親愛なる貴方達へ   作:マアブルゥ

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 あと今回の話はリムル視点の方が書きやすかったのでリムル視点にしていますが、リムルの心の中のおじさんが前面に出てますので気をつけてください。


夜の蝶にて

【リムル視点】

「「「かんぱーい!!」」」

 

 ロングソードの納品が無事に終わったあと、カイジン達が礼をしたいと言い出した。最初は断ろうとしたのだが

「綺麗な姉ちゃんがいる店だぞ」

と言われてしまえば、断る理由などない。

 

 という訳でこうしてやって来たのが【夜の蝶】という店だった。

どんな美人な姉ちゃんがいるのかと期待に胸を膨らませて店に入ると、そこには絶景が広がっていた。

 

「「「いらっしゃいませー!!」」」

 

 うひょー!!

凄い!!想像以上に綺麗なお姉ちゃんが並んでる!!

 

 耳が長い!!エロフ!……いやエルフだ!!

しかも服がとんでもなく薄い!!

それでいて、際どいところが見え…そうで見えない!

くっ、このお姉ちゃん達……見えそうで見えないラインを死守してやがる!やるな!くそう!

 

「きゃーー!!かわいい!!」

「ちょっとぉ!わたしが先に目をつけてたのにぃ!!」

 

 ぽよよん!

うおぉぉぉ!!美女エルフの柔らかい部分が全方位から当たってくる!!

ここは楽園ですか!?

 

「えーと……楽しんでくれているみたいで良かったな」

 

 はっ!?しまった!!

俺としたことが、つい浮かれてしまったようだ。

 

「え、えーと……それほどでも?」

 

 …流石に今さらそんなことを言っても誰も信じないだろう。

でも仕方ないじゃないか。俺、今エルフの膝の上に乗せられてるんだぞ?

感動で胸がいっぱいいっぱいだよ!!

 

「あっ、ちなみにタケルはどうしてるんだ?」

 

 ちらっとタケルの方を見ると、少し離れた席で綺麗なエルフに挟まれて酒を飲んでいた。

タケルは160センチもない低身長で、しかも童顔。

そのせいか、どう見ても夜の店で背伸びしている子供にしか見えない。

まぁそのおかげでエルフ達に「かわいい」と頭を撫でられているんだが。

 

 それにしても俺だったら凄い喜びそうな状況なのに特に反応もない。

…もしかして女慣れしてるとか?

いやそれは無さそうだな、単に純粋なだけだろう。

 

「ねぇ、スライムさん。これやってみない?」

 

 褐色のエルフがそう言って、水晶を取り出した。

い、一体それを使ってどんな妙技を…

 

「私、占い結構得意なのよ。お客様からも評判いいんだから」

 

 …ですよねー。

べ、別に変なことを期待してたわけじゃないからな?

 

「それで、何を占ってくれるんだ?」

「そうねぇ、何がいい?」

 

 何にしようか。

定番なら金運とか健康運とかだが……。

いや、流石に無難すぎるな。

 

「それならスライムさんの【運命の人】とかどう?」

「あ、それいいかも!」

 

 え゛!?

運命の人か……。

普通に考えたら嫁のことだよな?

 

 確かに嫁が出来たら嬉しい……が、スライムの嫁ってどうなるんだ?

いや、そもそも運命の人が必ずしも嫁とは限らないか。

 

「あ、映った!」

 

 も、もう!?

まだ心の準備が…できれば可愛い女の子がいいな……。

水晶を覗き込むと、そこに映っていたのは黒髪の女性だった。

片頬に火傷の跡がある、とても綺麗な女性だ。

 

「この人が運命の人……?」

 

 初めて見る顔のはずなのに、妙な既視感がある。

会ったことはないはずだ。

だけどこの顔、どこかで…

 

 …あっ!!

生前、最後に見た夢に出てきた俺(美少年)にそっくりだ!

どうりで見覚えがあるわけだ。

でも、髪色を除けば瓜二つと言っていいほど似ている。どうしてだ?

