Links dive ー自分をマスターと呼ぶリンカロイドに出会った話ー   作:やさかみ

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第三話

第3話

 謎のリンカロイド、リツカに渡されたデバイスを素直に耳につける。半分つけろと脅されたようなものだったが。

 リンカロイドの人格の形成には、リンクを通じてのマスターとの関わりとかも関係あると聞いたことがあるが、リツカはリンクによる人格形成もされていない素があれなのだろうか。マスター脅すのが初期設定のリンカロイドとかどうやったら生まれたのだろうか。幾らブラックボックスまみれのリンカロイドとはいえ、限度があるだろう。製作者は何を考えているのだ。

 そんなことを考えながらも謎のリンカロイドリツカのナビゲートに従い、道を歩く。

 

『そこの道を左です』

「……」

『5秒ほどお待ちを………………OK。扉を開けますのでそのままお進みください。次の扉で通常の通路に戻ります。そこを右に進んでください。その扉です。他の者がいなくなるまで15秒ほとお待ちください。』

 

 そのナビゲートは有能なのか、職員とかには誰1人遭遇せずに通常通路、つまりは中央創常研究センターの一般者向け通路に通ずる扉の前までこれた。更には通常通路に戻るときにも人に見られないように配慮をしている。きっと彼女はただナビゲートしているだけではない。監視カメラから得た情報をもとに人の動きをシュミレーションし、そして光る床などのギミックにより人を誘導、おそらく、彼女はそういうこともしてくれているのだろう。

 自分を誘導する時もそういうふうにセンター内の設備を活用して誘導してもらえれば、あそこまで警戒することもなかっただろうに。最先端技術の塊(リンカロイド)だからといって、無理に最先端技術(テレパシ)を使おうとするべきではない。

 

『当機の発言終了後、2秒後に扉を開けます。開けたの後、15秒後に人が来ますのでそれまでには通常の行動に。扉は5秒後に閉めます。』

 

 彼女がそういい終わりちょうど2秒後、自動的に扉は開いた。薄暗かった通路から明るい通路に出る。彼女の宣言通り扉は5秒後に閉まり、まるで何もなかったかのように開かずの扉とかした。おそらく、彼女のいうとおり15秒後に人が来るのだろう。普通に突っ立っている人がいてもおかしくはないと思うが、もしものことがあるとまずいので普通に歩き出す。

 彼女の予測がただしかったのかはしらないが、2人の男女、カップルだろうかとすれ違う。何事もなくすれ違い、アテもなく歩き出す。なにか班員からのメールでもないかと見るが、特になく安心する。

 ようやく通常気分に戻ることができた。そこでふと思う。防火シャッターに閉じ込められる前、自分はどこへ向かっていたのだったか。何か目的があったはずだが、あまりの出来事に忘れてしまった。一体どこだったかと立ち止まり、ポケットのパンフレットを取り出す。一つ一つ施設を見ていけば思い出すかもしれない。

 

『マスターは防火シャッターに閉じ込められる前はリンカロイドのコーナーに向かっていました。』

「あ、そだった。ありが……と」

『光栄です。』

 

 そんな時に耳の端末から謎のリンカロイドリツカの声がした。情報提供に感謝しようとするが、そもそも忘れた原因が彼女なので感謝すべきか悩む。しかし素直に感謝しといたほうが印象もよいかと感謝を終えさせる。

 別に彼女の自分に対する印象を良くして利点があるわけではないが、下手に悪くして陥れられたりしたら溜まったものではない。それはそれとして、今後も干渉され続けることを嫌い端末をポケットにしまう。

 

[こちらのほうがよろしかったですか?]

 

 そうだったこいつテレパシー使えるんだった。しかも、一度彼女と接触したからか、この端末が近くにあるからか知らないがはっきり感じ取れる。以前のように途切れていたりしない。驚くほどにスラスラと脳内に入ってくる。これ拒否設定にできないのだろうか。

 

[意志を込めて念じてくださればこちらにも意思が届きます]

[嘘つけ]

[嘘ではありません]

 

 そして、こちらからの情報送信もできるらしい。どういう理屈なのだろうか。前述の通り、自分にリンクの適正はない。今は補助装置も使っていないので0、とは言わないが基本使えない。なのに、思考の送信受信がこんなに容易く行われている。もしかしたら、気づいてないだけでこのポケットのデバイスが補助装置の役目を負っているのだろうか。……先ほど、補助装置を切って適性が下がった時の方がテレパシを感じ取れていたことを考えれば違うか。

 答えを考えるが到底わからず、知っていそうな本人に聞くこととした。

 

[なぁ、なんでこんなふうにリンクで通信できてんの。今補助装置も使ってないから適正Eなんだけど。なんなら、さっき閉じ込められてた時は補助装置外した時の方が感じ取れてたのはなんで?]

