とある個性の禁書目録   作:とある作者の狂人編集

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類感魔術と感染魔術

「もぐもぐもぐだからもぐもぐあの人達の狙いはわからないんだよ」

「えっと、食べるか、答えるか、どっちかにしてくれるかな?」

 

 口の中のものを飲み込む。

 

「私ととむらは一時的な協力関係なんだよ。だから、とむらと黒霧の目的は不明なんだよ」

「ふむ。じゃあ、何か言ってたかい?」

「えっと、オールマイトを殺すとか言ってたかも?」

 

 刑事さんは考え込むようにあごに手を置いた。たぶん嘘ではない。いや、嘘かも。組織に入るとか言った気がする。けどあれはAFOに対して言ったから、死柄木には言ってない。つまり、一時的に協力した関係と言っても嘘にはならない。

 

「それじゃ、インデックスさんはどうして今回の襲撃に協力しようと思ったのかな?」

「面白そうだったから?」

「面白そうって、ヴィランだよ? ヒーローごっことは違うんだよ?」

 

 あ、この刑事、完全に子供扱いしてる。まぁなめてくれた方が都合がいいけどね。

 

「それよりおかわりなんだよ」

「……まだ食べるのかい?」

 

 取調室のデスクには大量の丼。私の大食い具合がよく表れている。原作インデックスも大食いだったから、イメージとしては間違っていない。

 偶像崇拝の理論。まぁ、つまりなるべくインデックスに近づけようとしている。そうすれば、より原作のインデックスらしくなるだろう。魔術ってこじつけぇ〜。

 それに今世はご飯がおいしく感じるのだ。不思議だなぁ。

 

 刑事さんが注文をしに出ていく。私はその短い間で思考を加速させる。はて、どうしようか、と。

 

 昨日補導されて今日取り調べ。嘘を吐くと見破る個性を持っているとか。まぁ嘘をつく理由もないので、()()()()()本当のことを言ってきた。

 おそらく釈放されるだろう。

 一応、ヴィランっぽいことをやったが、私自身はほぼ何もしていない。不法侵入、銃刀法、しまいには殺人未遂。しかし、未成年というのは大きいだろう。

 保護観察処分で終わりそうかも。調査に協力的なのもあるが。

 

 それよりも気になるのは、自分のインデックスとしての弱点だ。

 

 知識はある。魔術の知識。そして、個性は魔術に似通ったもの。

 私の仮説が正しいのなら、個性を持つということは、その所持者が一種の原典や聖人、魔法陣と同等である、と見なすことができる。

 つまり、私は【完全記憶能力】という魔術を行使している状態、と思えば良い。

 しかし、それだと矛盾が生じる。

 

 自動書記(ヨハネのペン)は完成している。

 

 自動書記(ヨハネのペン)とは、『とある魔術の禁書目録』のインデックスに施された防御機構。簡単に言えば、インデックスが危機的状況に陥った時、発動する魔術・霊装。正確には、違うが、説明が面倒臭い、かつ今関係ないので省略。

 この自動書記(ヨハネのペン)。インデックスの全魔力を使用してかけられている魔術。私はそれに追加して、燔祭(所謂、生贄を捧げること)を使って力尽くで実装した。そのため、おそらく原作インデックスの自動書記(ヨハネのペン)には遠く及ばない。

 10万3000冊の中に、実装方法はない。つまり、理論と現在の知識から組み立てて最初から全部一人で実装したのだ。さらに、起動テストもしていない。発動時はぶっつけ本番だ。

 

 それはそれとして、なぜ自動書記(ヨハネのペン)が完成していると矛盾が生じるのか。答えは、自動書記(ヨハネのペン)を実装していたインデックスは、魔力が使えないのだ。

 魔力とは、つまり不思議現象を起こすために必要な神秘的な力だと思えば良い。RPGならMPだ。

 自動書記(ヨハネのペン)実装で前借りしたインデックスの魔力は、ほぼない、というか一切ない。なので、不思議現象は起こせないはず。

 