 

「おい、その人……もしかして【爆炎の支配者】シズエ・イザワじゃねえのか?」

「ん?シズ先生がどうしたの?」

 

 シズエの名前に反応して、タケルがこちらにやって来た。

ついでに確認してもらうと、どうやら本人で間違いないらしい。

 

「その人、有名なのか?」

「タケルと同じでギルドの英雄だよ。見た目は若いけど、数十年も活躍してたんだ。

今は引退して、どこかの国で若手を育ててるって話だったかな」

 

 シズエ・イザワか……。

漢字なら井沢静江とかか?どう考えても日本人っぽい名前だ。

もしかしてタケルみたいに、日本人なのでは?

 

そう思ってタケルの方に確認しようとしたのだがとても悲しそうな顔をしていたので話しかけるのを躊躇ってしまった。

 

「おい?どうしたタケル?」

「あぁ、うん?何でもないよ。大丈夫」

 

 カイジンも違和感を感じたのか、心配そうに声をかけた。

タケルは大丈夫だと言ったが……気になるんだよなぁ。

けれど踏み込んで聞く勇気は俺にはなかった。

 

「あ、そうそう。シズ先生のことだっけ?

今はイングラシア王国で先生をしてる元冒険者だよ。

自分は直接指導を受けたことはないけど、親しみを込めてそう呼んでる。」

 

 それからタケルは、シズ先生のことを色々教えてくれた。

指導していた生徒達のこと。

召喚された地球人のこと。

そして…召喚に失敗してしまった子供達のこと。

 

 多分、タケルが悲しそうな顔をしていたのは、そのことを思い出していたからなんだろう。

 

「スライムさん、運命の人が気になるんだ」

「私達がいるのにずるいなぁ」

「え、あぁいや……」

 

 同郷者かもしれないし、生徒達のことも気になるから一度会ってみたい気持ちはあるんだよな。

タケル曰く、会うチャンスはいくらでもあるらしいし、村のことが落ち着いたら行ってみるのもいいかもな。

なんてことを考えていたその時だった。

 

「おい、女主人(マダム)!この店は魔物の連れ込みを許すのか!?」

 

 怒鳴り声が店に響いた。

どうやら俺がここにいるのが気に入らない客がいるらしい。

しかもカイジンによると、その客はベスター大臣という武器発注の件で揉めた因縁の相手らしい。

 

 主人が必死に宥めるが、逆に相手はヒートアップしている。

そのうえ、俺に向かって出ていけと言い出した。

 

「おい!こいつは俺の客だ!舐めたマネはするなよ!」

「おやおや、カイジン殿ではありませんか!

それに【三賢人】の一人、悪魔魂葬(エクソシスト)タケル殿まで!

この上品な店に下等な魔物など連れ込むとはいけませんなぁ!」

 

 うわぁ、凄い勢いで喧嘩を売ってきた。

というか何?三賢人とかエクソシストとか凄いかっこよさそうな言葉が出てきたんだけど。

詳しいことは後で聞こうと思った瞬間…

 

「ぶふぅ!!」

 

 ベスターが壁まで吹っ飛んだ。

どうやら俺に水をかけようとしたところを、タケルが殴ったらしい。

 

「な、この私を誰だと思っている!!」

「それはこっちの台詞だ」

 

 文句を言いながら立ちあがろうとするベスターの胸ぐらを掴みながら威圧感のある低い声で言った。

 

「俺が【三賢人】の一人だと知っていて、その態度か?」

 

 ベスターは反論しようとするが完全に怯えているのか声が出ていない。

 

「良かったな、俺が優しくて。お前みたいな大臣程度…本来なら殺してたぞ」

「ひ、ひぃ!!」

 

 ベスターはタケルの手を払いのけた後、震える足のままおぼつかない足で壁や机に激突したりしながら慌てて店から逃げていってしまった。

 

「おい……正直スカッとはしたが、大丈夫なのか?」

「ん?あぁ、自分は大丈夫だよ。むしろ自分達の心配をした方がいいかもね」

 

 その意味は、すぐに分かった。

ベスターの命令で警備隊が押し寄せてきたのだ。

こうして俺とドワーフ達は連行され…翌日、国王によって国外追放処分となった。

 

 

 

「あの……タケル様?他の方、連行されてしまいましたけど……」

「あぁ、大丈夫だよ。あと会計とかあのばかの損害分も自分が出すから気にしないで」

 

タケルは酒を飲みながら言った。

 

「さて……もう少し飲んでからリムル達の回収に行こうか」

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