[相性の問題です。当機との相性がよいことから、マスターは当機とのリンクは他に対してのリンク以上に可能となります。そして、後の問いについて。リンクはオーズ波を活用しています。補助装置はそのオーズ波を拡大し、他にあわせて波を調整したりすることで周囲とのリンクを可能としています。当機の相性が良いのはあなた自身なので、補助装置を通さない純粋なオーズ波の方がリンクをより可能とします。]

[使わないほうが適正低いのに?]

[補助装置で上昇するリンクの可能域を、当機との相性によるリンクが上回っているのです]

 

 相性。それは部長から聞いたことがある。リンカロイドとマスターは相性がよければ、双方それまで以上のリンクを可能とするとか。しかし、補助装置を使ってもD止まりの自分がこんなにスラスラと脳内会話できるほどに上昇するものだとは思いもしなかった。

 余計に、いつ、彼女と自分の相性が調べられたのかが気になってしまう。彼女は自分がマスターの理由を、認められたからと言っていた。言い方的に彼女以外の誰かが認めたのだろう。ここまでの会話で、リンカロイド リツカが、私にお前は認められたのだ、などと上から目線で言うとは思えない。だとしたら、なぜ自分なんかに接触させたのだろうか。

 

[なんかするように命令与えられたりしてないの?わざわざ自分と接触して、覚醒?したんでしょ?]

[特定の行動を禁じられたり、情報の開示に制限などはあります。しかし、自分から何かをするための行動の命令は与えられていません。当機は基本、自由意志で行動します]

[わざわざ自分と接触したのも?]

[はい]

[なんでわざわざ自分とリンクしたんだ?]

[……]

[言えない?]

[はい]

[それはあなたの自由意志?]

[はい]

 

 彼女の言うことが事前に何者かによって組まれたものでもない限り、彼女は相当に個が確立しているリンカロイドらしい。しかも、リンクをしていない状態でだ。リンクをしていくことで人格を形成するのではなかったのかと自分の常識がひっくり返る。いったい、誰が彼女を作り出し、そしてあの研究所のあんな仰々しい場所にいさせたのか。

 そんなふうに脳内会話や思考をしているといつのまにか目的のコーナー、リンカロイドコーナーにたどり着いていた。

 

[目的地までの案内を終了します。では、当センターをお楽しみください……ガイドは必要ですか?もしよければ当機が担当します]

[……いる]

[かしこまりました]

 

 ガイドがいるかに少し悩む。単純にガイドがあった方が堪能はできるだろう、ただしその相手はこいつである。研究所にいる正体不明の謎のリンカロイド、そんな存在相手にガイドをしてもらうべきか、本当に大丈夫なのか。そう考えたが、今更気にしたところで関係ないかと判断を下す。信頼したわけではない。

 

[デバイスを耳につけてもらえれば幸いです。視界の共有も可能ですがそちらで行えばマスターへの負担も減るでしょう]

[これカメラもついてんのかよ]

 

 デバイスをポケットから取り出す。見た目はただの無線イヤホン。カメラなんて付いていないようにみえるが……よく見たらついていた。

 

[ではガイドを開始しましょう。リンカロイドコーナーということでコーナーにあるもの、もしくはリンカロイドの歴史などでもご紹介しましょうか。どちらがよろしいですか?]

[……前者で]

 

 研究所のリンカロイドが語る歴史に興味がないわけではないが、今いるのはセンター。バスで高速道路も用いて1時間強のここはあまり来れる場所ではないのだ。どうせなら楽しみたい。彼女に邪魔された分の時間を取り戻す気分で彼女のガイドを聞くこととした。

 

[かしこまりました。そうですね、まずこちらのコーナーで人気があるのはリミアくんたちですね]

[何それ]

[当コーナーに属する三体のC型リンカロイドです]

[C型?]