 これを解決するには、また仮説が必要だ。オッカムのカミソリを投げ捨てている。まぁ、魔術ってそんなもんだし。まぁ、やってみるだけやってみよう。時間はある。

 

 先程、魔力は使えないと言った。これは魔術が使えない、という訳ではない。とある世界では、魔力なしで発動できる魔術がある。その代表例が、USJ襲撃事件で私が見せた、強制詠唱(スペルインターセプト)だ。

 この原理は単純だ。他の人がすでに魔術を発動、あるいは起動している段階で別の命令を差し込むのだ。上手く行けば、差し込んだ命令を実行する。上手く行かなくても発動自体をキャンセルできる。

 ここに魔力を使う要素はない。なぜなら、すでに走行する自動車の前にジャンプ台を設置したら、車は跳ねる。自動車本体が搭載しているエネルギーを使って、違う動作をさせるのだ。それが強制詠唱(スペルインターセプト)の本質。

 つまり、魔力を使わない魔術というのが存在するということ。

 

 そこで、新たな仮説。個性とは、魔力を使わない魔術ではないのか、というのを提唱しようと思う。そうすれば矛盾は解決する。

 矛盾は解決するが、より大きな疑問が出る。

 個性の原理が不明、ということだ。ここは科学サイドでわかるかもしれないが、とある世界の超能力とは違うので、魔術サイドでも考察できるはず。事実、個性とは無意識下で行われる魔術、という仮説は強制詠唱(スペルインターセプト)が個性に通じた点で実証済みだと思う。少なくとも反証はない。

 

 魔力とは、無から誕生する訳でなく、肉体から神秘的な作用を施して抽出できるエネルギーのことだ。つまり、炉に焚べる薪だ。火も燃料がなければ維持できない。

 そして、魔術は機械だ。自動車や飛行機。またエアコンや携帯電話などと同じと思えば良い。どれも電気が必要。電気はエネルギーから産出される。

 絶対に魔術にはエネルギーが必要。そして、魔力を使わない魔術というのは、強制詠唱(スペルインターセプト)などの例外を除けば、あり得ない。その強制詠唱(スペルインターセプト)ですら、他人の魔力を使っていると同意義なので、実質魔力を使わない魔術はない、と言える。常識であれば。

 喩えるならば、永久機関とでも呼べば良いのか。そんな夢の発明は科学でも魔術でもあり得ない。常識的に考えて。魔術という常識外の術でも、限界はある。

 

 原点に戻ろう。そもそもの前提が間違っている可能性。

 

 個性に強制詠唱(スペルインターセプト)が効いた。そこから、私は個性を〈無意識下で行われている魔術〉だと仮説を立てた。個性を自由に扱うのに、トリガーや少しの条件だけで済むのは〈無意識下〉でその他膨大な演算を行っていると思ったからだ。

 しかし、私は【完全記憶能力】という魔術を行使していることになる。それだとインデックスは全く魔力が使えないという話と矛盾する。その上で新たな仮説〈個性は、無意識下で実行される魔力を用いない魔術〉というややこしい発想になる。それはつまり、永久機関を意味し…………ん?

 

 そもそもどうして、原作のインデックスを前提に話していたのか?

 

 整理しよう。

 原作『とある魔術の禁書目録』のメインヒロインにして美少女のインデックスは、魔力が使えない。それは自動書記(ヨハネのペン)を実装したからだ。

 ここで注目すべきは、ここまでは原作インデックスの話。私の場合ではない。

 

 自動書記(ヨハネのペン)は莫大な魔力の前借りをしていると思っている。もしくは維持費が常に原作インデックスの魔力キャパシティをオーバーしていたと考えられる。

 なら、こう考えよう。私の自動書記(ヨハネのペン)が、原作の自動書記(ヨハネのペン)と違ったとしたら?

