とある個性の禁書目録 作:とある作者の狂人編集
贄は捧げられた。数日間の殺人現場の構築。警察もヒーローもいた中での作業は疲れた。まぁ、消える魔術があったのは強いし、街のため人混みに紛れられる。背も低いからより人混みに紛れられた。思ったより人は少なかった。最近治安が悪いからだろう。外出を控えているのかもしれない。誰のせいだろう?
各所に配置した生贄、所謂死体の周囲には人払いのルーンを刻んでいる。そのため、簡単には死体が発見されないだろう。しかし、ルーンも完璧ではない、魔術抵抗性が強い人もいるので、発見される可能性は十分あった。しかし、今の所、問題はなさそうである。
廃墟を中心とする強大な魔法陣。都市を丸ごと包むように各所に設置した祭壇。そのさらに中心の悪魔の神殿。そこに魔力を流して、悪魔召喚を行う。
召喚する悪魔は、オロバス。『ゴエティア』の55番目の悪魔。また、『悪魔の偽王国』の58番目の悪魔。馬の姿をしており、召喚者の指示で人の姿になって人語を解するようになる。つまり、最初に人の姿にしなければならない。馬の言葉は私にはわからない。
しかし、今回の悪魔召喚の魔術では制限がある。それは、指示できる内容は一つだけ、というもの。つまり、人間の姿にするとそれだけで魔術が終了する。
そういえば以前、この魔術を「占い」と言った。ここまでの話を知ると、今回の魔術は『悪魔召喚の魔術』と思いがちだ。しかし、これは〈占い〉である。【悪魔占い】だ。こっくりさんと同じ。
大規模な生贄と魔法陣を準備させた理由は、召喚する悪魔を限定するためだ。確実にヴィラン連合の位置を特定したい。だから、嘘をつかない誠実さと未来の知識を持つ悪魔が必要だった。
もちろん、召喚した後は魔界に送り返さないといけない。そうしないと、悪魔は解放されて、世界に災いを齎すだろう。殺したりしたら、殺した者が呪われる。どういった呪いかは知らない。災いもどういったものかは知らない。
全ての準備が整った。立ち上がって、手の平を魔法陣に伸ばす。そして、唱える。
「Eloim, Essaim, frugativi et appellavi!」
魔力が魔法陣から溢れる。膨大な魔力。混沌とした魔力の放出に腕で目元を庇う。目を閉じる。一際大きく魔力風が吹き、風が止む。目を開ける。そこには馬がいた。黒い馬。
「ヴィラン連合がいる場所へ私を連れて行くんだよ」
馬の姿のオロバスは頷いた。私は馬の背中に乗った。馬は駆け出した。
馬は地面を駆ける。空は飛べないようだ。飛翔のルーンを発動しようとしたが、キャンセルされた。人々の間を抜ける。多くの人がギョッとしている。目隠しと神隠しのルーンが発動していない。悪魔が放つ魔術かもしれない。自動的に魔術をキャンセルする魔術が発動しているようだ。私はナイフを取り出し、指に傷を入れる。血が出た。【歩く教会】の効果が出ていない。
ちょっとこれは予想外だった。10万3000冊には載っていない内容だ。もしかして悪魔全員が反転術式を自動で発動するのだろうか?
そのまま駆けていくと、ヒーローが通せんぼ。
「ヴィラン、インデックス! お前はいかせ━━━━」
馬はヒーローの顔面を足場にして集団を飛び越えた。その向こうには警察が規制線を張っていた。パトカーが多い。地面にタイヤ潰しするスティンガースパイクシステムが構築されている。対犯罪者用の迎撃銃を備えている。この短時間でそれができるのか?
