とある個性の禁書目録   作:とある作者の狂人編集

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フードコート

「ねぇねぇ! インデックスちゃん! これかわいくないですか! ね、ね、かわいいでしょ! これにしよ!」

「う、うん。ひみこ、ちょっとテンション高いかも……」

「えー、それよりこっちの方がインデックスに向いてると思わよ」

「それも着ないんだよ、マグねぇ」

「どうしてぇ?」

「肌面積が広いからなんだよ」

 

 私達はショッピングモールにいた。もちろんお尋ね者なので、変装をして。

 私は【歩く教会】を下に着込んでいる。カツラでウィンプルを隠し、袖と裾は折りたたんで、服の内ポケットに入れ込んでいる。内ポケットは私が市販の服に追加した。

 現在、緩いジーンズと、フード付き灰色のパーカーを着ている。あと、大きめのリュックを背負う。おばあちゃんと一緒に外出する時と同じだった。

 

 ヒミコは制服なのは変わらないが、黒い清楚系のもの。髪も洗えば落ちる黒の髪染め。頭のお団子も今はポニーテールにしている。でも、清楚っぽくない。ギャルっぽい雰囲気になっている。

 マグネは女性用のスーツ。普段のオネエ口調はそのままだが、髪も整えて、できるビジネスウーマンっぽい。ガタイはよいが。

 

 携帯、もといスマートフォンを買いに来て、義爛からもらった偽名で購入。裏社会のSNSで連絡を取り合うことができるらしい。

 

(しかし、スマートフォンか……)

 

 私の前世では、スマートフォンは一部の人間しか持っていなかった。今世の私もスマートフォンを所持したことはない。よって、操作がわからない。

 説明書は全て覚えたが、アプリ? とかの説明が少ししか書いていない。SNSはパソコンでなら前世でも孤児院でも扱ったことがあるけど、スマートフォンではなかなか勝手が違う。画面をタッチするだけで操作できると言うが、よく分からない。

 しばらくは誰かに教えてもらうしかなさそうだ。

 

 ちらりと見ると、スパイダーマンの覆面があった。この世界にもスパイダーマンがあるのだと知った。この世界は前世と同じような、そうでもないような感じだ。世界について研究してみると面白いかもしれない。あるいは、この世界は私の前世の未来かもしれない。

 個性とかいう不思議な現象があったから、別世界だと思ったが、ちょっと調べてみよう。

 

「ねぇねぇ! そろそろお腹すきませんか? 空きますよね?」

「そうねぇ、それじゃ、フードコートでも行きましょうか」

「ふーどこーと?」

 

 え、という顔をされた。

 

「インデックスちゃん、来たことないの!?」

「現代っ子としては、珍しいわね」

「……そんな常識的な場所なの?」

「うん。特にインデックスちゃんが、好きそうな場所だよ!」

 

 私が好きそうな場所。どういった所?

 ヒミコに手を引かれながら進むと、良い香りがする。辿り着いたのは、理想郷だった。

 

「え、ここって食事をする場所?」

「そうよ。食事を提供するお店が集まっているのよ」

「で、でも、お金が……」

 

 こんな場所で食事ができなければ生殺しだ。さらに、お金があっても、あれにすればよかったこれにすればよかった、とフードコートを出た時に後悔するだろう。

 しかし、スッとマグネが取り出したのは、黒いカード。まさか!

 

「義爛からの餞別よ。今日一日限定だけど、無制限に使っていいとのことよ」

 

 私はカードを奪おうとした。が、マグネがヒョイッと上に上げる。私は軽くジャンプ。ヒョイッと躱す。ジャンプ。ヒョイッ躱す。ぴょんぴょんするが届かない。

 

「ちょっと! マグねぇ! 渡して! 欲しいかも!」

「ダメよダメ。お会計は私がするわ」

「じゃあ、今すぐ行くんだよ!」

 

 私はマグネの裾を引っ張ってフードコートの中へ引きずる。マグネはあまりの怪力に驚いているが、そんなのはどうでも良い。私は本能のままに、お店に向かった。ヒミコはニンマリと笑っていた。

 

 

 

「………………あなた、まだ食べるの?」

「んへぇ? ひょほだよ」

「ごめんなさい。喋る時は飲み込んでからお願いするわ」

 

 食事を飲み込む。

 

「そうだよ。全店全メニュー食べるつもりだよ?」

「……それって、何人前よ?」

「インデックスちゃん、食べてる時が一番幸せそうなのです。見てて飽きないのです」

「私は胃もたれしそうだわ」

 

