親愛なる貴方達へ   作:マアブルゥ

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崩れゆく計画

 リザードマンの救援には成功した。

戦況は危うかったが、どうにか間に合ったようで胸を撫で下ろす。

 

「同盟を結んでおきながら、この有り様……申し訳ないリムル殿」

「いやいや。リザードマン達のおかげで被害は最小限で済んだんだ。感謝こそすれど非難する理由なんてないよ」

 

 もし彼らがいなければ多くのゴブリンの村がオークに滅ぼされていただろう。そう考えれば十分すぎる働きだ。

 

「だが……先程までの戦いで、まともに戦える者は三割ほどしか残っておらん」

 

 三割か……防衛に戦力を回すだけでも厳しいな。

 

「よし分かった、ゴブリン狼兵はリザードマンの首領の指示に従ってリザードマンと共にここを守ってくれ。

俺とベニマル、ソウエイ、ランガは地上へ出て、タケル達と合流しオークロードを叩く。いいな?」

 

 異論は出なかった。だが、首領だけは申し訳なさそうに顔を伏せる。

 

「リムル殿に負担ばかり……不甲斐ない」

「気にすんなって。そのための同盟だろ?

それに、今はタケル達が地上で暴れてる。俺たちはそこに乗っかるだけだ」

 

 そう言うと、首領は目を見開いた。

 

「……あの英雄が、既に戦っているのか」

 

 安堵が滲む表情。これなら問題ないだろう。

 

 …それにしても。

あいつら確か一キロは離れてるはずだよな?

それなのにこの地響き……どう考えてもおかしい。

 

「それじゃあ、俺たちはタケル達のところに…」

 

 言いかけた瞬間、地上から凄まじい魔力の奔流を感じた。

 

 慌てて地上に出てみれば、視界に飛び込んできたのは俺の【黒炎】とは比較にならない、異次元の魔力を孕んだ巨大な火球。

それが地上に現れ、オークの群れをまとめて呑み込んでいく。

あれを喰らえばオークの燃え滓すら残らないだろうな…可哀想に

……いやなんで俺、タケルじゃなくてオークの心配してるんだ?

 

《告。核撃魔法【破滅の炎(ニュークリアフレイム)】によるものと思われます》

 

 ……大賢者。

俺が知りたいのは何の魔法かじゃない。

なんでそんなヤバい魔法を使ったのか、だ。

 

《解。殲滅効率を優先した結果と推測されます》

 

 よし、後で説教だな。

 

「とりあえずあいつにこれ以上あの魔法を使わせるわけにはいかないから俺は先に空から向かう!」

「「「了解!」」」

 

 ユニークスキルで蝙蝠の翼を展開し、一気に上空へ飛び立つ。

派手に暴れているせいで、タケルの位置はすぐに分かった。

 

「タケル! お前、暴れすぎ…って、うおおお!?」

 

 勢いのまま飛び蹴りを叩き込もうとしたが、あっさり躱される。

そのままオークの群れに突っ込んでしまい、慌てて空へと逃げた。

呼吸を整え振り返ると、タケルが呆れたように笑っている。

 

「なんで避けるんだよ!」

「いや、避けるでしょ普通」

 

 こいつ……。

 

「で? リムルがここにいるってことは、リザードマンは無事ってことでいいんだよね」

「ああ。ゴブリン狼兵が護衛についてる」

 

 会話しながらも、タケルは落ち着きなく周囲を見回している。

 

「……何探してるんだ?」

「んー……もう一発いくか悩んでて」

「やめろ」

「あと、ゲルミュッドって魔人見なかった?

 そろそろ出てくると思うんだけど」

 

 なるほど。さっきからキョロキョロしてたのはそれか。

……いや、それでも核撃魔法はダメだろ。

 

「ベニマルも暴れ始めたし、これだけ被害出せば焦って出てくるはずなんだけどな」

「ビビって逃げたんじゃないか?」

「それはないでしょ。魔王に殺される」

 

 ……確かに。

 

「ゲルミュッドは後回しにして、まずはオークロードだ」

「……だね。行こうか、リムル」

 

 

 


 

 

 

「クソ共が……役立たずめ!」

 

 ゲルミュッドは怒りに任せ、水晶を地面に叩きつけた。

そこに映っていたのは、崩れ始めた戦況。

本来ならば優位であるはずの侵攻が、完全に押し返されている。

 

(なんなんだ……あの人間は……!

なぜ俺には扱えなかった核撃魔法を……!)

 

 このままではオークロードはあの人間に敗れる。

そしてそれは計画が潰れることを意味し、魔王に知られれば彼の死は免れない。

 

(……仕方ない。本意ではないがこれを使うしかない)

 

 懐から取り出したのは小さな玉。

内部では煙のようなものが、不気味な光を放ちながら渦巻いている。

それはラプラスから保険として渡されたもの。

本来なら決して使うつもりはなかった。

 

(だが…もう、選んでいる余裕はない)

 

 意を決し、飲み込む。

 

「……ぐっ!?」

 

 次の瞬間、身体の内側から自分がかき混ぜられているかのような今まで経験したことのない不快感が全身を襲う。

あまりの不快感に吐き気を堪えながらも膝をついてしまう。

 

 

 

 …いつまで続くのかと思われたが気がつくと不快感は消え、体が軽くなったように感じた。

 

(……軽い……?)

 

 それだけではない、

全身に力が満ちていく。

 

(これなら……勝てる……!)

 

 彼は確信した、もはや自分に敵はいない…と。

ゲルミュッドはオークロードのもとへ向かう。

それはオークロードを操るためではない。

 

 この力ですべてをねじ伏せるために。

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