とある個性の禁書目録   作:とある作者の狂人編集

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自動書記(ヨハネのペン)

「警告第2章第6節。出血による生命力の流出が一定量を超えたため、強制的に自動書記(ヨハネのペン)で目覚めます。現状を維持すればロンドンの時計塔が示す国際標準時間に換算しておよそ15分後に私の体は必要最低限の生命力を失い絶命します。これから私の指示に従って適切な処置を施していただければ幸いです」

 

 意識がある。しかし、体の自由がない。自動書記(ヨハネのペン)が起動している。って、15分で死ぬ!? ヤバい!?

 それはそれとして、ペンデックスは正しく起動したみたいでよかった。無理矢理実装したから、最悪リソースだけ取られて起動しないとかあり得たから、よかったよかった。

 

「エラーエラーエラー。自動書記(ヨハネのペン)に致命的な欠陥があります。エラー。自動書記(ヨハネのペン)は3分後に強制終了します。警告。警告。敵対勢力の存在を確認しました。援助者の不在をかくにんしました。エラー。自動書記(ヨハネのペン)は終了処理を途中で強制停止します。エラー。自動書記(ヨハネのペン)の終了処理が停止したため、自動書記(ヨハネのペン)の魔術的符号が破損しました」

 

 エラー出とるじゃん!? インデックスの命優先しろよ!?

 それはそれとして、何で私は意識があるんだ? そう言えば原作のインデックスも若干意識あるみたいなことを言っていた気がする。でも、それにしてははっきりとしているが。……まぁ、いっか。

 

 カクカクカクと動くペンデックス。折れて肺に突き刺さった肋骨なんて関係なく、垂直に上体を起こす。その反動で血がドバッと出る。折れ曲がった足をものともせず正座になる。そのあまりにも人間味のない動きに、オールマイトの顔が引きつっている。明らかに異常事態。私は痛みを感じていない。

 

「おい! オールマイト! どうなってる!」

 

 私が聖人の力を出せなくなったため、イノケンティウスが消滅した。エンデヴァーがこちらに来る。

 

「私にもわからない! しかし、戦いは終わってない!」

「交戦意識を確認しました。エラー。自動書記(ヨハネのペン)の破損と私の身体の危機的な状況により、今までの私の行動をトレースします。迎撃態勢に変更します。警告、第三十五章第十八節。『硫黄の雨は大地を焼く』────完全発動まで5秒」

 

 あ、大規模魔法やめてもろて。私にも被害出るやつじゃん。

 4、3、2、1。発動。灼熱の矢が空から降り注ぐ。赤とオレンジの大粒の雨。それこそ人ぐらいの大きさの。

 

 硫黄と言ったが、現実には酸と火炎の効果がある魔術。純粋な魔力の硫黄。それが空から降り注ぐ。これは聖書のソドムとゴモラの天罰を模した魔術。当然、報道ヘリはプロペラを破壊されて、落下。オールマイトが駆け出し、乗組員は助け出される。ヘリが墜落。

 エンデヴァーは自慢の炎で傘を作り防御。しかし、雨だれが跳ね火傷。苦悶の表情。傘を大きく広げた。

 範囲攻撃だから、避けるのが大変そう。一応普通の雨より雨粒の間隔は広い。そのため避けようと思えば避けられる。しかし、それは超人の話であって、普通の人はなすすべもなく死ぬ。

 そういう私の隣にも硫黄の雨が降り注ぐ。奇跡的に直撃は免れている。ペンデックスは微動だにしない。

 

 オールマイトが一般人を抱えて、背中で硫黄の雨を受け止める。コスチュームが完全になくなった。煙を上げている。

 

「エンデヴァー! ここは一時退却だ!」

「しかし!」

 

 エンデヴァーはこちらを警戒している。おそらく追ってくると思ったのだろう。そんなことは無理です。

 オールマイトが駆け出す。が、ぼふんっ、と煙。姿が細身の姿になる。

 

「まさか、効果が……っ!」

 

 聖歌の効果が切れたらしい。ヤバい。オールマイトには十字架の上で死んでもらう必要がある。ここで死んでもらったら困る。

 ペンデックス! 止めろ! 攻撃禁止!

