ここまで読んでくださった方でお気に入り登録や星9以上の高評価、感想がお済みでない方はしていただけたら励みになりますのでよろしくお願いいたします。
ここはブルムンド王国にあるギルド支部。
様々な冒険者が集まり、クエストの受注や素材の買取などを行っている場所だ。
故に常に賑やかで活気のある場所……となっているはずなのだが。
「う、嘘……ですよね?」
受付嬢が信じられないものを見るような顔でこちらを見ている。
どうやら否定するための根拠が見つからないらしく、俺に対して明らかに恐ろしい何かを見るような目を向けていた。
それはギルドにいる他の冒険者達も同様だった。
恐らく最初はこんな小さな子供が、シズさんに憧れた影響で後先考えずに冒険者になろうとしている……
その程度の認識だったのだろう。
だがその認識は一瞬にして覆された。
受付嬢と同じように恐ろしい何かを見るような目を向ける者。
逆にとんでもない逸材が現れたのではないかと期待するような目を向ける者。
反応は様々だが、共通しているのはつい先程まで騒がしかったギルドが、一気に静まり返ってしまったことだ。
原因は勿論分かっている、俺の一言だ。
「あ、あの……本当に確認させて欲しいんですけど……」
ただ、それでもこれだけは言わせて欲しい。
「【三賢人】のタケル様から推薦を受けたというのは、本当でしょうか?」
……タケル、お前何をやらかしたんだ?
こんな事態になったのは、ほんの数分前のことだった。
カバル達にギルドへ案内された俺は、早速受付嬢に冒険者になりたいと告げた。
だが受付嬢は困ったような顔をしながらも、
「そのお面……英雄に憧れる気持ちは分かるけど、貴方にはまだ早いわよ?」
と、手続きを断ろうとしてきた。
まあ、このお面はシズさんの物だし、背格好も相まって子供にしか見えない。
俺が無茶をして死なないように言ってくれているのだろう。
……まあ、その心配は不要なんだけどな。
「まあまあ、そう言うなって。この人、俺達3人が束になっても敵わないんだぞ?」
「えっ!? 本当ですか!?」
「あっしらの客人に失礼な態度はやめてくれねぇすかね?」
「「「す、すみませんでした!!」」」
……なんか、あっさり謝ってもらえたな……というか意外だ。
テンペストではものすごいポンコツ感を出している3人だが、ここでは結構信頼されているらしい。
これは少し認識を改めた方がいいのかもしれない。
……いや、待てよ?
こいつらがドヤ顔で買い取ってもらっている素材って、確かゲルド達が工事の邪魔になるからと撤去していたものの使い道がないからとこいつらに渡していたものだよな?
これまでもテンペストに来ては色々ともらっていたみたいだし……。
なるほど……俺達からもらったものをここで売ることで、信頼を得ていたのか。
……なんかちょっとだけ釈然としない。
「あっ、ほらリムルさん!確か紹介状?を貰ってたっすよね?
受付の人に見せた方が良いっすよ!」
こいつ、俺の視線に気づいたのか慌てて話題を変えやがった。
まあ元々俺からその事実を打ち明けるつもりはなかったし、今はいいか。
「これが紹介状、ギルマスに渡しておいて」
「は、はい……ひとまず手続きの都合上、私が読んでからお渡しすることになりますがよろしいですか?」
「いいぞ」
受付嬢は俺に確認してから封を開け、中身を確認する。
そして……
「う、嘘でしょ!? こ、こんな小さな子にタケル様が!?」
信じられないような目で、再び俺を見た。
手は震え声も震えている。
尋常じゃないほど怯えているのが伝わってきた。
まあ、その後に起きたことは最初に言った通りだ。
正直に言って、混乱しきったこの場を俺一人でどうにかすることはできなかった。
だから気迫のある一声で場を収めてくれたフューズには感謝している。
「感謝してる、で済ませてほしくないんですが」
「す、すまない……」
現在、俺達は人目を避けるため、ギルマスであるフューズの部屋に案内されている。
ここなら流石に来る人も限られているし、少しは安心できそうだ。
ちなみにカバル達はというと…
「……お前達、本来ならギルドに来たらリムルを私のところへ連れてくる約束だっただろう」
「「「すみません……」」」
約束を守らなかった罰として、正座させられている。
