とある個性の禁書目録   作:とある作者の狂人編集

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歩く教会

 完璧な防御を誇る【歩く教会】。この【歩く教会】の攻略方法は三つある。

 

 一つは、何度も出てきたが、ウィンプルを取ること。もっと言うと服を脱がせれば良い。そうすれば、繊細な柔肌が露出する。エッチだ。しかし、布に直接触れることはできない。衣服の表面に薄い魔術の膜があるのだ。だから、ベストジーニストの個性では解体できない、はず。少なくともそのままでは。

 二つは、魔術的アプローチ。【歩く教会】は絶対的防御力を有している。それは魔術的符号によって成り立っている。これを反転させる魔術をぶつければ、【歩く教会】は効力を失う。とはいえ、一時的なものと推察される。

 

 まぁ上記二つは、欠点がある。それは私が【神の子】と似ている性質を持つからだ。これにより魂は聖人と同じと言える。そこから聖人の力を使える装備があれば力の一部とはいえ、天使の力(テレズマ)を使える。【歩く教会】がなくても、魔術的な膜を作り出せる。つまり、私は歩く教会と聖人の力で二重の防御を誇る。

 

 話を戻そう。【歩く教会】の攻略方法。三つ目は、原作で、「(セント)ジョージのドラゴンでも再来しない限り、破られることはない」、と【歩く教会】の防御力を示す言及がある。聖ジョージのドラゴンとは、聖ジョージによって討伐されたドラゴン。そのブレスは、まぁつまり、当たれば必殺の攻撃だ。全盛期のオールマイトでも放てるかどうかわからない威力の攻撃だ。

 

 何が言いたいかと言うと、エンデヴァーは、ナンバーワンに相応しい。

 

 

 

 ハッと気がつく。一瞬意識を失っていた。上空に打ち上げられ、どこか遠くに行っている。右手の感覚がない。平衡感覚もない。ちらりと見ると、肩から先が消えていた。傷口は焼け切れていた。失血死にはならないだろう。

 服は、【歩く教会】は、魔術的な意味を失っていた。もうほとんどが燃えており、裸同然。まったく少女を裸にしやがって。変質者め。

 

 落下しながら右を向く。遠くで火炎が見える。あれはエンデヴァーだろう。こちらに向かっている。おそらくあの必殺技を若干反らしたのだろう。だから、私は生きている。これだから正義のヒーローは自由じゃない。犯罪者を生きたまま捕らえることを重視する。

 

 そのまま落下しながら、私は心が折れかけていた。

 

 歩く教会は、最高の出来だった。もちろん、聖骸布を直接使った訳ではないし、オリジナルを見たこともない。ただ、レプリカを作った。ほぼオリジナルと同等の魔術的意味を持つ布として。

 しかし、どうも原作『とある魔術の禁書目録』で出てきた【歩く教会】より劣るかもしれない。まぁ、原作でその防御が試されたことは一度もないが。その前に主人公に破壊されている。

 それでも、私の【歩く教会】は最高の出来だった。だから、それを正面からの火力で壊されたため、折れかけていた。

 

 もう、このまま、死んでしまおうか。

 

 このまま捕まれば、私の、最強にならなくてはいけない、という信条が、守られなくなる。もちろん一度や二度破ることで、宗教防壁が崩れることはないが、その状態が続くと、10万3000冊の汚染が流れ込む。

 それは精神の死を意味する。

 それを素直に警察やヒーローに言っても、信じる奴はこの世界にはいないだろう。信じたとしても、私は止められない。

 殺人を止めれば良い。そうすれば、と言われても、それもほぼ宗教観に組み込まれているのがわかっている。宗教防壁の一部だ。

 

 最強を目指すなら、最強の定義を設定しなければならない。最強の定義は、最強を殺すことで証明できる。最強に勝つには現時点での私は生贄が必要だ。この歩く教会も聖人の力を制御する道具(今は歩く教会に組み込まれている布)も、人の死、あるいは死体が必要だ。

 装備品に使う聖骸布とは、聖人の死体を包んだ布のことであり、レプリカ作成で類感魔術を使っても死体は必要。殺人は必須。墓荒らしだけでは良質な死体は手に入らない。つまり、私が最強になるには、魔術を使わないといけない。そして、魔術を使うのに、死体が必要。

 

 だから、殺した。だから、生きてきた。だから、捕まると死ぬ。しかし、最強に挑み続けないといけない。この矛盾。

 

 そもそもどうして生き続けなければならないのか?

