開拓村の狩人兼自警団の青年が慌てて村長のところに駆け込む・・・
「村長ッ!大変だッ・・強獣が村に近付いてきてる!・・多分森の奥の餌が不足して畑を荒そうと出てきたんだ!」
「な・・何だとッ!あとどのくらいで出てきそうだ?」
「狩猟頭の言うには1週間程かと;」
「むむう;・・とにかく領主様にお知らせを;」
サラサラと文を書き鳩文を送る・・・
・・しかしウチみたいな激貧開拓村だと対応してくれるか・・・ここ3年くらい租税を滞納しているしの・・
これを機に廃村となると・・最悪借金奴隷か流浪人になるしか無いな・・
こんな貧乏村だからか?村の子供達もたくましく・・農作業の役に立たない子供たちは森に入らず村に繋がる街道沿いで野草だの小動物だの木の実だのをかき集めるのが日常であった・・。
そんな鄙びた開拓村の細い街道に・・遠くから見慣れぬ稀人が現れる。
馬に乗って旅装に身を固めた若者と身の丈10mもありそうな人型と付き従う3mほどの人型が荷車引いて現れる。
子供達は見たことのない光景に街道で唖然とする・・。
若者が声を掛けてくる・・
「ここは開拓村かな?・・少し旅の足を休める広場とかないかな?」
・・年長の数人の子供達が大人に聞いて来る!とあわててが駆けだす・・
が幼少さんは眺めるばかりw
・・まあいいか?とばかりに街道の脇に馬から降り荷車を止めて座り込む若者と人型達。
好奇心に負けたのか?1人の女の子がお兄さん誰?と聞いて来る、若者は?!となりながらも
「聞いたことないかな?修行の騎士・・・遍歴の騎士って?」
途端に子供達が目を輝かせる!、まあこの国のどこであろうと子供でその物語を知らない者はいない。
王様や大貴族から認められ下賜されたその力と智慧で民草の難儀を救ういくつものきらびやかな物語を!
普通になら村でも払いきれぬ代価で贖うような事でも、その手が可能とする事なら夜露を凌ぐ程度の道具小屋だろうがパンの一切れだろうがソレを対価に誇りにかけて救う・・そんな物語の数々を。
村から村長が呼びに行った子供達と慌ててやってくる・・。
まさか・・まさか;と思いつつ子供達の話を聞いて駆けつける村長・・・辺境を巡る騎士・・・自分の祖父から聞いた昔話ような様子に藁をもつかむ気持ちで急ぎ現れ見ると正に物語や祖父の経験した通り・・若者と大小の人型が!
「おお;・・騎士様御救いを・・」と頭を垂れる村長。
若者が意義を正して・・・
「騎士が来た、何を願う?」・・と誰もが知る遍歴の騎士の問いかけ・・
「ご助力を!・・・森の奥から強獣が迷い出てきております」と頭を地につける村長
「では天幕を張れる場所に案内を!それが対価だ」・・村長はおろか子供達ですらそれでいいの?とは思いつつも・・。
若者が微笑みながら続ける
「この地域については此方の伯爵様からも気をかけるよう聞いている・・そもソコの相棒達もそのために居るしな?」
案内を願うとそこからはしばし村まで特に語ることなく移動する、手早く天幕を張り馬を繋いだりしてから村長に向き直り。
「強獣について判ってることがあれば聞きたい」・・村長の小屋に向かい話を聞く。
先ず5日ほど前に森に入ってた狩猟グループが発見、どうやら奥地から餌を求め現れた様子・・今年は森の恵みも少なく・・恐らくは村郊外の農作物を狙って現れた可能性が高いのと、この地の領主様に鳩文出すも2日経って未だ返事がないとのこと。
「ということは・・まああと数日程でこの村圏内に現れる?が領主は対応を渋ってる?」
恐縮する村長
「騎士の誇りに賭け助力しよう!・・森に詳しい狩人が居れば話が聞きたい」
村長が家人に呼びに行ってもらう。
