親愛なる貴方達へ   作:マアブルゥ

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王都生活編
英雄王来訪


 オーク達を配下に迎え入れたことで街の発展は一気に加速した。

まあ、俺は「こういうのが欲しいな」と大まかな要望を出しただけで細かい指示や調整はほとんどタケルが担当してくれたからな。

 

 ……いや、一応俺だって仕事はしたぞ?構想図のイメージを【思念操作】で共有したりとか。

「それだけか?」と言われたら否定できないが、完成形をイメージできるだけでも作業効率はかなり違うはずだ。

 

 ……一応後で何か差し入れでもしてやるか。

とはいえあいつ何を渡せば喜ぶんだ?

食に執着があるタイプじゃないし、武器も今使ってる物にこだわっていて新調しようとしない。

…考えても分からないので、とりあえず後回しにした。

 

 街の整備は進んではいるがまだ道の舗装まで手が回っていない。

それでも水回りや害虫対策が進んだだけで生活環境はかなり改善された。

 

 因みに俺は「蛇口を捻ったら水が出るようにしたい!」と伝えたんだが、ドワーフ達には発想自体が難しかったらしい。

タケルが実際に一つ作って見せたことでようやく理解できたらしい。

 

 ちなみに本人曰く、別にそういう仕事をしていた訳ではなくただの豆知識で蛇口の構造を知ってたらしい。……地味に凄くないか?

 

 次に問題になったのが生活用水の確保だ。

最初は空気中の水分を集める装置を使おうとしたんだが、これは断念した。魔石の消耗が激しい上に設備も大掛かりで、街のスペースを圧迫するらしい。

 

 なので現在は仮設の水場を設置し、そこから水を供給している。

今はまだ無理だが、将来的には浄水設備なんかも整えて安定して綺麗な水を確保できるようにする予定だ。

 

「リムル様!!」

 

 町を散策していると大興奮した様子のリザードマン達が駆け寄ってきた。リザードマンのガビルとその親衛隊だ。

謀反を起こした連中が何故ここにいるのか……と思うかもしれないが、今は俺の配下である。

 

 本音を言えば、身勝手な理由で反乱を起こした奴らなんて受け入れたくなかった。

ベニマル達も当然のように猛反対していたしな。

 

 だが、リザードマンの族長――ガビルの父であるアビルが頭を下げて頼み込んできた以上、流石に無碍にはできなかった。

 

 ちなみに妹の方は謀反には加わっていなかったのだが、助けてくれたソウエイに憧れた結果、俺の配下入りを決めたらしい。

その話を聞いた時タケルがどんな反応をするか少し不安だったのだが…

 

 何故か腹を抱えて笑っていた。

正直その様子にちょっと引いてしまったが内緒にしておこう。

 

「で、何の用だ?」

「ご覧ください!ヒポクテ草の栽培に成功しました!」

 

 そういえば回復薬の原料になるヒポクテ草の栽培を任せていたな。

だが、成功するまでにはもっと時間がかかると思っていた。

……もしかしてガビルって実は有能なのか?

 

「どれどれ……」

 

 差し出された植木鉢を覗き込む。

そこには、小さな双葉がちょこんと生えていた。

 

 柔らかな葉からは魔力を感じない。

だが何故か見ているだけで穏やかな気持ちに…

 

「なるかぁ!!ただの雑草じゃねえか!!」

 

 どうやら名前を与えて進化した後も、根本的な残念さは治らなかったらしい。

 

 …そんな風に、平和な日々を過ごしていた時だった。

 

「リムル様……緊急事態です」

 

 ソウエイが険しい表情で現れる。

 

「な、何があった!?」

「北の空に武装集団を確認しました。数はおよそ五百。一直線にこちらへ向かっています」

 

 急報を受けた俺は慌てて現場へ向かった。

急いで向かったつもりなのだがそこには既にタケルが立っていた。

 

「タケル、あいつら知ってるのか?」

「先頭にいるドワーフ…見覚えあるでしょ?」

 

 言われて目を凝らす。

黒いオールバックの男…その威圧感ある姿には見覚えがあった。

 

「ドワーフ王国の王……ガゼル・ドワルゴか」

 

 以前ベスターの策略で冤罪をかけられた時、公正な裁定を下してくれた王だ。王様が優秀だったから助かった。

 

 ……いや待てよ。

そもそもの原因タケルがベスター殴ったからじゃねえか。

完全に俺にとばっちりがきてたし…思い出したらまた腹立ってきた。

 

「で、そのガゼル王には直属の極秘部隊があるんだよ」

 

 そんは俺の内心など気にした様子もなく、タケルは呑気に続ける。

 

「その名も…天翔騎士団(ペガサスナイツ)

 

 言われて見れば騎士達は全員ペガサスに騎乗していた。

 

 ガゼル王が地上へ降り立つ。

後から駆けつけたカイジンは片膝をついて頭を垂れたが、タケルや俺達は普段通りだ。

 

「久しいな、カイジンにタケル」

「やあ、おじさん。元気そうで何より」

 

 タケルの軽すぎる態度に周囲の騎士達がざわつき注意しようとしていたが、ガゼル王は手で制した。

 

「それにスライムよ。余……いや、俺を覚えているか?」

 

 気楽な感じで聞いてはいるが忘れているなどと言わせる気がない圧だった。

 

「王よ。本日はどのようなご用件で?」

「なに、貴様という存在を見極めに来ただけだ」

 

 その言葉に鬼人達が俺を貶されたと思ったのか怒りが爆発寸前だ。

特にソウエイが怖い…怒りすぎると逆に笑うタイプだったのか、お前。

 

「【落ち着け】」

 

 タケルが短く告げた瞬間、張り詰めていた空気が一気に和らいだ。

恐らくユニークスキルの効果だろう。

 

「要するにさ、リムルがどんな奴か確かめたいんでしょ?」

 

 そう言いながら、タケルはスライム状態の俺を抱き上げる。

 

「だったら剣一本で十分じゃん」

 

 何を言いたいのか分からないのかガゼル王が目を細めた。

対して俺には嫌というほど意図が分かる。

正直逃げたいのだが、ここまでお膳立てされて逃げる訳にもいかないので人型へと変化した。

 

「……人の姿に化けただと!?」

「……なるほどな」

 

 騎士達は驚愕していたが、ガゼル王だけは納得したように剣へ手を添えた。

 

「確かに、剣一本で十分か」

 

 そう言って剣を構える。

 

 いや待て…タケルが勝手に言っただけで、俺まだ了承してないんだが?

 

「リムル」

 

 タケルがにっこり笑う。

 

「負けたら、勝てるようになるまで特訓ね?

ちなみに断っても同じだから」

 

 ……よし、やる気出てきた。

死ぬ気でやれば生き残れる。

逆に言えば、手を抜いたら死ぬ。

 

「上等だ……!」

 

 俺は剣を構え、ガゼル王を睨みつけた。

特訓の成果を見せる時だ。

 

「覚悟しろよ、ガゼル王!」

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