[リンカロイドには主に分けて3種類存在しており、一部の者のみリンクが可能な限定型。それより多くの人がリンクできる制限型。多くの人とのリンクを可能とする汎用型。それぞれAdaptedのA、BoundedのB、CommonのCが当てられ、A型B型C型とも呼称されています。リミアくんたちはそのC型にあたりますね。来園者の皆さんにリンカロイドとのリンクを体験してもらう、そういった目的で設置されています]

 

 流石リンカロイドと言ったところか、リンカロイドのことについてよく知っているらしい。別にリンカロイドのこと限定ではないと思うが。少なくとも彼女は研究所のセキュリティに侵入できるのだ、研究所やセンター内のことくらい把握しているだろう。

 

[A型B型C型、性能順でつけられたんじゃないんだ]

[基本、なにかに特化していたりその性能が高いほどにリンクできる人数が少ないと言われています。C型は性能よりも汎用性を重視したもの、A型は汎用性よりも性能を重視したものと認識して貰って構いません。例外もいますが]

[へぇ……自分でもリンクできる?]

[できません。当機とのリンクが可能なのは当機があなたと相性がよかったからであり、マスターでは補助機を用いても難しいかと]

 

 ならなんで紹介したんだこのリンカロイド。そういった気持ちを漏らしそうになったが抑える。たとえできなくとも、誰かがしているのを見るだけで十分だろう。写真を撮って部長への手土産にでもしておくことにする。

 

[当機の写真は手土産にしないのですか?よければお送りしますが]

[待て、なんで考えてること……これか。無意識のうちに送信されることがあるのか面倒くさい]

 

 おそらく、『ならなんで紹介したんだこのリンカロイド』と、一瞬対象に対して意識を強く向けてしまったからだろう。口から漏らさなくてもこうなってしまうのは不便である。

 

[お前の写真出したら研究所入ったことバレるからいらない]

[……そうですか]

 

 歩いていればリミアくんたちの場に着く。先ほど見たリツカとは異なり、その姿は人間そっくりの姿形をしたアンドロイドというよりかは人と同じ構造をしたヒューマノイドと言える。上半身は人型だが、下半身は丸い構造になっている。白いボディで関節部には灰色が見え、そして青く光る丸みのある目。明らかに人ではないが、童顔でなんとなく撫でたくなる。なぜか白い猫耳がつけられている。

 

[三体のリミアくんの名はそれぞれリミアイチ、リミアニ、リミアサンです。彼らは汎用性重視のC型であるため、当機のような自我などはありません]

[……]

[?……マスターから呆れを感知しました]

 

 本人に自覚があるかは知らないが、どこか自画自賛の雰囲気を感じる。この様子から見るに特に自画自賛ではなく、淡々と事実を述べただけなのだろう。

 

[そういや、リミアくんの写真って撮っていい?]

[オーケー]

 

 この施設のリンカロイドから許可をとったので写真を撮る。他者を写さないようにリミアくんたちだけを撮る。写真を撮られることを察知したらしく、リミアくんはこちらにピースをした。サービス精神旺盛らしい、さすがセンターのリンカロイド。

 

[当機はどうでしょうか]

[強引に閉じ込めて誘い込むのをサービスと言い切れる?]

[……ガイドを再開します]

[おい]

 

 リンカロイドでも回答を控えたり話題を逸らすことがあるのかと内心驚愕する。本当に人間のようだ、本当にこれまでリンクをしてこなかったのだろうか。それとも、高性能なリンカロイドは最初からそこまでの自我があるものなのだろうか。また部長に聞いてみようか。

 

 

 

 

 そうこうしながらリンカロイドのコーナーをガイドとともにまわる。目を引くものはいくつかあったが、その中でも特に目を引いたのはこれだろう。

 

 臨歌セイ

 

 自分が以前、部長達の協力によって見られた接続空間Links内で行われたライブ、電脳唱ディライブのリンカロイド歌手。彼女のコーナー。写真がいくつか貼られていて、等身大フィギュアやホログラムもある。参加したのはあれ一回きりだが、自分はもう彼女のファンである。故に、ここが一番目を引いた。彼女関連のお土産もあるらしいので買っておこう。

 

[マスターは彼女のことがお好きなのですか?]

