車両の通行を確保する』

 

「その前に、一つお願いがあります」

 

『何だ』

 

「SRT総司令部へ連絡を取っていただけませんか」

 

『総司令部へ?』

 

「はい。我々の通信機では直接連絡できません。

WOLF1の負傷状況を報告し、今後の指示を確認していただきたいのです」

 

『……いいだろう。こちらの広域回線から中継する。準備でき次第、必要な情報を送れ』

 

リノは胸元から小型のメモを取り出した。

 

「患者一名。WOLF1、大上レナ。意識なし、自発呼吸あり。観測塔崩落による頭部外傷の疑い。

右上肢に重度損傷、多発打撲。現在、救護騎士団が応急処置中」

 

『復唱する。WOLF1、大上レナ。意識なし、自発呼吸あり。頭部外傷疑い、右上肢重度損傷、多発打撲。間違いないか』

 

「間違いありません」

 

『了解。SRT総司令部へ照会する。回線はこのまま維持しろ』

 

通信が切り替わり、微かな雑音だけが残った。

リノは無線機を下ろさず、その場に立ち続ける。

 

少し離れた壁際では、スイが腰を下ろしていた。膝の横に立て掛けたLMGから、まだ手が離れていない。

メイも盾を傍らに置き、黙ってレナを見つめていた。

 

やがて、無線機が鳴った。

 

『WOLF2、こちらギャヴェル。応答せよ』

 

「こちらWOLF2、どうぞ」

 

『SRT総司令部と連絡が取れた。WOLF1については、航空後送を実施するとのことだ』

 

「……航空後送、ですか?」

 

『そうだ。SRTのヘリを派遣し、医療部へ直接搬送するとのことだ』

 

リノは思わずレナへ目を向けた。

 

『回収まで現地での救命処置を継続し、患者の容体を維持せよ――以上が総司令部からの指示だ』

 

「トリニティの病院ではなく、SRTへ……?」

 

『総司令の直命だ。

航空機には医療担当者も同乗させる。受入れ準備はSRT側で行うそうだ』

 

「……了解しました」

 

『WOLF2。それと、もう一つ』

 

「はい」

 

『総司令部はWOLF1の戦闘終了直前の状況について、関係者の報告を求めている。

ただし、聴取は後だ。今は回収を最優先とする』

 

「……ウィルコ」

 

『回収機のコールサインはMERLIN2-2。到着前に改めて連絡する。ギャヴェル、アウト』

 

通信が切れる。リノは一度だけ目を閉じ、無線機から指を離した。

 

「……ミネさん」

 

「何でしょうか」

 

「搬送先が変更になりました」

 

ミネの手が止まった。

 

「……変更?」

 

「たった今、SRT総司令部から指示がありました。

隊長を空路でSRT医療部へ搬送するとのことです」

 

「……何ですって?」

 

ミネはゆっくりと立ち上がった。

 

「大上さんを、ここから航空機で?」

 

「はい。現在、回収機を手配中です」

 

「待ってください! こちらでは既に搬送車両を準備しています! トリニティの総合病院にも受入れを要請したのですよ!?」

 

「それは……承知しています」

 

「大上さんは意識がなく、頭部外傷も疑われます! 移動の手段だけでなく、搬送先で直ちにどんな処置を受けられるかが重要なんです!」

 

リノは答えられなかった。

 

自分が総司令部へ求めたのは、負傷状況の報告と今後の指示だけだ。

トリニティの病院への搬送を拒んだ覚えはない。

 

「これは……総司令の判断です」

 

「判断の理由を教えていただいても?」

 

ミネの声が硬くなった。

 

「私たちは大上さんを預かっている医療担当者です。

搬送先を変更するのであれば、少なくとも受入れ態勢と搬送中の医療体制を確認させてください」

 

「……航空機には医療担当者が同乗するそうです。SRT医療部でも受入れ準備を進めています」

 

「それだけでは、納得できかねます」

 

「……ですが、総司令の命令を私の判断だけで覆すことはできません」

 

リノの声は静かだった。

 

「搬送先の変更が医学的に適切かどうか、私には判断できません。ですから、必要な情報はすべて確認します。

ミネさんが危険だと判断する状態なら、そのまま総司令部へ報告します」

 

ミネはしばらくリノを見つめていた。

 

「はぁ……分かりました。回収機が到着するまで、私たちの責任で管理します」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「お礼を言う必要はありません。今だけは、私たちの患者ですから」

 

ミネは膝をつき直し、レナの脈を確かめた。

 

 

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