次の話の同窓会の話で森の騒乱戦は終了して王都生活編に入ります。
オークロードの死によって戦は終結し平穏が戻った…などという綺麗な終わり方には、当然ならなかった。
全身が崩れかけている僕にリムルが慌てて大量のフルポーションを浴びせてくる。それを止めようとすれば、今度はベニマルたちまで騒ぎ出し収拾がつかなくなった。
特にシオンは生き残りのオークを殲滅しようとし始める始末だ。ベニマルたちもそれに同調し始めた。
結局リムルと僕で必死に止める羽目になり、そんなこんなで場が落ち着くまでに一時間ほどかかった。
ようやく落ち着いたと思ったら何処からともなく現れたトレイニーが、「明朝、事態収束のための会議を行う」と言い出したことで、今度はリムルが激怒した。
「タケルをこき使うな!!」
結果、重傷者である僕の都合を理由に、会議は二日後へ延期された。
2日後に行われた話し合いは原作とほとんど変わらず進んだため、大同盟は滞りなく結成された。
違いがあるとすれば、鬼人たちの様子くらいだろうか。
別に名付け親でも何でもない人間が死にかけた程度……そこまで気にする必要はないと思うのだが、彼らにとってはそうではないらしい。
もっとも、最終的には…
「タケル様がそう仰るなら」
と引き下がってくれたおかげで、同盟は無事成立した。
……そこまではいい…問題はその後の事だ。
「……なんで僕まで盟主にされてるの?」
「うるせぇ、こうなった以上お前にもこの村を率いてもらうからな」
とても面倒なことになった。
僕は一応冒険者として魔物の監視任務を受けている。
そんな立場で魔物側に立てば外聞は最悪だろう。
……まあ、英雄としての評価なんてどうでもいいけど。
それでも監視・統率・立場維持を同時にこなすのは、流石に骨が折れる。
「どうしようかな……あ、そういえば同窓会しないと」
「同窓会?」
「ほら、他の三賢人に久々に会おうかなって。それに、早めに片付けたい用事もあるし」
オークロードの件についても、きっちり文句を言っておく必要がある。
「怪我は大丈夫なのか?」
「右腕以外はだいたい治った。……繋がりが薄いだけだから」
「繋がり?」
「こっちの話、問題ないよ」
説明する気はない。
というか説明できる状態でもない。
「村はどうする?」
「一日くらいなら大丈夫でしょ」
「そ、そうか……楽しんでこいよ?」
多分リムルは和やかな再会を想像しているんだろうな。
……まあ、そんな空気になるはずがないんだけど。
「さて……オークの名付け、頑張って」
「お、おう……」
歯切れの悪い返事を見てそこで僕はふと思い出した。
……こいつオークに雑な名前つけてなかったか?
そう考えた瞬間スライム状態のリムルを踏みつけていた。
「な、何するんだ!?」
「オークの名前…雑に済ませる気でしょ?」
「そ、それは……」
スライムなのに冷や汗を流しながら明後日の方向見てるのが分かってしまうのは不思議ではあるが…きちんと名前を考えさせないと。
「いい?親がネームドだって聞いて喜んだ子供がさ、山-3235とか知ったらどう思う?」
「……それは嫌だな。すまん」
「分かればいい。ちゃんと考えて、僕も手伝うから」
「助かる……」
そうして十五万体近い名前をどうするか頭を悩ませていると…
鬼人たちと一体のオークが集まっている気配に気づいた。
「ちょっと行ってくる」
「ああ」
あのオークは殺されないとは思うが一応念のために様子を見ておくか…
「オーガ……いや、鬼人の方々よ!」
ベニマルたちが会議場を離れて間もなく、一体のオークが後を追ってきた。
「……何の用だ?」
突然の出来事に警戒を隠さず問うと、オークはフードを外した後いきなり地に額を擦りつけた。
「…本当は今でも里を襲ったオークを根絶やしにしたいのだろう。
弱肉強食とは言っても憎しみはそう簡単に割り切れるものではない」
「……」
「いかに詫びようと足りぬことは承知している。だが…この首一つで、どうかご容赦願いたい!」
暫くの間沈黙が続いたが、やがてベニマルが口を開いた。
「会議の前、リムル様とタケル様に問われた。今後どうするのかと」
その表情からは怒りや殺意は感じられなかった…
「帰る里はない。だから、あの方々の下に在ると決めた。……そう答えたら、役目を与えられた」
むしろ小さく笑いながら話していた。
「確かに怒りはある。だがそれはオークに対してじゃない。守れなかった自分の弱さに対してだ」
「……」
「それに俺は今や【侍大将】だ。勝手に有能な人材を処分するわけにはいかん」
その言葉にオークは顔を上げた。
「リムル様とタケル様に仇なすなら容赦はしない。だが従うなら…仲間だ」
「敵対などありえぬ!! あの御方らは我らを救った!!」
「ならばいい」
背を向けて歩きながらベニマルは言った。
「せいぜい役に立て。それを詫びとして受け取る」
「……父王ゲルドの名に誓って」
「これで良かったんですよね、タケル様?」
「さあ? いいんじゃない?」
先程のオークがいないことを確認した後、誰もいないはずの場所にベニマルが声をかける。
本来なら返事は返ってこないのだが何処からかタケルが急に現れ返事をしていた。
「もしあの場で首を跳ねていたら、躊躇なく斬ってましたよね?」
「いや、さすがに躊躇うでしょ」
躊躇うかどうかも怪しいが本当に斬り捨てるつもりだったという事実にベニマルは密かに冷や汗を流した。
「まあ、終わったんだしいいじゃん。僕は名前考えるの手伝うから」
「……頑張ってください」
「憎しみは簡単に割り切れない…か、
……僕は割り切れなかったから、無理やり切り離して押し付けたけどね」