今回はリムル視点です。お互いの認識に齟齬がある様な気がしなくもない様な気がしますが気にしないでください。
お気に入り登録して頂いた5名の方ありがとうございます。期待に応えられる様頑張ります。
拝啓 敬愛なる父さん、母さんへ。
ご無沙汰しています。お元気でしょうか。
通り魔事件に巻き込まれ、親より先に旅立ってしまった親不孝者をどうか許してください。
とはいえ、安心してください。なぜかは分かりませんが俺は異世界でスライムとして転生し、なんとか元気にやっています。
「ヒイィィ……!!」
…嘘です。今まさに死にかけています!!
森で遭遇した冒険者風の黒髪の人間に、現在進行形で命を狙われています。誰か助けて!!
「ボ、ボクハワルイスライムジャナイヨ!!」
「……」
必死に弁明しているのに、相手は無言のまま剣を叩きつけてくる。まるでピンボールの玉のように俺を弾き飛ばし、木や岩にまで叩きつける。
《告。現在の身体損傷率は8%です。耐性スキルおよび再生スキル、ポーションにより持ちこたえていますが、即時離脱を推奨します。》
できるならとっくにやってるから!!
まともに攻撃も避けられないのに逃げられるわけないだろ!!
あぁ、せっかく第二の人生を謳歌しようと思った矢先にこれだ。理不尽にも程がある。だが、そんな俺の嘆きは届くことなく、剣撃は止まらない。損傷率は30%を超え、半ば諦めかけたその時――
《告。相手の攻撃パターン解析に成功。【
(大賢者先生!!)
どうやら切り抜けられるらしい。こんな化け物相手にどう立ち向かうんだと多少不安はあるが、今は頼るしかない。
《【自動戦闘状態】に切り替えますか? YES/NO》
(YES! 任せたぞ、大賢者先生!)
《了。【自動戦闘状態】へ移行します。》
瞬間、身体の主導権が切り替わる。
エクストラスキル【身体装甲】が発動し、剣撃を受け止めつつ、あえて吹き飛ばされ距離を稼ぐ。
「……」
俺が剣を受け止めたことが意外だったのか相手がわずかに目を細める。だがすぐに踏み込み先程と同様、横薙ぎの一閃を放ってくる。
「【水刃】」
それに対して大賢者は俺が使うよりも遥かに高密度の水刃が、剣と激突し相殺する。これでついさっきまでとは違うことに気付いたのか相手は一度距離を取った。
よし、このまま大賢者に任せておけば大丈夫だろう。そう思った次の瞬間。
「◼️◼️水斬」
「【
(くぁwせdrftgyふじこFふじお!?)
気づけば相手は背後にいた。
死角からの高速の抜刀。完全に予想外の攻撃だったのだが大賢者は予測済み。音速の五倍以上に圧縮した水弾で迎撃し、これも相殺した。
おぉ、大賢者のありがたみを感じる。今のは大賢者がいなかったら真っ二つに斬りわけられてたな。
でもこの調子なら問題なく対処ができると思っていたのだが相手はそう簡単に終わらせてくれないらしい。
「エンチャントセット【剛力】【俊足】【スライム特攻】」
ちょっと?なんかやばそうなバフを自分かけ始めてない?
スライム特攻って何だよ。俺専用のバフかけるとか殺意高すぎだろ。
(大賢者、俺にもあれ使える?)
《否。恐らく相手のユニークスキルによるもの。再現は不可能です。》
まじかよ、あいつアタッカーだけでなくバッファーも兼ねれるとか人権キャラかよ……。
《告。【未来攻撃予測】を会得しました。》
こっちもこっちで大賢者がとんでもないスキルを会得していた。…もしかしたら自分も人の事を言えないのかもしれない。
いや今はそんなことを気にしている余裕はない。いや俺自身が何かする訳ではないから余裕があるといえばあるのだが死ぬかもしれないプレッシャーに押しつぶされてしまいそうになる。
「◼️◼️水斬・無闘乱舞」
内心慌てる俺を相手が待ってくれる筈もなく攻撃を仕掛けてきた。
四方八方からの嵐のような剣舞が襲いかかってくる。
大賢者は【水操作】のスキルを駆使して応戦するが、段々と速く鋭くなる剣舞を捌ききれず身体が削られていく。
《告。損傷率50%を下回りました。このままでは消滅の恐れがあります。申し訳ございません、主。》
(気にすんな。相手がバケモンなだけだ)
そう言って大賢者を慰めるが状況は絶望的であることには変わらない。説得は不可能、逃走も不可能。
どうする?このままだと死んでしまう。何か、この状況を打開するための策を考えないと。
…駄目か
…そうだよな、大賢者でさえ無理だったんだ俺にできる筈が無いもんな。
いや待てよ?だったらなぜ俺はまだ生きているんだ?
最初からユニークスキルを使えば簡単に俺を殺せてた筈。それに剣技を使い始める前に浮かべていた笑みも気になる。
(大賢者、一つ試したい)
《否。危険すぎます。》
(頼む)
《……肯。承知しました。》
大賢者はすぐさま大量の水を放出して距離を取り、制御を俺に返す。
余り時間はたってはいないのだが凄まじい攻防によって久しぶりに自分の体を動かせることに懐かしさを感じる。
それと同時に肌を大量の剣で突き刺すような冷酷な殺気も。
正直言って大賢者に任せてしまった方がいいんじゃないかなと思うぐらいには怖い。
自分の予想が外れてしまっていたら確実に死ぬからだ。
だけどこれは大賢者に任せるわけにはいかない、俺がやらなきゃいけない。
大きく息を吸い込んで吐き出す動作をする。
スライムの身体に呼吸器官はないから口も鼻もないが覚悟を決めることはできた。
そして俺のことを殺そうとしてくる相手を前に結界も装甲もすべて解除した。
突如として完全な無防備状態になった俺に相手は警戒しながら近づく。
……一歩。
……また一歩。
着実にゆっくりと近づいてくるが俺は身動き一つとることなくじっと相手を見つめる。
そして距離が3mほどにまで迫ってきたところで相手は腰を落とし、俺に向けて剣を目線の高さで地面と水平になるように構える。
「◼️◼️電突」
暫くの沈黙の後に雷鳴のような轟音とともに世界ごと貫くような突きが俺を襲った。
「全く、自分を殺そうとした相手の前で無防備になるとは、どういうつもりだ」
「俺はただ、お前の敵じゃないと分かってほしかっただけだ」
「俺がさっきの一撃を止めなければ死んでいたぞ」
「お前を信じてた」
「……はぁ。いいだろう。話くらいは聞いてやる」