 二人は食事を終えている。テーブルには私が食べた料理のトレーと食器ばかり。時々ヒミコとマグネが片付けてくれたり、料理を取りに行ってくれたりする。が、手が回っていない状況。

 店舗は10軒。一店舗で30メニューくらいある。ざっと計算で約300人前。サイドメニューを含めるともっと多い。……余裕だな。

 

「次はパフェなんだよ」

「そろそろラストスパートね」

「残りは、パフェとクレープとアイスクリームなのです」

 

 特にアイスクリームはコーンとカップの二通り。フレーバーが50種類。組み合わせの数が3と2と1。全部の組み合わせを試すつもりだ。

 つい鼻歌が出てしまう。パクパク食う。時々、ヒミコがあーんと言ったのであーんする。

 

「………………余裕そうね」

「インデックスちゃんにかかれば、当然です」

「でも、不思議よね。こんだけ食べて食器が高く積まれているのに、誰も注目しないなんて。一応端っこにしたけど、それでもおかしいわ」

「ああ、私の魔術の効果なんだよ」

 

 人払いと神隠しと目隠しのルーンを発動している。これで安心安全に食べられるという訳だ。ヴィランは気にしないといけないことが多くて、大変大変。

 

「……ホント規格外よね」

「その代わり、触媒とか、生贄とか、魔力とかが必要なんだよ。あと面倒臭い手続き。このルーンだって、動物の死骸を月の光に捧げ祭壇で燃やした炭でカードの文字を描いてるんだよ。こうすると、込める魔力の強弱によって、ルーン文字が消えたり現れたりする。消えている時は発動しない。文字が見える時だけ効果が発動する。染色と脱色の魔術なんだよ」

「触媒と生贄はわかるわ。あと、面倒臭い手続きは、個性のトリガーが難しくなったって考えれば納得するわね。でも、魔力って、どうすればいいの?」

「たぶんみんなも扱えると思うんだよ」

「「え」」

 

 目を丸くする二人。

 

「どうしてそんな大事なことを言わないのよ!?」

「え、私、魔法少女になれるのですか?」

「それなら、魔法を使って、色々とできるじゃない。連合ができることが増えるわよ!」

 

 全てのパフェを食べ終わった私はクレープに手を伸ばす。ヒミコが口元を拭いてくれる。お礼を言って、私はマグネに言う。

 

「でも、デメリットが大きいかも」

「デメリット? それは触媒や生贄を用意するってことでしょ?」

「いや、それは手間なだけで、本質的にはデメリットじゃないんだよ」

 

 個性と比較しよう。人は個性でできる範囲でしか超常的な力を行使できない。しかし、鍛えることができ、強力だ。対して、魔術は色々とできることが多いが準備がかかる。面倒臭い手続きもある。鍛えるのも難しい。個性と比べた時、その差はイーブンだ。

 しかし、魔術には明確なデメリット、というか欠陥がある。

 

「じゃあ、デメリットって?」

 

 私はマグネを見る。私はクレープを飲み込んで、新しいクレープを手に取る。ちょっと真剣な顔を作る。マグネは居住まいを正す。ヒミコもならって背を伸ばす。

 

「魔術の知識は、人を狂わせるんだよ。何度も知識を思い出すたび、精神崩壊を起こすくらい。一回や二回でも、少しずつ狂っていく。今までの自分が自分でなくなってくる感覚がするんだよ。幻覚や悪夢を見るようになるんだよ」

「で、でも、あなたは狂っているようには見えないわ。会話が成り立っているから」

「それは宗教防壁があるからだよ」

 

 二人に宗教防壁、所謂宗教観のことを説明した。

 宗教観がないと、魔術の汚染を受ける。それが一つの小さな効果しか及ぼさない魔術でも、立派な魔術。たとえば、『魔力を流す』というだけの魔術でさえ、汚染される。汚染は少しずついつの間にか人を狂わせる。

 狂わないようにする宗教防壁は一朝一夕で手に入れられるものではない。また、宗教観によっては、汚染を止められない魔術があったり、逆に汚染を加速させるようになったりする。私の中には多重の宗教防壁が緻密に構築されている。

 

 10万3000冊の知識が流れ込んだ時は生死の狭間で苦しんだ。ひと思いに、死にたいと思ったこともあった。希死念慮。精神状態は所謂精神疾患の人に近い、いやむしろその人達より悪かったかもしれない。想像でしかないが。

