親愛なる貴方達へ   作:マアブルゥ

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 新たにお気に入り登録してくださりありがとうございます。
ようやく登場予定だったオリジナルキャラクターが全員まともに登場させることができました。

 ここまで読んでくださった方でお気に入り登録や星9以上の高評価、感想がお済みでない方はしていただけたら励みになりますのでよろしくお願いいたします。


同窓会

「こ、こちら……旬の野菜を丁寧に煮込み、裏ごししたポタージュでございます」

 

 声は震えていない…はず、

少なくとも自分ではそう思いたい。

皿を置く手も乱れてはいない……はずだった。

 

 それでも…

スプーンが皿に触れた瞬間かすかな音が響いた。

 

 カチン…

 

 ほんの僅かな音…それだけで心臓が跳ねた。

息が浅くなるのを感じる、それに喉がひどく乾いている。

 

 …何もされていない。

ただ、そこに三人が座っているだけだ。

 

 それだけなのに…

どうしてこんなにも息苦しいのか。

 

「……失礼、いたします」

 

 どうにか一礼しその場を離れる。

歩幅を乱さないように足を運ぶ。

 

 早くなりすぎないように…

でも遅すぎないように。

扉に手をかける。

 

 そして……

 

 

 バンッ。

 

 

 扉を押し開けた瞬間抑えていた力が抜けた。

静まり返った店内に不釣り合いな音が響く。

大きな音に驚いたのか視線が集まる。

だが、誰も何も言わず作業に戻った。

 

「……はぁ、はぁ……」

 

 あり得ない。

この店でこんな振る舞いをすれば即座に叱責される。

最悪その場で解雇されてもおかしくない。

 

 …なのに…それでも誰も咎めない。

理由は勿論分かっている。

 

「……生きてる、よね……?」

 

 今日この店にいらっしゃっているお客様である【三賢人】…

一人でも機嫌を損ねれば国が揺らぐとさえ言われる存在とされている。

そんな方がこのお店に三人同時にいらっしゃっている。

誰もが自分の役割をこなすので精一杯で他人を気にする余裕などない。

 

 むしろ……

あの場から離れられたことを幸運だとさえ思っている。

 

 ふと厨房から3人の様子を覗いてみる。

遠目に見ればただの食事風景にしか見えない。

 

 落ち着いた空間で静かに食事を楽しむ三人組。

笑い声すら聞こえる…けれど…

 

 近づけば分かる…

一歩踏み込むごとに何かが軋む。

この場にいてはいけないと本能が告げてくる。

 

 思い出そうとしても先程の会話が何一つ頭に残っていない。

聞いてはいけない……そう判断して脳が拒んでいる。

 

「……ワイン……」

 

 次は自分の担当だ…

 

 

 

 分かっている……

 

 

 

 

 分かっているのに……

足が動かない。

 

 

 

 

 無理だ……

あの席に…戻るなんて………

 

 

 

 

 

「こうして三人で集まるのも久しぶりだね…

なんか奇妙な感じがして楽しいよ」

 

 穏やかな声だった。

黒髪の男……タケルが楽しげに言う。

 

 向かいに座る二人は反応しない。

白髪の男は淡々とナイフを動かし、金髪の男は静かに皿を片付けていく。

 

「……え、無視?ひどくない?」

 

 軽い調子の言葉の裏腹にその視線は鋭い。

普段のマサミチならこんな風に大人しくしているはずがない。

各地で好き勝手やっている、という噂は嫌でも耳に入る。

 

 そんな男が、こうも静かなのは…不自然だった。

 

「ミチオはいつも通りだし……俺だって偶には静かにしていてもいいだろう」

 

 短いやりとりを終えた瞬間…

…わずかに空気が沈んだ。

椅子にかかる重みがほんの少し増す。

タケルは何も言わず、わずかに視線だけを動かした。

 

「あー、もしかしてさ…オークロードの件、怒られると思ってビクビクしてる?」

「……」

「可愛いなぁ」

 

 露骨に顔をしかめるマサミチ。

 

「ドワーフ王国の件は感謝してるけどさ、君達オークロード…あれはやりすぎでしょ。僕、普通に死にかけたんだけど?」

「待て、私を巻き込むな」

 

 白髪の男…不服そうな顔をして苦言を呈した。

 

「あれ?強化の仕方的に関わってると思ったんだけど」

「この魔物嫌いがか?」

「……ああ、確かに」

 

 あっさり納得するタケル。

 

「で?一応聞くけどどうやったの…あの強化」

「……人間の魂を適当に掴んで、繋げて、押し込んだ」

「雑すぎるんだよなぁ……」

 

 本気で困った顔をする。

 

「そんなので成立するなら苦労しないって」

「お前ができてないだけだろ」

「……はい?」

「だから右腕一つ戻せない」

 

 即答だった。

 

「できてないから治せてないの!!悪い!?」

「ああ、悪い」

「軽いな!?」

 

 タケルが左手で右腕のあった場所を叩いて訴えるが…

余りの辛辣な返事にタケルはテーブルに突っ伏した。

 

「そもそも、あのオークロードはお前用に用意したこと位分かるよな?」

「うっ……」

「それを仕留めきれない時点で論外だ」

 

 タケルは何も言い返せないのか苦虫を噛み潰したような表情になる。

 

「……それに計画のこと忘れてないよな」

 

 低い声が響くと同時に空気が一気に張り詰める。

 

「当たり前じゃん」

 

 マサミチの言葉を聞いてタケルは顔を上げながら返事をした、

先程までの緊張感のない表情とは違い真面目な表情である。

 

「そのために…僕たちは分かれたんだから」

 

 かつて同じ場所にいた頃とは違う。

今は目的のためにそれぞれ別の形で動いている。

 

「ならいい」

「で? 他に共有は?」

「ああ。俺は中庸道化連と組んでる」

「……あー、なるほどね」

 

「じゃあ…カリュブディスも強化する?」

「当然だ」

「そっか。いい運動相手になりそうだね」

 

 オークロードとの戦いで死にかけたとは思えない発言だった。

それに対してマサミチは呆れたように目を細める。

 

「……変わらんな、やっぱりお前はお前か…」

「でしょ?」

 

 タケルは笑った。

 

「基本は原作通りに進める。でも…」

 

 一瞬だけ、言葉を区切る。

 

「自分たちに都合のいい形に歪める…それでいいでしょ?」

 

 誰も否定しないのを確認して満足そうにうなづいた。

 

「絶対に成功させよう…だってこの計画は……人類のため…だからね」

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