狩猟グループの頭の人が来て‥問題の強獣について・・超大型の鹿で体高が6mほど比較雑食性が強いのでヒトも食いかねない、現在忍び猟が得意な3人で交代しながら監視中・・村に真っすぐ近寄ってくるので予測より到着が少し早そうとの事。
「幸いにも1頭だしココはウチの相棒で狩るのが一番良いか?・・外骨格や爬虫類系ほどはしぶとくなさそうなのが救いだね」
という事で明日にでも狩人の案内で討伐に向かう事に決まる
早朝の騒めきに子供たちと村人たちが目を覚まし・・期待と不安のなか小さな人型とはいっても人の2倍はある、に若者が指示を出し盾と槍を持たせ・・自分は大きな人型の胸に乗り込んで荷物を背負い・・狩人と共に森に向かう・・。
狩人は心配していたが・・足音もさせずに10mほどの巨体が森の中を進んでいく藪や木を剣で音もなく切り払い進んでいく・・途中狩人の足に合わせて休憩を数回入れ最後に野営する。
狩人に言わせるとここからなら休憩挟まずに強獣まで一息に行ける距離との事シッカリ休んで明日に備える。
狩人の目から見ると・・・若いのに随分落ち着いて冷静だし自信に満ちてるように見えた・・・このぐらいの年齢だと妙に緊張したり興奮したりとベテランのフォローも必要なのだが流石騎士だと・・昔の自分を思い出しながら思う。
次の日ついに遭遇するが好奇心でついてきた村の子供が居たらしい;強獣に悟られた子供が恐怖で固まっている。
・・狩人グループのリーダーが焦って騎士に告げる・・・
「騎士様申し訳ない子供とはいえこんな不始末を・・見捨ててくれていいのでお願いします」と頭を下げるのを見て状況を判断した騎士が。
「騎士が守るべき民を見捨てるわけが無い!ボクが出て一中てするのでその隙に子供を保護して下がっててください」
と言い残し大きな人型で風より早く強獣と子供の間に入り対峙する・・慌てて子供の後方に回り込む狩人達。
騎士が強獣を挑発するのにそこいらの石を拾い投げつけると興奮した強獣が駆け寄ってくる!
それを騎士が身をかわさず横面を一撲り・・巨体が浮き上がり10mほど飛ばされて子供から距離が出来る・・。
今!と若い騎士が大声を上げたのをサインに狩人たちが子供を確保し直ちに距離を取る・・安全を確認した騎士が再び強獣を睨みつけユックリと腰の剣を抜く、強獣も生死の戦いに己を高め叫びをあげて突進してくる・・ソコに騎士が斜め前に踏み出し・・
交差する巨体・・そして強獣の心臓に一突きが入り地面をたちまち赤く染める・・頽れる巨体。
その光景は狩人たちと好奇心でついてきた子供の目に焼き付けられた・・・物語の遍歴の騎士そのものであったと。
少し離れた森の中を戻り無事仕事を終えた喜びに笑い声等が漏れ出る狩人たち・・子供はシッカリと拳骨落とされたがw
よく見ると街道で声を掛けて来た女の子・・
「まあ森の中を大人で1日半くらい、親も心配するしみんなにも申し訳ないだろう?なにより危険な事はしちゃいけない」と騎士にも言い聞かされる。
後で狩人に聞くとこの子は両親とも森の中で無くしており、村として面倒を見ているのでその辺が影響したのかも?最悪村の負担は減るし・・みたいな。
ネガティブな思考に入ってたか;話を変え女の子に聞く
「どうだった?騎士の働きは?」
今更ながら凄く興奮して凄い!と言葉足らずに伝えてくる・・ナニカに気が付いた騎士が女の子の手を取り何やら真剣な顔をする・・この子・・
他にも?森の恵みが少ないので今年は厳しいとか耳にした騎士・・狩人に聞くと?雨風もお日様も特に問題ないけど最近エモノが少ないとか?
騎士がこの強獣のせいでナワバリが乱れたのでは?と言うと・・狩人もその線が濃いな~と少し明るくなるしばらくすればエモノが戻ってくるかも?