 そんな中で、滅びていく自分を客観視できていた。これ自体が恐ろしくあり得ないこと。そして、前世の記憶があるからと言って、一から宗教防壁を構築できたことはそれ以上にあり得ない。それどころか、現実的に考えて不可能なはず。なぜなら、宗教観とは、人一人が作り上げてきたものではなく、先人の歴史を通した賛否両論を経て培われていくものだからだ。

 前世含めて2桁年齢の青二才が宗教防壁を生きている間に一から作ることができたのは、奇跡。まるで創造主が()()()()()()かのように、生きている。

 

「つまり、私がここで喋れる、ということ自体が奇跡なんだよ」

 

 黙る二人。あまりにも不気味な話で、何も言えなさそうだ。私はクレープを平らげた。次はアイスクリームを頼もう。

 

「マグねぇ。アイスクリーム買いに行こう?」

「……インデックス。あなた……いえ、そうね。買いに行きましょう」

「うん。……私も。……そうだ! インデックスちゃん、アイスの食べ比べしよっ!」

「? 最初から全パターン試そうと思っていたんだよ」

「……お腹、壊すわよ?」

 

 アイスクリーム屋に並ぶ。ワクワクしながらショーケースを眺める。ストロベリー、ブルーベリー、アーモンド、チョコミント。色とりどりのアイスが並ぶ。それがとても素敵なものに見える。今からどんな組み合わせにしようかウズウズする。

 ついに、列が縮んだ。注文をしようとした。その時、爆発が起きた。

 

「え」

 

 悲鳴があちこちから聞こえる。所々で、ヴィランだ、と声がする。かなり近い。並んでいたお客さんが騒ぐ。アイスクリーム屋の店員が逃げていく。

 そう、逃げた。注文を目の前にして

 

「ちょっと待つんだよ!?」

 

 ガシッとショーケース越しに店員の肩を掴む。

 

「え!? はい、何でしょう!?」

「アイスクリームを私が購入するまで逃げないで欲しんだよ!」

「ちょっとそれどころじゃないわよ! インデックス!」

「私にとっては、死活問題なんだよ!」

 

 また爆発。こちらに近づいているようだ。店員は逃げた。私が肩から手を離さなかったので、衣服が一部破けて去っていった。

 

「私達も、逃げるわよ!」

「あぁ、私のアイスクリーム……」

「あんなのはいつでも食べれるでしょ! それより私達がここにいることがヒーローにバレたら大変よ!」

 

 襟を引きずられる。手を伸ばす。目がぼやける。折角久しぶりのアイスクリームだと言うのに……

 

 また爆発。今度はここまで砂埃がやってくる。煙から人が出てきた。

 

「お? 何だ? まだ客がいるぞ」

「ホントだね。逃げ遅れたのかな?」

「おい、話してる場合じゃねーぞ。ヒーローが来る前にレジの金をかき集めるぞ」

 

 なるほど。お前達が原因か。私は立ち上がる。アイスの恨み。食べ物の恨み、ここで晴らす。私はルーンカードを取り出す。マグねぇがソッと手を押さえる。

 

「ダメよ。相手を刺激しない方がいいわ。それに死体を作ると、後々面倒臭いことになるわよ」

 

 諭されてルーンを懐に入れた。不貞腐れた。ヒミコが首を傾げる。

 

「じゃあ、刺しますか?」

「ここは、……逃げるわよ!」

 

 マグネが私とヒミコを抱えて、走る。

 

「はっ! 逃がすと思うか!」

 

 ペットボトルの中身を振り撒くヴィラン。その液体が弾丸となってこちらに向かってくる。マグネは躱すが足の腱を切ったらしく膝をつく。

 

「「マグ姉!?」」

 

 私とヒミコは地面に足をついて、マグネを心配する。ヴィランが笑って近づく。ヒミコが恐ろしい顔でヴィランを睨んでいる。私はタロットカードの束を裏返しに地面に置く。ちょうどよい。新しい魔術の実験台にしてやる。

 

「インデックスちゃん。……あいつら、刺していいですか?」

 

 私は新しいタロットカードの束を取り出した。マグネが止めるが、私は言った。

 

「刺すだけでいいのかな?」

「なら、殺そっか」

 

