親愛なる貴方達へ   作:マアブルゥ

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名付けと宴

牙狼族との戦いから一夜が明けた。

敗北した牙狼族の生き残りは、リムルに"服従"か"死"かの二択を突きつけられ、全員が服従を選んだ。

 

まあそんなこんなでひとまず村の脅威は去ったので次は村の整備を行おう…としたんだが。

 

「「リ、リムル様!?」」

「【落ち着け】、ただの名付けによる魔力不足だからそのうち元気になる」

 

 突如、糸が切れた人形のようにリムルが動かなくなった。

呼びかけにも反応しないため慌てて駆け寄ろうとするゴブリンや牙狼族を、ユニークスキルで無理やり大人しくさせる。

 

 原因は単純、ゴブリンや牙狼族に名前がないと知ったリムルが、「名前が無いと不便じゃん」という軽いノリで名付けを実行。その結果、魔力を使い果たし、低位活動状態(スリープモード)に入ってしまったのだ。

 

 名前を付けただけで? と思うかもしれないが、この世界において魔物への名付けは重大な行為となっている。

それは単なる呼称の付与ではなく、名付け親が己の力の一部を分け与える儀式に等しい。場合によっては名付けられた魔物が上位種へと進化することすらあるため名前を持つ魔物はそれだけで特別な存在であると言える。

 

 しかし当然といえば当然だが代償は重い。

名付けを重ねるほど名付け親は弱体化し、最悪の場合は存在そのものを保てず消滅する危険すらある。ゆえに普通はやらないしできない。

……はずなのだが。

 

我らが主人公は、ヴェルドラの魔力を利用することでそれを可能にしてしまった。

 

「はぁ……リムルが動けるようになるまでは、僕の指揮下に入ってもらうから。文句がある奴はいる? 上下関係を体の芯まで叩き込んであげる」

 

剣を抜き、剣先を地面に向けて言うと。ゴブリンたちは真っ青な顔で、必死に手を横へ振った。

 

「い、いえ……文句などございません!」

「そう…それじゃ、まずはリムルの世話係が欲しいのと…戦える者はゴブリンと牙狼族でペアを組んで。五組で一隊となるようにして村周辺の警備に当たって……もらうから【落ち着け】」

 

 指示を出した瞬間、全員が一斉にリムルへ駆け寄ろうとしたため、再びユニークスキルで制止する。

 

「世話係はそんなに要らない。雌のゴブリン数体でいい。それとお前達はこの後進化するだろうから、それまでは村から出ないで。警備もしなくていいから」

 

 そして世話係を決め、牙狼族とゴブリンに交流を命じてから解散。

僕は食料確保も兼ねて周辺警備へ向かった。原作通りなら三日後に目覚めるはずだからそれまではゆっくりと過ごすとする。

 

 

 

 

 三日後。

リムルが目を覚ましたとの報告を受け、家へ向かう。

中では不機嫌そうなリムルが待ち構えていた。

 

「どうしたリムル? 何か言いたそうな顔してるけど?もしかして寝起きあまり良くないタイプ?」

 

理由は分かっているのであえて満面の笑みで問いかけるとリムルは深いため息をついた。

 

「お前なぁ…全く…ああ、もう過ぎたことだしいいよ。それよりさ…ゴブリン、変わり過ぎじゃね?」

 

 自身の世話係をしていたハルナを見ながら呟く。

名前を得たことでゴブリンは進化し、ホブゴブリンやゴブリナへと姿を変えていた。体格は大きくなり、顔立ちは人間に近づいているからリムルが困惑するのも納得できる。

 

「ああ、そうだ。この後、宴をやるらしい。お前にも食事を振る舞いたいから参加して欲しいって言ってたぞ」

 

 俺がこの世界に来て暫くしてから進化したことで食事が不要になったため何も食べていないことがハルナ経由で知られていたらしい。。

正直面倒だが、断れば僕が参加すると言うまで長時間の説得が始まるのは目に見えているので参加することにした。

 

 

 

 料理の準備が整い、リムルの隣に腰を下ろす。

 

「本当に来てくれたんだな」

「そこまで信用なかったか?」

「直前でばっくれる可能性も考えてた」

 

 …そこまで信用無かったとは

まあ、少しは考えたけど。

 

「じゃあ始めるか。カンパイでもする?」

「あー、リムル。多分ゴブリンたち、カンパイ知らないぞ」

 

 原作では「カンパイってなに?」と真顔で見つめられていた。

リムルは「そ、そうなのか」と呟き、簡単に説明を加える。そして。

 

「よし、俺たちの為に食事を用意してくれてありがとうな、これまでゴブリンと牙狼族で激しい争いはあったとはいえこれからは仲間だ。急には難しいだろうが仲良くしてこうな!!

それじゃ、みんなの進化と戦の終わりを祝って、カンパイ!」

 

「「「カンパイ!!」」」

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