 人を殺して生き続ける意味はあるのか?

 他の人はどうか知らないが、自分が生きる意味はない気がする。そう、殺人者に生きる意味はない。例外はあるが。

 なら、諦めて、捕まろうか? 捕まれば死ぬのだ。なら、死のうか。

 

 エンデヴァーが目と鼻の先に来た。手を伸ばしている。その腕に受け止められたら、私は死柄木が言う所の、「ゲームオーバー」。

 それはそれとして、ああ、炎が眩しいな。もう無理だ。頑張れない。

 

 

 

 瞬間、エンデヴァーが急に体を捻った。下から上へ高速の物体が通り過ぎる。エンデヴァーと私は上を見た。そこには

 

 十字架を背負い、槍を突き出し、身体に聖杯の魔力をまとった、脳無だった。

 

「は?」

 

 通り過ぎた脳無は反転した。エンデヴァーへ襲いかかる。エンデヴァーは一瞬、私を見た。落ち続ける私を見た。歩く教会も聖人の力もない私がこの高さから地面に激突すると、肉片になる。犯罪者を捕まえたいエンデヴァーとしては迷うのだろう。

 しかし、エンデヴァーは脳無の対処に切り替えた。対処せざるを得なかった。

 

 脳無は激しい攻撃をエンデヴァーに繰り広げる。奮闘している。エンデヴァーは手こずっている。それもそうだ。神器の力を纏っている脳無だ。さらに、私が魔術的な符号を刻みつけた個体。今までの脳無とは違うだろう。

 そう言えば、脳無に指示を出す機械がない。当然だろう。あの戦いで壊れたはずだ。つまり、今の脳無は暴走状態。制御不可能だ。

 

 しかし、疑問が残る。暴走状態なら、どうして地上で暴れるのでなく、エンデヴァーを狙って襲っているのか。まるで意思があるように。

 

 そんな疑問も落下していく身体には、意味のないこと。頭の方が重いため、ゆっくりと頭から落ちていく。そのまま死んでいくのだろう。

 

 そう、それでいいのかも、しれない。

 

 

 

 金切り声がした。上を向く。脳無が向かってくる。エンデヴァーに燃やされながら、やってくる。

 え、と思うと、体当たりされた。ぐふっ。……結構いいの入った。

 しかし、すぐに脳無は私を肩に抱えた。いつも移動する時にそうするように私を肩に乗せた。

 

 そのまま、地上に到着。陥没する地面。脳無はすぐに走る。エンデヴァーが上空から迫る。しかし、躊躇っている。私がいるから火炎を出せない。死んでしまうから。

 脳無を見る。所々、炭や灰になっている。脚も走っているがボロボロと崩れていっている。

 エンデヴァーが追いつく。集約した炎で脳無の脚を焼き切った。脳無が私を腕で抱える。慣性の法則で引きずられるように転がり、ビルを突き抜け、瓦礫の間に止まる。

 

 脳無の自動再生が完了した。槍を持って立ち上がり、エンデヴァーへと向かう。私は何がなんやら分からず、呆然とする。

 

 金切り声が、私の胸を打つ。私は立ち上がって、瓦礫の陰から脳無とエンデヴァーの戦いを見る。十字架は半壊、聖杯の魔力も減衰、槍も溶けかけている。圧倒的に消化試合。

 それでも抵抗する脳無。

 

 その姿勢が、なぜか、私の中の炎を焚いた。

 

 私は重い脚を動かし、引きずりながら、踵を返した。もう二度と、振り返らないようにと、たとえ振り返っても、あの脳無を思い出すようにしようと、足を引きずった。

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 またかよ、と私は思った。また負けた、と。

 

 負けは敗者を示す。敗者は勝利から最も遠い。勝利から遠いのは、最強とは言えない。

 しかし、私は知っている。

 

 勝つ弱者がいるのだ。弱い人間がドラゴンと戦い勝利する。弱い人間が鬼を倒す。そんなおとぎ話。空想と思うなかれ。たとえそれが空想でも、確かに弱者を勝利へと導きたいという想いは魔術的な意味を持つ。

