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「さて、一応言い訳は聞こうか、タケル?」
「必要だったからやった。反省も後悔もしてない」
「だまらっしゃい!!」
パシンッ!!と綺麗な音が鳴り響いた。
反省の色が全く見えないタケルの頭を引っ叩いた音だ。
前にミリムとの戦いで使った、魂を削って力を得る危険な技術…
危険だから二度と使うなと言ったにも関わらず、こいつはまた使いやがった。
「別にミリムの時みたいに倒れて目を覚まさない、なんてことはなかったし」
「その時点で論外なんだよ!!」
全く分かっていない。
あの時どれだけ心配したと思っている?
俺だけじゃない、ベニマルも、シオンも、シュナも…みんなだ。
「もし失敗して死んだとしても、それは僕の判断ミス…責任は僕にある」
「そんな訳ないだろ!!」
淡々とそんなことを言うタケルに俺は思わず怒鳴っていた。
「お前の死がそんな一言で済んでたまるか!!」
「良いんだよ、それで」
タケルは平然としていた。
まるで自分の命の話をしているとは思えない。
「僕は所詮、歯車みたいなものだから」
「……」
「僕以外にできる人がいるならそれで良いし、壊れたなら代わりを用意すれば良い」
「お前の代わりなんているか!!」
「うーん……今の役割を引き継ぐのは大変そうだけど」
違う…そうじゃない。
こいつはまた役割の話をしている。
何で分からない…何で自分自身を勘定に入れない。
「もっと、自分が死んだら悲しむ奴のことを考えろよ!!」
「あー……いるのかな」
「います!!」
堪え切れなくなったのかシオンが声を上げた。
その瞳には涙が浮かんでいる。
「ここにいます!! 少なくとも私達は悲しみます!!」
シオンの言葉に対して流石のタケルも返す言葉がなかったのな気まずそうに視線を逸らした。
「分かったか?」
俺は深く息を吐く。
「お前が死んだら悲しむ奴がいるんだよ」
「……」
「だから二度とこんな無茶はするな」
「必要に応じて」
「絶対するな!!」
相変わらず反省を見せない即答ぶりだった、全く本当にこいつは……
たぶんまた同じことをする。
人類のためだとか、誰かを守るためだとか言って。
こいつは自分を天秤に乗せようとしない。
仮に乗せるとしても、それは英雄としての価値だ。
人間としての自分じゃない、そんなの……
「……寂しいじゃねえか」
「え?」
思わず本音が漏れた。
タケルが少しだけ目を見開く。
「タケル」
俺は真っ直ぐあいつを見る。
「前に言ったこと覚えてるか?」
「まあ……覚えてるけど」
シズさんが死んだあの日。
俺はタケルを支えると決めた。
あいつを一人にしないと決めた。
「もっと俺を頼れ」
「頼ってるけど」
「頼れてねえから言ってるんだろ!!」
自然と拳に力が入る。
「俺はお前を守りたいんだよ!!」
「……」
「……」
しばらく沈黙が続いた。
タケルは何も言わない。
ただ少しだけ困ったような顔をしていた。
これで考えを変えるとは思っていない。
きっとまた無茶をする、それでも……
次は俺が先に動けばいい…それだけの話だ。
そんな重苦しい空気を断ち切るようにタケルが口を開いた。
「そんなことよりフォビオは良いの?」
「あ」
完全に忘れてた。
「そうだった!!」
カリュブディスとの戦いで全力を出し過ぎていたせいで、肝心のフォビオのことが頭から抜け落ちていた。
大賢者によると、フォビオはカリュブディスと九割以上融合しているらしい。
一時間もすれば完全なカリュブディスとして復活してしまうとのことだ。
故にカリュブディスだけを分離する必要があるのだが…
《告。フォビオはカリュブディスの力の一部を魂に取り込んでいる可能性があります》
え?
《このままでは完全な分離は不可能です》
ということは、また復活するのか?
《否。カリュブディスそのものが復活する可能性は低いと思われます》
なんだ、それなら何にも問題ないじゃないか…
いや、でもわざわざ大賢者がそんなことを言うって嫌な予感しかしないぞ。
《告。取り込まれた力はオークロード強化の源と類似していることから、フォビオを依代にした存在はオークロードを魔王へ仕立て上げようとした者達の関係者である可能性が高いです》
あー……
また魔王絡みか、本当に面倒だな。
だが今考えても仕方ない。
まずはフォビオを助ける方が先だ。
そういえば、カリュブディスの力を取り込んだフォビオはどうなるんだ?
《解。純粋な黒豹の獣人族ではなくなる可能性があります》
……まあ、それでも死ぬよりはマシだろう。
騙されて利用されたとはいえ、良い勉強代だと思って受け入れてもらうしかない。
もし本当に居場所がなくなったら、その時はテンペストで受け入れればいい。
「【変質者】と【暴食者】を並列起動」
フォビオからカリュブディスを分離し、逃げる暇を与えず【暴食者】で喰らい尽くす。
「どう?」
それから暫くして作業の様子を見ていたタケルがが尋ねる。
「成功したよ」
細かい制御は全て大賢者に任せたおかげで作業は無事終了し、俺は息を吐いた。
「これでもうカリュブディスが暴走する心配はない」