とある個性の禁書目録 作:とある作者の狂人編集
焼死体が横たわる、通り。誰もが沈黙した。
その中で私は膝をついた。
(なるほどなんだよ。魔力を使い切るって、こんな感覚なんだね)
意味のない戦闘だった。ただ、ヒーローだから殺した。意義も正義も教義も信条もない、殺人。
恨みはない。逆に、尊敬すらしていたかもしれない。私の鼻をへし折った英雄として。
だけど、殺した。
「おい、あれってエクトプラズムだよな」
「まさかプロヒーローが殺された?」
「嘘、嘘、じゃあ、あの子はヴィラン?」
「でも、子供だぞ」
「しかし、個性があれば関係ない」
不安と憶測が飛ぶ。その快感。しかし、人殺しは、流石にまずったか? と若干不安になる。
エクトプラズムは、特徴的な頭部をしているため、すぐに特定される。みんなから愛されている証拠だ。ご遺体もその特徴を残している。
宗教では、殺人をタブーとしている。もし、私の宗教防壁がイギリス清教だった場合、私は自分の知識にある10万3000冊の毒に侵されるところだろう。
魔導書とは、異界の術が書かれており、異界はこちらの世界にとって毒。長くさらされ続けると狂気に染まる。あるいは、もう染まっているのかもしれない。
これ以上染まらないためにも、私は宗教防壁を幼い頃構築した。
宗教防壁とは、宗教観を用いて悪意から人を守る術。宗教観そのもの。宗教観、特に信じることで救われるものと覚えておけばよい。
10万3000冊の知識が流れ込んだ時、私にはそれがなかった。異界の知識が無防備な子供を直撃したのだ。
まぁ、だからといって、なんだという話だ。悲劇のヒロインごっこはお好きじゃない。それでも狂気に浸る感覚は恐怖で居心地が良かった。あのまま堕落するように人間としての機能を剥奪される幸福は癪だったので、新しい宗教を私の中だけで作って、その宗教観を己に課した。空飛ぶスパゲッティモンスター教ってか? 違うけど、私のはイギリス清教をベースとしているはずだ。おそらく……
基本的に不合理な宗教観を作った。すでに狂っていた身としては、それしか方法がなかった。
宗教観は守る必要はない。ただ
私の宗教観めちゃくちゃだよ。
溜息を吐く。
「あ、あのー……大丈夫ですか?」
声をかけられた。正直きついが、対応せねば。
「あ、はい。うん、大丈夫かも」
「あの、ここは危ないので、ヒーローが来るまで、離れていましょう。この方を……焼いたヴィランが近くにいるかもしれません」
目の前にいますよー。とはいえ、このままバックレた方がいいだろう。が、その前に確認するべきことがある。
私はそっとエクトプラズムだったものに近づく。手を翳す。
やはり仮説が実証された。つまり、個性は魔術で魔力を消費する。魔力が枯渇した今の状態だからこそはっきりと魔力を感じる。エクトプラズムだったものから、確かな魔力を感じたのだ。
私はちょっとした満足感と、大きな喪失感とで、声をかけてくれた人についていく。
とりあえず、ここから離れよう。
「どうした! どうした! 何があった!」
大きな声。テレビやニュースでしか聞いたことがない声が今すぐそこにいた。振り返る。オールマイトがナンバーワンなら、彼はナンバーツーだ。
「……遺体か。先程のヴィランがやったのか?」
先程というのは、脳無のことだろうか。まぁ曖昧に頷いておく。ヒーローが来たら逃げるのが常識だ。
「き、君は!?」
エンデヴァーの隣を見ると、大人に背負われた緑髪の少年。……USJの時に見た顔だ。
いや、待て。あいつもいる半冷半熱の
「つっ!?」
身体が氷に覆われていく。
「
氷の浸食が止まった。バリンと抜け出す。走る。
「待て! 事情を聞きたい。そこを動くな!」
炎が囲んだ。熱風が強い。一瞬足が止まる。歩く教会なら無傷で出られるが、風が強くて前に進めない。
「焦凍。どういうことだ?」
「あいつは、USJ襲撃事件で、現れたヴィランの一人だ」
「……なるほど」
