親愛なる貴方達へ   作:マアブルゥ

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友誼への一歩

 カリュブディスの一件から数日後、ユーラザニアから使者としてフォビオがやって来た。

以前とは打って変わって真摯な態度で振る舞うその姿に、あの一件が彼にとって大きな経験になったのだと実感した。

 

 その時にフォビオから渡された手紙には、互いに使節団を派遣し合い、正式な交流を始めたいという内容が記されていた。

フューズからも「タケルがいる以上、人間の国との交流も近いうちに増えるだろう」と言われていたが、こうして実際に外交の話が進み始めると、ようやく国を運営しているという実感が湧いてくる。

 

 今はまだタケルの存在に頼る場面が多い。それでも、俺自身が信頼を勝ち取れるようになれば、その状況も少しずつ変わっていくだろう。

 

 とはいえ、政治だけではタケルを守れない。だから毎日の鍛錬も欠かしていない。

二週間ほどミリムに鍛えられたおかげで、俺自身もかなり強くなったと思う。

 

 因みに俺はミリムに贈った【減速】や【脱力】などの効果を付与した魔鉱入りの武器を使って相手をしてもらっていたのに対し、タケルはそんなものは必要ないと言わんばかりにミリムと素手で真正面から殴り合っていた。

……毎回思うんだが、本当にお前は後方支援特化なのか?

 

「カリュブディスが総力戦になっちゃったからね、ミリムに鍛えてもらえて本当に助かったよ」

「そこまでボコボコにされて、その感想が出てくるのはメンタルが化け物なんだよ」

 

 意外とタケルって脳筋なんじゃないか?

……いや、最初から割と力尽くで解決してたな、こいつ。

 

 ちなみにミリムは、フォビオが使者として来て数日後、「他の魔王に余計なことをさせないよう言ってくる!」と言い残し、どこかへ飛んで行ってしまった。

純粋な性格だから、変なことに巻き込まれなければいいんだが。

 

 

 

 そんなこんなで現在、ユーラザニアへ送り出す使節団の出発式を行っている。

団長はベニマル。補佐としてリグル、さらに幹部候補のゴブリンたちを同行させることにした。

 

 今回の交流はテンペストの未来を左右すると言っても過言ではない。ぜひ成功させてもらいたいところだ。

 

「そういう大事なことは、ちゃんと壇上で話してよね?」

「わ、分かってるって」

 

 今回は以前のような失敗はしない。

今度こそ、盟主らしく決めてやる。

 

「いいか、今回の目的は友好を結ぶことだけじゃない。これから先も付き合っていける相手かどうかを見極めることでもある。

 

 我慢しなければ付き合えないような相手なら、無理に関係を築く必要はない。

お前たちの後ろには俺やタケル、そして仲間たちがいる。

だから恐れず、自分たちの意思をしっかり伝えてこい。

友誼を結べるかどうか、その目で確かめてきてくれ。頼んだぞ」

 

 言い終えた瞬間、地鳴りのような歓声が響いた。

ベニマルたちの士気も十分高まっている、これなら安心して送り出せるだろう。

 

 後は俺たちが、ユーラザニアからやって来る使節団を迎える準備を整えるだけだ。

 

 

 

「なんか忙しい時に来ちまったみたいだな」

「いや、ちょうどいいよ。来客対応の練習相手になってくれ」

 

 ユーラザニアとの使節団の派遣で盛り上がっているところでヨウムが顔を出した。

折角だし今晩は酒でも飲みながら接客の予行演習に付き合ってもらうことにしよう。

 

 もちろん、カリュブディスの一件を知らないヨウムは、ユーラザニアから使節団が来ると聞いた瞬間、飲んでいた酒を思い切り吹き出したのだが。

 

「ユーラザニアって、あの魔王カリオンの国か!?」

「そう。国交を結ぶチャンスが巡ってきたんだよ」

「は、はぁ……」

 

 ヨウムは呆然と天井を見上げた。

やっぱり魔王の国と正式に交流するっていうのは、それくらい凄いことなんだろう。

 

「魔王の配下か……さぞ怖い奴らが来るんだろうな」

「どうだろう。でも今のお前なら、幹部クラス相手でもそこそこ戦えると思うぞ」

 

 タケルとの特訓を乗り越えたヨウムは、名実ともに英雄と呼ばれても遜色ない実力を手に入れている。

少なくとも俺と出会った頃のフォビオ相手なら十分善戦できるはずだ。

 

「安心しろ。俺は魔王の配下に喧嘩を売るほど思い上がっちゃいないし、部下にもそんな真似はさせねえよ」

「なら安心だ」

「どっちかと言えば、心配するべきはタケルなんじゃねぇのか?」

 

 ……それはそうなんだよ。

でも、タケルを止められそうな奴がいない。

 

 今さら「あいつを大人しくさせろ」と言われても無茶な話だ。

まあ、魔物たちからも「関わっちゃいけない奴」認定されてるだろうし、自分から突っかかってくる奴もそうそういないだろう……そう思っていたのだが……

 

 

 

「弱小なるスライムが盟主だと!?ふざけるな!!」

 

 テンペストへ到着したユーラザニアの使節団。

その先頭に立つ二人のうち、一人……スフィアと名乗った獣人が開口一番そう叫んだ。

 

「その上、人間とつるむなど魔物の風上にも置けねぇ!!」

「控えなさいスフィア。カリオン様の顔に泥を塗るおつもりですか?」

 

 それに対してもう一人の使節団員であるアルビスがたしなめるが、スフィアは聞く耳を持たない。

……今回は穏便に交流できると思ってたのに、なんで毎回こうなるんだよ。

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