Links dive ー自分をマスターと呼ぶリンカロイドに出会った話ー 作:やさかみ
第一話
「明日はみんなが待ちに待った校外学習in中央創常研究センターですよー。我々朝北高校が例年行っている場所ですから迷惑をかけないで、来年も再来年も我が校生徒が行けるようにしてくださいねー。いいですかー?」
「「「はーい」」」
「うんうん。伸びてますがいい返事です。さすが我が生徒なのです。しおりをもとに持ち物とか自分の班とかを確認してちゃんと準備してくださいねー。あ、明日の集合時間は7時15分ですからねー?いつもと同じ時間にアラームをかけて遅刻したりしないようにしてくださ」い」
「「「はーい」」」
「それじゃ、起立、気をつけ、かいさーん。またあしたねー」
「「「はーい」」」
午後のホームルームが終わり、時は放課後となる。特に教室に残る理由もないので荷物をまとめて部室に向かう。
一年生は校外学習の前ということで休みになっている部活が多いらしいが、リンカロイド探究部は特に休みにはなっていない。そもそもあそこは行くと行かないも自由なので活動日や休日といった概念がないのだが。そのせいかリンカロイド探究部には部活に所属しているという実績だけが欲しいゴースト部員が多い。自分はゴースト部員ではなくちゃんと行っているので部長からは名誉部員と呼ばれている。名誉〇〇はそう言う意味ではないと思うのだが、気にしないことにしている。
部室は別棟3階にあり、行くには2階の渡り廊下を使う必要がある。つまり、3階の教室から部室に行くには階段を降りたり登ったりしないといけないのだ。同じ3階にいくのに階段を使わないといけないのが面倒くさい。3階にも渡り廊下を作ってくれないだろうか。
そんなことを考えていれば部室前に着いた。そこにはリンカロイド探究部部室と書かれた札がかけられ、中身企業秘密!見たけば入部!といった張り紙が貼られた扉がある。別に、中に機密事項があったりする訳ではない。
ガラガラと扉を開ければ視界には妙に暗く、しかし窓からの光が眩く照らす部屋があった。そんな窓の前には校長先生や社長が使いそうな偉い人の机に肘をつき、ゲンドウポーズをしながらこちらを見ている月島部長がいる。彼女のバックに光があるので、彼女の顔が影となってあまり見えない。明日雰囲気の出るその光景に一歩足を引く、ことはなく部長の悪ふざけかなにかかと歩みを進める。普段はこんな雰囲気はないし、部屋も普通に明るいが、たまに部長は変わったことをする。そんな部長の隣にはリンカロイドのアイが側近のように立っている。
そんな雰囲気に負けずに歩みを進めると、ソファに部長ではない誰か、つまり副部長がヘッドフォンをしながら寝ているのを見つけた。目元を顔を部員募集の紙で覆っているが、体格やこの状況から考えうるに確実に副部長だ。そもそも、この部活にいつもきている男は自分を含めなければ副部長のみである。
部長の机の前に行き立ち止まると、彼女が顔をあげ、はっきりとした視線でこちらを射抜く。
「くっくっくっ、よくぞまいった真くん。今日も来てくれると信じていたさ、たとえ校外学習の前日だろうがね?あぁ、そういえば。聞いた話では中央創常研究センターに行くのだったかな?いやはや懐かしいねえ。私も君くらいの歳の頃に行ったものさ。いやはや、あそこはいいところだ。具体的に何がいいかと聞かれると……部活時間中に語り切れないから言うのはやめておこう。」
「はぁ……あの、なんで今日そんな雰囲気醸し出してるんですか?」
「ん?君が明日校外学習行くんなら部長らしく送り出してあげようと思ったのだが、お気に召さなかったかい?」
「別に嫌ではないですけど、突然やられて困惑しかないです。」
「いやはやそうかそうかそれはすまない。まぁ続けさせてもらうがね。」
「続けるんですね。」
月島部長は引き続きこの雰囲気を続けるようでゲンドウポーズをとり続けている。いい加減窓からの光がウザくなってきた。眩しい。自然光にしてはあまりにも眩しすぎると思い目を凝らすと、窓に薄い光源マットが貼り付けられていた。透明度と光源としての役割が両立されている。おそらく、ただの自然光では演出に足りなかったのだろう。
そんなことを考えていると部屋の明かりがつき光源マットの明かりが消されていた。月島部長が、『なーんてね、私ももう眩しくてしょうがない』とでも言うかと思ったが月島部長も困惑しているようだった。つまり月島部長が消したわけでもつけたわけでもない。
