とある個性の禁書目録 作:とある作者の狂人編集
ヴィラン連合の招集があった。そこで弔は開口一番こう言った。
「八斎會と手を組む」
みんなは嫌悪感を顕にしたが、私は感動した。弔は確実に成長している。
「おい! 弔! 相手はマグ姉を殺そうとしたやつだぞ!? 俺は嫌だね! ナイス判断だ!」
「そうだよ~、弔くん。私達のこと、将棋の駒みたいに考えてない?」
弔がマグネを見た。
「マグネ。どうだ。殺されかけた身としては」
「私は……メリットがあるのなら、してもよいと思うわ」
「「マグ姉!?」」
「本人がこう言うんだ。問題ないだろ」
「でも……私は嫌です。行きたくないです」
「……インデックス。ご指名にあった、お前はどう思っている?」
「え? 私?」
全員が静聴する。少し緊張する。夕闇に溶け込む色。ガラスを通して廃墟にホライズンを落とす。
「まぁ、メリットがあるのなら、やってもいいんじゃないかな?」
「「インデックス(ちゃん)!?」」
「それに、他のみんなが嫌なら、私一人で行こうか?」
「それは……!?」
「いや、向こうには、インデックスと、トガと、トゥワイスを派遣する。それが契約だ」
「!? 俺はやだね。ぜひお願いします」
「私も嫌です。ヴィラン連合は心地よいし、苦しくない場所だけど、こればっかりは」
「トゥワイス。お前、言ったよな。償いをしたいって」
「……」
「トガ。嫌う理由はわかる。けどな、俺は知っている。やつらはお前らを懐柔しようとしている。ヴィラン連合の機動力を割くために。そして、戦力を高めるために」
「「……」」
「俺は信じてる。お前達のことを」
三人で行くことになった。
~~~~~
まずはマグネの家に戻ってきた。準備が必要だ。
「ただいま」
「……っ!?」
相変わらず怯えている。ベッドの上で縛られた状態で横になっているエリ。涙の跡が痛々しい。裏切られた。絶望。辛苦悲哀。諦観。虚しさ。全てのネガティブをここに詰め込んだような、顔をしている。
私は微笑む。エリの身体が強張る。
「どうだった? 何か面白いことでもあったかな?」
「……」
「ちょっとインデックス。私達がいない間に何かあったら、それは面白いことじゃなくて、大変なことよ?」
「そもそも、なんで拘束してるのですか?」
「逃げられると困るからだよ、ひみこ」
昨日帰ってから日が昇るまでの間に、私はこの子の個性を調べた。
注射器で血液を取り、涎と髪の毛、あと爪。魔術的に使えるものは採取した。そして、いくつかの魔法陣といくつかの採取物を組み合わせて魔力を流して、個性を解析した。その結果、私がキープしていた生きたラットは、生まれたばかりの状態になった。若返ったのだ。
そして、何より、面白いことに、【歩く教会】が〈
外傷はない。ただ、内側から、魔術的符号を付ける前に
ラットの実験と比較すると、おそらく
幸運にも、ちょうどその時、歩く教会は衣服の下に着ていたから、露出狂というレッテルを貼られずに済んだ。一歩間違えば、解体された衣服が落ち、全裸になってしまう。まだ若いのに、痴女にはなりたくない。原作インデックスの二の舞を踏みたくない。
閑話休題。
エリの個性は【巻き戻し】。そこで試したいことがある。それは、記憶を操作することだ。
今の所、エリの個性は魔法陣で
本来なら、個性検査や個性訓練を行えば、立派なヒーローになれるだろう。こんな優秀な能力を社会は黙って手放さない。
それは、あんまりにも、
現在のエリは、個性が発動したら自分で個性を止めることができない。私の魔術なら非侵略的に個性をコントロールできる。このまま私なしで個性をコントロールできないように育てれば、もし社会に出ても迫害されて、私の元に戻ってくるだろう。
そして、あわよくば記憶を巻き戻して、記憶がない状態にできれば、洗脳できる。
また、私は10万3000冊の知識のみを忘れられる。命の危機がなくなる。狂気に怯えなくてもよくなる。私は自由になれる。
今は場所も時間も足りない。じっくりと研究する必要がある。その間に、色々と懐柔せねばならない。
