「──いやあ! 本当にアルファベットの作品は平凡でつまらないよ! よくもあんな月並みなストーリーが書けるもんだ! ああ、おかしくてたまらない! あっひゃっひゃっ!!」
机を叩きながら、そう笑い飛ばすのは──
黒いシルクハットを被り、上下男物のスーツを着た男装の麗人。
悪名高き、〈文芸評論家ナーガルーダ〉であった。
〈文学サロン〉で読書している誰もがナーガルーダの奇行と発言に眉を顰める。いまにもペッ、ペペペッと唾を吐きそうな勢いだ。
なぜ、こんなにも嫌われているのか?
答えは単純にして悪辣。
文芸評論家ナーガルーダには、ある悪癖があるからだ。
まずは一つ目。
作家をモノのように扱うこと。
次に二つ目。
作家の才能を潰そうとすること。
最後に三つ目。
気に入った作家を囲い込み、独占しようとすること。
この三つの悪癖が、ナーガルーダが人々に嫌われる所以である。
たとえ、この悪癖を知らずとも、ナーガルーダと交流を持てばいずれ、嫌でも知ることとなるだろう。
──ところで。
この文学サロン内にて、ナーガルーダの悪癖を知らぬ者がいた。
それは──
我らが主人公、〈悪役作家アルファベット〉である!!
おーっほっほっほ!! 皆様、ごきげんよう!!
このわたくしこそが──
悪名高き〈悪役作家アルファベット〉ですわ!
そして、向こうでわたくしの作品をディスっておられるのは、ある意味有名な〈文芸評論家ナーガルーダ〉様じゃありませんの!
たしかにわたくしは、大衆受けを気にして小説を書いておりますが、さすがに酷い言い草じゃなくって!?
戦いは数、と言うように作家だって本が売れた数、つまり、発行部数がモノを言うのですわ!
売れない作家は即、ジ・エンドですの!
ですから、マニア受けよりも大衆受けを狙うのは、あったりめーですわ!
まったく……相変わらず、ナーガルーダ様は作家の気持ちがわからないお方で困ってしまいますわね……。
言いたいことはわかるのですけれど、ナーガルーダ様のおっしゃることはあくまでも理想論であって、現実に根ざした考えではありませんわね……。
ま、そこがナーガルーダ様らしいのですけれど。
でも、やっぱり……苦手ですわ。
もちろん、作品が悪く言われているから、というのもありますけれど……。
ナーガルーダ様って少々、残念な趣味をお持ちでいらっしゃるのよね……。
どんな趣味を持とうが本人の勝手ですけども……おほほ。
さすがにカニバ……い、いいえ、なんでもありませんわ!
おーっほっほっほ!!
ナーガルーダ様の評論を黙って聞くぐらいだったらいっそ、ヴィクトリア嬢になじられているほうがまだマシですわ!
というわけでわたくしはお暇いたしますわ!
皆様、ごきげんよう!
おーっほっほっほ!!
悪役作家アルファベットが人知れず、逃げるように立ち去ったあとの文学サロンでは。
「ああっ! 本当にっ! なんてつまらない小説を書くんだ、アルファベット! これならボクでも書けそうだな! あっはっはっは!!」
淑女の嗜みなんてクソ喰らえ、といわんばかりに〈文芸評論家ナーガルーダ〉は、アルファベットの作品を貶し続ける。
無論、そんなとち狂った女には、誰も近づこうとはせず。
一人、また一人と離席し、文学サロンを出ていく。
さて。
アルファベットの作品を貶し続ける、ナーガルーダの心中やいかに────
うわあああああああああああああああああああああ!!
アルファベットおおおおおおおおおおお!!
もったいない! 君はもったいない!
君の才能を有象無象のために使うなんて、もったいない!
君の才能はボクのために使うべきだ!
君の才能はボクのためにあるんだ!
君は、君は……! 君はボクのために、ボクのためだけの小説を書くべきなんだ!!
どうしてだああああああああああ!!
アルファベットぉぉおおおお!!
どうして、ボクのためにその才能を使ってくれないんだい!?
ボクは君に書いてほしい小説がたくさん、あるというのに!
まずはカニバリズム! 次は四肢欠損! そして──
ふっ、ふふっ、ふふふふふふふふ……!
男同士がくんずほぐれず……ぐふふふふ……!!
君がッ! ボクのためにッ! 小説を書いてくれる日が来るまでッ!
君の作品を悪く言うのをやめないッ!!
早くボクの元に堕ちてこい! アルファベット!!
君を孤立させて、君の評判を悪くすれば、きっといつか……君はボクのモノになってくれるよね……?
あああああああああああああああ!!
早く、早く、早く、ボクのところに来て!
アルファベットおおおおおお!!
わかってる。ボクはわかってるよ。
本当はボクのために小説を書きたくて、仕方がないんだよね。うんうん。
でも、君は作家だから、大衆の好みに合わせて小説を書かないといけない。
そんなの……間違ってる。
だから、ボクが……どんな手を使ってでも君を失脚させてみせる。君を失業させてみせる。
君を、小説家という呪縛から解放してあげる。
待っててね。
ア・ル・ファ・ベッ・ト♡
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プロフィール②〈文芸評論家ナーガルーダ〉
〈文芸評論家ナーガルーダ〉
『君がッ! ボクのためにッ! 小説を書いてくれる日が来るまでッ!
君の作品を悪く言うのをやめないッ!!』
好きなタイプ:メチャクチャな小説を書く天才
嫌いなタイプ:大衆向けの小説を書く天才
好きなもの:刺激が強い作品
嫌いなもの:刺激が弱い作品
嬉しいこと:苦しみと不幸を共有すること
苦手なこと:感情を共有すること
嫌いなこと:孤立すること
怖いもの:拒絶
好きな小説のジャンル:リョナエロ、エログロ、ボーイズラブ
趣味:めちゃくちゃハードで男すらドン引きするエキサイティング!! でショッキング!? なオナニー