 

 ……当然。何の反応もない。あわや、オールマイトに硫黄の雨が、という所でエンデヴァーの炎の傘が覆う。

 

「仕方ない。一時撤退だ!」

 

 その場にいたヒーロー達ができるだけ一般人を抱えて、あるいは瓦礫の陰に運べない人を隠して、硫黄の雨が降らない場所へと向かう。私の後ろに雨粒が落ちる。はねて背中にかかる。歩く教会の効果は今はない。きっと、大きな火傷が出ていることだろう。

 攻撃範囲はかなり広い。ソドムとゴモラを滅ぼした伝承が元だ。神野は滅ぶだろう。早く逃げてね。まぁ、オールマイトが死んでなければ、問題ないが。

 

「敵対勢力の撤退を確認しました。これより禁書目録の修理を実行します」

 

 修理って。一応人ですよ? 物みたいに言わないで。

 ペンデックスが瓦礫に血で魔法陣を描く。硫黄の雨が降り続いている。こんな大規模魔術を使いながら違う動きを同時進行できるんだ……私はずっと集中してないと無理なのに。

 ペンデックスが何かをブツブツ言っている。星座と時刻と日付。空を見上げる。雨なのに晴れとはいかに。日付は今朝のを覚えているので問題なし。あとは星座の位置で時刻を確認。

 瓦礫で祭壇を作る。簡易神殿を作ろうとしている。しかし、ここは閉じられた空間ではない。外だ。神殿を構築できないはず。

 

「第七章十七節、燔祭を行います。すでに贄は用意され、的確に場所を把握する必要があります」

 

 そして、両手の平に一杯の小石を集めて、魔法陣の上に投げて撒く。小石が跳ね的確な位置に止まる。占いの一種だ。

 

「死傷者の位置を確認。これにより燔祭を行います。イノケンティウスを緊急強制起動します」

 

 炎の巨人が現れた。硫黄の雨と業火の巨人。ちょっとした世紀末だ。叫び声がする。生きたままイノケンティウスと硫黄の雨で焼かれる者の声。天使召喚の生贄が完了した。

 

「指定した位置の死傷者を焼却しました。数を確認。……条件はクリア。天使を降臨させます。主人格」

(……え? 私?)

「あなたの協力が必要です。天使を思い浮かべてください」

(って、さっきは私の言葉を無視したのに、自分の要求は通そうとするとは……)

「死にたいのですか?」

(従います)

 

 どっちが主人格かわからん。というかペンデックスと話せるというのは不思議だ。原作インデックスはどうだったのだろうか。

 

「聖歌」

 

 ペンデックスが聖歌を紡ぐ。私は天使を思い浮かべる。それっぽいのでいいのだ。ここの場合。天使自体は形がない。それを具体的な偶像として今回降臨させるのだ。その偶像を簡易的に想像する。姿を想像して、偶像を創造する。

 ペンデックスが目を閉じている。聖歌に集中しているのだ。そのため、見えない。しかし、流石に硫黄の雨は止んでいる。イノケンティウスも消えているはず。これは死者蘇生に近い回復魔術なのだ。私も集中せねば。

 

 天使。短い金髪。白い鳩のような翼。中肉中背。白い肌。目は翡翠色。身長は150cmジャスト。黄金比の身体。手足。

 胸は……天使は中性。よって、なし。私と同じにする。決して巨乳を恨んでいる訳ではない。ないったらない。

 えっと、白のワンピース。裾は膝まで。半袖。……これくらいでいいだろう。

 

 心地良い温かさが身体を包む。痛みが引く。傷口が涼やかな感覚になる。

 ペンデックスが目を開けた。

 