「アイ?なに私の演出にちょっかいをかけているんだい?」
「失礼。真さまが眩しそうにしておられたので」
「君のマスターは私なのだから私を優先して欲しいよ」
「愚かな主には正す従者が必要だと思いますよマスター」
「言うようになったじゃないか」
どうやら側近のように隣に立っていたアイさんが消したらしい。全く仕草が見えなかったのでわからなかった。リンクは慣れれば目を向けずとも意識するだけでできるらしい。得意でないと、対象に向けて指を向けたり視線を向けたりしてイメージしないとできない。
ちなみに、月島部長かアイならアイの方が常識人である。部長は常識人でないわけではないのだが、まぁ、お茶目な一面もあるとでも言っておこう。弁えるべき時は弁えるので問題はない。
「まぁいい。君には校外学習にあたりお願いしたいことがあってね。」
「はい。なんでしょう。」
「創常中央研究センターはガチの研究、開発などを行う所とは別に一般の人でも楽しく最新科学に触れることができる科学館があることは知っているね?今回君らが行くのは後者の科学館だが。」
「もしかして、前者に侵入してこいとか言いませんよね?」
「おや。よくわかったね。」
「嫌ですよ。」
この部長はあろうことか部員に不法侵入をしてくるように言う。しかも、よりにもよって研究所なんていう侵入したら本当に面倒くさそうな場所に。そんなデメリットを負ってまで部長に従う理由もないので普通に断る。まぁ、普通に部長なりの冗談だとは思うが。
「そうか……仕方ないな。いや、君は悪くない、こんなことを頼んだ私、私が悪いんだ」
「そんな悲しそうな顔しないでくださいよ。罪悪感なんて湧きませんからね?」
部長は無駄に高い演技力を使い、悲劇のヒロインのような、儚い少女のような仕草、言葉遣いをする。無駄に様になっていて、何も知らないなら『君は悪くない』といってしまうもしれない。しかし、部長のことを知る人がそれに騙されることはないだろう。
「ちぇ……まぁ冗談もこれくらいにしておき、適当に写真撮ったりしてきておくれ。我が部の活動実績に載せる。」
「それは別にいいですけど……そんなんでいいんですか?そんなんじゃ一生リンク部に部員取られ続けますよ?」
「ふっ。我が部は少数精鋭なのだよ。リンク部のような有象無象の集まりになる必要はないさ。」
「それ聞かれたら怒られますよ?というか、精鋭という割に自分リンク部の有象無象の殆どよりリンク適正低いんですが」
「安心するといい。別にリンク適正が全てではないからね。君は……うん!きっとなにかある!」
「慰めるのもっと上手くできません?別にいいですけど。」
この高校にはリンカロイド探究部とは別にリンク部がある。リンク部はリンカロイド含めて様々なリンクに関するものの部なので、やることが一部被っているのだ。なんだったらそちらの方がちゃんとリンカロイドに関しても活動している。幽霊部員を含めても所属人数はあちらの方が多く、もちろん規模もでかい。大会への出場権ももちろん向こうにあり、デバイス室などを部室として与えられている。更にはそこそこ成果もあげているのでうちとの格差が大きい。もちろんうちが下だ。
「2人いなくなると多分ここ吸収だか取り壊しだかされますよ?」
「なに、その問題はないさ。既に手は打ってある。」
「ほんとです?」
どう考えてもリンク部はウチの部の上位互換である。普通ならリンカロイド探究部なんてすぐ取り壊され、いや、そもそも誕生すらしないだろう。しかし、この部をつくったのは定期テスト最上位常連であり、しかも社長令嬢である部長。きっと、なにか公言できないことをして学校に認めさせたのだろう。あと副部長も優秀な成績を残していることも影響しているかもしれない。おそらくだが、2人が去るとこの部はリンク部に吸収される。今ですら吸収しようとしているのだ。主に2人とアイを狙って。2人は単純に高スペックであり、リンク部で真面目に活動をすればより大きな成果を叩き出せるだろう。そして、アイは部長のリンカロイドなだけあってかなり高性能なリンカロイドである。部員の持ち物だからと部で好きにできるわけではないが、協力してもらえれば成果を得られるだろう。高性能だったり独自性、自我があるリンカロイドほどリンクできる者は限られてくる。故に、十全に機能を発揮できる状態のアイのようなリンカロイドは珍しいと言える。
