親愛なる貴方達へ   作:マアブルゥ

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 お気に入り登録、誤字報告および評価ありがとうございます。
展開が早いのか遅いのか分かりませんがオークロード戦開始しました。
また、この作品を気に入っていただいた方で星9か星10の評価をしてくださったら幸いです。


オークロード戦開始

「うへぇ……あたり一面オークだらけだな」

 

 湿原の丘から見下ろせば、視界の端まで埋め尽くすオークの群れ。

その光景に、リムルが素直な感想を漏らした。

 

「もしかしてリムル、日和ってる?」

「いや、そういう訳じゃないけど……これ、リザードマン達大丈夫なのか?」

「ガビルの件があったとはいえ、流石に即座に壊滅するほど愚かではないでしょう。」

 

 ソウエイの一言が頼もしすぎる、というかもはや仕事人のそれだ。

どう見てもオークは途切れることなく洞窟へ流れ込んでいるが、そこは考えないことにする。

 

「なぁタケル、いいか?」

「ん?どうした?」

「ひとつ頼みがあるんだが……囮役、頼めるか?」

「いいよ」

 

 即答で了承したら驚きと呆れが混ざったような表情になった。

 

「いや、あの群れに喧嘩売るんだぞ!?大丈夫か!?」

「大丈夫だ、問題ない」

「そこで死亡フラグ立てるな!」

 

 軽く流しつつ、さっさと役割分担が決まる。

囮は…僕、シオン、ハクロウに

本隊は…リムル、ソウエイ、ベニマル、ゴブリン狼兵となった。

 

「とにかく、引きつけるだけでいい!無理はするなよ!」

「はい!お任せください!あの豚ども、肉片にして差し上げます!」

「ホッホッホ、無理をする必要などありませぬ。殲滅すればよいだけのこと」

「知ってる?無理しないと英雄にはなれないんだよ?」

「駄目だこいつら!!」

 

 バトルジャンキーに復讐という動機を付け加えれば我慢するはずがないので当然と言えば当然である。

 

「あぁもう……死ぬなよ!?」

「了解。…行くぞ、シオン」

「はい!」

 

 それだけで十分だった。

合図も、細かい指示もいらない。

この瞬間にやるべきことは、全員分かっている。

 

(――ここで一気に持っていく)

 

 丘をほぼ同時に飛び降り、地面に叩きつけるように着地するすると衝撃と共に砂煙が周囲に巻き上がる。

それで存在に気付いたのか一部のオーク達の視線がこちらへ向く。

 

「……エンチャントセット。派手にいくぞ」

「お任せくださいっ!!」

 

タイミングは完全に一致した。

 

「「豪雷・一閃!!」」

 

 放たれた一撃が、大地ごと抉り取る。

遅れて轟音とともに衝撃が前方にいたオークの群れを襲い、まとめて消し飛ばしていった。

 

 一瞬だけ、戦場が止まった。

 

「……なんだ、あれは……」

 

 一瞬でざわめきがオーク兵に広がった。

恐怖と困惑が混じった視線が、一斉にこちらへ向く。

 

(よし、全部こっち見たな)

 

 口元がわずかに歪む。

 

【リムル、今だ。リザードマンの方に行け】

【お前な……無理するなって言ったばかりだろ……。

……いや、助かった、行ってくる。分かってると思うけど死ぬなよ】

【了解】

 

 リムル達が動き出す。

数ではあちらの方が多い筈なのにオーク達はそちらを追わない。

完全にこちらへ意識が向いている。

 

(……上出来)

 

 ここから更にひと暴れしようとしたその時だった。

 

「ふふ……なんて喜ばしいこと……」

 

 シオンの様子が、明らかにおかしい。

(あ、これダメなやつだ)

 

「タケル様が私に任せてくださった……この上ない喜び……!」

 

 怪しげな笑みを浮かべたシオンは止める間もなく…オークの群れに突っ込んだ。

 

「……あ」

 