「傷口の修正を確認。生命活動への支障なし。これより自動書記(ヨハネのペン)を終了します」

 

 ペンデックスが奥に引っ込んだ。そして、急に体の感覚が戻る。重い。横に倒れる。頭を打った。痛い。動けない。何とか懐から、機械を取り出す。スイッチを入れる。

 

「私を安全な所に運んで……」

 

 しばらくすると、身体が持ち上げられる。姿は見えない。当然だ。私を抱えているのは、目隠しと神隠しのルーン文字を刻まれた脳無だ。以前、AFOに私用にカスタマイズしてもらったもの。それをおばあちゃんの家に呼んで、色々としたのだ。色々と。

 とりあえず、ひと気のない、ヒーローがいない場所へ向かおう。

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 あれから数日が経った。山中に潜んでいた。身体が動かないので、脳無に狩りをさせ、横から指示を出し料理をさせる。意外と細かい作業ができる。

 当然、情報は入らない。オールマイトはどうなったのか。街の様子は。AFOは捕まったのか。ヴィラン連合のみんなは。

 いくつも疑問が生じたが、後回し。とりあえず、体力を回復させないと。

 

 

 

「よっし」

 

 何とか立てる。歩く教会も聖人の力をコントロールする術もない。まずはそちらから準備しよう。それから情報を取得した方がいい。それには腰を落ち着けられる場所が必要だ。

 そうだ。あの家に行こう。おばあちゃんがいた。おばあちゃんと過ごした家に。

 

「脳無。私を抱えて」

 

 脳無の肩に乗る。私にも脳無にも目隠しと神隠しのルーンで姿は見えないはず。行こう。

 

 

 

 結論から言えば、家は空き家になっていた。まだ行政処分の対象になっていないらしい。ありがたかった。

 まずは歩く教会から作り直そう。おばあちゃんの娘の服を着て、フードを目深に被る。

 

 

 

 二週間後、歩く教会が完成した。今回は、この服に聖人の力をコントロールさせる魔術を組み込んだ。これで最強の矛と盾が完成した。弱点としては、相変わらずウィンプルが取れると【歩く教会】の効果がなくなること。

 これはウィンプルによって十字架の機能を完成させるためだ。まず【歩く教会】は言葉通り教会を模倣している。類感魔術だ。教会というのは一番高い所に十字架を設置するものだ。もちろん例外はあるが、それは教会としての効果が薄い。だから、ウィンプルは必要だし、外したら歩く教会の効果がなくなる。

 悩ましいことだ。

 

 また、脳無にも魔術的な措置を施した。頑丈なので、解剖して内臓や骨格の位置を調節して、聖人と同じ構造にする。より魔術的に強化する。この脳無には〈イエスを殺す〉役を任せたい。普通の人とはいえない怪物だが、素体は人だ。人が神を殺すという構図を作りたい。私は神に近いから上手く魔術的な効果が得られないかもしれないからだ。

 

 それはそれとして、今度は情報収集が必要だ。それにはヴィラン連合と合流するのが早くていいだろう。しかし、どう合流しようか。

 

 とりあえず、脳無を家に残し、インターネットカフェにでも入ろう。世間での情報も取得したい。

 おばあちゃんの家は電気が止められていたので、無理だった。ついでに、家は人払いのルーンをいたる所に刻み、魔法陣を適切な場所に設置し、まさしく神殿のような構造になっている。簡単に破壊できないし、人も寄せ付けない。そもそも見つけられないだろう。

 

 インターネットカフェに入る。お金はおばあちゃんの家の隠し扉にあった。ダウジングで探した。これも魔術。

 

 パソコンを操作して、ニュースを確認する。動画を見る。どこもかしこもオールマイトで探しやすい。

 

 感想。オールマイトはもうダメだ。世間に弱体化した姿を晒したのだ。もう、神器の触媒には使えない。正義の象徴でないオールマイトは必要ない。まぁ、一応試してもいいが、期待薄だろう。

