親愛なる貴方達へ   作:マアブルゥ

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友誼の果実

「リムル様、タケル様只今帰還いたしました」

 

 使節団としてやってきたスフィア達がユーラザニアに帰ってから数日後、ベニマル達がユーラザニアから帰還した。

ベニマルたちの表情を見る限り、大きな問題は起きなかったようだ。

ひとまず安心である。

 

「獣人族の強さは流石の一言しか言いようがありません。

一兵卒まで徹底的に鍛えあげられてました」

 

 やっぱりそうだよな。

完全に実力主義らしいし、自分の存在を知らしめるためには力が無ければ始まらないのだろう。

 

「それからお土産をいただきました。

ぜひ、タケル様とリムル様に召し上がっていただきたいとのことです」

「おお、果物か……甘い!!

折角だからタケルも食べた方が良いぞ」

 

 タケルはご飯に対して興味を持つタイプではないが、リグルがわざわざタケルの方をじっと見つめながら言うあたり、どうしても食べて欲しいのだろう。

 

 なので俺が1口食べてから食べるように促したところ、タケルは興味なさげにリンゴを手に取り暫く見つめて……

 

 シャリッ

 

 一同が固唾を呑んで見守る中、タケルは淡々と一口かじる。

 

「で?報告することはそれだけじゃないでしょ?」

「いや、その前にリンゴの感想は!?」

「甘いね、それがどうかした?」

 

 こいつ、本当に日本人なのか?

食事に興味がないとは思っていたが、まさかここまで酷い… いや、食に興味がないのは前からだったな。

 

「お前な、もうちょっと自分の趣味とか持った方が楽しい生活送れるぞ?」

「善処する、で?この後ドワーフ王国の式典に行かないといけないから要件を聞かせて」

 

 完全に仕事モードだこいつ。

まあ、確かにユーラザニアに行った感想とかは大事だから良いんだが。

 

「俺としては魔王カリオンは信用に値する人物だと判断しました。

次回からは俺ではなくリグル殿を使節団の団長に任命し、俺はテンペストの護衛のために残った方が良いでしょう」

「お前がそこまで言うのであれば問題ないだろう。

使節団の団長の件もそれで良いぞ」

 

 以前話した時から思ってはいたが、カリオンは力だけに頼るタイプの王様でないことだけは分かったので安心した。

 

「実は魔王カリオンに喧嘩を売ってみたんですが、笑っていなされましたし」

「はぁ!?使節団の団長が何やってんだ!

 

 一応対等の立場の国同士ではあるとはいえ、使節団の団長が魔王に喧嘩を売るとか最悪外交問題になりかねなかったんだぞ?

 

「いやあコテンパンにされましたね、俺もまだまだです。

ミリム様やタケル様に鍛えられて強くなったつもりではあるんですけどね」

 

 強くなった自覚があるのは良いことだが、魔王に喧嘩を売ってはいけません。

 

「それよりもタケル様、フォビオと戦ってきました」

「そう、どうだった?」

「悔しいですが…負けました…タケル様の言う通りです」

「ま、予想通りか……」

「は?」

 

 タケルの言う通り?

もしかしてタケルの指示で喧嘩を売ったと?

 

「あっリムル様、カリオンやフォビオと戦ったのは俺の判断です。

タケル様はあくまで今の俺では勝つことはできないと予測していただけです」

「いや、タケルは事前に知ってたんだったら止めろよ」

 

 フォビオと戦うのはまあ理由が察せられるとは言え、カリオンと戦う理由が特段あるわけじゃないだろうが。

 

「戦闘狂が戦いを我慢しろと言われて我慢すると思うのか?」

「それでも止めるのがお前の役目なんだよ!!」

「あの…別にそもそも俺は戦闘狂では無いとは思うんですが…確かに強い者と手合わせするのは楽しいですが」

 

 ベニマル、そういうのは基本的に戦闘狂と言うんだ。

 

「で、カリオンはまあ良いとしてフォビオの強さはどうだった?」

「強いというより厄介というのが正直な感想です。

魔力妨害により俺の炎が弱体化され、近接戦を挑もうにも強化された身体能力を駆使して決定打を生ませず。

それに加えて超速再生のスキルがあるときたものですから、ジリ貧で負けてしまいました」

 

 お互いに殺すつもりは無かっただろうからその時は話は別だろうが、やはり超速再生と魔力妨害の組み合わせによる耐久能力は高いのか。

そこにフォビオの戦闘経験による技術力と強化された身体能力が組み合わさることで不死身とも言える程にまで強くなったと。

 

 カリュブディスは知能を高い身体能力で補っていたが、フォビオはその逆のパターンだと……

 

「そういうことか、ようやく分かった。

フォビオと戦わせたのは、あいつが暴走せず戦うことができるか確認がしたかったということか」

 

 フォビオが戦闘中に暴走するようなことがあれば危険因子として速やかに対処が求められる、だけどその兆候が今回は無かったので問題がなくなった。

 

 そして、カリオンの強さを確かめたのは、フォビオが今後暴走した時はカリオンがフォビオを止めることができるのか確かめたかったと。

 

「理由は納得できたが、頼むから予め俺に教えてくれ。

心臓に悪すぎる」

「スライムに心臓あるっけ?」

「比喩に決まってんだろ!!」

 

 

 

「それじゃあみんな行ってくる」

「「「行ってらっしゃいませ!!」」」

 

 俺たちはこれからドワーフ王国と行う友好宣言の式典に参加するためにドワーフ王国へ出発した。

 

 ドワーフ王国との友好を足掛かりに、人間の国との信頼も少しずつ築いていく。

タケルと共にテンペストを発展させ、誰もが笑って暮らせる国を作る。

……この時の俺は、その未来を疑いもしなかった。

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