お気に入り登録者が6人も増えていて正直驚きました。
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リザードマンのところに使いとして送り出していたソウエイが戻ってきた。いや、正確には戻ってきたのは分身体なのだが。
本体は引き続きガビルの監視中らしい。
報告だけなら念話で報告すれば済むはずだが、わざわざこちらに姿を見せたのは直接伝える意図があったのだろう。
ソウエイからの報告は簡潔だった。
リザードマンとは同盟の締結に成功。
だが、ガビルの暴走についてはどうにも確信を持ちきれていない…そんな空気だったらしい。
(……まあ、あの手の空回りするタイプって判断難しいよな)
そして現在…
僕たちはその報告を踏まえて湿地帯でオークロードを迎え撃つ方針を決め、村のゴブリンたちへ通達するために集まっていた。
「リムル、そこからの眺めはどう?」
「こいつ……」
リムルは今、祭壇のように飾り立てられた屋根付きの台座の上に鎮座している。
スライム特有の透明な身体が光を反射し、まるで水晶のオブジェである。そしてその前にゴブリン達が集まっているのだから完全に宗教的ななにかの集まりみたいな光景となっている。
集まるまでの間リムルを揶揄って遊んでいたが、
ゴブリンたちが揃ったのを見てすぐに気持ちを切り替えた。
「オークロードとの決戦は湿地帯で行う。
リザードマンを囮に…その隙に背後から二勢力まとめて叩き潰す!」
「いや!リザードマンは同盟相手だから助けるからな!」
僕の言葉に、シオンが力強く同意する。
だが同時に、リムルが慌てて口を挟んだ。
「と、とにかくだな!このままだとリザードマンの勝ち目は薄い。だから協力することにしたんだ。
タケルもいるし負けることはないとは思うが万がい…あぐっ!?」
弱気な発言をし始めたので軽く拳を入れて黙らせる。
「どう見ても過剰戦力なんだから無駄に不安を煽っちゃ駄目、殴るよ?
「もう既に殴っているんだが!?それに万が一ってのは…」
「そういうのはリグルドにだけ共有しとけばいい」
ぴしゃりと言い切ると、リムルは一瞬だけ不満げな顔をした後、深くため息をついた。
そして、改めてゴブリンたちへ向き直る。
「……分かったよ。
本来ならリザードマンの首領と会談したかったが、時間がない。
現地で合流し、そのまま共闘に入る」
場の空気が引き締まる。
「出陣メンバーを発表する。
ベニマルを大将に、ゴブリン狼騎兵百。
シオンとタケルは遊撃。
ハクロウは副官。
俺は上空から『思念伝達』で全体を指揮する。
リグルは残存兵で村の防衛を頼む」
僕に余計な護衛を付けないあたり、扱いを理解してきたらしい。
もしそんなことをされたら、逆に好き勝手動いて引っ掻き回してやるところだった。
「リムル様、心配しすぎでは?
俺とハクロウだけでも十分かと」
「左様。我らにお任せいただければ」
と、ベニマルとハクロウがリムルに進言するが…
「一応聞くが、お前らタケルを止められるのか?」
その一言で、二人は揃って言葉に詰まった。
……自分が言うのもあれだけど賢明な判断だと思う
「それよりお前ら装備はいいのか?
タケルもクロベエに剣を打ってもらったらどうだ?」
「断る」
即答だった。
おそらく大切にしている剣が折れないように気を遣っているのだろう。
今の僕の剣は、長年の強化で魔鋼に変質しているとはいえ…元は無名の鍛冶師の打った一振りだ。
性能だけ見れば、いずれ限界は来る。
だけどこの剣には自分達が積み重ねてきた時間も、想いも、全部ここにある、今更手放すわけにはいかなかった。
「……そっか。まあ、たまにはクロベエの剣も使ってやれよ。寂しがってたぞ」
「考えておく」
翌朝、村の入口には出陣を控えたゴブリンたちが整列していた。
湿地帯へ向かう部隊…その空気は張り詰めている。
ゴブリン達は武器を強く握り締め、押し殺した高揚と不安が入り混じった目で僕とリムルを見ている。
(……まぁ、初めての大規模戦闘だしな)
そんな中、前に進み出たのはリムルだった。
例によって台座の上である。
……もう誰もツッコまないし完全に定着しているのでは?
「えーっと……みんな、集まってくれてありがとう!」
頑張って考えながら絞り出した言葉はリムルらしいといえばリムルらしいが…いかんせん言葉が軽すぎる。
「今回の戦いは、オークロードっていう強敵との戦いになる。
正直、楽な戦いにはならないと思う。
でも安心してくれ!俺たちは強いし、仲間もいる!
えーっと……その……なんだ、とにかく頑張ろう!」
暫くの間沈黙が続いた。
誰も声を上げない、というか上げられない。
「……締まらないな」
思わず呟くと、リムルがビクッと震えた。
「し、仕方ないだろ!?こういうの慣れてないんだだから!」
「知ってる」
ため息をついた後に一歩、前に出る。
今度は僕に自然と視線が集まった。
(別にやるつもりはなかったんだけど)
「いいかお前ら、今回の相手はオークロードだ。
あいつらは一体一体が強い上に多い、今までみたいに楽に勝てると思うな」
自分が話し始めると同時に空気が張り詰める。
「足が止まるやつは、その時点で終わりだ。
だから無理に前に出るな、
ついて来れるやつだけ来い」
本来なら前線に立ち戦えと命じるであるのにそうしないことに違和感を感じたのか動揺している者もちらほらいた。
だが動揺に反して武器を握る力が強くなっているあたり問題はないだろう。
「道は、俺が切り開く。
道中にいる邪魔なやつは全部斬る。
オークロードだろうが、その配下だろうが関係ない」
戦場では死者がでるのは当たり前、
ゴブリン達から死者が出るかもしれない。
「ついていけない者のために止まるつもりはない」
自分自身突き放す言葉だとは思う。
だがリムルと違ってゴブリン達が誰も死なないように行動するつもりはない。
「……ただし後ろにいる分には、巻き込まない。
勝手に前に出て死ぬな、それだけ守れ」
だからこれは命令であり…
自分が行える条件付きの庇護である。
「おおおおおおおお!!」
言いたいことを言い終えると
爆発するように歓声が上がった。
武器を掲げる者。
地面を踏み鳴らす者。
さっきまでの不安は、もうどこにもなかった。
「……お前なぁ」
呆れたようにリムルが横に並ぶ。
「いや、いい感じだったけどさ。完全に主役奪ってない?」
「最初に滑ったやつが悪い」
「滑ってない!ちょっと噛んだだけだ!」
「三回詰まってたぞ」
「数えるな!」
騒がしいやり取りの中でも、士気は下がらない。
むしろ上がりきっているとまで言える。
(……まぁ、これでいいか)
湿地帯の先その向こうにいるであろう敵を思い浮かべて、軽く息を吐いた。
「じゃあ行くぞ」
その一言で部隊が動き出す。
こうして戦いの幕が上がった。