「ふふんっどうだい?
これがボクの実力ってやつさ!」
フリーナがそう言って小さな胸を大きく張る。
片付けられたテーブルの上にあるのは、青い王冠を被った巨大なケーキだった。
「その名もプルラジャスティス!」
「美しいだろう?可愛らしいだろう?美味しそうだろう?まるでボクのようだね!」
料理ができないという煽りに対してケーキを持ってくるのは果たして正しいのだろうか?
しかしそう言った疑問を抜きにしてもこのケーキの出来栄えは素晴らしいものである。言うだけはある、そういったレベルだ。
「むふふ、いやぁ随分好き放題言ってくれたよね?
演劇以外何もできないーとか、洗濯とか料理とかできなさそうーとか」
「どうだい!?これがそんな浪費専門の女が作れるものに見えるかい?!」
その結果を武器にフリーナが煽る煽る煽る!両手を広げ小刻みに、素早く、細かなステップを左右に繰り返す。怒涛の煽りだ。
「むふふ、ずいぶん悔しそうだねぇ、後悔したかい?ボクの真の実力を知って!
キミよりも遥か高みにいる存在なんだよ!こ!の!ボ!ク!は!」
煽りのステップそのままにくるくるくるりと踊るように周り、バット両手を広げて覗き込むフリーナ。まるでそのようなダンスがあるかのような動きだ。
無論、そんなダンスは無い。
「わかったら、はい!何を言うべきかわかってるよね!」
そして片手を耳の側につけ『さぁいえすぐいえ今すぐ言え、敗北宣言ぶち撒けろ』と言外に伝えてくるフリーナ。
「さぁさぁさぁ!!!」
完全な勝利者フリーナ、可愛らしい略奪者フリーナ、しかし…
「……ふふん声が小さいなぁ」
「ぇ?」
「ちょ、ちょっと!何でそうなるんだよぉ!
釣り合わないって、そんなことないってば!
ぇ、あ、いやそんな高嶺の花なんかじゃないって、別にボクは…ほら、今は水神もやめて、ただ演劇や演出にこってる料理上手のかわいい女の子だよ!」
「非常にお手軽で、ほらほら、いまだってキミのそばにいるよ?」
先程までの強気は何処へやら煽っていたはずの立場はどこへ?
ぎゅっと手を握ってみたら背中をさすってみたり。
立ち上がってさろうとすれば焦った様子で袖を掴み、妨害する。
「ぅ……いやいやそんな後ろ向きにならないでよ、ほら座って座って切り分けるから…いや、釣り合わないとかそんなことな………」
シンと部屋が静まり返る。
先ほどまで暖かな空間が嘘のようで、フリーナは泣きそうになりながら
「ぁ」
「わ、笑ってるだろキミ!肩が震えてるよ!」
キレた
「『そんな事ない、悲しくて震えてる』だってぇ!嘘をつくんじゃないよ!」
「キミ!キミね!ボクのこと揶揄ってるだろう!絶対そうだ!そうに違いない!」
「ほら!顔を見せてごらんよ!早く!手の端から見えてるんだよ!口角上がってるだろ!!」
ドタバタと騒がしく喧しい部屋の中、涼やかで静かで厳かで、寒々しかった水神の舞台からは遠く離れた部屋の中。
フリーナは幸せだった。
「いやだからさ、その…言うべきことがあるでしょ?」
「水神を辞めてやる事のなくなったボクにさ、キミが、キミだけがいうべき事が!」
「ほら」
「さんはい!」