ミミグル使い私、呪霊が怖すぎてダンジョンに引きこもりたい。   作:月日は花客

6 / 7
☆6:ミミグル・チョイス

 

 取り敢えず、入ってすぐの壁にエレベーターを取り付けた。

 

 三階程度若いのだから階段で上がれと言われそうだが、一般的な家庭の三階建てではなく、ビルの三階建てはなかなかに上に長く、階段だと数度踊り場を経てようやく次の階に上がれる。

 正直、面倒だし疲れる。

 最上階を自分の部屋にする予定なので、生活スペースにわざわざ長い階段を登らなければ到達できないのは不便だ。

 レンガの壁に擬態した、パスワードでしか反応しないエレベーターなら、侵入者は使えず階段で上がることになるだろう。

 パスワードはセンスのあるものは思い浮かばなかったので、「リバースカードオープン!」にした。壁が反転してエレベーターが召喚されます。

 廃墟であり、流石に施錠はできないので、不審者が入ってきた場合速やかにUターンしてもらう必要がある。その為のギミックはあとで作るとして、先に生活スペースを整えることにした。

 

「とは言っても、私が住むとはいえミミグルたちの住処でもあるから、同居人の意見も聞かないと」

 

 最上階、入り組んだ通路の無い大広間に立った私は、《ミミグル・マスター》のカードにキスをする。

 召喚されたマスターは、イラストの通り宝箱の玉座に座る白鬚のガイコツだ。デフォルメされたドクロは怖いよりもかわいいが勝る。

 マスターは、私を確認したあと周囲に広がるダンジョンを見渡し、理解したと頷いた。

 言葉を交わすことはできないが、私が召喚したからか、単純なジェスチャーでも伝えたいことは細かく察せられる。相手も同じようで、私がダンジョンを模様替えしたいことに気づいたらしい。

 ヒゲをいじりながらマスターが杖をくるりと回すと、私の手元に紙が現れた。ファンタジーでいう羊皮紙のような質感のそれには、今の三階の間取りが記載されている。今は何もいじっていないのでただの何もない広間があるだけだが。

 

「取り敢えず、寝室、トイレと風呂、キッチンが欲しいよね」

 

 必要最低限の生活に必要な設備を言えば、マスターがまた杖をくるりと回し、羽ペンを召喚した。

 それで紙に軽く書き込めば、少しダンジョン内が揺れたかと思うと、書き込んだ通りの間取りで部屋ができている。

 家具や水道設備もどこからか生えてきた。原理はわからないが便利だからいいや。

 更にリビングを作り、一応客室も一室だけ作っておく。それだけ詰めても、広い空間はまだまだ余っていた。

 この空間全てを私用の空間にするつもりはない。侵入者が入ってきた場合、ここが最上階。つまりボス部屋となる。

 一階と二階までの侵入はまだ許すつもりだ。警告はするし、無視した場合の罠も仕掛けるが、まぁ入ってもなるべく無傷で帰してやろうと思う。

 しかし三階、つまり私の生活スペースに入ってきたら、侵入者として、敵として扱わせてもらう。

 警告を無視して入ってきた、悪意のある者として相応の設備でもてなしてやろうと思う。殺したくはないが、大怪我を覚悟はしてほしい。

 乙女ちゃんや私がOKと判断した人はエレベーターのパスワードを教えるため、それで上がってこれば道中の罠や警告は無視できる。

 というわけで、生活スペース以外は完全にRPGのダンジョンを作る感覚になる。しかし、私はこういうダンジョン系ゲームはやったことが無く、セオリーや効率がわからない。

 なので、ダンジョンが魅せ場であるミミグルモンスター達に任せたいのだ。一応、チェックは入れるが。

 その旨を伝えれば、マスターは鷹揚に頷き、私のデッキケースから《ミミグル・メーカー》を取り出すよう伝えてきた。

 言われた通り取り出し、発動させれば、宝箱に似た装置が現れる。ミミグルの初動になり得るカードの一枚だが、設定的にはおそらくこれでミミグルモンスターをマスターが造っている? と思われる。

 

 マスターが何やらガチャガチャと操作し、パカリとその蓋を開ければ、一気にミミグルモンスター達が箱から飛び出してきた。

 コミカルなモンスターたちはそれぞれ個性のあるポージングだ。

 《ミミグル・フェアリー》はかわいらしく投げキッス。

 《ミミグル・デーモン》は驚かせるように手を大きく上げ。

 《ミミグル・ケルベロス》は感情を表すようにひと鳴き。

 《ミミグル・ドラゴン》は口から小さな炎を吐いた。

 かわいらしくも、ミミグルらしい悪戯心を備えたモンスター達の続々の登場に、私は目を輝かせる。

 かわいい! 夢みたい! ぎゅってしたい!