 オークの群れに一直線。

衝撃波を撒き散らしながら、真正面から蹂躙を始める。

 

「あ!ちょっと待て!それ俺の獲物…!」

 

 言い終わる前に、また何体か消し飛んだ。

 

(……まあいいか)

 

 息を吐く。

 

「じゃあ、こっちもやるか」

 

 剣を構え、前へ出る。

戦場は、もう完全にこちらのものだった。

 

 

 

「……全く、元気がありすぎるというのも困ったものじゃな」

 

 二人の暴れっぷりを見ながら、ハクロウは呆れながらも小さく笑う。

 

「さて……」

 

 ゆっくりと刀に手をかける。

 

「主の華々しい戦いに、水を差すわけにもいくまい」

 

 ゆっくりと刀を抜いた瞬間、姿が消えた。

…そして次に現れた時には。

黒い鎧を身に纏ったオークが、膝をついていた。

 

「え?…」

 

 豚頭将軍(オークジェネラル)は状況が理解できずに頭を触ると…まるで初めから付いてなかったかのように首が落ちた。

 

「まず一つ」

 

 静かに血を払う。

それだけで、戦場の空気が変わる。

 

「ほれ、どうした?来ぬのか?」

 

 混乱するオーク達へ、淡々と告げる。

 

「……でなければ、死ぬぞ」

 

 

 

 リザードマンの戦況は最悪だった。

洞窟内に張り巡らせた陣は既に崩壊し、配下は次々と倒れていく。

それでもなお雪崩れ込むオークの勢いは止まらない。

 

(……ここまでか)

 

 もはや覆す術はない。

ここまで持ち堪えられたこと自体が、奇跡だったのかもしれない。

せめて、残った者だけでも逃がすべきである。

そのための時間は…私が稼ぐ。

 

 そう決意し配下の制止を振り切って槍を取ろうとした、その時だった。

轟音と共に天地を揺らすような衝撃が、洞窟の奥まで響き渡る。

 

「なんだ……?」

 

 誰かが呟く。

それは一度では終わらなかった。

続けて、二度、三度と大地が震える。

 

(地上で……何が起きている?)

理解が追いつかない。

 

「原因を…」

 

 調査を命じようとした、その瞬間。

視線の先、出入り口の奥からオークの顔が覗いた。

 

「皆の者!戦闘準備を!」

 

 もう、ここまで来ている。

これ以上の抵抗に意味はない。

それでも…諦める訳にはいかなかった。

 

「黒き鎧の者は、私が受け持つ」

 

 視界の奥。

異様な圧を放つ個体がいる。

 

 恐らくあの者に私は勝てぬだろう、

だがそれでも…やるしかない。

 

「品のない豚の割には……手応えがありそうだな!」

 

 己を奮い立たせ、覚悟を決める。

その瞬間、目の前のオークが音もなくずれた。

 

「……は?」

 

 理解が追いつかない。

ほうける私をよそにオークの身体は胴を境に崩れ落ちた。

 

「おっと、獲物を奪ってしまったか?それは失礼した」

 

 いつの間にか、赤髪の鬼人がそこに立っている。

…剣を振るった様子すら見えなかった。

 

「おい、主から突っ走りすぎるなと言われなかったか?」

「ははは、すまなかった。しかし…間に合ったようで何よりだ」

 

 赤髪の鬼人の隣にソウエイが立っていた。

そしてもう1人…

 

「お前がリザードマンの首領で間違いないか?」

「あ、ああ……」

 

 2人と比べて姿は小さい。

だが、視線を向けられただけで理解する。

目の前にいる鬼人達の主は、この方だと…

 

「この度、同盟を結ばせてもらった魔物の主…リムルだ」

 

 一歩前に出る…

それだけで、戦場の重圧が和らいだ気がした。

 

「よく持ちこたえたな」

 

 何気ないその一言に…

張り詰めていた何かがほどける気がした。

 

「後は…俺たちに任せてくれ」

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