男に戻るためにTS姿でダンジョン配信するのは本末転倒か否か!?   作:赤石アクタ

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第八話 堕ちた先での邂逅

「⋯⋯⋯⋯生きてる」

 

 

 ダンジョンの下層。地べたに大の字になりながら俺はぽつりと呟いた。

 

『加護』をほとんど消費していなかったことと、剣を壁面に突き刺して落下の勢いを落とす作戦が奇跡的に上手くいったことが、生存の秘訣だろうか。

 

 

「⋯⋯いやダメだ、身体痛いわ⋯⋯」

 

 

⋯⋯しかし、しばらく身体は動かせそうになかった。たぶん肩も外れてるし⋯⋯美少女は儚い存在ということだろうか。

 

 早くダンジョン攻略組と合流しなければならないのに、もどかしい限りである。

 

 

「⋯⋯アレスさん、『ボス』って言ってたか⋯⋯」

 

 

 ぼーっとしているだけなのもあれなので、俺は落下する直前にアレスさんが言いかけていた言葉について考えてみる。

 

『ボス』⋯⋯いや、『ダンジョンのボス』だったか。

 

 RPGなどでは当然の存在だが、現実のダンジョンでそのような単語を聞いたことはない。

 

 ダンジョン攻略組はRPGをコンセプトにしたチームなので、何かそういう例えなのだろうか⋯⋯?いや、だとしても何を指す言葉なのか分からない。

 

 体を動かせないのをいい事にどんどんと思考が深くなっていく。

 

 

「⋯⋯総理大臣」

 

 

 ダンジョン攻略組の面々は俺が『目的』とやらを知らないことに焦っていた⋯⋯まぁ国が運営するチームなのだし、説明責任とかが過剰に厳しいのは理解できる。

 

 しかし、だとすればその『目的』は招待メールの時点で説明、せめて仄めかすくらいはしておくべきなのではないだろうか。

 

 ヒマワリさんの発言を思い返してみても、やはりメールの時点で説明をするのが普通といった雰囲気を感じた。

 

 単純な伝達ミスの可能性も当然あるだろう。

 

⋯⋯しかし、これが意図的なものだったとしたら?

 

──その『意図』は、きっと『総理』によって張られたものだろう。

 

 

「⋯⋯ダメだ⋯⋯気持ちが落ち込んでるな⋯⋯」

 

 

 どんどん疑う方向へと思考が捻れていくのを感じ、俺はぶんぶんと頭を振った。煌びやかな銀髪がふわりと舞う。

 

 実際、今の俺はかなりショックを受けていたのだ。

 

 

「決まったと思ったのになぁ⋯⋯」

 

 

 バカでかコウモリを斬り裂いた時の俺は、確かな手応えを感じていた。もうその時点で、これを足がかりにねこまたさんとの関係を改善するという明るい未来予想までしていたのだ。

 

 

「あ゙ぁ〜〜⋯⋯」

 

 

 しかし結果としては、俺は間抜けにも足を踏み外して落下。チームの足を引っ張る形になってしまった。

 

──得られるはずだったねこまたさんの信頼が⋯⋯っ!

 

 俺は割と本気で悔しかった。

 

 

「⋯⋯」

 

 

⋯⋯それに、もっと現実的な問題もある。

 

 

「⋯⋯あと、どれくらい残ってるのかな⋯⋯」

 

 

──ダメージを受けることでも『加護』は減少する。

 

 これは恐らく、防御に『加護』が使用されているためである。

 

 身体能力の向上だけでなく、ダンジョン内では身体は丈夫になり、痛覚も鈍るのだ。

 

 そのため、『本来は大怪我するような攻撃を受けたけど意外と無事』みたいなことは往々に起こりうる。

 

 しかし、それは『加護』の減少⋯⋯つまりは身体能力の低下を招き、さっきまで余裕だったモンスター相手にも苦戦を強いられることとなる。

 

──攻略が長引く程に身体能力は弱体化し、その上『加護』の量は知覚できない。

 

⋯⋯考えれば考えるほど嫌になる仕組みだ、と俺は思った。

 

 

