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色々とトラブルはあったが、なんとかブルムンド王国に辿り着いた。
この国はジュラの大森林と隣接しているためか、建物はかなり頑丈な造りになっている。
冒険者と思しき人達が街を警備しているし、治安については特に心配する必要もなさそうだ。
「やっぱりシオン達は連れてこなくて正解だったな」
これだけ魔物に対して警戒しているとなると、素性の知れない強力な魔物が街にやって来たとなればパニックになるのは目に見えている。
そう考えると3人が快く案内を引き受けてくれたのは助かった。
「仮面のお嬢ちゃん、焼きたてのパンはいかが?」
「いくつか買うとしようか」
焼きたてのパンは美味しいし、パンを焼いていた女将さんも笑顔が素敵で優しい人だった。
……この国、結構いい国だな。
「そういえば、イングラシア王国には何の用事があるんだ?」
近くの食堂で食事をしていると、カバルがそんなことを聞いてきた。
「ああ……そういえば言ってなかったな。
夢の中で出会った子供達に会おうと思ってるんだ。
シズ先生の心残りだったし、会ってみようかなと思ってな」
「心残りということは、何か良くないことがあるんすかね?」
「だとしたら、なんでタケルさんはその子供達に何が起きているのか、リムルさんに教えなかったのかしら?」
言われてみれば、エレンの言う通りだ。
タケルは最低限必要だと思えばこちらに情報を提供してくるはずだ。
それなのに警告はしてきたものの、あの子達の現状については何も触れていなかった。
助けたくないわけではなさそうだし、何も情報を得ていないわけでもなさそうだ。
……もしかして、今持っている情報を俺に与えても意味がないってことか?
タケルが持っている情報を教えても参考になるどころか、先入観として邪魔になる可能性がある。
だとしたらまあ納得できなくもない。
「とにかく、タケルは俺ならあの子達を助けられると判断したんだ、なんとかしてみせるさ」
「そうっすね!リムルさんならやってくれるはずっす!!」
……やたらと3人からの信頼が強いような気がするが、まあいつも通りか。
「だとしたら、うちのギルマスに紹介状を書いてもらうといいんじゃない?」
「一応、身分証明のためにギルドを訪れるから、その時にフューズに会っておこうとは思ってたんだが……何かあるのか?」
「イングラシア王国にはギルドの本部があるんだよ。ギルドの本部で一番偉い立場にいるグランドマスターっていうのが、ユウキ・カグラザカというシズさんの弟子らしい」
ユウキ・カグラザカか……。
シズさんの夢にも出てきた男の人だ。
これから会う予定の子供達とは違うが、シズさんが気にかけていた2人のうちの1人でもある。
因みに、もう1人は女性だが……正直、会うのは少し気が重い。
俺に心を開いてくれるのか、分からないような目をしていたからな。
「それだったら、なんでタケルはギルマスへの紹介状を書いてなかったんだ?」
「さ、さあ?なんでですかね?」
わざわざタケルがギルドの力を頼らせるということは、子供達はギルドと何かしらの関係があるのだろう。
なのに、本部とは関係ない話なのか?
そもそもタケルが推薦状を出したのは、子供達がいるイングラシア王国とは別の、ブルムンド王国にある支部だ。
……意図が見えないな。
「ただ純粋に、頭から抜けてたんじゃないっすか?」
「いや、流石にそれはないだろ」
わざわざギルドへの推薦状を書いてまで根回しするほどなんだぞ?
それなのに一番重要そうなグランドマスターへの根回しを忘れるなんて、あの男ならしないはずだ。
「もしかして、ブルムンド王国と国交を結んでこいってことか?」
「な、なんで一気に話が飛躍してるのよ」
たしか、フューズは国の大臣ともかなり親しい関係にあったと聞いている。
フューズが魔物の国の主がブルムンド王国に来たということを、大臣に伝えないはずがない。
そうなると、国王との面会を求められる可能性は高い。
そして、その面会の話を俺に伝える役割はフューズが担うはずだ。
そこで了承する代わりに、グランドマスターへの紹介状を書いてもらう。
つまり何が言いたいかというと……
交渉の練習をしろ、ということか?
「うーん、タケルさんは割と何を考えているのか分からない方だけど……流石に考えすぎじゃないかしら?」
「いやいや、あいつがそんな初歩的なミスをするはずがないだろ」
たしかに紹介状をその場で書いて渡してきたりと、慌ただしい感じはしていた。
それでも、あいつがユウキのことを忘れるなんてことはないはず……だよな?
「だからと言って、タケルに確認するわけにはいかないからな。
もし忘れてるわけじゃなかったら悪印象をつけられかねないし」
それに、どちらにせよ俺がグランドマスターと会うのは相応しくないと思われたのなら、会うことはできない。
今さら気にしたって仕方がないだろう。
「むう……それもそうよね」
「さてと……そろそろ食事も済んだことだし、ギルドに行くか」
この国を観光したい気持ちはある。
だが、さっさと冒険者になって、イングラシア王国にいる子供達のところへ行かないといけない。
このポンコツ3人組でも問題なく……問題なく?冒険者として活動できているんだ。
俺もちゃんと合格できるといいな。