「うふふ。いいのよ私(わたくし)の事なんて気にしなくて。」
私が微笑みかけるとメイドがおそるおそる礼をして部屋を出ていく。
…ほんとに。私の事なんて気にしなくていいのに。
いいのよ?私を気にしないで幸せになって。
きっと、私は貴女が幸せになったことを嬉しく思うだけだわ。
いつだって『孤高のヴェロニカお嬢様』は別れを悲しまない。惜しむこともない。
求めるものなど何もない。彼女はただのメイドで、その昔に、家にいたときに私の元から去って行った人たちと同じ。
皆私から離れていく。どうしてだろうかとも思わなかった。それが当然であったから。
だって私は........。私は。
日の光など浴びることは許されず、ただ名家としての役目を果たし続け、舞踏会では家のつながりを広げるのみ。
私の意思などもったことはない。そう、たったの一度も。でも、どうして彼女は意思を持って行動できるのだろう。
どうしてあんなにも希望を捨てずにいられるの?
こんなにも欲望と陰謀でぐちゃぐちゃになったこの世界で。誰もが希望を捨てたこの世界で。ねぇ、私に教えて頂戴?何があなたをそうさせるのか。どうすればあなたのように光を失うことなく生きてゆけるの?ねぇ...
「ラティア...。」
閉ざされた青暗い部屋の静謐が数日ぶりに破られる。
この空間で窓は役目を果たすことがない。だってそこから何も見えないのだもの。
いつだって扉しか動かない。月日すら動かない。私の心だって同じだ。今だって。これからも。ずっと。
彼女が急に「私、ずっと思っていることがありました。」と扉を開けるなり言ったけれど、
「...」
私は人との話し方を知らない。
「幸せになりたいんです。私。」
彼女と初めて目が合った。
この世界の裏側を何も知らなそうな瞳。心から出てきた純粋な笑顔。
結び慣れたメイド服のリボンの結び目。始めはあんなに声が震えて、リボンも左右で大きさが違かったのに。
「幸せを掴みたいんです。この世界で。よろしいでしょうか?お嬢様。」
「......。あなたの好きにすればいいんじゃない?」
私には人が分からない。だから自分の事も分からない。なぜ心が痛んだのか、声が震えて掠れたのか分からない。
知りたくもない。私に関係のないことのはずなのに。どうしてこんなにも心が苦しいのだろう。
…私の事なんて気にしなくていいのよ?
ラティアが部屋を出てからもう何日経ったか分からない。
月日の流れが分からないのはいつものことなのにもっともっと永く感じる。
書いていたものが929文字で投稿できず、追加しました。
なのでそこが蛇足かもと言う言い訳を。