騎士が提案する「この野営地でもう2日ほど野営しないか?」
・・・色々相談し・・2泊は決定しその知らせと強獣の討伐成功と子供の安全を知らせに狩人の一人に女の子を連れて村まで走ってもらう。
さて?と小さい方の人型に乗り込む騎士・・強獣を解体していく人力ではとても及ばない速度で精肉され毛皮を剥ぎ処理をしていく、狩人らも手伝いはするがトンデモナイ速度に唖然とする。
そして・・この肉の処理お願いしていい?と問う・・狩人は燻製とか塩漬け用に色々持ち歩いてるし足りないなら塩は無理にしても塩泉から濃い塩水は調達できる・・任せてくれ!と胸を張る狩人に少し狩りに行ってくるよ!と小さい方の人型に乗った騎士が槍と弓
を持って出かける。
・・・夜闇に狩りに出かけるとは豪胆だな;と狩人たちがビビる・・そして朝には騎士が大物ばかり20頭ほどの鹿と猪を即席天秤棒に吊り下げ帰ってくる、遠くまで行ったからここらには影響ないだろうと。
そこからまた解体と処理、若い騎士も徹夜は堪えたのか仮眠するから後はよろしくと即毛布に包まり寝る。
夕方になり目を覚ますともう一回行ってくる・・・と出かける次の日の朝にはまた20頭ほどの大物を追加し・・今度は仮眠せずに少し探してくる・・と小さい方の人型の背負い袋を空にしてからまた森に入る夕方に戻って来て芋や木の実や山菜にキノコ等を背負い袋に山盛り持ち帰る。
・・その日はもう出かけずに普通に寝る・・大量のエモノも大小の人型が即席天秤棒に振り分けて背負い運ぶ・・2回ほど休憩を入れ村に帰還する。
村長が出迎えありがとうございますm(__)m村の危機は救われました!若者はニコリと笑顔で答え大量のエモノと森の幸を指さし
「村でなるべく公平に分配してくださいね?」・・固まる村長こんな;よろしいので?
そのために持って帰ったのですから!と笑う。
「そして租税も余り納めれてないでしょう?これらの内毛皮や骨や牙や角をその代わりに納めては?加工した方が高価にはなると思いますが」・・まあ偶々のあぶく銭的なアレですし?と入れ知恵をする。
「それでこの強獣の大きな骨やらは高価なので提案があります・・あの女の子をここの領主に育てさせるのです」
!!驚く村長・・・
「あの子は最低でも従士になれる才能が有ります、ボクが保証しますし紹介状も書きましょう・・断れば伯爵様に色々とお知らせしますし?」
「そのためにという訳ではないですがあの子の未来の騎士の手向けにもう少し遍歴騎士として力を振るいましょう」
「さて?村長さんこの村の色々を教えてもらえませんか?」
村長さんから領主へ鳩文を送る際に若い騎士も書簡を送り、それとは別に騎士も鳩文をどこかに送る。
そして・・・開拓村の歴史が動き出す・・・
水不足のため充分な収穫を不安定にしか得られなかったのを近くの山から出る川から水路を掘り抜き村の耕作地より高い場所にため池を作る、このことで水はもちろんだが池を管理するときに出る泥と森の落ち葉を混ぜて堆肥に利用できるようになり飛躍的に収穫量が増える。
街道も一部整備し馬車が楽に来られるように石橋なども建設される・・・騎士は時には生身で村人の労働に手を貸し、既に1年ほど滞在するがその間の報酬は天幕を張るため間借りしている土地のみ・・食料や塩などは時々荷車で狩猟のエモノや森の恵みを近くの街まで運び売りさばいて糧を得る。
結局女の子は領主に引き取られず村にいたまま若者に騎士教育を受けている、村の子供達にも槍や弓は教えるが剣は対人のためのモノで基本的に騎士の武器ゆえに教えない、才のある女の子だけに教える・・騎士の心得や作法などを教え導く。
その内に騎士が別方面に送った鳩文の功か?ある日の若者のように大小の人型を連れた女性騎士が現れる・・。
