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「ドワーフ王国へようこそおいで下さいました」
「【三賢人】のタケルだ」
ドワーフ王国へは問題なく到着した。
……のは良いのだが、誰かと話す時はタケルかシュナが話していた気がする。
やっぱり、こういう場でも堂々としていられる二人って凄いよな。
俺なんかはずっと静かにニコニコしながら眺めていただけのはずだ。
というより、頭が真っ白になっていて自分が何をしていたのかほとんど覚えていない。
「リムルよ。タケルがなんとかしたおかげでまだ良かったが、あれでは甘く見られても文句は言えんぞ」
「それはそうだね」
うん、流石に駄目だったよな。
だけど、初めてまともに国外で外交というものを行うんだから、しょうがないとだけは言わせて欲しい。
次回以降は、もっとカッコいい姿を見せられる……はずだ。
「さて、今はここに大臣らもいない。迂遠な言い回しや腹の探り合いは無しで行こう。まあ、タケルは端からそのつもりは無いようだがな」
「何か問題でも?」
えぇ、嘘だろタケル……。
そう思ったけど、そういえばこいつ、面倒な腹の探り合いをしようものなら、力尽くで解決することもあったな。
「いや、今回においてはそれで良いが……これから外交を行っていくのであれば、せめて相手の意見を尊重することも覚えておいた方が良いぞ」
「善処する」
「頼むから実行してくれ」
まあ、流石にドワーフの王様に忠告された程度でタケルが簡単に考えを変えるわけもないか。
「まあ、それについてはまたの機会にしよう……俺が聞きたいのは、お前らがカリュブディスを倒したのか、ということだ」
「そうだよ」
「そうか……なら良い」
あれ?
もっとカリュブディスに関する情報を求めてくるものだと思ったのだが。
「確かにカリュブディスは脅威ではあるが、【三賢人】にはその常識は通用せんか」
「確かに僕とリムルがいれば、あんなでかいだけの魚なんかに負けることはなかったね」
「え?」
あの、そこら辺の魔王より強そうな化け物を、ただのでかい魚扱いしていることに驚いてタケルの方を見る。
するとタケルは、目だけで「何も言うな」と訴えてきた。
……はいはい、分かったよ。
俺は何も言わず、ガゼルの方へと顔を向けた。
「お前ら、何を隠してるんだ?」
「カリュブディスを倒しただけだから、特に何もないよ」
「……右に同じく」
まあ、そりゃそうだよな。
ただでさえ強いカリュブディスが、更に他の【三賢人】のせいで強くなってました、なんて言えるわけがない。
暫くの間ガゼルが無言で俺達を睨んでいた。
だが、やがて深いため息をつくと追及することを諦めてくれた。
「疑わしいことこの上ないが、とりあえずお前らを信じることにしよう。それにしても、土産に貰ったこの酒は美味いな」
「おっ、流石はガゼル王。お目が高いな」
ガゼルが飲んだのは、完熟したりんごを使用した自慢の蒸留酒だ。
タケルに飲ませても大した反応がなかったから少し不安だったが、ガゼルに認められたことで安心した。
「果実類を輸入させて貰える国が見つかったからな。ある程度安定して蒸留酒が作れる見込みができたんだ」
「ほう。ドワルゴン以外にも、貴様達と国交を結ぼうという者が現れたのか」
「そうだよ。獣王国なんだけど……」
「「「ユーラザニアか!!!」」」
お、おう……。
筋肉ムキムキのおっさん三人が同時に叫ぶと、迫力が凄いな。
それにしても、ユーラザニアと国交を結ぶって結構凄いことだったんだな。
「貴様、獣王国にも懐かれたのか?」
「いやいや、カリオンの部下を助けただけだよ。それで交易を申し出たら、了承してくれたんだ」
だから、そのジト目はやめてくれ。
「だとしたら、テンペストの重要性は一気に跳ね上がるな」
「いずれはファムルス王国に代わる貿易の中心になるかもしれんな。少なくともこの酒はファムルス王国の輸出するどの酒よりも美味い」
ファムルス王国か……。
確か、ヨウムの出身地だったよな。
そういえばあいつあんまり故郷のことを良く言わなかったな……。
「なあ、ファムルス王国ってどんな国なんだ?」
「西方諸国でも一、二を争う大国なのだがな……。
ここだけの話だが、俺はあの国王が好かん」
「うわぁ……そうなのか?」
ガゼル王が嫌うって、何をしたんだその国王。
「その国に関しては、タケルの方が詳しいのではないのか?確か先代国王は、タケルに対して偉そうに指示をしたことで半殺しにされたと聞く」
「え? 嘘だよな、タケル?」
「あ、本当だよ」
それを聞いて、俺は思わず頭を抱えてしまった。
人間と仲良くしようとしているのに、よりにもよって大国とそんな因縁があるとは思いもしなかった。
「それより、お前は【三賢人】に注意するべきだ」
「え? どうして?」
「タケルと仲良くなったからと言って、【三賢人】と仲良くなれるとは思わない方が良い。少なくとも、タケルは【三賢人】の中でも穏健派に入ると思え」
問答無用で俺や前ファムルス国王を半殺しにした奴が穏健派?
物騒すぎるだろ【三賢人】……
「少なくとも他の二人と出会っていたら、お前はこの世にいなかったであろうな」
「えぇ……」
タケルの表情を見るに、ガゼルは嘘をついているわけではなさそうだ。
……マジか、気をつけておこう。
「タケルは他の国に対しての抑止力にはなるが、同じ【三賢人】である二人には通用せんことを頭に入れておけ」
あぁもう。
【三賢人】のマサミチが中庸道化連に協力しているという情報だけでも頭が痛いのに、残りの一人もテンペストに敵対する可能性があるとか、考えたくない。
「それに【三賢人】の誰かが敵に回った時は恐らく……」
「恐らく?」
「……いや、下手に話すことでもないだろう。すまない、忘れてくれ」
ガゼル王が何かを言おうとした。
だが、タケルの顔を見た瞬間、言葉を飲み込んでしまった。
その時のガゼル王は、どこか哀れむような表情を浮かべていた。
……一体、何があるんだ?
「大丈夫です!!リムル様なら【三賢人】達も認めてくれる筈です!!」
「お、おいっ!!シオン、何言ってるんだ!?」
その手に持ってるコップ……まさか、酒を飲んでるんじゃないだろうな?
「ふふん。タケル様も既にリムル様のことを認めたのです。他の二人も時間の問題でしょう」
そう言って、手に持っているコップを口へと運ぶ。
一気に飲み干したかと思えば……
「……あ」
そのまま、後ろへと倒れ込んだ。
「セーフ……」
咄嗟に俺がクッションになったことで、特に怪我することはなかった。
ガゼル王達も笑って許してくれたし、良かった……。
しかし、全く…重くなっていた空気をあっさりと壊してしまったな。
「うちの秘書がすまないな」
「よいよい。早く部屋に連れて行ってやれ」
全く、うちの秘書が好き勝手言ってくれて困ったものだ。
……だがここまで期待されているとなると……応えるしかないよな。