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顔面を狙って放たれた拳を紙一重で躱し、同時に伸び切った細腕を両手で掴みその勢いのまま身体を捻る。
「ふんっ!!」
素早く一回転しながらそのままミリムの身体を地面へ叩きつける。
轟音が鳴り響き大地が砕け、直径一メートルほどのクレーターが生まれた。
そこへ間髪入れず神聖魔法を叩き込む。
白光が炸裂するとともに轟音が鳴り響き、周囲を呑み込んだ。
「ワハハハハハ!! 良いぞ! 面白いのだ!!」
爆炎の中から響く、楽しげな笑い声が聞こえる
「もっとかかって来るのだ!!」
……分かってはいたが無傷か。
あれだけまともに入ったはずなのに、ダメージを受けた様子がまるでない。
流石は魔王ミリム・ナーヴァ…別格すぎる。
ミリムに剣を持たせるのは駄目だ。
鎧を纏わせるのはもっと駄目、
…ましてや
本気になる前に倒さなきゃ勝ち目がない。
……全く面倒極まりない。
「どうしたのだ? まだ本気ではないのだろう?」
ミリムは呑気に笑いながら首を傾げる。
「精霊を召喚するまで待ってやっても良いのだぞ?」
「召喚しても意味ねぇからしねぇよ!!」
叫ぶと同時に魔力感知を掻い潜り、一気に背後へ回り込む。
狙うは後頭部、全力の蹴りを叩き込む…はずだった。
「っ……!」
ガシッ。
軽々と足首を掴まれ防がれた。
その際にミリムと目が合い、思わず舌打ちするが対してミリムは愉快そうに笑みを深めていた。
「うむ!魂が欠けているせいでユニークスキルを上手く扱えていないようだが……それでも中々強いのだ!」
そう言ってミリムは俺を放り投げる。
「万全の状態のお前とも戦ってみたかったのだ!」
「そりゃどうも。魔王に褒められても嬉しくねぇけどな」
……いや、本当はかなり嬉しい。
なんせ相手は転スラ世界でも最強格の化け物だ。
そんな奴に認められて嬉しくないわけがない。
だが、喜ぶより先に悔しさが勝っていた。
認められてなお、“本気の相手”として見られていない。
「ひとつ気になるのだが」
ミリムが不意に口を開く。
「何故オークロードをお前が倒さなかったのだ?」
「えぇと、それは……」
流石に『リムルに喰わせるためだった』とは言えない。
かと言って……
「もしかして、自分自身にかけてる縛り…」
ズドォォンッ!!
考えるより先に身体が動いていた。
ミリムの顔面へ拳を叩き込む。
ガードされたのも構わず、そのまま力任せに殴り飛ばした。
ミリムの身体が空中で何度も回転する。
だが、すぐに体勢を立て直し空中で静止した。
そして一瞬呆けたような顔をした後、獰猛な笑みを浮かべた。
「驚いたのだ」
金色の瞳が細められる。
「それが縛りの影響下にない時の力なのか?」
「……」
考えてみれば当たり前だった。
なんでこいつ相手に隠し通せると思ったんだ、俺は…
これ以上情報を与えるのは不味い。
勝つにせよ負けるにせよ、そろそろ終わらせる。
「……ふぅ」
静かに息を吐き全身へ力を込めた。
その瞬間、膨大な魔力が噴き上がる。
つい先ほどまでの数倍…いや、数十倍…暴走するように魔力が増幅していく。
原理は単純だ、生命力を直接魔力へ変換しているだけ。
本来なら魂の保護機能によって不可能な行為ではあるが、今の俺は違う。
今の俺の魂の大部分が欠けている。
だからこそ、欠けた部分から無理やり生命力を引き摺り出せる。
……まあ当然、使い過ぎれば死ぬのだが、それだけだ。
「ワハハハハ!!」
ミリムは心底楽しそうに笑った。
「面白い!本当に面白いのだ!!」
これを見てもまだ余裕か…やっぱり化け物だな。
「【
神聖魔法【
本来なら剣で放つ技を、手刀で叩き込む。
白銀の斬撃が空間ごと裂きながらミリムへ迫る。
これで倒せるとは思っていない。
だが多少のダメージくらいは…
「凄いのだ」
キィン……と澄んだ音が響く。
いつの間にかミリムの手には一本の魔剣が握られていた。
俺の奥義は、その刃によって完全に受け止められてしまった。
「まさか手刀で、私に剣を抜かせるとは思わなかったのだ」
……完全に防がれた。
しかもミリムが手に持っている剣。
数多の魔族を葬ったと言われる伝説の魔剣…
俺の剣も、いつかあの領域まで辿り着けるのだろうか。
……いや、無理そうだな。
「うむ。楽しかったのだ」
ミリムが静かに剣を構える。
「だが、それ以上その力を使わせるわけにはいかないようだからな。終わらせるのだ」
どうやら生命力を燃やしている危険性も見抜かれていたらしい。
警戒していつでも反撃できるように構えた直後、ミリムが消えた。
「っ!?」
次の瞬間には目の前にミリムがいた。
音速を超えて振るわれた天魔を、咄嗟に手刀で叩いて逸らす。
剣圧だけで地面が裂けた。
…あれはやばい、まともに喰らったら死ぬ。
回避と受け流しだけで精一杯だ。
「全く……ミリム!」
「む? どうしたのだ?」
呼び止めると、本当にピタッと止まった。
……こいつ絶対騙されやすいだろ。
「俺は今から特大の一撃で締める」
息を整えながら言う。
「だから、それを防いでみろ」
これなら一撃放つだけで戦闘を終えられる。
ミリムが察して“自分も大技を撃つ”と言い出したら詰みだが…
「よし!!良いのだ!!」
ミリムは目を輝かせた。
「いつでも放って来い!!」
……よし、生存確保できた。
だが…勢いで言ったはいいものの。
俺、何撃つんだ?
「どうしたのだ?まだなのか?」
ミリムが待ちくたびれたように催促してくる。
くそ、こうなったらヤケだ!
俺はミリムへ向け、幾重もの魔法陣を展開した。
本来ならこんな大掛かりな術式、完成前に潰される。
だが今回は別だ、ミリムは律儀に待ってくれている。
「核撃魔法と神聖魔法の合わせ技だ」
膨大な魔力が収束する。
「受けてみな……【アルマゲドン】」
音もなく、無色の極光が放たれた。
空間そのものを歪めながら、破滅の奔流がミリムへ襲い掛かる。
対してミリムは楽しそうに笑っていた。
「面白い一撃のお礼だ」
ミリムが片手を前へ突き出す。
それだけで空間が軋み、捻じ曲がるような圧力が発生した。
「こちらも、とっておきを見せてやろう」
「【
解き放たれた魔力が世界を埋め尽くした。
俺の【アルマゲドン】が一瞬で押し返されたと思った直後…
その圧倒的な魔力の奔流に俺は呑み込まれた。