しかし
ちらりと見る。手足を縛られたエリ。私が手を伸ばすと、ビクリと震える。頭を撫でる。それでも緊張と怯えが肌から伝わる。とうてい、懐柔できるとは思えない。
~~~~~
数日後、私達は終始無言で、八斎會の地下室から治崎の前に招待された。治崎は最初からイライラした様子であった。私達が自己紹介をすると、今度は後ろの鳥嘴に質問され、個性の説明をしてしまった。おそらくやつの個性だろう。歩く教会では防げない。
「『死柄木から裏切りの指示はあったか?』」
「「「『ない(です)(んだよ)』」」」
そろそろこいつの個性がわかってきた。個性はおそらく〈問えば真実を答えさせる〉というのだろう。歩く教会も反応を示さないことを考えると、私にとって嫌な個性となる。そして、私は完全記憶能力と、どうして強いのかの説明をさせられた。魔術については眉唾ものとして扱われた。頭がおかしいと思われた。解せぬ。
「……それと、真。あれも聞け」
「はっ……『この写真に写っているエリという女の子を知っているか?』」
「『知らねぇ』」
「「『知ってる』」」
ガタッと治崎が椅子から立ち上がる。真実吐きの男が慌てて続ける。
「『なぜ知っている?』」
洗いざらい、エリと出会ったことから現在の状態まで語ってしまった。場所も特定されたので、マグネには申し訳ないことをした。おそらくマグネは引っ越しをしなければならない。エリは奪われるだろう。まぁ、今回は仕方ない。それにサンプルはすでに手に入っている。
まぁ、本体があれば、より研究が進んだのだろうが。
それから軟禁生活が始まった。数日でそれも終わった。ヒーローと警察がガサ入れに入ったからだ。
「さてと、そろそろ行きます?」
「なんか道が曲がってね? いや、真っ直ぐだ」
「うん。行こっか」
これから、面白いことが起きる。
~~~~~
何かグネグネの道を進みながら、三人で進む。何も言わずとも道は開ける。ヒーロー達はこの先にいるらしい。三人で別れて、それぞれ分断された警察とヒーロー達とご対面。
ただ、私は確かめたかった。どうしても知りたいことがあった。だから、ヒミコに代わってもらった。
「こんにちは、なんだよ!」
目の前には、イレイザーヘッドと緑谷出久。イレイザーヘッドはゴーグルをしているから表情は不明だが、出久は驚愕の表情。
「い、インデックス……」
気づかれないように、
イレイザーヘッドの束縛布が私をぐるぐる巻きにする。
聖人の力をコントロールする魔術も失われているため、
引きずられて、足元に敷かれる。
「日暮京子。殺人の容疑で拘束する」
「ちょっと手荒かも。少しお話がしたかっただけなんだよ」
猿轡もされた。ついでに、日暮京子とは、アグネスタ孤児院で名乗っていた名前である。戸籍もある。
「先せ……イレイザー、そこまでしなくても……」
「いや、こいつは危険だ。魔術とかよくわからんものを使うのは知っているだろ。特に、言葉で発動するものが多いと報告が出ている」
「もがもがもが」
これでは話を聞けない。仕方ない。イレイザーヘッドを殺すか。
私はイレイザーヘッドの後ろに回り込む。風と剣のルーン。が
咄嗟に避けられた。あれぇ? 壁に亀裂をつけるだけで、風の刃は消える。
私はソッと違う所へ行く。
「やはりな。ヴィラン連合が協力していると情報が入ったから、分倍河原仁の能力を警戒していたんだ」
そう言って、簀巻きにされた私をナイフで刺すイレイザーヘッド。簀巻きの私は泥みたいになって消えた。トゥワイスの能力だ。
わーお。クワバラクワバラ。
私は至る所にルーンのシールを貼った。
『凄いかも。ついでに、どうして気付いたのか、後学のために教えてほしいかも』
「勘だ」
『あ、そう』
まぁ素直に言うとは思わなかったので良いのだが。二人は音の発生源を探している。しかし、
『私はただ、話がしたかっただけなんだよ』
「それなら刑務所でじっくり聞いてやる」
『エリという子に興味はあるのかな?』
さぁ、どう答える?
