親愛なる貴方達へ   作:マアブルゥ

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作戦会議②

「オークロードの討伐……俺たちが、ですか?」

「えぇ…そうですリムル=テンペスト様、タケル・ヤスダ様」

 

 リムルが念押しするように問い返すが、トレイニーは迷いなく頷いた。

 

「……色々言いたいことはあるけど、まず確認させて」

 

 ベニマルが口を開きかけるのを手で制しながら言う。

 

「他の村に依頼する予定は? それとも、もう済ませてる?」

「そうですわね……」

 

 少しだけ考えているそぶりを見せた後にベニマルの方を向いた。

 

「もし元オーガの里が健在でしたら、そちらに赴いていたかもしれません」

 

 あまりにも自然な返答であるのだが…胡散臭いな。

 

樹人族(トレント)の集落が狙われれば、ドライアドだけでは対処できません。ですから強き者へ助力を願いに参りました」

「……ちょっと待ってくれ。本当にオークロードはいるのか?」

 

 さらっとトレイニーからオークロードの存在を示唆されたことに驚いたリムルが問いかける。

 

「俺たちの中では、まだ確証がなかったんだが」

「…えぇ、いますよオークロードは」

 

 静かに告げられたその一言で、場の空気が凍りついた。

 

【な、なあタケル、ちょっといいか?】

 

 リムルにとってもその情報は衝撃的だったのか念話で話しかけてきた。

 

【トレイニーの話、どこまで信用できる?】

 

 …やっぱり気付いてるか。

助けを求めているはずなのに余裕がある。

原作の通りであれば恐らくこの森の支配者たる存在かどうかを見極めたいのだろう。だが、それを伝えるとリムルが逃げようとするかもしれないから遠回しに伝える。

 

【……オークロードの存在自体は本当だと思う。

でも、自分達では対処できないって部分は怪しい】

【やっぱりか……じゃあ何で俺たちに?】

【そこまでは分からない。ただ…】

 

 一瞬だけ、トレイニーを見る。

目が合ったその瞬間、微笑まれた気がした。

 

【もし戦場にドライアドが現れなかったら、その後で面倒なことを頼まれる可能性が高い】

【……うわ、それ嫌なやつだな】

 

 リムルの表情が露骨に歪む。

 

「……トレイニーさん。返事は少し待ってくれ」

 

 しばらく考えた後、リムルが口を開いた。

 

「こう見えても、ここは俺の領地なんだ。軽々しく動くわけにはいかない。情報を整理してから答えさせてくれ」

「承知しました」

 

 余りにも迷いのない即答だった。

やっぱり変だな、本当に切羽詰まっているなら、もう少し食い下がるはずだ。なのにそれがなかった。

まるで断られないと分かってるみたいに。

 

「さて…会議を続ける」

 

 リムルの言葉を合図に思考を切り替える。

 

「オークの目的について、何か意見はあるか?」

「その前に一ついい?」

 

 トレイニーの方を見ながら手を挙げる。

 

「トレイニー、オークロードのユニークスキルって何?」

「ユニークスキル【飢餓者(うえるもの)】、それは捕食した相手の力を取り込む能力というオークロードが生まれた時に必ず持つユニークスキルです」

「もしかして…オーガの里に死体がなかったのは…」

 

 ユニークスキルの内容に動揺が広がった。

特にシュナはそのユニークスキルに対して心当たりがあったらしく口を震わせながら呟いた。

 

「ただしリムル様の持つ【捕食者】とは違い一度で確実に奪えるわけではありません、ですが数を重ねれば…確率は上がります」

 

 トレイニーはその呟きに対して直接反応は示しはしなかったが、シュナは理解したらしく顔が血の気が引いたみたいに青ざめている。

 

「……つまり、奴らの目的は上位種の討伐じゃなく捕食というわけか」

「えぇ…彼らは力を得るために、全てを喰らいます」

 

 重い空気がのしかかったように俯き口を閉ざしてしまったことで気まずい空気になってしまった。

 

「……となると、ここも安全じゃないな

テンペストウルフに鬼人、それに英雄までいる。

どう見ても餌の宝庫だ」

「一番狙われそうなのを忘れてませんか?」

 

 リムルが苦笑しながら言うと、ベニマルが意地悪そうな笑顔で反応した。

 

「ん?」

「最強のスライムがいるでしょ」

「いや、英雄の方に目がいくって!」

 

 どっからどう見てもリムルが狙われる要素しかないのだが、

ベニマルとリムルの軽いやり取りのおかげで場の空気を緩ませることができた。

 

「……他人事では、なくなったのでは?」

 

 トレイニーの一言で再び引き締まる。

 

「さらに今回の件では、魔人の存在も確認されています

そしてその魔人はいずれかの魔王の配下であることも」

「……魔王」

 

 シズ先生のことを思い出したのかリムルの表情が変わる。

それを、トレイニーは静かに見ていた。

 

「改めてお願い致します、オークロード討伐を…」

「当然です!」

 

 トレイニーが言い切る前に勢い余ってシオンが割り込んで返答してしまった。

 

「リムル様とタケル様なら、オークロードなど敵ではありません!」

「……おい」

 

 余りにも自信満々な様子のシオンにリムルが苦笑する。

 

「まあいい、引き受けるよ。タケルもそれでいいよな?」

「問題ない…元々、人間側に被害が出る前に処理するつもりだったから……本当にその理由だからリムル、その微笑ましいものを見るような目をやめて」

 

 シュナも微笑ましそうに頭を撫でるんじゃない。

 

「忘れてるかもしれないけど僕は人類側の冒険者だからね?」

 

 全く信用されてないのか妙に暖かい視線は止まらなかった。

 

「と、とにかく!」

 

 弁明は不可能と諦め話を強引に戻す。

 

「オークロードと戦うならリザードマンの戦力は必要だから

ソウエイを使者として送る、でいいよね?」

「リザードマンか……」

 

 リムルが少し嫌そうな顔をしている、多分ガビルみたいな奴が沢山いると思ってるんだろう。

 

「首領がガビルみたいなのじゃなければいいけど」

「それは……流石に大丈夫だと思いたい」

 

 原作知識でまともなリザードマンだとは知っているが一応保険をかけておく。

 

「ん?これ……タケルが置いたコマか?」

 

 机の地図を見てリムルが呟く。

 

「ああ。ソウエイの報告を元に配置した」

「……やっぱりおかしいよな」

 

 どうやら違和感に気付いたみたいだ。

 

「リザードマンの本拠地とから見てオーク軍とは真逆の位置にガビルの隊がいる。

この配置だと…リザードマンの本拠地へ挟み撃ちが成立するな」

「……!」

 

 リムルの発言によりオークとガビルが手を組んでいる疑惑が強くなり、ベニマル達から殺気が漏れ始めたのでユニークスキルで落ち着かせる。

 

「やはり、ガビルは魔人の手先なのでは?」

「いや、違うと思う」

 

 原作ではガビルはリムルの部下になる予定で殺されては困るので即座に否定する。

 

「多分あいつは何も分かってないんじゃない?」

「……どういうことです?」

「ただただ利用されてるだけ、

俗に言う自分が主役だと思い込まされてるタイプだね」

 

 ああいうのは自分が正しいと思ったら疑うことをしないから危ういんだよな。実際問題として既に騙されてるし。

 

「ソウエイにガビルの監視を任せることにする。

もしガビルがリザードマンの本拠地を襲うようであれば止めさせる」

「……承知しました」

 

 こうして、オークロード討伐に向けた方針が固まった。

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