対目が冴える蛇用オリ主 作:おれはきさまを倒すものだ
目を凝らす。
目の前の少女の後ろに数人の影がぼやけて見える。見る力に関してはお墨付きと言うわけだ。どうやって気づいたのかはわからないが、ここにきてくれたのはありがとうと言っておきたい。素直に伝えはしないけど。
第一声どーしよっかなー。そうだな……似てるし何かの縁だろ。範馬勇次郎の真似しよーっと。明らかに只者じゃない感じ出るし、忠告とか信じてもらいやすそう。でも範馬勇次郎そんな直接的な物言いしないよな。
「ほう? この家の主か」
片眉を釣り上げて怪訝そうな顔を作りつつ、何というか威圧感をドーン! でもあんまりビビられて話が通じなくなっても困るんで、ほどほどに加減はするけどね。多分大気がゆらめく程度に収まってくれてるんじゃないかな?
「待て! マリー!」
お、キドが飛び出してきましたね。隠れてたんなら最後までちゃんと隠れてなきゃダメだよ。
「一人現れたかと思えばノコノコと……靄がかかっていた姿だったがようやくハッキリ姿を現す気になったか」
奥にいる他のメンバーにも威圧をお裾分け。どうかな? メカクシ団の諸君。
「ッ!!?」
セトくんが頭を押さえて片膝をついちゃちゃんだけど。確か目を盗む……思考を読むんだっけ? 一番気をつけておきたいけれど、よくわからんけどダウンとれちゃった。ラッキー。
「セト!?」
「思考が、うるさすぎるっす! この人の頭……闘争本能だけで出来てるんすか!?」
……失礼な。人を戦うことばっかり考えてるような戦闘狂呼ばわりして。ソースがセトくんだけなんだから、あとのみんなにも俺が戦闘狂だと思われるじゃないか。実際それっぽいムーブしてるから仕方ないけど。というか戦闘だけの思考ってどんなんだよ。俺こうやって普通に考えてるんだけど? ……俺のアシストかよ。助かるんだけど助からないというか。まあそのままで問題ないよ。
「俺の思考を読んだ……読心か。フフ、小癪だが面妖な技だ。しかし飢えた獣の檻に手を入れればそうもなろう」
「矛を納めてもらいたいんだけど……何が目的なのかな?」
唯一冷静そうな態度を保っていたカノくんがそう言う。心音、脈拍、体温は平時とはほど遠く、おそらく大分焦ってるけど。いやー、ありがたい。正直引っ込みつかなくなってたんだよね。とりあえずマリーと話をしたいんだよね。勇次郎らしく少し訳知り顔で言ってみようかな。
「そこまで緊張することもない。喰うのに手こずるような小粒など、そもそも俺の眼中にないわ。俺の用はそこの蛇だけよ」
「!? ……な、なんですか……私に話って?」
急に話の矛先が向いたマリーが驚くが、気丈に俺を見返してくる。自身が蛇と呼ばれたことに驚いているけれど、決して俺と目を合わせようとはしてくれない。石になっちゃうかもしれないもんね。でも俺はそれをいじるよ。
「未だ人と碌に目も合わせられん未熟な蛇がよく吠える……。まあいい。話と言っても言ってもそう大仰なもんじゃねえ。蛇に関わる以上避けては通れん話でもある」
「そう、せいぜい牙を磨いておけという話だ。実らぬうちに、俺のような強者に蹂躙されぬようにな」
伝わったかな? 伝わってないかな? 俺くらいに気をつけるべき存在が、そして悪意を持って君たちのことを踏み躙ろうという存在が他にいることを。この警句で君たちが来たる何かに対処するためにその目を磨き上げるならばそれでいい。何事もなく原作通りに進むならばそれでもいい。最終的には十の目を集めて新しいループを始めようとする目が冴える蛇を俺が消失させるだけなのだから。
「ちょ、ちょっと待ちなよ。せめて名前くらいは教えてほしいなって……」
カノくんが俺を引き止める。あー、名前ね。言っちゃってもいいんだけど、黙ってたほうが良さそうだな。
「一度目は偶然……だが、もし次に会うことがあれば語ってやる。二度会うようなことがあれば、俺と貴様らの間には並々ならぬ縁があるのだろうからな」
……ちょっとクサかったな。あー恥ずかしー。
◆
嵐のような男だった。こちらのことなど歯牙にもかけない武威を持った男だった。きっと強さを擬人化したらあんな姿をしているのだろう。鎧のようなその背が木々に隠れて見えなくなっても俺は手の震えが止まなかった。
「……どう思う。セト」
心を読むことができるセトに聞く。あそこまで苦しそうにしているのは暴走してしまったとき以来だ。しっかり読めていたかはわからない。
「なんていうか、正確に読めたわけじゃないんですけど、あの人の中にあったのは絶対的な自信っす。あらゆる異を挟ませない強さが自分にあって、持論を押し通せる自分こそが絶対的に正しい……みたいな傲慢さっす。あとは、ほんの少しのマリーに対する興味?」
「そこだよねー。はじめっからマリー目的だったけど、あのゴリラのしたことはあの短い忠告だけ。マリーはなんか知ってる?」
「私の交友関係はみんなだけだから……知らないかな……ごめんね……」
「知らないのなら仕方ないだろう。謝ることじゃない」
あの男は最初から最後まで一貫してマリーのことしか意識していなかった。おそらくそこに目的が隠されているのだろうが……情報が足りないな。
「あ……でもね、一人だけそうじゃないかなーって人はいるよ……?」
「どんな人っすか!?」
「え、えっと……みんなと会うちょっと前にね、森に入ってきた人がいて……目が合っちゃったんだけど、ぺこってして帰っていった人がいたよ」
「だから『未だ』って言ってたんだ。つまり、覚えていてここに来たってわけだね」
マリーのことを覚えていたのはいい。それよりも何故マリーが蛇……メデューサの血を引くと知っていたのかだ。話を聞く限りでは石にされた訳でもない。どこかに記録が残っているのか? それでもそれをマリーだと決め打ちするのはおかしい話だ。圧倒的に情報が足りない。
「キド、難しい顔をして、何か引っ掛かったっすか?」
「ああ、あいつに関する謎が多すぎてな。疑うわけじゃないがマリー、本当に目があったんだな?」
「う、うん……すぐに離して謝ろうと思ったんだけど、帰っていっちゃって……」
「なるほど、マリーの目を見て石にならなかったんだ……となると僕たちの目も対処、あるいは無効化されるのかな?」
「そこまでは断言出来ない。ただ、マリーが飛び出した後、あいつは確実にこっちを見たぞ」
目の能力を知り、目の能力が効かない。それでもなお、俺たちに研鑽を進める理由。
「話し合えば合うほど謎が増えるばかりだ。一旦姉さんに話を持っていくべきだな」
「そうっすよ! 考えるにしても後っす。俺今頭痛っすから!」
「僕も同感だね。解けない問題に頭を抱える時間ほど無駄なものはないと思うよ」
「だ、大事なことじゃなかったんですか……?」
大事ではあるが最重要ではない。気になるがそこまで気にするほどのことじゃない。でもあの筋肉はすごかった。
続かない。
色々調べたけど合ってるか分からないから。