 そして、その裏で、敗北する強者がいる。退治されるドラゴン。正される秩序。信賞必罰。そこから発想を転換したら、最強は敗北を経験している。魔術とは所謂こじつけだ。

 

 だから、私の宗教防壁は崩れない。なぜなら、逃げられているからだ。リベンジできるからだ。生死の狭間で、ただのスポーツではない状況で、生き残っている。それが、敗北を意味しても、最強を否定しない。

 

 私は廃墟に身を隠していた。神野からはだいぶ離れたと思う。何とか、回復魔術を行使できた。右腕が治った。結果的に五体満足なら、問題なし。身体は重いが、動けるなら、やることは多い。

 時々、ヒーローが近くに来るが、ルーンを至る所に刻んだこのビルで、見つかるはずもないし、見つかっても負ける可能性はない。簡単に逃げられるようになっている。

 

 意外と人の居住区や市街地が近く、ソッと窃盗やサッと軽い殺人やらで着々と準備を整えた。

 いつものシスター服に着替えた私は、これからの計画を練っていた。ついでに、場所と日時が最適だったので、急いで歩く教会を作ることができた。完成度は少し低いが、ほとんど誤差だろう。

 

(とりあえず、とむらと合流するのは先にした方が良い。連携したい)

 

 しかし、どこにいるのか不明。探索方法が必要だ。

 ダウジングは下にあるものを察知できる。ある程度便利だ。手軽さが半端ない。しかし、狭い範囲でしか調べられない。的中する確率が低い。など不便な面もある。

 

(……仕方ない。()()するか)

 

 私は材料を集めることにした。

 

 

 

 占い。当たるも八卦当たらぬも八卦。つまり、確実度は低い。広範囲を探せるが、代償が重い。

 代償。ここの場合は、生贄。適切な数の生贄と殺すタイミング、日時によって成功と失敗を行き来する。

 ダウジングは魔力なしでもできる。正確には、探したい物に宿っている魔力を使っている。逆探みたいな感じ。

 占いは魔術。魔力を使う魔術。もちろん面倒臭い手続きや多額の支払額、最悪借金もするかもしれない。星座占いや手相占い、八卦。色々占い方法はあるが、私が今回適切だと思う占いは、悪魔を呼ぶことで占いをする方法。悪魔召喚だ。

 

 予知レベルの占いは、難易度が高い。

 

 だが、やるしかない。このままでは私は最強に至れない。一人で最強になるのが難しいなら、仲間の協力の元、最強になればよい。それにはまず仲間に会いに行かなければならない。

 

 下準備自体は簡単。占いを発動させる日時を決めて、それに適した場所や高さに壁や床へ血の魔法陣を選択して配置。今回の場合は、大規模になるので、私が現在潜伏している都市の十分の一範囲。

 

 その各場所で、贄を適切な日時とタイミングで用意する。少しでも間違えば、しっぺ返しが来る。あまりやりたくない。

 けれど、このままではヒーローにぶつかっては破れ、ぶつかっては破れを繰り返すだけ。流石に学習した。もう浅はかなことはいたしません。

 

 とはいえ、やることは変わらない。殺人だ。生贄として家畜を指定しないといけない時もある。が、今年は家畜の指定が少ない。人間限定のものが多すぎる。

 

 という訳で、絶賛世間を賑わせている、快楽殺人犯ヴィランことインデックスちゃんが誕生した訳である。

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 夜。私ことインデックスは目隠しと神隠しのルーンで街を駆け、 一般人を殺した。

 

「よいしょっと……次は、反対側の川沿いっと」

 

 生贄を路地裏で葬り、血の魔法陣を描き終えた。次は走って、街の反対側へと行かなければならない。パトカーの音が煩い。

 

「まぁ、生贄は人間であれば良いって言うのが助かるんだよ。誰でもいいっていうのが」

 

 完全記憶能力はメモを必要としない。計画を立てた手順を記憶しているからだ。

 

「さて、急いだ方がいいかも」

 

 聖人の力で駆けた。

 