 しかし、神器が完成しなければ、最強に至るのは難しい。今の状態では、大規模魔術が限界。最強に至るには、魔術ではなく、()()が必要だ。

 

 魔法は本当に何でもできる。本物の神の領域と思って問題ない。それには神器が必要だ。【ゴルゴダの十字架】【ロンギヌスの槍】【ヨセフの聖杯】。

 

 さて、正義の象徴が消えた。触媒に使える適切な命として残ったのは、私のみ。しかし、次も生まれ変われるとは限らない。それも同じ世界に。それだと私は無駄死にして、神器だけが残る。

 なら、当然、次の考えが浮かぶ。

 

 新しい象徴が必要だ。

 

 誰がいいのか、ここからはヴィラン連合と合流しなければならない。面倒臭い。今ヴィラン連合はどうなっているのか?

 そう言えば、AFOはどうなった? 調べると、死んでいた。硫黄の雨でほとんど溶けて死んだそうだ。遺体は厳重に保管されるとのこと。……死柄木が、私を憎んでいる可能性が出てきた。ヴィラン連合と合流できないかも。合流できたとしても、仲間に入れてもらえるかどうか……。

 まぁ、それは後で考えよう。AFOの死はこちらにとってデメリットしかなかったのに。

 

 オールマイトがカメラに向かって、「次は君だ」とか言った映像も見た。なるほど、これはまだ神器の材料に使えそうかも。まだまだ英雄としての機能がありそうだ。試してみるのも良いかもしれない。

 さらに、その行為。使えるかも。

 

 そこで私のニュースが目についた。ニュースやSNSを調べていく。公共放送では、未成年のため顔と名前の表示はない。しかし、この間の報道と、ネットの書き込みで完全に容姿と服装がネットに公開されている。犯罪歴も事細かに。本名もバレてる。今世でのだが。

 まぁ、アグネスタ孤児院大量殺人の生き残りとか言ってしまったから自然に導けるだろう。まぁ、二度と名乗らない名前だが。

 しかし、魔術については世間一般に公表されていないようだ。全て脳無と同様、個性が複数あるとされている。まぁそうかも。説明しても混乱させるだろう。おそらくプロヒーローや警察には共有されているはずだ。

 

 ネットカフェを出る。そろそろ金銭問題が出てきた。おばあちゃんの家に隠されていたお金はもうほとんど底をつきかけている。どうしよう。

 

 そこで、気がつく。警察が多い。ヒーローもいる。なぜだ?

 一人のヒーローがこちらを見た。警察と話し合っている。みんなこちらを見た。嫌な予感がする。

 

「すみません」

 

 警察に声をかけられた。全員が来た。完全に私を狙っていた。

 

「……はい、なんでしょう」

「ここにヴィランが潜伏していると通報がありました。そのため、念のため、皆さんの顔を確認させてもらってます」

「ヴィラン……もしかして、インデックスですか? 報道で見ました」

 

 警察の眉がピクリと動いた。そして、頷いた。

 

 なるほど、つまり私のことか。直感が告げた。まぁ、有名人だし仕方ない。どこかでバレたか、以前脱走した時の場所から把握されたか。そして、今までいなかったのに、突然生えた、フードを深く被った少女。怪しいと思うには、充分だろう。

 私は素直にフードを外した。

 

「!」

 

 全員が驚いた顔をした。沈黙。そんな、と声が漏れている。

 

「……もう、いいですか?」

「あ、はい! お時間いただきありがとうございます!」

「いえ、頑張ってください」

 

 みんなが呆然として見送る。私はフードを被り直す。

 理論はデスマスクだ。被るとその人の素顔になれる。それを、本当の人の顔を剥いで使う。今顔に貼っているのがそれ。感染魔術と類感魔術の複合で、顔を変えることができる。

 そのまま立ち去る。しかし、尾行されている可能性を考慮する。さて、どうしようか。

 

 そして、壁にシールを貼り付けた。

 

 

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