 ニコニコと挨拶したり、笑う彼らは私をちゃんと主だと認めてくれているようだ。マスターの上司的な立ち位置にいるのだろうか。

 

「あれ、スライムとアーマーは?」

 

 まだ出てきていないミミグルモンスター二体を聞けば、あの二体はダンジョン制作にはあまり関わらないらしい。スライムはどこでも潜めるし、アーマーはマスターの横にいる事が多いそう。

 つまり、今回の目的では然程力になれないから出さなかったらしい。

 残念ではあるが、私がカードの力を使うたび、ほんのりと疲労感がある。何か、気力的なものを消費しているのだろう。

 今日はダンジョンやマスター等沢山発動しているから、そこの消耗も気遣ってくれたようだ。なんて優しいんだ。

 でも、いないのは寂しいのでまた回復したら出して欲しい。基本的に私のデッキには枚数こそ違いはあるがミミグルモンスターは全種入っている。

 マスターは当然とOKしてくれたので、話がズレたがダンジョン改装に話を戻そう。

 

「私は生活スペースの微調整をするから、みんなはダンジョン部分を決めてて欲しいな。殺意高くするのは三階だけで、一、二階は警告とか脅かしに留めてね」

「──!」

 

 そう伝えれば、本気で作り込めるのは三階だけなのに少し残念そうにしつつも、協力してくれるそう。まぁ、ダンジョンのイラストの殺意を見ると殺しにいかない罠は生ぬるいのだろう。めちゃくちゃ頭蓋骨描かれてるからな、あれ。

 余裕がある時に階層は順次増やしていくから、殺意を込められる階層もどっかで増やしてあげよう……と思うなどした。三階だけで仕留めるのは難しいだろうし、生活スペースのある階には入って欲しくないし。

 新しい間取りの紙を取り囲んでワイワイと話し合いを始めたミミグルモンスター達を内心「かわいすぎる……! ここが天国か……」と悶えながら、家具のデザインや配置の細かい調整に取り掛かることにした。

 正直上下水道や光熱がどうなってるかわからないが、水道代や光熱費がかからないならラッキーだ。

 価値観が庶民なので、馬鹿みたいにデカい浴槽とか豪華なベッドとか要らないし。一人暮らしで問題ない広さがあれば満足。

 リビングは乙女ちゃんやミミグルモンスターと遊べるようにちょっと広くしたけれど。

 あ、キッチンはちょっと設備を良くしておこう、乙女ちゃんが何か作るかもしれない。

 私は大した料理はしないので、普段は宝の持ち腐れになること必至だが。

 

「もうちょい毛の短いカーペットが良いな。クーラーはベッドに風が直撃しないように……」

 

 インテリアデザイナーの資格なんて取っているわけがないので、なんとか体感で居心地の良い空間を作っていく。椅子は腰が痛くならない機能性が高いやつにしよう。

 机にはどこかしらでパソコンを購入して置く予定なので、コンセントや回線設備が置きやすいよう事前に想定しておく。

 リビングはミミグルモンスターや乙女ちゃんと過ごす場なので、みんなの意見も取り入れよう。流石に罠は置けないけど。デカいテレビとか置きたい。それで映画を観るのだ。

 

 引き篭もる、とは言ったが、流石に金が無いと生きていけないので、働きはする予定だ。

 適当に在宅の仕事を探したいが、まだテレワークやネット会議なんかの文化が浸透していない今だと何があるだろう……。

 極力外に出たくないし、大検は取るもののほぼ中卒の私を雇ってくれる仕事かぁ……。

 脳内に違法な仕事がいくつか浮かんだが、足がつきそうな危険な仕事はやりたくない。なにより裏社会って意外とツテとか人間関係が大事だって聞くし、親しくない人と水面下で舌戦とか無理無理。

 愛想も無いし、自分が特別美人だとは思っていないので、夜系の仕事やネットアイドルも無理だろうな〜。

 うーん、ノリで生きてきたせいで仕事が見つからない弊害がここで。

 前世でもまだ就活は先の話だったしなぁ。前世の経験値を生かして何かできること……。

 

「Webデザイン系なら前世の分経験はあるけど……先ずはパソコンをどう入手するかかな」

 