「まあとりあえずだ。私が君に頼みたかったのは以上だ。端的にいえば取材、この一言だね。」
「まあ了解です。」
「よろしい。私は素直な君が好きだよ。」
「……」
「おい待て。この美少女に好きだよと言われてなぜ、えぇ……という顔をしている?ちょっと話をしようか」
「明日校外学習なので帰りますお疲れ様です先週の金曜日はありがとうございましたさようなら」
「待ちたまえ!!アイ!マスター命令だ彼を連れてこい!」
「お疲れ様です真様。」
普段はアイは部長に従順だが、全肯定botでなく普通に思考する存在なので命令に全て従うわけではない。ロボット三原則などどこ吹く風である。
そんなアイに感謝しつつ、部長の静止の言葉を無視して帰る。明日は校外学習なので部活動なんてしている暇はない。断じて面倒くさくなったわけではない。
――――――
高速道路にのったりして1.2時間あたりだろうか。バスに揺られて眠気も発生しうつらうつらしていた頃、バスは創常中央研究センターに到着した。
バスが広い駐車場のバスゾーンに停められ、運転手に感謝をしながら地へと足をつける。1.2時間ぶりの地である。少し酔ったのか軽くふらつくが、普通に行動する分にはなんの問題もない。
人が集まっても問題のない広場にまで歩くようで、駐車場端の人用通路を担任を先頭に列になって進む。対向者が歩いてきても問題ないようにと片方を開け、駐車所に近い内側を歩く。右側通行だ。
ホログラム噴水のある広場に着くと、整列をさせられクラスごとに班で並ばされる。先頭にはまたもや担任がおり、学級委員長から人数確認の結果をきいていた。
そして、全員揃ったことが確認されると、集合時間の確認や禁止事項、前挨拶などが述べられた。その後は各クラスで担任が話す。
「みんなー。ここからセンター内はそれぞれ個別での行動だよー。昨日も言った通り、センターさんにご迷惑をおかけしないで我が校の印象よく帰りましょうねー。それじゃあ、かいさーん」
軽い感じで担任の言葉を終わらせ、自由行動が開始される。広場から建物の中に入ると、視界に無駄に近未来な装飾が施された空間が広がる。壁に走る光の線は何のためにあるのだろうか。おそらく演出だろう。昔と今の近未来へのイメージは変わらないようだ。
建物の中を歩き数分、予定通り班を解散し個別行動を開始する。褒められる行為ではないが、班内にもリンク適正に差があったり目的に違いがあったりと、よりよく過ごすには班行動なんてしていられない。仮に何かがあっても電波は届くので連絡もできるし問題はない。
とりあえず部長に言われた写真撮影を終わらせようとリンカロイドのコーナーに歩みを進める。
手元のパンフレットに従い、お土産屋や別コーナーを通り過ぎながら廊下を数分歩いているとリンカロイドコーナーへの矢印が現れた。ただの床だと思っていたこれはディスプレイだったようで、自分の誘導を始めた。
もうパンフレットはいらないかと思い、折りたたんでポケットにしまいこむ。矢印が現れたのなら、もうすぐつくだろうと考えながら歩みを進める。しかし、突然その矢印が動きを止め、STOPの文字に変わってしまった。
思わず立ち止まってしまい、そのSTOPと言う文字を凝視してしまう。何かあったのか?と考えたその瞬間に機械音がなり始める。何事かと視線を上げると、シャッターが降り始めていた。なぜ?と思いながらも、何らかの事情でここは通行止めになったのだろうと進行方向を変え、引き返すことにした。しかし、後ろのシャッターも閉まりかけていた。
やばい閉じ込められると思い駆け出すが時すでに遅くシャッターは閉まり切ってしまう。閉じるギリギリにスライディングをかますほど、自分に勇気はない。
何も変なことは起こらないと踏んで班を解散したが、なにかが起こってしまった。フラグは特に建てていないと思うのだが。
急いで連絡を取ろうとスマホを取り出すが、シャッターが閉じたからか電波が届かない。連絡手段も失ってしまったらしく、物理的にも情報的にも隔離されてしまった。もし、これが大事になれば班員揃って担任にプンスカ怒られるだろう。なんとか合流しなければいけない。しかし、しかしである。前後左右が壁やシャッターに囲まれたこの空間で合流しに行けるはずがない。つまりは詰みである。