しばらく待って、二人は何も反応を示さない。これはどっちだ?
『エリという子は、白髪に赤い瞳。ボロボロの衣服を着ていて、両手両足に夥しい数の包帯を巻いているんだよ』
反応がない。まるで屍のようだ。ピクリともしない。ただ、私がどこにいるのか見極めようとしているだけ。これは、
『なるほど、知らないと』
まだ確証はない。続ける。
『エリというのは、ここに監禁されている子供の名前なんだよ』
「! 子供! 先生!」
「なるほど、サーが言っていたのは、その子か」
なるほど、
ど忘れ、というのも考え辛い。出久は確かに
つまり、USJと同じだ。記憶が消えている。私以外の。
『ついでに、聞くんだけど、USJでのことを覚えてるかな? いずく』
「えっと……」
「答えなくていい、緑谷。こういった輩は情報を得たいだけだ。あえて言う必要はない」
『……仕方ないかな』
私は天井に貼り付いていた。そこで、懐から小さなフラスコを取り出し、スポイトで中身を一滴、地面に落とした。瞬間、ぶわぁっと煙が発生。イレイザーヘッドと出久は紫色の煙に覆われた。
「緑谷! 吸うな!」
二人は口元を覆う。が、これは経口ではなく、経皮毒だ。
『安心して欲しんだよ。これは【真実薬】。ウィッチクラフトの秘薬なんだよ。質問したことを記憶の通りに答えてしまう秘薬なんだよ。決して生物的に死ぬ訳ではないんだよ』
これの不便な所は、〈効能を説明しないと効果が出ない〉ことだろう。さらに、イエスかノーかで答えられるものしか効果が出ない。個人差はあるが、数分で効果が切れる。自分もかかるので、血清を作る必要がある。
あの鳥嘴野郎より不便な魔術だ。
『先に聞くんだよ。エリという子について知っているかな?』
「「『知らない』」」
『じゃあ、USJ襲撃事件で私がアグネスタ孤児院について喋ったかどうか答えて欲しいかも』
「『喋ってない』『知らない』」
悔しそうにする二人。しかし、イレイザーヘッドは自信を持って上を向いた。私と目が合った。途端に私の姿が顕になり、天井に貼り付くために使っていた魔術が解けた。私は落ちた。が、壁が動いて、私を回収した。
ヒミコにダイブした。胸で受け止められた。柔らかい。
「あ、インデックスちゃん!」
「ひみこ、ありがとう。受け止めてくれて」
「いや、これは鳥嘴野郎が乱暴なのが悪いのです」
「そうだそうだ! 鳥嘴とかセンスないよな。うん、立派な嘴だ」
私が言い出して、二人は「鳥嘴」というのが気に入ったらしい。
それから三人して、八斎會の悪口や極道の貶し、迷路を操る八斎會の鳥嘴野郎の侮辱、治崎の無能さを延々と叫ぶと、迷路が暴れた。
しかし、ヒーロー達が解決し、私達三人は外に出た。バックレたとも言う。
〜〜〜〜〜
三人で暗躍するのは楽しかった。治崎と出久の空中戦が繰り広げられている。もう、オールマイト級の実力だ。エリの個性の影響もあるだろうが、ヒーローしてるよ、彼は。後は経験かな。
治崎が敗れた。完全に気を失っている。エリの暴走。イレイザーヘッドの個性で暴走が止まり、警官や救急隊員、ヒーロー達が規制線や怪我人の運搬、犯罪者の捕縛などをしている。
それを、私は上空から眺めていた。
エリが救急車に乗った。走り出す救急車。上空で追いかける。
誰もが安心している。誰もが勝利を確信している。その瞬間こそが最大の命取りだ。
私は高速道路を走る救急車を襲った。エリを見つけ、エリにネックレスをつける。これはエリが無意識で発している個性を一切合切外に漏らさないようにするための魔術が組み込まれている。また、歩く教会を壊されてはたまったものじゃない。