「やはりいたか! ヴィラン、インデックス!」
どうやらどこかでミスをしたらしい。場所がバレていたようだ。
オロバスが飛び越える。かなりの跳躍。警察は驚いて見上げる。銃を撃っている。頬を掠める。血が出る。オロバスも防御できないのか、嘶いて痛みを告げる。しかし、足を止めない。こういう所、召喚者に誠実というのだろうか。
そのまま、馬が出せるとは思えない速度で走った。車やヒーロー達は追いつけない。そのまま、街を去った。
山を抜けると、資材置き場のような場所が見えてきた。そこへ飛び込む。誰かが、屋根にいたが、それを踏み抜く。屋根に穴が空き、着地。突っ込んできたマグネとよくわからない鳥嘴の男の間に着地。鳥嘴の男が馬の姿のオロバスに触れる。オロバスがボコボコボコと内側から弾けた。肉片が飛び散った。悪魔オロバスは死んだ。
そう、悪魔が死んだ。あーあ、死んじゃった。呪いが来る。殺したやつに呪いが来る。どんな呪いかは不明だが。
私は尻餅をついた。いててて、と立ち上がる。肉片を払って、辺りを見る。ヴィラン連合と鳥嘴の集団が睨み合っている。マグネも尻餅していて、起き上がる様子はない。鳥嘴のリーダーっぽい人は蕁麻疹が出て距離を取った。私は立ち上がった。
「インデックスちゃん!?」
ヒミコが抱きついてきた。グフッ! ……腹にいいのが入った。まぁ、美少女に抱きつかれたので、問題なし。マグネも笑顔で抱きつく。強く抱きしめられた。ヒミコともども苦しい。……しかし、ふむ。悪くないね。
「お前は……インデックスだな」
鳥嘴のリーダーらしき人が距離を取って警戒している。何とかマグネから抜け出す。ヒミコは腰にぶら下がったまま。顔面を押さえる。ちゅうちゅうしようとするから鬱陶しい。
「そうなんだよ。あなたは?」
「そいつは、八斎會所属、オーバーホール、治崎廻だ。お前も先生から写真を見せられただろ?」
「とむら!」
私は久しぶりのリーダーに喜びを表す。死柄木は溜息を吐く。
「お前は、……本当に、規格外だよ」
「それほどでもないかも?」
「まんざらでもなさそうな顔をするな。ほめてない」
「そっちだけで話を進めるな」
治崎がイライラしたように声を出した。私は面倒臭そうな顔をする。それがよりいっそう治崎を苛立てているようだ。仲良くなれなさそうだ。
「そうよ! あなたを殴らないと気がすまないわ!」
マグネが吶喊しようとした。が、私が手で制す。
「マグねぇ。接近戦はこちらが不利なんだよ」
「え?」
治崎が眉を動かす。私は解説する。悪魔の肉片を見た。
「今、散らばっているのは、〈生き物〉なんだよ。先程、ちさきが触れただけで破裂したんだよ」
正確には悪魔だが、生贄によって血肉を得た悪魔でもある。間違ってはいない。
意味を理解すると、マグネが顔を青ざめた。治崎は溜息。死柄木が怒りの目をしている。
「なぁ、オーバーホール。マグネを殺そうとしただろ?」
「そちらが先にしかけた。自己防衛だろ?」
「でも、殺した。インデックスの馬の落とし前、どうしてくれんだ?」
「馬ぐらいでわめくな」
「おいおい、こっちは仲間を殺されかけたんだぜ? その上、ペットを殺された。殺されたって、文句はないだろ?」
「……ちっ、真」
「はっ。……『インデックス、あなたはこの写真の男を殺しましたね』?」
写真を見せられた。黄色い髪の目付きの悪い人。鳥嘴のマスクをしている。【完全記憶能力】を所持している私は生贄に捧げた男だと判断した。
「『うん、殺したんだよ』」
「こいつは、八斎會のメンバーだ。つまり、先に殺したのは、そっちだ。どうだ? それよりもっと建設的な会話をしよう。グダグダ言うな」
まぁ馬は悪魔であって、仲間ではない。イーブンも何もない。こちらが得をしている。言う必要もないが。