 私とヒミコは駆けた。ヴィランはニヤリと笑って、蓋を閉めたペットボトルを上空に投げる。私達の上空にペットボトルが辿り着いた時、ペットボトルが爆発する。液体の弾丸を浴びる。先程までの爆発はこれらしい。

 ヒミコは避ける。私はヒミコを庇う。弾丸で床の破片が舞い、煙となる。ヒミコは煙の中に入り、一人に刃を向ける。私はタロットカードの束を裏返しに置く。

 

「はっ! 見え見えなんだよ!」

 

 ヒミコのナイフは躱された。探索系の個性か。しかし、避けたヴィランとヒミコが磁石のように引き合う。マグネの個性・磁力だ。後ろを見ると、仕方ないわねっ、とマグネが柱に寄りかかって立っていた。ヒミコは近づいたヴィランの頸動脈を切る。ヴィランが叫び、血を噴き出し、絶命する。

 

「ふふっ、少しはかっこよくなりましたよ。あなた」

「くっそ! これでも喰らえ!」

 

 もう一人がヒミコに吶喊する。ヒミコがナイフで切る。が、ヴィランは煙になって、効果なし。すぐに実体化して、ヒミコを釘バットで殴る。それを見て、私はタロットカードを二枚取り出す。ヒミコはヴィランの攻撃を躱して距離を取る。ペットボトルが投げられる。

 

「その技は見たんだよ!」

 

 私は聖人の力で跳び、ペットボトルを空中で蹴る。ヴィラン達の間にペットボトルが落ちる。爆発。二人は吹き飛ばされる。一人はフードコートのテーブルや椅子をなぎ倒す。

 もう一人は蜂の巣で死んでいた。死んだのはペットボトルを投げたやつだった。適切な場所に着地して私はタロットカードを表にして一枚置いた。

 私は別のタロットカードを取り出し、最後の一人に投げた。ヴィランはすでに立ち上がって、個性で煙となった。カードは通り過ぎる。カードはヴィランの後方に落ちた。『魔術師』の逆位置やや右斜。ヴィランが煙状から元に戻る。

 

「はっ! 何をしようとしたか知らねぇが、無駄だよ!」

「それはどうかな?」

 

 私は炎と剣のルーンカードを向けた。ヴィランは姿を煙に変えようとする。袈裟斬りに炎の刃がヴィランを斬る。血が噴き出す。

 

「な、なんで、個性が、発動、しない……」

 

 絶命した。一息。

 

「インデックスちゃん!」

「ぐへっ……っ!?」

 

 腰に良いのが入った。美少女の抱きつきだぞ? 喜べよ。しかし、痛いのは痛い。

 

「ちょっと、最後何したのよ?」

「マグねぇ、足は?」

「腱を切ったわ」

 

 腱を切ってけんけんしながら、こちらに来たマグネ。

 

「じゃあ、回復魔術を使うから……ここだと目立つかも?」

「それなら、近くに休める場所があるのです! 行こ!」

 

 ヒミコの提案に頷く。応急措置を済ませて、私とヒミコがマグネの支えとして左右に寄り添う。ヒーローが来る前にどうにかしたい。

 

「インデックス。最後のは?」

「そうそう、最後に相手が個性が使えないって言ってました? 個性を消す魔術ですか?」

「そうだよ。タロットカードで結界を張ったんだよ」

「やっぱり魔術って凄いわね」

「いやいやいや、さっきのは高度な魔術な上、使える条件がかなり限定的なんだよ」

 

 私はマグネを運びながら解説する。

 

 個性と魔術は密接に繋がっている。それは強制詠唱(スペルインターセプト)で実証済み。おそらく【個性を消す個性】があれば魔術も効果を失う。イレイザーヘッドが持つ個性が典型例だろう。逆に、【魔術を消す魔術】があれば個性の発動をキャンセルできるはず。それが今回の件で実証された。

 しかし、今回使った魔術は、カードが囲む場所のみに適用される。それは、少なくともカードは三枚以上必要ということ。また、もう一つ欠点がある。

 

「もう一つの欠点?」

「そう。簡単に言えば、消したい個性ごとに、タロットカードの組み合わせと向き、あと配置した場所からの角度、カード同士の距離感、カードを結んでできた図形、などの指定が変わるんだよ」

「「……」」

 

 マグネとヒミコが顔を合わせた。

 

「「魔術って不便だね(だわ)」」

 

 




どんどん独自設定が増えていく……
まぁ、ノリと勢いで始めたので、そんなものか
読む時もノリと勢いで楽しんで下さい

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