[ファンだからね]

[……なるほど。彼女の解説は必要でしょうか]

[お願い]

[了解しました。彼女、臨歌セイは世界初のリンカロイド歌手と呼ばれており、リンカロイドの中でも活動からその性質まで特殊な存在です。彼女はA型であり、C型でもあります。]

 

 臨歌セイの解説を聞けると知り、耳を傾けてしまう。脳内なので耳ではないのだが。A型でありC型、つまりは一部の人しかリンクできないのに多数の人とリンクが可能ということ……どういうことなのだろうか。

 

[彼女は基本C型リンカロイドとして存在しています]

[あれでC型?]

 

 C型のイメージは先ほどのリミアくんで固定されているが、それと臨歌セイは似ても似つかない。見た目の話しだけではなく、その中身だ。リミアくんの全てを知っているわけでも臨歌セイの全てを知っているわけでもないが、それでも違う気がする。臨歌セイには自我があるとばかり思っていたが、もしかしたらないのだろうか。

 

[彼女に自我は存在しています。特殊なC型であることも関係しますが、先ほども言ったように彼女はA型でもあるのです]

[どういうこと?]

[彼女は同時に多数の人とのリンクを可能とします。通常、リンカロイドが同じ時にリンクできるのは1人、多くとも2人3人とあまり多くありません。彼女はそれに対して100人は容易く、さらに多く、それこそ電脳唱ディライブに参加しているすべての人とリンクすることも可能でしょう]

[すごいのはわかるけどよくわからない]

[一度に何百の楽器を操作できます]

 

 確かに、それはすごい。常人なら一つが限度だろう。手足、口それぞれで同時に異なる楽器を操作できる変態がいたとしても五つが限度だ。人間技ではない。そもそも人間ではないのだが。

 

[しかし、彼女がその性能を十全に発揮するには特定のマスターがいるのです。これは誰でも良いわけではありません。これがA型の部分にあたります。そのマスターとリンクすることで多くの人とリンクをするための基礎が出来上がるのです。そうですね、マスターとその他の方のリンクは例えるならば木の幹と枝のようなものです]

[なるほど]

[ちなみに、電脳唱ディライブが行われた接続空間Linksの空間はそのマスターによって構成され、臨歌セイが現れたと同時に姿が変わるステージは臨歌セイが観客とリンクすることによって形作られています。電脳唱ディライブはただ臨歌セイが歌を歌うだけでなく、皆とリンクをすることでライブの空間を形作っているのです]

[へぇ]

 

 ただただ凄いなぁという感想が出る。そもそも自分の適正であまりリンクなんてしないので外から見ているような感覚になるのだ。前に電脳唱ディライブに参加できたのだって部長やアイ、副部長の手を借り、更に機材などが貸してもらえただけで、普段は到底できないのだ。3人にどうやってお礼をしようか。

 

[当機にもガイドのご褒美が欲しいです]

[……どれだけ自分の脳内を読めるの?実は自分の意志関係なく読めたりしない?]

[独り言のように思念が漏れることがあります。当機が意図的に探ろうとすれば漏れの関係がなく読み取れますが、現在は行っていないので漏れたものだけを読み取っています。あまり漏れと思わしきものには反応しない方がよろしいですか?]

[……お願い]

 

 最近独り言の癖がおさまってきたかと思えばこうなったか。こういうリンクを繰り返してる人なら自然と漏らさないようにできるのかもしれないが、初心者の自分にはよくわからない感覚である。

 というか、その気になれば脳内丸裸にされることを知り、軽く戦々恐々とする。彼女がその気にならないことを祈るしかない。

 

[……リンクって切ることできない?]

[可能ですが、当機の意向により制限しています]

[マスターの意向は?]

[絶対命令として出されるのであれば……]

[……ならいいや。あまり思考読んだりしないでね]

[了解しました]

 

 相手は正体不明、怪しさMAXの相手だがここまでの会話で不思議と警戒が薄まっている。多少親近感すら湧いている気がする。

 そりゃ、対話は人が近づくための手段として最適とされるのだ、続けていれば警戒も薄れるだろう。だが、それはそれとして自分はちょろいということを自覚する必要がある。ちゃんと警戒をできるようにしなくては、結局彼女がなんなのかは何もわかっていないのだ。

 

[……そういえば、自分がリツカのマスターな理由を、認められたからって言ってたけど、いつどこで誰に認められたの?]

[以前にも話した通り、当機にはそれを話すことを認められておりません。しかし、少しの交流を得た後なら言っても良いという情報があります。君自身の手でたどり着いてみたまえ、とのことです」

「……」

 

 凄まじく聞き覚えのある紳士のような高慢な口調が出てきた。

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