親愛なる貴方達へ   作:マアブルゥ

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魔王の使者

「えぇ、何これ……」

 

 用事を済ませて町へ戻る途中、町の中心部辺りから巨大な火柱が上がるのが見えた。

 

 嫌な予感しかしない…

慌ててその場へ向かえば案の定騒ぎになっていたらしく、周囲がざわついていた。

 

「ソウエイ!」

「リムル様!」

 

 声をかけるとソウエイがすぐにこちらへ駆け寄ってくる。

 

「この騒ぎはなんだ?」

「連絡が遅れ申し訳ありません。実は警戒網を抜けた魔人が複数名、広場へ現れました」

 

 話を纏めると、魔王カリオンの部下を名乗る魔人がこの町を支配下に置こうと言い出し、それをリグルドが笑顔で拒否したらしい。

すると魔人側は舐められたと思ったのか、リグルドへ手を上げようとしたところをタケルが止めてミリムが魔人を殴り飛ばしたと…

 

「よし、タケル正座」

「断る」

「即答!?」

 

 あいつ逃げやがった、そういう時の判断早いな。

というかどうすればいいんだよこの空気……。

 

「おお、リムル!あやつが舐めた真似をしておったからワタシがお仕置きしておいたのだ!」

「俺の許可なく暴れないって約束したよな?」

 

 リグルドからはあまり怒らないでやってほしいと言われたが、相手は魔王の配下だ…下手に刺激するわけにもいかなかった。

 

「この町の者ではないからセーフ……そう、セーフなのだ!!」

「いや理屈になってないからな?

…まあ今回は昼飯抜きで許してやろう」

「ひ、酷いのだ!!」

 

 ミリムは大声で泣き始め、しまいには「全部こいつが悪いのだ!」と再び魔人を殴ろうとしたため、慌てて昼飯抜きは撤回した。

危ない…このままだと交渉相手がミンチになるところだった。

 

「取り敢えずそっちの言い分も聞きたいからな、場所を変えるぞ」

 

 そう言って応接間へ移動したのだが、さっきまで逃げていたタケルが何故か先に座ってお茶を飲んでいた。

どうやら会議の準備をした上でめちゃくちゃくつろいでる。

文句を言ってやりたかったが今はそれどころじゃない。

 

「それで? 君達は何しに来たんだ?」

「スライムと人間風情に答える義理はないね」

 

 返事をしたのは魔人達のリーダーらしい。

フォビオという名前らしいが、正直言いたいことは分からなくもない。

だが…頼むから配下を刺激するようなことはやめてほしい。

後ろから殺気が漏れてて気まずい。

 

「いいから下がってろ」

「はっ、こんな下等な魔物や人間に従うとはな。雑魚ばかりだと苦労するだろ?」

「む、それは違うぞ!少なくともタケルは勇者を名乗るに足る力を持っておる!」

 

 ここぞとばかりにフォビオは俺達を馬鹿にしてくるが、ミリムの一言で空気が変わった。

 

「そうですよ!なんてたってタケル様は【四賢人】の1人なんですから!!」

 

 【四賢人】ってなんだ…いつ増えた。

 

「四賢人……?まさか【三賢人】のタケルか!?」

 

 自然に訂正してくれた。

脳筋かと思ったが意外と察しがいい。

……いや、脳筋なのは変わらないか。

 

「そういうこと。僕を敵に回すってことになるけど、それってカリオンじゃなくてお前の判断なのか?」

「それだけじゃない。このジュラの大森林全てを敵に回すことになるぞ」

「ちっ……スライム風情が偉そうに」

 

 相変わらず態度はでかいが、それでも額には冷や汗が浮かんでいる。

タケルの言葉に変に反論しない辺り、【三賢人】という名前は魔人達にもかなり知れ渡っているようで少し安心した。

 

「……ここへはカリオン様の命令で来た」

 

 一触即発の空気だったが、フォビオのカリオンへの忠誠は本物らしい。

敵対ではなく交渉を選んでくれた。

途中ミリムがフォビオに圧をかけようとしていたが、晩飯を盾に黙らせた。

 

 フォビオの話によると、カリオンはオークロード戦を生き延びた俺達を配下に誘えと命じたらしい。

やはり湿地帯での戦いを見ていた魔王はミリムだけじゃなかったようだ。

……ミリムに後で詳しく聞こう。

 

「魔王カリオンに伝えてくれ。日を改めて連絡をくれれば交渉には応じる、と。……タケルもそれでいいだろ?」

「ん?あぁ、いいんじゃない?」

 

 タケルの反応が少し気になったが、反対はしていないので良しとする。

取り敢えず、こちらが配下になるメリットくらいは提示してもらいたい。

少なくともフォビオは脳筋すぎて交渉役に向いてなかった。

 

 返事を聞いたフォビオは不服そうな顔をしていたが、文句を言うことなく立ち上がり部屋を出た。

その際、何か物騒なことを呟いていた気がするが聞かなかったことにしよう。

 

「よし、ミリム。魔王カリオンについて聞きたい」

「む、それはリムるにも教えられないぞ!お互い邪魔をしないという約束なのだ!!」

 

 取り敢えず秘密があることは分かった。

 

「それってカリオンとの約束か?他の魔王も関係してるのか?」

「それは……」

「教えてくれないか?親友(マブダチ)として、知らないうちに邪魔しちゃうかもしれないし」

 

 ミリムは約束を守るべきか、親友を取るべきか露骨に悩み始めたようだ、なら最後の一押しをするだけだ。

 

「そうだ、今度ミリム用に新しい武器作ってやるよ」

「話すのだ!!」

 

 よし、武器(おもちゃ)で情報を得ることができた。

内容を纏めると、四人の魔王が傀儡の魔王を誕生させようとしていたらしい。

 

「どんな魔王か知らないけど、俺達かなり邪魔してたんだな」

「?ワタシがゲルミュッドの視覚を支配して水晶に映しておったから、タケルが水晶ごしにワタシ達を見ておったではないか?」

「え、何それ聞いてない」

 

 あいつ、やけにゲルミュッドの死体を見てると思ったらそんなことしてたのか。

まったく余計なことを……って、

 

「またいない!?」

 

 いつの間にかタケルの姿が消えていた。

あの野郎逃げ足がメタルスライム並みに速い。

 

「逃げるなこらぁ!!」

 

 まあ、あいつは自分で撒いた種は自分で回収するタイプだから大丈夫だろう……多分…いや、やっぱり不安になってきた。

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