……ここは腹をくくるか。
「まったく、……まったくなんだよ!」
これはとある主人公のセリフだが、今だけは言わせてほしい。
「不幸だぁー!」
〜〜〜〜〜
「貴様。このご遺体は、お前がやったのか?」
「そうなんだよ! まさかナンバーツーヒーローに現行犯されるとは思わなかったんだよ!」
やけだやけ。
「焼き殺したようだが、貴様の個性か?」
「まぁ、そのようなものなんだよ」
「貴様、何歳だ?」
「ん? 11歳なんだよ」
「……なら、少年院にぶち込む。大人しくしてろ」
少年院。誰もが憧れる少年院。三食昼寝付き。でも、不自由だ。行く理由はない。
魔力は少し回復した。だから、あれができる。霊的蹴ったぐり。
私が膝を急に折った。類感魔術で、エンデヴァーが膝をついた。所謂、魔術的膝カックンだ。当たりがざわついた。その瞬間を逃さず、畳み掛ける。━━━━逃げる方向で
「
炎が切り開かれた。その間を私は駆ける。
「小娘。逃すと思うたか!」
黄色いコスチュームの小さいおじいさんが飛んできて目の前に着地した。脇にそれる。が、蹴られた。
ふっ飛ばされて、ヒーロー達がいる方向へ。そのまま壁に激突。壁は罅が入る程度で、陥没はしなかった。歩く教会で、ノーダメージ。バランスを崩して膝をつく。
「私から逃げるとは、大胆なヴィランだ」
上から声が降る。見上げると、エンデヴァー。周りを見ると、氷炎と緑髪と、あとメガネ。他数名のヒーローが警戒態勢だった。
「……見逃してくれたり、は?」
「すると思うか? 現行犯で逮捕する」
だよねぇ
どうする? 魔力はない。いや、あるっちゃあるけど、
一度捕まって、脱走という手もあるが、ここまでのことをしたのだ。当然、拘束が強くなるだろう。逃げられるとも思えない。
絶体絶命。インデックスという仮面がなければ、顔が引きつっていただろう。
手元には、
使う必要はなかった。しかし、あれは礼儀みたいなもので、エクトプラズムを敬って、今私が出せる最大の技をぶつけたのだ。確実に殺すためにも。
まぁ、今あっても、一瞬しか使用できないが。
とりあえず、立ち上がる。警戒度が高まる。何か行動すれば、相手を刺激してしまう。場を和ませるためにも、気の利いたジョークの一つや二つ、飛ばせればいいのだが……。
「まぁまぁ、落ち着くんだよ。11歳の少女を相手に大人げないんだよ」
「ヴィランに対して油断はしない」
取り付く島もない。
ん? よく見ると、エンデヴァーとおじいさんを除く、生徒や他のヒーローは結構怪我をしている。脳無戦で負ったのかな? しかし、そこが付け入る隙だ。
「
私はカードを取り出した。氷炎の生徒から氷が走った。詠唱を続ける。
「
炎剣が発生。しかし、一瞬しか出せない。なら、と炎剣を地面に叩きつけた。大爆発。上空に飛ぶ。
途中、氷炎の個性で身体半分凍りついたが、相殺。きらきらとアイスダストが舞う。そのまま、ビルより高く飛ぶ。
「
もういっちょ、炎剣を出した。
それを爆発させ、ビル屋上の地面に激突。痛みはない。歩く教会強すぎ。
すぐに立ち上がって、駆ける。
「小娘、待たんか」
「ゲッ! もう上がってきたの、おじいちゃん」
「わしは、グラントリノだ。小娘の名前は?」
「……インデックス、だよっ!」
避けるように駆ける。が、足裏から空気のようなものでバーストしたおじいちゃんが通せんぼ。このままでは他のヒーロー達が上がってくる。
「待たせた、ご老人」
赤々と燃え盛るエンデヴァーが上がってきた。速いだろ。他のヒーロー達は上がってこない。怪我が酷かったから、おそらく下で待機しているのだろう。これで少しは見通しがよくなった。
私はナイフを取り出した。
「そんなナイフで何ができる?」
「ナイフだけじゃ、何もできないんだよ。だけど、」
次に取り出したものを見たエンデヴァーとおじいちゃんが眉をひそめた。
型紙を取り出したのだ。ただの紙。それを半分に折って、紙にナイフを刺し、十字架を作る。