 先程無理矢理自動書記(ヨハネのペン)を実装したと言った。生贄を捧げて、奇跡に近い神秘的な力を抽出した。これは自動書記(ヨハネのペン)の細かい原理がよく分からなかったためだ。私はインデックスほど魔術に精通していない。

 それでもご都合主義とでも呼べる感じで実装ができた。あとは起動した時のお楽しみ。不安である。そう、不安。

 細かい原理を理解せず実装したため不安。裏返せば、()()()()実装をした可能性がある。

 

 そうすると前提が崩れる。私は原作インデックスではない。私が実装した自動書記(ヨハネのペン)は原作とは違う。全く違う。

 

 そうだそうだ。実際、感覚的にも原作より威力が弱い可能性があると思ったのだ。

 つまり、私の自動書記(ヨハネのペン)は私の魔力キャパシティを抑圧しない。私は、魔力が使える。魔力を使った魔術が使える。

 

 ニヤリと笑う。刑事さんが入ってくる。丼を片手に持っている。

 

「インデックスさん、丼を持ってきたよ……なんだか楽しそうだね?」

「うん! 楽しみにしてたから!」

「カツ丼をね」

 

 ニコニコ笑顔を振りまく。今さらだが、美少女フェイスと10万3000冊以外は、インデックスと全く違うことが明らかになった。

 魔力が使えるインデックスって、何? チート?

 よくよく考えれば首輪の魔術もかけられてない。自由なインデックスだ。

 

 カツ丼を受け取り礼を言っていただきます。かっこむ。刑事さんはあきれている。

 

「いい食いっぷりだな。将来大きくなるよ」

 

 食べ終わったら、お腹をさする。流石にもうお腹いっぱい。刑事さんが書類を持ってきた。

 

「今後の話をしたいと思う」

「今後?」

 

 ああ、と言い書類を並べる刑事さん。

 

「まず住所不定のインデックスさん」

「……そこはかとなく悪意を感じるんだよ」

「いやいやいや、そういうつもりはなくってね。ただ、その、インデックスさんは児童という枠組みなんだ。だから、今回事件を起こしたけど、捜査に協力的だし、反省は十分として児童相談所へ送ることになった」

 

 まぁ妥当かな。少年院とか裁判とかあり得たけど、子供のやったことで済まされる訳だ。責任能力皆無で、調査に協力的、というのがミソ。

 

「当然、次に事件を起こしたら、少年院送致は確定だけどね」

「うん。それはわかるんだよ」

 

 続けるね、と刑事さん。今さらだが名前を忘れた。まぁ今後かかわることもないだろう。

 

「ただし、保護者が必要。けれど、インデックスさんの話を聞くと、保護者は亡くなっている。孤児院で育てられ、その孤児院もヴィランに襲撃され、何とか生き残った」

 

 真実ではない。しかし、嘘もついていない。この刑事さんは、子供に甘いらしい。ちょっと思考を誘導させてやれば、勝手に想像して慮ってくれる。

 ここで、儲けものは、この人の個性は嘘が分かるというものだが、これに強制詠唱(スペルインターセプト)を実施すると、思考を少し誘導できることがわかったのだ。まぁ限定的だろうが。

 例えば、「好きなものは?」と質問があった時、最初は「カレー」と言ったが、次に同じ質問をされた時「ハンバーグ」と答えても違和感を覚えない、という程度。結構凄いって? でも、記録と記憶とかには残るから後々違和感が出る。あまり意味はない。

 ただ、重要なのは、おそらく思考に働くものは思考誘導ができるのだろう。

 

 思考誘導をすればあら不思議。その場の気分で右往左往する発言が、あたかも理路整然とした会話に思えてしまう。なにそれ怖い。やっぱり凄いかも。

 

 チートだ。それもご都合主義の。しかし、強キャラムーブを安易にしたい快楽犯としてはちょうどよい。

 

「話を戻すと、住所がない、というのが不都合でね。だから、仮でもいいから決めてほしいんだ」

「? 勝手に決めてもいいの?」

「国が指定する保護施設の住所ならね。その施設の住所を借りるんだ。実際に住めるからしばらくはそこで暮らしてほしい」

 

