親愛なる貴方達へ   作:マアブルゥ

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英雄の器①

「という訳で、リムル様とタケル様にお客さんっす」

「いや……“という訳で”の前が無いんだが。一体何の用なんだ?」

「知らないっす!」

 

 フォビオが帰って少しした頃、ゴブタが人間の客を連れてきた。

客が来ること自体は問題ない。

だが、せめて要件くらいは聞いておいてほしかった。

 

「……失礼。私はブルムンド王国でギルドマスターをしております、フューズと申します。

今回はリムル殿とタケル殿に会うため、ゴブタ殿に案内を頼んだのです」

 

 ブルムンド王国のギルドマスターか。

確かタケルが所属していた……

 

「今も所属してるからね?」

「……所属しているギルドか」

 

 本人から即座に訂正が飛んできた。

 

「今から十か月ほど前になりますか。私は彼らとタケル殿から、森の異変についての報告を受けました。

まずはギルドの英雄を丁重に弔ってくださったこと、礼を申し上げます。お礼が遅くなってしまい、申し訳ない」

 

 ……え?

タケルも報告してたのか?

そういえば出会ったばかりの頃、よくギルド向けの報告書を書いていた気がする。

 

「でも、おかしくないか?

タケルから報告を受けてたなら、なんでこの三人組は俺たちのことを知らなかったんだ?」

 

 俺の疑問に、フューズが真剣な表情を浮かべる。

 

「それについてだが……彼らを送り出すまで、この町に関する報告は一切なかった。

単に町が存在していなかっただけならいいのだが……その辺りはどうなんだ?タケル」

 

 そういえばカバルたちも、元々はヴェルドラの洞窟で合流する予定だったと言っていた。

それが出来なかった時点で、かなり不自然ではある。

 

「理由は簡単だよ。

リムルの討伐隊を組ませたくなかった。それだけ」

「……俺のためだったのか」

 

 フューズは小さく息を吐くと、どこか呆れたように肩を竦めた。

 

「なるほどな……。

確かに、タケル殿ならそういうことをする」

 

「え?」

「彼は昔からそうでした。

危険だと判断したものは、多少強引でも先に芽を摘もうとする。

特に人命が関わるとなれば尚更です」

 

 いや待て。

それだと俺が危険人物みたいじゃないか?

 

「つまり……この町、いや。

報告が正しければ、既にドワーフ王国から国家として認められたのだったな。

この国が、人類にとって有益だと判断した……そういう認識でいいのか?」

「この町はどうでもいいけど、リムルは人類のために使えるよ」

「タケル様!?」

 

 うわ、言い切ったよこいつ。

シオンなんて今にも泣きそうな顔をしている。

ここまで徹底して人類側に立たれると、逆に怒る気も失せるな。

 

「タケル、“この町はどうでもいい”は流石に酷くないか?」

「嘘は言ってないよ?」

「もっと取り繕えよ!!」

 

 最低限の配慮というものを覚えてほしい。

 

「……分かった。ひとまず、今はそういうことにしておこう」

 

 フューズは完全には納得していない様子だったが、この場で追及しても無意味だと判断したのだろう。

とりあえず、残り二人の用件も聞いておくか。

 

「で、そっちの兄ちゃんたちは何しに来たんだ?」

「君たちもブルムンド王国のギルド所属か?」

「いえ、私たちは……」

「その前に聞かせてくれ。なんでスライムが喋ってるんだ?」

 

 眼鏡の細身の男が答えようとした瞬間、隣の男が遮った。

……なんだ、そんなことか。

 

「“そんなことか”じゃねえよ!

英雄のタケルさんはともかく、後ろの強そうな奴ら差し置いて、なんでこんなプルップルのスライムが偉そうにしてんだ!?

いや、そもそもタケルさんがここにいる時点でおかしいけど!!」

 

 それは俺もちょっと思う。

 

「リムル様に無礼ですよ」

「だまれおっぱぶっ……!!」

「あっ、つい……」

 

 “つい”じゃねえよ。

確かにセクハラ発言はどうかと思うが、あまり手を出すな。

 

「シオンは短気すぎるのだ」

 

 ……流石にミリムに言われるのは、シオンも不本意だと思うぞ。

 

「えーと、私たちはファルムス王国の調査団です。

こちらが団長のヨウム。私は監視役のロンメルと申します」

「ファルムスか……」

「ん? タケル、その国を知ってるのか?」

「前に、あそこの偉い奴が上から目線で依頼してきた上に文句まで言ってきたから、半殺しにしたなって」

 

 ……ドワーフ王国の大臣を殴った件といい、こいつ意外と物騒だよな。

 

「今回、私たちはオークロードに関する調査のため派遣されました」

 

 ロンメルの話をまとめると、

オークロード出現への対応が必要だったものの、領主が国からの補助金を着服していたせいで、防衛体制がまともに整っていなかったらしい。

 

 そのため、荒くれ者をかき集めて調査隊を編成。

さらに契約魔法で強制的に従わせていたとのことだ。

……まあ、その契約はロンメル本人が解除したらしいが。

 

「だったら、なんでこんな危険な任務から逃げないんだ?」

「あぁ?」

「危険な調査なのに装備は安物。

 聞く限り、雇い主も報酬を弾むタイプじゃなさそうだが」

「……そんなこと分かってるよ。

 でも、オークロードの情報を持ち帰らねえと、町の奴らが危ねえだろうが」

 

 ……ん?

こいつ、口も態度も悪いが……実はかなりいい奴なんじゃないか?

カバルたちを助けた時も、自分の手柄にせずゴブタのおかげだと言っていた。

腕は立つが、無駄に驕るタイプでもない。

 

 しかも仲間からの信頼も厚そうで、顔も悪くない。

……これは、使えそうだな。

 

「なあ、フューズ。

オークロード討伐の情報ってもう出回ってるのか?」

「いや。知っているのはここにいる者たちと、ブルムンド国王、それに一部の大臣のみだ」

 

 なら問題ないな。

 

「よし、決めたぞ」

 

 俺はヨウムを見ながら笑う。

 

「ヨウム……君、英雄になる気はないか?」

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