 街々の光が、衝撃波が出ない程度の速度で後ろへ流れる。光の川みたく綺麗だ。川沿いに着く。おや、と思った。三人いる。しかし、ここでの生贄は一人のみ。三人も殺すと占いが正しく発動しない。面倒臭い。

 後ろから付ける。三人は会話こそ少ないが、仲間らしい。友達かもしれない。仲の良さが見られる。おそらく互いが互いの大事な人なのだろう。

 

 一人の人間に着目する。会話から鳥嘴のマスクを着けているトウヤと呼ばれている男。こいつが一番殺しやすいと思った。私はナイフを逆手に持って、頸動脈を狙う。ちょっとズレて肩を刺した。失敗。

 ちょっと遠ざかる。トウヤは蹲った。三人は警戒態勢になる。オヤッと思った。すぐに逃げ出すかと思ったが、臨戦態勢になった。トウヤを背後に庇って、スキンヘッドのユウと、何だか狂気的な容貌のソラミツがこちらを伺っている。

 道は狭い通路。回り込んでトウヤの元に行くことはできない。

 

 では、こちらを伺う二人のどちらかにターゲットを変更すれば良い、と思う者もいるが、そうは問屋が卸さない。

 トウヤはすでに血を流している。地面に血が飛び散ったかもしれない。血も魔術の触媒だ。今回は一人の人間のみが対象であり、他の血が混ざると、占い魔術は成功しない。やはりトウヤを殺すしかない。

 

 と、考えているとスキンヘッドが輝く宝石を身体にまとわりつかせ、こちらにタックルしてきた。逃げ場は上と後ろのみ。私は上空に跳んだ。排気管を蹴ってトウヤへと落下。排気管が凹む音がする。

 

「上だ!」

 

 スキンヘッドの叫びでトウヤが上を見る。今度は顔を刺そう。ナイフを掲げる。振り上げる。が、

 

「ん?」

 

 ナイフが消えた。逆にトウヤの手にナイフが出現し、間髪入れずに横薙ぎ。そのまま受ける。腕を掴まれる。神隠しと目隠しのルーンは発動している。勘で捕まえたのだろう。すごい。

 

「ここだ! ソラミツ! 食え!」

 

 大口が迫った。私は避けずに受け止める。歯が腕を噛む。しかし、食い千切る程ではない。力を入れているようだが、噛み切れないようだ。歩く教会こそ強い。

 私は腕を持ち上げ、この狂気的な奴を投げる。トウヤの後ろに転がる。ルーン文字カードを取り出す。風と剣のルーン。トウヤの首をはねた。血の噴水。トウヤが倒れた。さっきは三人とも首を刎ねる可能性があったため使わなかったが、やはりルーンは便利だ。

 さて、魔法陣を描こう。血溜まりの血を指に取る。壁に魔法陣を描く。宝石野郎に体当たりされた。

 

「ダチの敵!」

 

 殴られた。聖人の力で踏ん張る。邪魔だな。腕を掴み、背負投。川へと投げる。狂気的なやつの大口が迫る。が、聖人の力で、川へと投げる。急いで血の魔法陣を描く。描き終わったので、残りの二人の元へ。川。開けた場所。人が幾人がいる。私は川に氷のルーンをばら撒いた。二人はしばらく動けないだろう。

 次の場所へ。

 

 と思ったが、氷が砕ける音。二人が跳んでくる。私はこの二人を殺せない。なぜなら、この場での生贄は一人のみ。それ以上殺しては魔術が発動しない。

 しかし、このまま生かしていると先程殺した死体を運ばれる可能性がある。わずかの移動なら、大丈夫だが、別の場所に移されたらやばい。

 また、パトカーの音がした。救急車の音もする。他に用意した生贄も救急車で運ばれる可能性があった。つまり、早めに解決しないといけない。

 

 つまり、この二人を、短い時間で行動不能にしなければならない。それも血を流さずに。

 

 二つの小さな十字架を取り出す。

 

「シモンは『神の子』の十字架を背負う」

 

 二人はこの都市にいる全ての人の荷物を肩代わりして、地面に倒れた。顔だけこちらに向けてくる。私は姿が見えないはず。

 

「どこに、いる……っ! 出て、こい……っ!」

 

 無視して、次の生贄場所に向かう。

 

 

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