 複数あるから選んでね、と刑事さん。私は広げられた資料、もといパンフレットを確認する。

 

「……刑事さん的には、どこがいいの?」

「そうだなぁ……こっちの施設は、部屋は広いけど郊外に出るね。こっちは狭いけど中心街に近い」

「ふむふむ」

「でも断然ここを紹介するね」

 

 刑事さんは、保須市立児童保護施設、と書かれたパンフレットを渡した。私は首を傾げた。

 

「どうして?」

「そりゃやっぱり治安がいいからだよ。ここは近くにヒーロー事務所が固まってるんだ」

「なるほどなんだよ」

 

 少し考える。ヒーロー。ヒーローに囲まれていたら、私に対する警戒も幾分かは紛れるだろう。

 

 私の行き先が決まった。

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 電車で何時間か進んで、駅を降り、児童保護施設へと訪ねた。付き添いの保護観察官もいる。

 出迎えてくれたのは、施設長。優しそうな方だった。柔和で妙齢なおばあさん。

 

「ここを我が家だと思ってね」

 

 そう優しく言ってくれた。

 部屋に案内された。部屋と言っても最初は大部屋。個室が与えられているが、基本は大部屋で過ごしてほしいとのこと。強制ではないとか。

 荷物もないし、大部屋を見て、個室を見て少し伸びをして、また施設長と保護観察官に呼ばれ今度は相談室に来た。

 

「色々な子どもがいるんだね」

「ええ、色々な方がいますよ」

 

 これからの話と書類と代理人とか色々話があって解放。私は大部屋に向かう。

 

「お姉ちゃん、だれ?」

「私はインデックスって言うんだよ」

「変な名前」

「何で白い服着てるの? かわいいね!」

「ありがとうなんだよ。私が作ったんだよ」

 

 年下ばかり。いじめや家庭内暴力を振るわれたり、犯罪を犯した子供達とは思えない。

 いや、端っこにいる子供達もいる。様子を窺っている。睨む子もいる。でも、ほぼ全員が年下っぽい感じだ。もしくは栄養不足で発育が乏しいとか?

 問題を抱えている子は多そうだ。

 

 その日の夕食はハンバーグが出た。私の歓迎パーティーらしい。ささやかだが、幸福そうな食卓。確かに問題を抱えていそうな子は多いが、暴れたり騒いだりはしていない。みな、良い子にして食事をしている。

 あ、一部やんちゃな子もいた。走り回って、どたどたと。隣の子のハンバーグをかっさらおうとした子もいた。保育士が大人しくさせている。等身大の児童たち。

 

「ねぇねぇお姉ちゃん!」

「ん? 何かな?」

「お姉ちゃんはどんなヒーローが好き!?」

 

 話を聞いていくと、ヒーロー事務所が近い関係で、よくプロヒーローの人が足を運ぶらしい。子供達はそこで遊んでもらったり仕事の話を聞いたりして、勇気をもらっているらしい。心温まる話だ。

 問題を抱えていながらも、善性方向に無邪気なのはそういう訳か。

 

 就寝となった。その日は疲れもあり、ぐっすりと寝た。

 

 数日経った。今頃、死柄木やオールマイトはどうしているだろうか。まぁ関係ないといえばないが。と思いつつ、日々を過ごす。

 

 たまたまオールマイト特集がテレビであった。つい、私がオールマイトに会った話をすると、みんな目を輝かす。端で様子を窺っていた子も近づいて距離が近づいた気がする。心の距離が。

 

 また数日。また数日。また数日経った。

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 ヒーローであるエクトプラズムは報告書を読んでいた。彼女、インデックスの保護施設での状況だ。

 なぜヒーローであるエクトプラズムが彼女の安否を気にするかというと、オールマイトに頼まれたからだ。

 

『彼女は危険だ』

 

 確かにエクトプラズムもUSJ襲撃事件の時彼女と相対した。どこにでもいるような少女だった。そう思った。だから、あまりにも違和感があった。

 戦いの場で、あんなに普通の少女を振る舞えるだろうか?