……即興で作るには難易度が高い魔術だが、やるしかない。
魔力を練る。魔術式を演算する。頭の中で魔法陣を正確に描き、術式を起動させる。
「━━━━シモンは『神の子』の十字架を背負う!」
おじいちゃんが倒れた。正確に言うと、重さに耐えられなかったのだ。
この魔術は、『神の子』の処刑で、弟子のシモンが十字架を肩代わりしてゴルゴダの坂に運んだ伝承を元にしたもの。
効果は、周りの人の荷物を全て肩代わりさせる、というもの。その効果をおじいちゃんにかけた。そうすると、荷物の重みに耐えられず、頭が地面に落ちる。そして、身動きがとれなくなる。
エンデヴァーにしなかったのは、おじいちゃんよりも機動力がないと思ったからだ。
「ご老人!」
エンデヴァーが戸惑っている(本当に戸惑っているかどうかは不明だが、その)隙に駆ける。エンデヴァーが炎の柱を私に伸ばす。しかし、計算通り。
私はなるべく身体を広げて、炎の熱風に身を任す。身体が押され、上空へ。そのまま数棟のビルを超え、二車線道路に叩きつけられた。なんとか逃げ切れたようだ。車に轢かれた。転がって、駆ける。後ろから止める声がしたが、無視して、とりあえず、遠くに。
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博打。10万3000冊の魔術知識があるための、強引な賭け。成功する確率は5~6割くらいだった。上手く行ってよかった。
児童養護施設の職員から奪ったお金で電車に乗る。子供が一人夜に、と思われて声をかけられたが、「降りる所でお父さんが待ってるんだよ」作戦で何とか乗り越えた。できるだけ遠くに行く。
電車を降りて、知らない駅。なるべく遠くを選んだから、終着駅。その一駅前。田んぼが並ぶ、夜の田舎道を進む。このあと、どうしようか、と思っていると、後ろから声をかけられた。
「インデックス。ご苦労様です」
「うわっ! びっくりした!」
振り向くと、黒霧がいた。気配出せよ。
「んんっ! 黒霧、久しぶりなんだよ! ……もしかして、保須から見てたのかな?」
「ええ、戦いぶりを拝見させていただきました。そうですよね、死柄木弔」
「……」
黒い霧から死柄木が出てきた。
「とむら! 久しぶりなんだよ!」
「……ああ、面白いものを見させてもらったよ。イライラしていた気分がスカッとした」
「? とむらは何か怒っていたの? ダメなんだよ? すぐに癇癪を起こすのは」
黒霧が、少し笑った。死柄木は明らかに不機嫌になった。
「これだから、ガキは嫌いなんだよ」
「むっ。私はこれでも精神年齢はとむらより上なんだよ!」
「お前が? はっ、笑わせる」
まぁ、見た目がインデックスじゃ、しょうがない。口調も似せているから、むべなるかな。
ついでに、言ったかもしれないが、インデックスの口調を真似している理由は、類感魔術で、なるべくオリジナルの力を授かろうとしたためだ。意味はある。
「そうそう! 黒霧! 私、怒っているんだよ?」
「はて? 何に怒っているのでしょうか?」
「USJ事件の時、私を置いていったことなんだよ!」
「あの時は、申し訳ありませんでした。しかし、やむを得なかったと、ご理解していただいていると思います」
「まぁ、ねぇ。とむらがやられちゃったからねぇ」
「おい、俺のせいにするな」
「ま、最終的には、迎えに来てくれると思っていたから、水に流すんだよ! これからもよろしくなんだよ、とむら、黒霧!」
そして、黒霧の能力でバーに戻ってきた。
補足です
今回、霊的蹴ったぐり、所謂魔術の膝カックンが出ました
しかし、第一話での魔術的膝カックンは、霊的蹴ったぐりではありません
あれは、
詠唱が書かれていませんでしたが、演出です
ご了承ください
それと、孤児院での出来事をオールマイトに言っていた件
あれは、私のミスです。
しかし、書き直すのが面倒臭いので、適当に伏線にしました
ご了承ください
粗が出てくる出てくる