親愛なる貴方達へ   作:マアブルゥ

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 新たにお気に入り登録や感想、誤字報告、評価ありがとうございます。
今日朝起きて小説情報を見たら前回の話の投稿からお気に入り件数が20件増えていて驚きました。
目標だったお気に入り件数の100件をあっさりと超えてしまったので次は1000件いけたらいいなと思っているのと、皆さんの期待から外れてしまう話を書いてしまわないか不安ですが頑張って参りますのでご愛読のほどよろしくお願いします。


喰王と背影

「タケル様が死ぬところは想像できませんので、あまり心配はしておりませんでしたが……ご無事で何よりです」

 

 そう言いながらも、胸の奥に残るざらつきは消えない。

豚どもを斬り、焼き払いながら進む道中。洞窟を抜けた際に見たあの禍々しい火球。…あれがタケル様の力。

 

(……違いすぎる)

 

 名前を得て力を手に入れたことでどこかで錯覚していたのだ。

自分はもう“守る側”に立てているのだと。

 

(何を、思い上がっていた……)

 

 足を止めることなく刀を振るう。

 

 一閃

 

 無駄のない軌道で三体の首が同時に宙を舞う。

そこから間髪入れず返す刃でさらに二体。

 

 …脆すぎる。

かつて脅威だったはずの敵が今ではそうとしか感じられない。

 

(……だがまだ足りない)

 

 この程度ではあの背中には届かない。

振るう刃は正確に、冷静に敵を削り取っていく。

だがその内側では焦燥が膨らみ続けていた。

 

「……なんか、動き変わった?」

 

 背後から間の抜けた声がする。

言葉の主は振り替えって確認するまでもない。

 

「いえ、まだまだです」

 

 短く返す。

その間にも敵は倒れていく。

この程度で満足はできない…

もっと強くならなければ。

 

「俺……タケル様に認めてもらえるくらい強くなります。ですから……見ていてください」

「え? 急にどうしたの、ベニマル?」

 

 自分でも気づかぬうちに、言葉が零れていた。

タケル様の視線を受け、わずかに目を伏せる。

 

「……いえ。それより、先を急ぎましょう」

 

 

 

 やがて不意に、敵の気配が途切れた。

 

 不自然な静寂…

血の匂いだけがその場に重く残る。

 

「……来る」

 

 タケル様が呟く。

その視線の先には地を軋ませながら現れた巨体がいる。

 

「あれが……オークロードか」

 

 あれが故郷を滅ぼした因縁の相手。

刀を握る手が小刻みに震えるのを感じる。

 

「落ち着いて。相手の能力も分からないまま頭に血が上っていたら、対処できなくなるよ」

「……失礼しました」

 

 タケル様の一言で全てを焼き尽くそうといていた熱が引いていく…

残るのは研ぎ澄まされた意識だけである。

 

「タケル様。オークロードの相手、俺たちに任せていただけますか」

「いいよ、でも危なくなったら段階的に手を出すから」

「ありがとうございます」

 

 これで安心して戦えると刀に手をかけた…その瞬間。

轟音が戦場を引き裂いた。

 

 ドゴォン!!

 

 異質な魔力を帯びた何かが、オークロードの足元へと叩き込まれる。

土煙の中から現れたのは…鼻の長い仮面を被った魔人だった。

 

「まったく……これだから役に立たないクズどもは……!」

 

 突然現れたかと思えば怒気を撒き散らし始めた。

 

「このゲルミュッド様の計画を台無しにしやがって!!」

 

 …こいつか、直感が告げる。

そしてその確信は次の言葉で裏付けられた。

 

「もう貴様は用済みだ! この力で全員殺して、俺が魔王になってやる!」

「そうか……自分に不要なものは切り捨てる。それがお前のやり方か」

 

 煮えたぎるような怒りに反して声は驚くほど静かだった。

 

「なっ!? オーガ……いや鬼人だと!? あの村の生き残りが…」

「ほう…やはり、お前か」

 

 確認は取れた、これ以上殺気は抑える必要がないだろう。

 

「我らの里を襲わせた張本人は」

「あぁ、そうだよ! それがどうした!? 上位魔人を舐めるな!」

 

 放たれる高密度の魔力弾、まともにくらえば流石に怪我はするだろう。だが…

 

「遅い」

 

 黒炎がそれらを一瞬で飲み込む。

相殺した時に生じた煙に紛れてゲルミュッドの背後に回り込む。

 

 一閃。

 

「ぎゃああああ!!」

 

 ゲルミュッドの片耳が宙を舞う。

 

「どうした。その程度の痛みで喚くのか?」

 

 振り向いたゲルミュッドの視界に、既にベニマルの姿はない。

 

「生きたまま喰われた者たちの苦しみは……そんなものではなかったはずだ」

 

 斬る…斬る…斬る…

急所を外しながら、確実に削る。

本来なら不要な行為である、だが今回ばかりは例外だ。

 

「力が……うまく……!」

 

 ゲルミュッドは苦悶する声をだすが、それを無視し刃を重ねる。

ゲルミュッドを斬り始めてから数分後…突如として違和感が走る。

 

(……魔力が、増えている?)

 

 ゲルミュッドの内側から異常な魔力の膨張を察知した。

 

「何をする気かは知らぬが…止めさせてもらおう」

 

 ハクロウが速やかにゲルミュッドの首を落とす。

魔力の流れが途絶え死亡したことを確認する。

 

 まだ怒りは晴れないが残りはオークロードにぶつけるとしよう…そう思いオークロードの方を見て…

 

「許……さん……ぞ……」

 

 背後から異質な魔力を察知し、咄嗟に距離を取る。

直後先ほどまで立っていた場所に異様な魔力の柱が立ち昇る。

それは人の顔が幾つも浮かび上がる悍ましい紋様が広がっていた。

 

「……ハクロウ。確実に首を落としたよな?」

「えぇ。間違いなく」

「だったら…あれは何だ」

 

 視線を向ける。

そこにあったのはゲルミュッドの頭、

首元から怪しく光る煙が溢れ出ている、

それが地を這い胴体へとじゅるり、と首元から音を立てて侵入する。

 

「……【黒炎】」

 

 明らかな異常を察知し、黒煙で燃やそうと試みるが…

 

「……消えない、か」

 

 肉体の輪郭は崩れない。

その異常に気を取られた瞬間、

周囲に“何か”が漂っていることに気づいた。

 

「……これは」

 

 淡く揺れる無数の光。

それが何かを、理解するのに時間はかからなかった。

 

「……ゴブタたちを連れて来なくて、正解だったな」

 

 周囲に浮かんでいたのはオークたちの魂。

無傷で倒れている個体がいることから察するに、一定以下の魔物を殺し、その魂を支配しているのだろう。

 

 その魂がゲルミュッドの肉体へと流れ込む。

傷が瞬く間に修復され…ゆっくりと立ち上がった。

 

「まズ……おまエら……」

「趣味の悪い力だな、

だが…理解した以上、脅威でもない」

 

 そして冷静に刀を構え直し、静かに一歩踏み出した。

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