 

 その事実に気づいて、エクトプラズムはヒヤリとした。彼女は、どこか歪だ。見た目ではわからない。サイコパスな犯罪者を見てきたが、あれとは全然ベクトルが違う狂気。そうでなければ、説明がつかないこの感覚。あの子に感じた恐怖。プロのヒーローとなってから戦場以外で感じたこの焦燥。

 

 気分を切り替えるため、新聞を手に取った。体育祭も終わり、中間考査も終わり、職場体験の時期。しかし、保須でヒーロー殺しが出たという。

 彼女の顔が浮かんだ。しかし、否定した。

 

 保護施設での彼女は極めて模範的であり、かつ善良な姉的な立場にいる。犯罪者というのは居場所がなくなった時に誕生すると言われる。逆に犯罪を犯さないようにするには、一定の立場、それこそ仕事や職を与えるようにすれば良い。

 もちろん例外はあるが、現時点での統計では犯罪者の多くは社会に居場所を見つけられなかった人ばかりだ。逆に、犯罪を犯さない人は社会に居場所を見つけた人が多い。どちらも直接的な統計データがある。

 だから、彼女は、もう、犯罪に走らない。居場所があるのだから。事実、何度か遠目から観察したが、幸せな顔をしていた。

 

 そう思いたい。思いたいが、あの時の狂気を思い出し、エクトプラズムは自己嫌悪に陥る。疑っている自分が嫌になる。

 

「そう言えば、明日は彼女の監視をする日だ」

 

 オールマイトから頼まれたことだ。個人的にも気になる。そのため引き受けた。しかし、一ヶ月経っても彼女の()()()()()見えない。

 そのことにも、エクトプラズムは違和感を抱いて、保須へと向かうのであった。

 

 

 

 エクトプラズムが保須についた時、もうすでに日が暮れていた。監視は明日だ。それまでは、別のビジネスホテルに泊まる。何事もなければいいのだが。

 

 そう思った矢先、騒ぎが起きた。と同時に嫌な予感があった。そちらへ顔を向けると、爆発音。エクトプラズムはやはりと思って、ビルの屋上へ上がった。被害の全容を確認するためだ。

 炎の手がある。あの方向は、件の養護施設がある場所だった。彼女が危ない!

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 早い消灯時間だが、子供ボディーだと眠れる。すやすやと寝ていると、叩き起こされた。

 

 ヴィランだっ

 

 廊下に出るとみんながみんな恐怖の顔。施設長がなだめて点呼して避難誘導を開始する。私は、パジャマを脱いで、【歩く教会】を着た。ついでに歩く教会は清潔の魔術もかけられているので、パジャマ不要だが、施設長に言われパジャマを購入。一応、寝る時はパジャマにした。でも、歩く教会の方が心地良い。

 

「インデックスちゃん! 早く! ヴィランがそこまで来ているわ!」

「わかったんだよ!」

 

 素直に従って誘導に沿う。空を見上げる。空を飛ぶ脳無がいた。こっちに来ている。

 

「早く地下室に!」

 

 従って、入り、扉が閉まる。広いが、密室空間。溜息。私はカードを取り出した。

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 エクトプラズムはホッとした。自身も駆けつけ、避難誘導やヴィラン脳無を引きつけたりもしたため、人的物的被害は奇跡的になかった。火災も収まった。

 さらに、雄英高校のA組三人がヒーロー殺しを捕縛したという。呆れたものだ。

 

 私は本来の用事を思い出し、インデックス達、児童保護施設のメンバーが避難したシェルターに向かった。安否を確認したかったのだ。

 

「確か、ここ」

 

 シェルター前で、止まる。インデックスの笑顔を思い出した。USJでの笑顔だ。普通の少女らしい、その場にそぐわない、笑み。狂気に染まっている訳でもなく、犯罪を楽しんでいる訳でもない顔。ただ、普通だった。