「⋯⋯そろそろ、肩嵌めるか」

 

 

 ぐにゃぐにゃと動きながら肩の関節を戻そうと頑張る。

 

『加護』を知覚できない以上、正確に今の状態を判別することは難しいが、一応しっかり受身は取ったと思うし、身体も問題なく動く。

 

 それに、今回は『ダンジョン攻略組』特権で武器を持ち込んだ分の『加護』が浮いているのだ。

 

 色々勘案した結果、俺は自分がまだ戦えると判断した。

 

 

「⋯⋯いや、戦えるというか──」

 

 

──つんざくような鳴き声。

 

 音の方向を見れば、さっき俺が斬り裂いたのと同種であろうバカでかコウモリが三体、こちらを窺っていた。

 

 

「──戦えなきゃ、死ぬだけだよな」

 

 

 ちょうど肩が綺麗に嵌った俺は剣を握り直し、コウモリへと突っ込む。

 

 

──『加護』は知覚できないと言っても、減少すれば確実に影響が出る。

 

 それは身体能力の低下だったり、食らうダメージの増加だったりと様々だ。

 

──つまり極論、戦っていれば自らのコンディションは体感で把握できる⋯⋯!

 

 

「──はぁッ!!」

 

 

 力いっぱいに剣を振ると、コウモリは先程と同じように真っ二つになった。

 

 

「ははッ!!よしッ!まだ全然戦えるぜ!!」

 

 

 続けざまにもう一体を斬り裂き、魔石を砕く。

 

 最後の一体は既に攻撃の動きへと移っていたが、しかしこれは受けれる⋯⋯ッ!

 

 

「──()ってみろよ雑魚⋯⋯ッ」

 

 

⋯⋯いや、『加護』の残量は分からないのに、どうして俺は『受けれる』なんて確信しているのだろう。

 

 久しぶりに周りを気にせず戦えているからだろうか⋯⋯正直、今の俺はハイになっていると言わざるを得なかった。

 

 全身の血が沸騰しそうなくらいに熱くなり、思わず笑いが零れる。

 

 俺はヤツの攻撃を避ける素振りすら見せず、正確にヤツの魔石を──

 

 

「──ぼんっ」

 

 

──控えめな爆発音。

 

 至近距離で発生したそれの爆風で、俺は吹き飛ばされ地面を転がった。

 

 

「ッ、何だ!?」

 

 

 すぐに身を起こして辺りを見回すと、相対していたラストコウモリの頭部が破裂して辺りに散らばっていた。

 

 

「⋯⋯⋯⋯」

 

 

 そして、そこから少し離れた位置⋯⋯心配そうにこちらを窺う少女が佇んでいる。

 

 少女は一瞬こちらを気にしてから、頭部が破裂したコウモリに迷いなく近づくと、これまた迷いなく破裂箇所へ手を突っ込み、それをまさぐった。

 

 

「んー⋯⋯ん〜⋯⋯?」

 

 

──ぐちゃぐちゃと、不快な音が響く。

 

 

「──ん」

 

 

 しばらくの後、目当てのものを見つけたらしい彼女は腕を引き抜き、そこに握られた『魔石』を身につけていたポーチへと入れた。

 

 手や服についた血液を拭おうとすらせず、彼女はそのまま俺の方へと歩いてくる。

 

 

「他の二体は君が殺したっぽいから、君のもの。私が殺したやつは、もらってもいい?」

 

 

 無表情のままにこちらを見下ろすその少女に、俺は見覚えがあった。

 

 いまいち何を考えているか分からない声のトーンに、ひらひらとした可愛らしいコスチューム。

 

──そして、コウモリを殺したあの爆発。

 

 あれは、正確に言うならば『ステッキから放たれたビーム』だ。

 

 

「魔法、少女⋯⋯」

 

 

 ヒナが提示してくれた四つのダンジョン配信系チャンネル、そのうちの一つ。

 

 

「ん⋯⋯?あ、もしかして君、クーちゃん?」

 

 

──『とび☆きゅる!リリちゃんの魔法少女チャンネル!!』のリリちゃんが、そこに立っていた。

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