若者が頭を垂れるところを見ると高位の騎士らしい?呼ばれた女の子が二人のところに現れる。
女性騎士から口を開き
「騎士の求道については一通りこちらの遍歴の騎士殿から学んだかと思う、入門に至り私が君を導く教導騎士となる訳だが・・伝統にしたがい正直に答えるのだ君の目指す騎士とは?」
「こちらに居られる騎士の様に誇りに賭け民草に力を貸す方に憧れ、私もそうなりたいと願います」
少し苦い笑いを浮かべる女性騎士。
「さようか・・近頃珍しい高潔なる遍歴の騎士を目指すか、苦難の道ではあるがそれ故にその功は騎士団の誉にも引けはとらん、常に孤軍にて無数の敵を相手にするわけだからな?並々ならぬ苦難の道と知れ・・騎士として認められるまでは私が導こう」
笑顔の若者を見る女騎士がしてやられたな~とやや苦笑いを浮かべる。
天幕にてささやかだが心尽くしの宴を催し3人で語らう・・。
聞くと?女性騎士は若者の姉弟子として同じく高名な騎士に師事した仲だそうな・・女性騎士の方は国の騎士団に所属する高位騎士・・弟弟子は師に惜しまれながらも在野の遍歴の騎士になり国からの僅かな捨扶持でアチコチに居を定めぬ騎士の義務を果たす路傍の遍歴の騎士に・・。
「あたら得難い騎士の才が正しく騎士団に迎えられないのを未だに師匠が悔やんでるぞ?」と姉弟子
「まあどちらでも国のためではありましょうよ?下手な騎士には遍歴の騎士は務まりませんよ?」柳に風で答える若者・・。
これまでの遍歴の旅の話を面白おかしく話す若者と色々楽しそうに指摘する女性騎士。
キラキラした目で話を聞く女の子。
次の日は少し実力を見るとのことで女性騎士が作法・剣・知識・才について実力を調べる。
「確かに若者の文にあったようにかつての弟弟子に迫らんとする器・・故に惜しい;騎士団ならば入団時点で小隊任せてよいし最終的になら一軍の将ですら務まりそうな・・まあ初めて見る騎士がアイツだったらこうなるか?」
その次の日には女の子も女性騎士に連れられ伯爵の治める領都に向かう・・若者は姉弟子には師匠にヨロシクと珍しい酒の樽を渡し、女の子に剣と馬と路銀を与える・・まあ大小の人型は実力でもぎ取りなさいと笑いながらw
※後日談・・・この若者が在野の才を発掘し磨いては姉弟子や師匠の伝手に繋げ並々ならぬ遍歴の騎士を大量に生み出す・・。
後にこの女の子を中心に同じように才を見出された?数十人の遍歴の騎士がまとまり遍歴の騎士組合を立ち上げ他国からの侵略戦争において勇名を馳せる、その後女の子は救国の騎士バルバラの物語として良く知られる偉大な騎士となる。
その後の村の領主・・領主騎士の監査が国から入り色々とダメなのがバレて爵位はく奪・・国軍騎士団の1兵士に身をやつす、後任の騎士が派遣され発展していったそうな?
姉弟子の人・・才も努力も軍功もあり女性騎士ながらも将にまで上り詰める・・いつも弟弟子のことを気にかけ惜しんでたそうな。
師匠の人・・遍歴の騎士になり自由に暴れる弟子を羨ましくも思いつつも、その弟子が送り込む綺羅星のごとき若き才を磨くことに生涯を尽くす、後に遍歴の騎士の父と呼ばれる。
因みに例の村・・開拓目覚ましく開拓村の成功例として注目され国内外から視察が訪れる有名な村に・・村長曰く全て遍歴の騎士様お1人の功績ですと嬉しそうな顔で村の案内をしていたそうな・・。
遍歴の騎士の人・・名を残さず生涯野に身を置き出来る限りの力を民草に惜しまず行う、旅路の果てに遂にある村で力尽き遺言に従い街道の道端に質素な墓石の墓に葬られる・・その地は聖騎士の終の地として彼を慕う遍歴の騎士達もソコに葬られる事を望んだため騎士の聖地と呼ばれる・・向こう側ではきっと遍歴の騎士達の終わる事のない宴が続いているだろうと言われている
悲劇とみるか?理想の物語とみるか?