変更点と言っていいのか分からないですがシズさんの話までを第一章として終了次第、第二章としてオークロードの話に入ります。
新たにお気に入り登録をしていただきありがとうございます。高評価をしていただくとバーに色をつけることができるようになりますので高評価のほどお願いします。また、感想を随時受け付けてますので何話に対する感想でもいいので書いてくださると嬉しいです。
「ええと……何この状況」
思わずそんな言葉が漏れたのも無理はないと思う。
リグルドから「リムル様にお客様が来ております」と報告を受けて来てみれば、仲の良さそうな三人組の冒険者が鉄板の上の肉を取り合っている。
まあ、ここまではいい。問題はその隣だ。
タケルが仮面の女性に膝枕をされながら、まるで子供みたいに安心しきった顔で肉を頬張っていた。
(……いや、なんだこれ)
ついさっきまで“伝説の英雄”の話を聞いていたはずなんだが、目の前にいるのはどう見ても甘ったれた少年だ。
だが…
(……まあ、悪くない光景だな)
理由は分からないがその空気は妙に穏やかで、見ていて少しだけ頬が緩むような気がする。
「……」
「す、すみません。彼らはどうやら荷物を蟻どもに根こそぎ奪われていたみたいで」
俺が無言で見つめていると、リグルドが申し訳なさそうに説明してくる。
彼らはカバル、ギド、エレンの三人組。そこに仮面の女性…シズが臨時で加わったパーティーらしい。
ジュラの大森林の洞窟付近を調査しつつタケルと合流する予定だったが、待てど暮らせど現れず探し回っている最中に巨大蟻に襲われたとのことだった。
「そうか、それは災難だったな」
「そうだよな!まさか巨大蟻に襲われるとは思わなかったぜ!」
「いや、その件に関しては巨大蟻の巣に剣を突っ込んだリーダーが悪いと思いやすが」
「なっ、俺はリーダーだぞ!」
(……アホだろこいつ)
タケルがいるかもしれない、なんて理由で巣に剣を突っ込むとか正気じゃない。本来なら死んでいてもおかしくなかったはずだ。
それはともかく。
(それにしても……やっぱりおかしい)
タケルの行動が読めない。
この村の近くに合流地点を指定したのはタケルらしい。
なのに、なぜ会いに行かなかった?
理由はいくつか考えられるが巨大蟻に襲われている4人を助けようとしなかったことと辻褄が合わない。
今目の前にいるタケルは、俺の知っているタケルとどこか違う。
「タケルさんって【生きる伝説】なんて呼ばれてるくらいだから、おじいちゃんかと思ってた」
「そうでやんすね、俺たちより長生きしてるとは思えないでやんす」
金髪の少女が、そう言いながらタケルの頬をつつく。
当の本人は気にもせず、膝枕を堪能している様子だった。
「え、タケルってそんな長く生きてるのか?」
「確か六十年くらい前に、3人の英雄が国を滅ぼしかねない悪魔を三体まとめて倒したって話があるから確かでやんす」
「それで【三賢人】って呼ばれるようになったんですよね!」
うっわ、強いなとは思っていたがそこまでとは。
「でも、一番有名なのは強さじゃなくて…」
「どこにでも現れては困ってる人を助けて、気づいたらいなくなってるって話でやんす」
その話を聞いて思わずタケルを見る。
…やはり、分からない。
その違和感は消えないままだった。
だが、その時だった。
「うぅ……ぁ゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
それまで静かだったシズが、突然呻き声を上げた。
「おい、大丈夫か?」
声をかけても反応はない。
やがて彼女はゆっくりと立ち上がった。
シズが立ち上がった際に膝枕してたタケルをどうしたのか見てみたがいつのまにかタケルはいなくなっていた。
(……は?どこ行ったあいつ)
一瞬だけ苛立ちがよぎるが、すぐに意識を切り替える。
目の前の異常の方が優先だ。
「大変!召喚魔法を使おうとしてる!…魔法陣の規模からして絶対B+以上の魔物が召喚される!」
冒険者達は流石に緊急事態の対処は手慣れているのか状況を速やかに判断して対処に取り掛かり始める。
「大地よ! 彼女を束縛せよ!
「うぉおおおーーーりゃ!!!
エレンが足止めし、カバルが体当たり技を行う。
長年共に行動してきたからなのだろうかコンビネーションは一流である。だがしかし、相手が悪かった。
「……爆」
小さな呟きと共に、爆発が起きた。
テントが吹き飛び、衝撃が周囲を揺らす。
やがて、溢れ出る魔力に耐えきれず仮面にヒビが入った。
そこから更に魔力が溢れ出し、ひび割れが広がっていく。
「リムルさん!あの人の正体が分かりやした!」
ギドの声が響く。
だが、その言葉を最後まで聞く前に仮面が砕けた。
そして仮面で隠されていた顔の右頬の火傷が顕になる。
俺はその特徴に、覚えがあった。
(……そっか)
夜の蝶で見た、水晶の中の姿。
点と点が、ゆっくりと繋がっていく。
タケルが見せた、あの無防備な顔。
理由もなく人に懐くはずがない。
あれは甘えなんかじゃない。
(……信頼、か)
命を預けてもいいと思える相手。
戦場を越えてきた人間が、無意識に身を委ねる存在。
視線の先で、彼女は静かに息を整えていた。
その姿はどこか儚く…それでいて、確かな強さを感じさせる。
(ああ……間違いない【爆炎の支配者】井沢静江だ)
彼女は、タケルの過去を支えた存在だ。
そして…世界に名を刻んだ英雄である。