エリは高熱を出していた。薄っすらと目を開け、視界がぶれた瞳で私を見つめ、そして、目を閉じた。まぶたから涙が溢れた。ヒーローは訪れなかった。
〜〜〜〜〜
出久はその知らせを聞いた時、足元の地面が崩れる感覚を味わった。
幼い少女、エリを助けられなかった。ヴィラン連合に奪われた。
出久はルミリオンを見た。あまりにも残酷な事実に出久の先輩は表情がぬけていた。エリのために個性を永遠に失った先輩を出久はどう声をかけていいかわからなかった。
確かに八斎會は今回の件で解体されるだろう。しかし、少なくない被害。警官の死傷者が多く、ヒーローも多くが重傷。何よりルミリオンの尊敬するサー・ナイトアイは生死の狭間を行き来していた。
突然、ルミリオンが走り出した。
「る、ルミリオン! どこへ!?」
呼び止める。ルミリオンは止まる。出久へと振り向く。笑顔だった。
「もちろん、エリちゃんを助けに」
出久は言葉に表せない感情を覚えた。出久は一周回って、冷静になった。ルミリオンは今、感情的になっている。ここで彼のために何ができるか。彼のためになることは何か。
出久は顔を上げた。
「まずは、状況を確認しましょう。現在僕達は救急車がどこで襲われたかすら、知りません。それに先輩は大怪我を負っています」
ルミリオンは両手をきつく握った。血が出ている状態。脇腹からは酷い出血。到底、戦えるとは思えない。
だから、出久は刑事に駆け寄った。そして、どこで襲撃にあったか、ヴィラン連合が行きそうな所はどこか、色々聞き、どこに行ったか予想する。イレイザーヘッドの言葉を思い出していた。『ヴィラン連合には今回関わらない』『俺はお前をまだ信用していない』『俺が見ている』。イレイザーヘッドの元に駆け寄る。
「先生! エリちゃん救出のための許可を下さい! 今ならまだ近くにいるはずです! お願いします!」
頭を下げる出久。イレイザーヘッドは黙る。警官や他のヒーローも見てくる。
「……緑谷。お前のインターン先はどこだ?」
「え? それは、サー・ナイトアイの事務所ですけど……」
「なら、そこで聞け」
「ですが、サー・ナイトアイは今……」
「だから、サー・ナイトアイのサイドキックに聞け」
「え!? 私、ですか?」
目をつけられたバブルガールは、動揺する。ちょうど事後処理でこちらに来ていたのだ。出久は頭を下げる。
「お願いします!」
「え、えっと……こういう時、サーは……」
バブルガールは顔を上げた。
「許可、できません」
「っ!?」
出久はわかっていただけに、唇を噛んだ。震える唇を開けて、何か言おうとするが、以前の免許なしの失態を思い出し、また仮免がある状態でも許可がなければ個性を使ってはいけないしがらみに、情けなくなる。
「俺からも、お願いします!」
声がした。隣を見ると、ルミリオンが頭を下げていた。
「先輩……」
「俺は、もう個性がない。だから、助けに行くことはできない。けれど、今、あの子を助けに行かないと、取り返しのつかないことになる気がします。お願いします!」
え、え、えっと、とバブルガールは怪我をしたイレイザーヘッドを見る。イレイザーヘッドは敵から受けた個性が解けたため、身体の動きを確認していた。怪我は応急措置のみが施されている。視線に気が付き、イレイザーヘッドは顔を上げる。
「俺からもお願いする」
「「「先生!(イレイザーヘッド!)」」」
「こいつらは何しでかすかわからない。俺も一緒に行く。それで許可を出してくれ」
バブルガールは何とも言えない顔をした。しかし、諦めて頷くのであった。
三人は頷き、出久とイレイザーヘッドは駆け出した。
ルミリオンは頼もしい背中に哀愁を感じた。