しかし、先ほどは口が勝手に動いた。何かの個性だろう。攻撃ではないので、【歩く教会】で防げなかったようだ。
死柄木は治崎を睨んでいる
「……」
「先程も言ったが、冷静になれ。今のお前達では、組織を拡大することはできない。ヴィジョンもない。ただ暴れたいだけだ」
「だから、あなた達には与しないわ!」
「マグネ」
マグネが怒りを見せるが、死柄木が声で止める。マグネが黙る。
「……考えさせてくれ」
「ちょ、弔くん!?」
「弔!?」
「……じゃあ、また来る」
死穢八斎會は立ち去った。ヒミコとマグネが死柄木に抗議する。色々言うが、おちつけ、と死柄木は言った。
「あの場で戦っても、おそらく俺達が勝った。しかし、相手の個性がわからない中で、戦うと誰かは死ぬ。それでよかったのか?」
「だけど……」
「あいつらもバカじゃない。おそらく俺達に勝つ算段があって、来たんだ。それを覆すだけの戦力が俺らにはあるがな」
全員が私を見た。私は照れる。
「だが、こいつでも人間だ。どこかに隙が生まれる。100%勝てる状況ではなかった。……そもそもこいつはほとんど負けている」
「それは余計なんだよ!」
「100%無傷でいられるかわからなかった。ヒーロー達と戦わないと行けないのに、あんなやつらにそんな博打をやる必要はない」
全員が黙る。私は感動した。死柄木が、いや、弔が悪のカリスマを持ち始めていた。冷静に状況を見て、感情に流されず、判断をした。AFOを思い出した。
大人になったんだね、と私は笑顔になる。
「それよりインデックス。お前は今までやりすぎだ」
「? 何が?」
「雄英に侵入したと思えば捕まって、かと思えば、輸送中に脱走して、どこに行ったかと思えば今度は先生を倒したオールマイトと戦って撤退させ、その後またエンデヴァーと戦った。……バカなの?」
「ば、バカって! バカって言った方がバカなんだよ!」
無視された。弔はあいかわらず顔に手を付けていた。感情はわかりづらい。しかし、どこか微笑んでいるようだった。
「そっちが、黒霧をよこさなかったから悪いんだよ!」
「黒霧には別の用事を頼んだ。手が離せない」
「それなら、しかたないけど……」
ヒミコが間に入る。
「まぁまぁ、インデックスちゃん。弔くんも心配してたんです」
「ヒミコ……」
「俺は心配してない」
「とむら! そこは嘘でも心配してたって言うべきなんだよ!」
弔は溜息。
「で、どうしますか? 死柄木弔」
コンプレスがコンテナから降りて訊く。両腕で仮面の位置をなおしている。弔は少し考えるように目を瞑る。
「とりあえず、今日は解散だ。また後日連絡する」
「弔くん、インデックスちゃんはどうするの?」
「お前が世話しろ」
「やった!」
「私もついていくわ!」
弔の台詞にマグネが元気よく挙手した。弔は溜息。
「……ヒーローや警察にバレなければいい」
「そ、それよりさ。……トゥワイスが珍しく大人しいんだよ」
全員がトゥワイスを見た。トゥワイスは頭を垂れていた。
「すまねぇ。あいつをここに呼んでしまった。呼んでねぇよ。俺のせいだ。いや、お前達のせいだ」
「あ、いつも通りのトゥワイスで少し安心したんだよ」
しかし、トゥワイスは膝をついでうなだれる。頭を抱える。話はわかったが、結構落ち込んでいる。トゥワイスらしくない。
「もしインデックスが来てなけりゃ、マグ姉は殺されていたかもしれねぇ。いや、不死身だ。俺達も無事ではなかったかもしれない。楽勝だったよな」
「トゥワイス」
弔がトゥワイスを見た。トゥワイスは顔を上げた。
「確かにお前の不注意であいつを呼んでしまったのは事実だ」
「……」
「だがな、俺達は情報を得た」
「情報?」
