面の良い女の曇る顔が見たいだけ 作:駄文
「師匠、生きてて良かった」
《ソウだネーヨカッタヨカッタ!!ハッピーエンドってヤツだネ!》
「黙れ」
とある街で一日に何人も人が消えてる噂を聞いて、悪魔の仕業だと思った私は此処へやって来た。そこで、私は師匠と
《酷いナァ。キミが話しかけて来たンダろう?》
違う。私は師匠に話しかけた、お前なんかじゃない。そう否定した所で時間の無駄なのは、分かっている。だから、口には出さなかった。
それよりも気になる事があった。
「何でその人の身体にいるの?」
《簡単なコトさ。アノ戦いで、ボクの身体は壊れタンダケド。丁度良い肉体があったカラ、使わせて貰ったダケさ》
喋れば喋るほど。奴の口から真実が明らかになる程、イライラする。何で師匠がこんな目に遭わなきゃいけないの?私はただ、もう一度師匠に会いたかっただけなのに、こんな状態で会うのなら会いたく無かった。
……そうだ!何も知らないフリをして、この街から抜け出そう。それであの家の中で、前の様に一人で何も無かったかの様に過ごせば。
駄目だ。そんな事したら、また師匠が他の人を殺す。そんなの許されて良い筈が無い。だって、師匠はそんな人じゃない。過去に家族を悪魔に殺されてそんな過去があったから、悪魔から人々を身を挺して守っていた人なのに、こんな風に弄ばれて。そもそも、師匠は生きてるのかな。
《ネェ、ドウスル?戦ウ?それデモボクは、構わナイケド?》
「……」
無理だ。
本当は今すぐにでも殺してやりたかった。生きてるのなら、師匠だってそれを望んでいるのだと思う。でも、殺せない。師匠を殺すなんて私には出来ない。
《アレアレ?何処行くノ?オーイ。アレー?悪魔を殺すんじゃナカッタノー?ネーネー》
結局私は敵討ちの悪魔を見つけたにも関わらず、ソイツと戦わずにその場から立ち去った。それは私が覚えている中で、二回目の敗走だった。
「どうしよう……」
ひたすら悪魔を狩っていた日々は、それを境に終わってしまった。悪魔を殺している時だけは忘れられた悲しみも今は脳に焼き付くように無限に流れた。
後悔、悲しみ。苦しさ。絶望。
生きてるって辛い。本当に、しんどい。宿屋のベッドで一人そう考えていると、時間だけが過ぎて行く。やっぱり、あの時師匠より私が死ねば良かったんだ。そうすれば、逆の立場だったら師匠は私の事を殺せたのかな。
でも、こんなに辛い思いをしなくて済んだのは確かだ。生きているからこんなに辛くて苦しくて。じゃあ、死んだら楽になれるのかな。そうだ。生きてるからこうやって、脳がぐちゃぐちゃになるまで考えなきゃいけない。
死ねば終わり。全てから解放される。
リュックからロープを取り出して、上の出っ張りへと結び。その後に輪っかを作って自分の首が入るぐらいの大きさにして──。
『こん……ナトコロで死ぬナって言った筈ダぞ。馬鹿弟子』
不意に後ろから声を掛けられた。それは、私がずっと会いたかった大好きな人だった。