 その、狂気を感じない狂気に、恐れた。油断は禁物だ。

 

 エクトプラズムはビルの屋上に飛び乗り、分身体を出した。一体だけ。そして、シェルターへと向かわせた。ビルの上から覗く。扉は開かれた。分身体が中に入ろうとした。その時、分身体へ何かが突進した。白い服の少女。

 ハッとして、分身体を下がらせようとした。これはプロヒーローとしての勘だった。が、遅かった。インデックスはナイフを持って、分身体を刺した。

 

 瞬間、エクトプラズムは激痛を感じた。あまりの痛さに倒れる。腹を触ると、血が流れていた。なぜ?

 疑問が出た。単純に分身体が刺されただけだ。分身体とは感覚を共有していない。よって、分身体が刺されても本体であるエクトプラズムには何もないはずだった。しかし、エクトプラズムはどこからか攻撃を受けた。

 

 幸い脇腹だったのもあり、痛みを堪えて立ち上がった。早くこの場を去った方がいい。そう直感が告げた。ビルの下を見下ろす。少女はいなかった。

 

「こんな近くにいたんだね」

 

 ゾッとした。振り向くと、ふぅ~なんだよ、と彼女は冗談っぽく息を整えていた。

 

「階段を急いでのぼったから、汗かいたんだよ」

「……どうして、ここが」

「ん? ……そうだね、あなたには解説が必要かも」

 

 インデックスはナイフを見せた。なんてないどこにでもある、ナイフ。百均とかに行けば買えるだろう。そんなナイフ。

 

「このナイフに、魔術を仕込んだんだよ」

 

 魔術。前にインデックスが供述していた、異界の現象を起こす方法。正直現実味のない話で、子供の戯言と思っていた。が、呑気に楽観視もできない状況だ。

 インデックスの個性は、【完全記憶能力】。これは実際に担当した医師や新しい医師での検査の元、真実だと認められた。つまり、エクトプラズムの場所を探索したり、現実味のない防御力を服に宿したりできないはず。つまり、この超人社会の常識で考えるなら、他のヴィランが手助けしたと予想できるだろう。

 多重の個性がある場合もあり得る。いまだに個性には謎が多い。複数の個性を所持していたとしてもおかしくはない。脳無の例がある。

 

 しかし、ことここに至っては、エクトプラズムはインデックスの魔術を信じた。

 

「魔術には、大雑把に分けて、類感魔術と感染魔術とがあるんだよ」

「類感魔術は、偶像崇拝を思い浮かべればいいんだよ。同じ形や役割、動き、その他類似しているレプリカとオリジナルを関連させる魔術。丑の刻参りの藁人形とかが有名だよ」

「感染魔術は、オリジナルの一部だったもの。例えば、髪の毛とか、爪とか血液とか。それらとオリジナルを関連付ける魔術。丑の刻参りを強化するために、藁人形に髪の毛を入れたりするのが例だね」

 

 話を聞くが意味がわからない。いや、解説は理解できているが、どう関係するのかがわからない。

 

「つまり、私は、エクトプラズムの分身体を藁人形に見立てた訳なんだよ」

 

 エクトプラズムはその言葉で理解した。

 

「……元々私から出てきた分身体は、私の一部だった訳だから、感染魔術。形がまんまそっくりだから、類感魔術」

「正解、なんだよ! まぁ、攻撃と探索を同時にするのは、難しかったんだけどね。でも、それだけ。あなたの個性の特徴をついた形なんだよ」

 

 エクトプラズムはビルの下を見た。

 

「他の者は?」

 

 インデックスは笑った。優しい笑顔。目つきも、聖人のようだった。瞳も優しさを感じる。このタイミングでなければ、かわいらしい少女だと思っただろう。

 エクトプラズムは嫌な予感がした。

 

「この体は、やっぱり魔力が少ないんだよ。魔力というのは、エネルギー? 自動車に対するガソリンなんだよ。そして、魔術が自動車」

 

 そして、とインデックスが一つ呼吸を入れた。その間は一瞬だったが、永遠に感じた。

 