「ええ、ヴィラン連合に八斎會が接触した。つまり、八斎會は何か計画を立てている。そう考えるのが自然です。ですよね、死柄木弔」
コンプレスが、弔とトゥワイスを見た。ヒミコはよくわかっていない様子。マグネがなるほど、と手を打つ。
「つまり、あたしたちは、それを傍観するか、協力するか、邪魔するか、選べるって訳ね」
「そうだ。続きは、次の集まりで話そう」
とりあえず、と弔が私を見る。じっと見る。私は何か言いたそうな弔に頭を下げた。
「AFOを助けられず、ごめんなさい」
「…………先生は……死ぬ事自体を嫌っていた訳じゃない、と思う。覚悟していたはずだ。俺は先生の意志を継ぐだけだ。その覚悟ができた」
「……ありがとう」
「それに……たぶんだが、生きてる」
「え」
それより、と弔。
「お前は携帯を買え。今の段階では連絡手段がないだろ」
「……うん!」
「私と一緒に買いましょうねぇ、インデックスちゃん!」
「あたしも可愛いの選んであげるわ!」
私は眉を寄せた。
「それは嬉しいんだけど、私、顔がネットに上がっているんだよ? それにニュースでもカメラを回してたし。たくさんの人のヘイトを稼ぎまくっているんだよ? 携帯なんて買えるの?」
「ああ、あの趣味の悪い放送か」
「ニュースは途中で放送禁止になりましたよ。動画投稿サイトにはありましたが」
コンプレスの台詞で私は眉をしかめた。
「なんでも、あまりにも酷い光景のため、伏せたとのことです」
なるほど、神器の完成度が低かったのはそのためか。民衆が見守る中、聖人を模した人間が死ぬ瞬間を見せれば、誰もが聖書の再現だとわかる。多くの人が超人たる
しかし、それは達成できなかったようだ。……時間があればテレビ局を乗っ取ろう。言ったからね。殺しに行くって。
弔が首を傾げる。
「しかし、何であんな回りくどいことをしたんだ?」
「私が使うのは魔術なんだよ」
「それは聞いた」
「魔術はたいへんに面倒臭い手続きを得なければ、発動や維持ができないものなんだよ」
「それで、あんなことをしたわけか。魔術って不便だな」
「その代わり、色々な現象が起こせるんだよ」
「でも、お前さぁ、何回もやられてんじゃん」
「グフッ」
「ちょっと弔くん! インデックスちゃんをいじめちゃダメですよ!」
「まぁ、いい。その話も今度にしよう。じゃあ」
弔が立ち去った。コンプレスもトゥワイスも、またな、という感じで出ていった。残った私とヒミコとマグネは一緒に出た。
「あたしが住んでいる所に行きましょ。三人くらいなら余裕だから」
「賛成ぇ~。私の隠れ家は狭いですから」
「へぇ~。みんな、どこに住んでるの? 森の中?」
「そんな訳ないでしょ。家よ家。電気水道もあるわよ」
私は目を丸くした。
「自分の家?」
「ええ、義爛から買い取ったのよ。携帯もよ」
「屋根付き?」
「……あなた、今までどこにいたのよ?」
「優しいおばあちゃんを殺して家に居座ったり、廃墟を要塞化して住んだり、森で寝泊まりしたこともあるんだよ」
二人から無言でやさしく抱きしめられた。
「まずは、お風呂ね」
「? 清潔の魔術は機能しているんだよ? 臭いもないはず」
「インデックスちゃん、気持ちの問題ですよ?」
そうして、マグネの家へと辿り着いたのである。
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ありがとうございます
本作は独自設定が濃ゆい上に、意味不明な解説が多いです
にもかかわらず、ついてきている猛者に感激しております
感想も読ませてもらっています。毎回読み直してニヤニヤしております
返信をしない理由は、変なことを言って、相手を傷つけてしまうのをおそれているからです
ご了承下さい