申し訳ないが、それによって今回の混乱が生じたことを考えれば、擁護はできない。
……いや。
そもそもタケルがなんかやらかしたことが原因なんだけどな。
どんだけ怖がられてるんだよ、あいつ。
「一応言わせて欲しいんだが、タケルはここで何かやらかしたというわけではない。……少なくとも、“ギルド”に対して何か問題を起こしたわけではないから安心して欲しい」
「それにしては、やけに怖がられてたんだが?」
「それは恐らく、純粋にタケル殿が怖いというのもあるでしょう。ですが、それ以上に大きいのは……英雄に認められた、という事実でしょうな」
「なるほどな……」
一国の大臣を殴り飛ばすぐらいだからな。
怒らせたら物凄く怖い、という認識はされているんだろう。
しかも受付嬢はギルドの顔として、冒険者達と様々な相手との仲介役も果たさなければならない。
そんな立場の人間からすれば、タケルとの繋がりが深いであろう俺は何をしでかすか分からない危険人物に見えたのかもしれない。
……やっぱり予想通り、タケルが原因じゃねえか。
「それはともかくとして、リムル殿が試験を受ける前で安心しました」
「ん?」
「基本的に問題はないでしょうが、万が一リムル殿に何かあれば、ブルムンドが滅びてもおかしくはありませんので」
「いやあ、流石にそこまではならないと思うぞ?」
確かに、俺のことを慕ってくれている魔物は多い。
ベニマルやシオンなんかは、俺に何かあったと知ったら大暴れしそうだ。
だが、もしそんな事態になりそうになったとしても、タケルが止めてくれるだろう。
「しかもそれだけではありません。我々は貴方が邪悪な魔物ではないことを知っていますが、他の者達はそうではありません」
「……まあ、そうだな」
「もし万が一、リムル殿の正体が知られてしまった場合、冒険者達が黙っているとは限りません」
「そうだな……。まだブルムンドと正式に国交を結んだわけじゃないし、タケルにも迷惑がかかりそうだな」
フューズの言いたいことは分かった。
「分かった。自重するよ」
「……ひとまず、リムル殿のことを信じるとしましょう。
それと冒険者としての身分証はこちらで発行しておきます」
俺が自分勝手に行動しないかどうかを、これ以上議論しても意味がないと判断したのだろう。
信じてもらえることになったらしい。
面倒そうな冒険者の試験もやらなくていいみたいだし、ラッキーだな。
「それと、リムル殿の到着を知ったブルムンド王が、極秘会談を希望しています」
「ブルムンド王が?」
「はい。イングラシア王国へ急いでいるところ申し訳ないのですが、会って話をしていただけないでしょうか」
もしかしたら、とは思っていた。
だが、ここまで良い感じに事が運ぶとは思わなかったな。
ドワルゴンに続いて、二つ目の国から正式に認められることになれば、より人間達からの信頼も得られるだろう。
それに加えて、フューズにユウキと面会するための紹介状を頼みやすくなった。
「分かった……折角の機会だし、会うとしようか。
ただ、その代わりと言ってはなんだが、ギルド本部でグランドマスターをしているユウキに会えるように推薦状を書いて欲しいんだが……いいか?」
「分かりました。では3日後に場を設けるよう掛け合います」
「助かる」
「それと……推薦状に関してなんですが」
「ん?」
「タケル殿が書いたものが、こちらに届いていますので……そちらの方が宜しいかと」
「……え?」
……あれ?
フューズに書いてもらうよう交渉しろ、ということじゃなかったのか?
まさか、本当に頭から抜けていたというわけじゃないよな?
「リムルさんから頂いた紹介状からも、慌てて書いたような感じが伺えますし……恐らく、忘れていたのかと」
「…………」
まさか本当に?
いや……でも待て。
そもそも、俺自身もユウキのことをすっかり忘れていたんだよな。
タケルだけを責めるのも筋違いか。
しかも俺が急にイングラシア王国へ行くと言い出したのが原因だ。
「……まあ、怒るわけにもいかないか」
そう考えるとなんだか妙におかしくなってきた。
タケルにもこういう人間らしいところがあるんだな。
「……そういうことにしておこう」
俺はそう呟いて、空を見上げた。
もちろん、そこにタケルがいるわけではない。
だから俺のツッコミが本人に届くこともなかった。