「魔力が足りない場合は、給油するものなんだよ?」

 

 エクトプラズムは察した。しかし、それを否定したかった。なぜなら、インデックスがあの子供達に向ける笑顔が、嘘になってしまうからだ。

 しかし、ヒーローとして、聞かない訳にもいかなかった。

 

「あの子達は?」

「殺したんだよ」

 

 アッサリと言い放った。インデックスはそう言った。

 

 エクトプラズムは、口を大きく開けて、分身体を40体以上出した。数えていなかったが、おそらく最高記録。普段は36体出せればいい方だった。しかし、怒りでそんなことは考えられなかった。

 

「プロヒーローとして、ヴィラン・インデックスを捕縛する!」

 

 全方位から分身体が、インデックスを襲う。しかし

 

個性を解除しろ(CP)

 

 分身体が霧のように消えた。

 

「クッ」

 

 エクトプラズムは距離を取ろうとした。声が聞こえない場所まで行けば、あの個性……いや、魔術は通用しないはず。

 ビルを飛び降りる。綺麗に受け身を取ったが、脇腹の傷が広がり、呻いてしまう。路地裏。また、分身体を出そうと口を開けようとした。

 しかし

 

「!??!」

 

 口が開かない。

 

 屋上からインデックスが落ちてきた。ろくな受け身もとらずに、バタンと。しかし、インデックスは平気なように立ち上がった。パタパタと埃を叩いた。

 

「言ったはずなんだよ。類感魔術は、形や役割、()()に類似するものと関連付けるんだよ」

 

 インデックスが見せたのは、トラバサミ。小さな小さなトラバサミ。ネズミ捕りなんかで使われるなんてない道具。

 しかし、その口は紐で固く結ばれて開かないようになっている。まるで、大きな口が開かないように、きつく。

 

 インデックスはそれを地面に落とし、踏みつけた。エクトプラズムの顎に衝撃が走った。顔を押さえる。インデックスは何度も何度も踏みつける。トラバサミが変形する。その度に、エクトプラズムの顎や口から血が出る。

 

「ふぅ~……こんなものかな? これ以上すると、オリジナルとレプリカがあまりにも乖離して、リンクできなくなっちゃうんだよ」

 

 しかし、それでもエクトプラズムの個性を封じるのには十分だった。

 

「さてと……、折角だから、あなたには、私の新しい力を見せておこうと思うんだよ。……ん? でも待って。あれが新しい力なら、今まで見せた類感魔術も感染魔術も新しい力かも?」

 

 まぁいいか、とインデックスはカード束を取り出した。辺り一面にインデックスがカードを撒いた。カードがバラバラバラと路地裏の壁や地面に張り付いた。

 

世界を構築する五大元素の一つ、偉大(MTWOTFFTOIIGOIIOF)なる始まりの炎よ

それは生命を育む恵みの光にして、邪悪(IIBOLA IIAOE)を罰する裁きの光なり

それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき(IIMHA IIBOD)闇を滅する凍える不幸なり

その名は炎、その役は剣(IINF IIMS)

顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ(ICR MMBGP)

 

魔女狩りの王(イノケンティウス)

 

 炎の巨人が現れた。路地裏は灼熱の地獄と化した。エクトプラズムは巨人が誕生した熱風で、弾き飛ばされた。

 表通りに出た。

 

 通行人が驚く。エクトプラズムはハッとした。一般人を巻き込む訳にはいかない、と。しかし、

 

「安心していいんだよ。今日はあなたを殺すだけにとどめるから」

 

 後ろから声がした。優しい声だった。飛び退く。しかし、背中一面にカードを叩きつけられた。そこには読めない文字が書かれていた。

 

「チェック・メイト、なんだよ」

 

 エクトプラズムは炎に呑み込まれた。

 

 




原作キャラを殺してしまった
これは大罪かもしれない
しかし、それでも、抗えなかった
私も狂人、破綻者だ。
まぁ、どうでもいいけどね

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