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ガゼルとの調印式を無事に終え、ジュラ・テンペスト連邦国は正式に国家として認められた。
これによりドワーフ王国という強力な後ろ盾を得たわけだ。
町を…いや、この国を更に発展させることができるだろう。
ちなみに普段は穏やかな雰囲気を醸し出しているタケルだが、こういう場では妙に様になるというか……やたらとかっこいい。
おかげで式典中の女性陣の視線が凄かった。
なんなんだあいつ、仕事できる系イケメンか?
そんな賑やかな日々を送っていたのだが、最近は魔物だけでなくドワーフ達も頻繁にこの町へやって来るようになった。
それに伴い、挨拶や庇護を求めてくる者も増えている。
基本的には善良な連中ばかりだ。
……まあ、中にはこの町を力で奪おうとする馬鹿もいたが。
当然、そういう連中はシオン達にボコボコにされる。
少し同情したくなるくらいには容赦がない。
この町を襲う輩がいるのは俺たちはまだ試されている段階だからだ、その内歯向かう者もいなくなるだろう。
だから今のところは『来る者拒まず』の方針を変えるつもりはない。
重大な問題も起きていないし、しばらくは平和な日々が続く。
そう思っていたのだが…
「どうされました!? リムル様!」
シオンの声を背に、俺は村の外へと飛び出した。
(……やばい)
たった一つ…
たった一つの気配だというのに、ペガサスナイツの軍勢よりも遥かに危険な存在感が猛スピードでこちらへ近づいて来る。
村から少し離れたところまで移動した直後…
ドゴォォンッ!!
轟音と共に何かが空から落下した。
周囲の地面が砕け、衝撃で数本の木々が吹き飛ぶ。
俺も危うく転がされそうになりながら踏ん張っていると、立ち込めていた砂煙がゆっくりと晴れていった。
そして現れたのは…
プラチナピンクの髪を揺らす、小柄な少女だった。
「初めまして! ワタシは魔王ミリム・ナーヴァだぞ!」
少女は満面の笑みを浮かべながら、ビシッと俺を指差す。
「お前がこの町で一番強そうだったから、挨拶に来てやったのだ!」
……いやいやいや、なんでいきなり魔王!?
普通こういうのって四天王の一人とか、幹部クラスが来る流れじゃないのか?
いきなりラスボス級が来るとか聞いてないんだけど!?
……いや、それよりも気になることがある。
「初めまして、リムルと申します」
そう挨拶を返しつつ、俺は首を傾げた。
「なんで俺が一番強いと思ったんですか?」
タケルを差し置いて俺が一番強いと思ったのか気になる。
「うむ!確かに魔力量だけならお前より上っぽいのがいるのだ!だが、魂が不安定だからな!総合的にはお前の方が強いと判断した!」
……魂が不安定?
それを聞いて、ふとタケルの右腕のことを思い出す。
オークロードに喰われた右腕が治らなかった理由、
もしかして、それが原因なのか……?
いや、今はそれどころじゃない。
「ところで、その姿が本来の姿なのか?」
ミリムが興味深そうにこちらを見てくる。
「ゲルミュッドの残した水晶では、銀髪の人型だったのだが?」
「ああ、この姿のことですか?」
俺は人型へと変化する。
するとミリムは「ほう!」と声を上げた後、不思議そうに目を細めた。
「……む? なんか前はもうちょっとちまっとしてないか?…オークロードを喰ったのか?」
やっぱりそこ突っ込まれるよなぁ……。
魔王が裏で何か企んでいる可能性は考えていたが、ゲルミュッドが本当に繋がっていたとは。
しかも“喰った”と言っている辺り、俺の能力もバレてるっぽい。
ここで誤魔化しても意味はないか。
「……ああ、オークロードは俺が喰った」
そう答えると、ミリムはニヤリと笑った。
「で? 今日は何の用事で来たんだ?」
「何を言っているのだ?」
ミリムはキョトンとした顔を浮かべる。
「最初に言ったではないか。挨拶だぞ?」
……本当にそれだけ!?
いやまあ、戦わずに済むならありがたいけど!
「はああああぁぁぁっ!!」
「え?」
突如、背後からシオンが飛び出した。
大剣を振りかぶり、そのままミリムへ斬りかかる。
「ちょ、待っ……」
止めようとした瞬間、ランガが俺を咥えて全力で走り出した。
「ま、待てランガ!!」
「待てません!! お許しくださいリムル様!!」
「だから待てって!!」
俺を守りたい気持ちは分かる!
分かるけど相手が悪すぎる!!
俺は木の枝へ無理やり掴まり、ランガを停止させた。
首に足が入ったのか「キャイン!」という情けない悲鳴が聞こえたが今は無視だ、それよりも…
「あいつら……余計なことを……!」
黒炎が見えた。
恐らくベニマルの黒炎だろう。
まともに受ければ、俺でもただでは済まない。
だが相手は魔王ミリムだ、あれで倒せるとは到底思えなかった。
そして次の瞬間…
轟ッ!!
暴風のような魔力が吹き荒れた。
「っ!?」
慌てて駆け寄る。
そこにあったのは、大地に穿たれた巨大な穴。
その中心で楽しそうに笑うミリムと、ボロボロになって倒れているベニマル達の姿だった。
「リムル様……何してんだ……早く逃げてくれ……」
「ほら、回復薬だ。飲んだら安全な場所で寝てろ」
自分達がやられてるのに、まだ俺の心配をするとは…まったく、大した奴らだ。
「し、しかし……!」
「命令だ。今すぐ離れろ」
俺はゆっくりとミリムを見据える。
「……でないと、巻き込まれるぞ?」
考えてみればおかしな話だった。
なんであいつがまだ来ない?
タケルがビビって逃げるとは思えない。
「む? 何をする気なのだ?」
「まあ待てって」
俺がそう言った直後…
上空から凄まじい速度で何かが落下してくる気配がした。
「ほら、来た」
ミリムが反応して空を見上げるがもう遅い。
「【
タケルの踵落としを、ミリムは咄嗟に腕で受け止めた。
轟音が鳴り響き、衝撃だけで周囲の木々が吹き飛び大地が抉れる。
……いや待て。
その威力出せるならオークロード倒せてたよな?
一瞬そう思ったが、藪蛇になりそうなので触れないでおく。
「よぉ魔王さん」
タケルが獰猛な笑みを浮かべる。
普段の穏やかな雰囲気は消え失せ、一人称まで変わっていた。
「俺の配下が世話になったみたいだな?」
「ほう……」
ミリムの口元が吊り上がる。
「人間にしては中々やるのだ。お前、勇者か?」
「そうだよ」
タケルは笑った。
まるで獲物を前にした獣みたいに。
「俺は人間様のための勇者だ」
「面白い!」
ミリムの魔力が膨れ上がる。
「ならば試してやろう! かかって来るのだ!!」
次の瞬間、魔王と勇者の魔力が激突し周囲の大気が悲鳴を上げた。