 そっち系の資格、授業を取っていたため、Adobe系ソフトやそれに繋がるWebサイト制作に関しては、一応そこそこ経験もスキルもある。

 今の年は2007年。一応ネット環境は整って来始めているとはいえ、まだ高レベルな経験者やベテランは少ない筈。

 つまりブルーオーシャンなのでは、というのが私の考えだ。

 勿論、デザインの仕事を第一線で戦ってきた人や、クリエイターとして有名な人には敵わないだろうが、一応仕事として戦力にはなる筈。

 バージョンが当然違うので、そこは慣れが必要だろうが、在宅ワークで自分が高い能力を発揮できるものとするとそれくらいしか思い浮かばなかった。

 パソコンは……一時的に借金するか、暫く我慢してバイトでもして買うか。

 そこら辺込みで後でじっくり考えるとしよう。部屋の模様替えをしながら考えることでは無い。

 

「……うん! 一先ずこれで完了かな。追加の家具とか電化製品はまた相談しよう」

 

 特に調理器具は乙女ちゃん専用みたいなものなので、本人に希望を聞く予定だ。

 ちなみに、冷蔵庫やクーラーといった電化製品は不思議な力で生やしたが、ネットという外部に繋がるパソコンは流石に製品として売られているものを買うことにした。念の為だ。

 スペックや諸々の機能は令和のものにはどうしても劣るだろうが、そこは仕方ない。

 2007年なんて、ゲーム機が据え置きでWii、携帯機でDSの時代だぞ。というか前世の私が三歳とかの頃だからな。

 3DSじゃないDSの記憶、無心でテトリスやってた記憶しかない。兄は割と色々ゲームをやっていたが、当時の私はそこまでゲームに興味が無かったのだ。

 そこから何の事件か遊戯王にハマり、ミミグルに心臓を掴まれ今に至るのだが。

 マスターデュエルで空牙団の新規を待ち続けていた兄は今元気にしているだろうか。

 まぁいつも通り発狂しながら誘発を撃たれているのだろうなぁと郷愁に襲われつつ、私は未だ作業を続けているミミグルたちを見た。

 背後からダンジョンが組み直される音が聞こえていたため、順調に進んでいそうだが、なんとなく気になって作りかけだが内容を見せてもらった。

 

「…………」

 

 通路は迷路のように入り組み、時には隠し通路や扉を見つけないと密室に追い込まれる仕組み。そこに張り巡らされた落とし穴やギロチン、ワイヤートラップ。

 桃色や黒色のマーカーはミミグルモンスターの待機場所だろうか。

 一つの罠を避けたらその先にはそれを待っていたかのように追い討ちが仕込まれ、そこから逃げようとすると二、三段階の罠が意識外の方向から飛んでくるそれは、「侵入者を必ず殺す」という意思を感じた。

 あまりにも殺意が高い。

 しかも大抵の罠が一度きりのものではなく再利用が可能に設計されている。

 宝箱(中から出てくるのはミミグルモンスターだが)の位置や、安置と思わせて油断を誘うギミックは人の欲や焦りをよく理解した極悪の配置だ。

 普通の人間なら、階段を上り最初の一歩目の感圧板による矢の一本でお陀仏だろう。

 ダンジョンに潜むモンスターとしての、確かな構成力と人の精神への理解を感じた。

 宝箱を明らかにセーフティルームの報酬のような位置に置いてあるのも、絶対に騙すという意思を感じる。

 

「……三階はこれで良いけど、一、二階はもうちょっと手加減しようか」

 

 モンスターたちよ、人は案外脆いのだ。

 落とし穴の底に針山を用意するのは、「警告」ではなく「確殺」何だよなぁ。

 モンスターのモンスターらしい一面をガッツリ感じつつ、一階層は全体的に私が担当することにした。

 エレベーターのパスワード間違っただけで天井が落ちてくるのは……初見殺しよりひでぇや。

 

 物足りなさそうなモンスター達は、ならばと三階の殺意をより上げるためにまた話し合いに戻っていった。

 やってくるかもわからない侵入者に、私はただ合掌を返すことしかできないかもな、と追加されていく罠の表記を遠い目で見ていた。

 







ミミグル使いの方がコメントしてくださってとても嬉しい。
まだ握って日付が経っておらず、まだまだタクティクスも未熟なので、デュエル描写で甘いところがあったらすいません。
友人の御巫に勝てずに始めたシリーズなので、お話を書くついでにデッキの理解度を高められたら、良いなぁ……。
もちろん遊戯王知らない方の感想も嬉しいです。まだあんまり呪術要素出てきてなくて申し訳ない。
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