魔導士の一人から報告を受けたアーサー達に緊張が襲った。
「王都が襲撃されているだと‥‥!?」
驚きを隠せない中、「金色の夜明け」団の団員であるシレンは冷静に魔導書を開きある魔法を行使した。
───岩石創成魔法"世界を語る模型岩"───
彼は王都の様子魔法で再現した。
魔力は勿論、逃げ惑う人々の悲鳴や、爆発音なども忠実に再現されており、科学的未来の場所ではリアルタイム映像と言って良いほどのクオリティである。
「‥これは‥王貴界の立体模型!?‥‥現地の人間の声や魔力量まで‥!魔をこの地域一帯に張り巡らせ、同時にそれを可視化させているのか‥!」
「私の"魔花の道標"よりも遥かに高レベルですわ‥‥!」
その再現力にクラウスとミモザは驚いていた。
「‥‥これ程の魔力量の軍勢が我々に気付かれず、5ヶ所同時に‥‥」
「どうやら相当な空間魔法の使い手によって一瞬の内に現れたようだな‥」
フエゴレオン達が"世界を語る模型岩"を見ながら作戦を立てていた。
しかしその最中、痺れを切らしたかのように騒ぐ者がいた。
「いや、コレ何待ち!?助けを求めてる奴らがいるのは充分わかった!!俺はもう行く!!!」
部屋から飛び出し、街の人々を守る為に掛けて行くアスタ。
「何処に行くつもりだアスタ‥! まだ状況を把握しきれていないし‥それにお前は魔力感知が全く出来んのだろう!?」
そんなアスタを止めるために、話し掛けるクラウス。
「音のデカい方に行く!!」
「なっ!?動物かオマエは────!!」
クラウスは獣染みた行動理由を告げたアスタにツッコミを入れた。
「フハハハハハ!!面白いォォイ!!貴様の力、見せてもらおう!!待たんか、我がライバル!!」
レオポルドは感化されたかの如く、アスタを追いかけていった。
そんなアスタとレオポルドの行動を見抜きもせずに、何かを感じ取っていたアーサーはシレンに近づいた。
「すみませんが、この部分まで広げられますか?」
「‥‥やってみよう」
シレンは言葉が少なめで了承し、更に"世界を語る模型岩"の効果範囲を広めた。
そんな事を頼んだアーサーが気になってミモザが話し掛けた。
「どうかされたのですか、アーサーさん?」
「よく見ろ」
アーサーが"世界を語る模型岩"を見るようにミモザに告げると、王都に猛烈な速度で迫ってくる王都を襲撃している魔力以上の所持者。
しかも、それは一種の城を崩さんとする槍の如き速度だった。
「これは‥‥何者かが向かっているのか!?」
その情報を知ったクラウスは声を荒げながら驚愕していた。
新たにやってくる敵に対しての対処を考えようとした時だった。
「団長、俺が行きます」
アーサーがフエゴレオンにそう言い付けた。
その言葉に先程、一方的にアーサーに馬鹿にされる程の惨めさを起こされていたネブラ達だったが、その前に了承したのはフエゴレオンだった。
「‥‥わかった。行ってこいアーサー!」
「了解」
フエゴレオンからの了承を得たアーサーはやってきてくる敵に向けて、<閃光>と飛行魔法で神速で飛行していった。
その余りの速さに、その速さを見た事がない者達は絶句していた。
────────────────────────
「ワハハハッ!!悪行のクローバー王国よ!今こそ我が直々に裁きを下してやるぞ!!」
クローバー王国の平界の上空から大声を上げて笑い、王都へと侵攻してくる謎の襲撃者。
謎の襲撃者の姿は頭部を除く全ての部分が甲冑を纏った聖騎士風の天然パーマの中年男だった。
すると、男の前にアーサーが一瞬で近づいては"聖剣エクスカリバー"を振るった。
男も手に持っていた十字剣で防いだ。
「ワハハハッ!中々の膂力をしているな」
「何者だ?」
「知りたいか?ならば答えてやろう!」
そう言って男は全力で剣を振るってはアーサーを押しのけた。
アーサーと男は平民界へと降り立つ。
そこは植物が栄えている坂道だった。
「我は破砕魔法の騎士。ファルザナス!我が剣は悪を砕く!!」
そう言ってアーサーへと斬りに掛ったファルザナス。
──────混沌魔法"雷帝の重鎧"──────
雷魔法で作りだした長い盾を持つ首まで覆われた雷の鎧。
その鎧は触れれば、雷に耐性を持つ存在がいようとも少なからずダメージを負わせる事が出来る。
──────破砕魔法"破壊者"──────
ファルザナスからの攻撃を雷の大盾で防ごうとしたが、簡単に腕ごと斬り落とされた。
「ッ!?」
アーサーは左腕から走る鈍い痛みを耐えて雷速で距離を取り"再生"した。
左腕が一瞬で元に戻ったを見るやファルザナスは興味深そうに驚いていた。
「ほう。切り飛ばされた腕が再生するとは、回復魔法の次元を越えた魔法を持っているな。いやそもそも貴様の魔法属性自体が異端だな。異端者は悪!権力者の味方に過ぎぬ者も悪!屈する者も悪!!善にして絶対は我らのみ!!!」
そう言ってファルザナスが鋒をアーサーへと向けた。
「この国を護ろうとする貴様もまた悪なり!死を持って償うがよい!!」
アーサーへと接近したファルザナスは万物万象を破砕する破砕魔法"破壊者"で攻撃を繰り出した。
アーサーは"雷帝の重鎧"を解除して<大海>の魔力を用いた。そうすることで斬られても水となることで"破壊者"の効果を無力化した。
「肉体を水に変化させるか」
「それだけと思ってるのか?」
水の肉体となった事で水飛沫がファルザナスに掛る。
──────混沌魔法"
パキンッ!と凍結されたファルザナス。
水によって濡れていたファルザナスに氷魔法を行なうという事は冷却速度を速めた。
──────混沌魔法"
大地から巨大な剛剣が現れる。
すると凍り付けされたファルザナスに剛剣の鋒が衝突すると粉々に散った。
「少しばかり時間を取られたな。急いで戻るか」
<閃光>で王貴界へとすぐさま戻った。
────────────────────────
ファルザナスとアーサーが王都を離れながら戦闘の最中、アスタは死体を操る魔導士と戦い、他の魔導士は国民を襲う死体を破壊し終えていた。
しかし、そんな中、[紅蓮の獅子王]団と[黒の暴牛]団や、死体を操る屍霊魔法の使い手───ラデスがいる場所を除く他の四ヶ所に突然と黒い空間がその場所にいた魔法騎士団員を呑み込んだ。
呑み込まれた黒い空間が消えると魔法騎士団員たちが王都から消えた。
そして、黒い空間に呑まれた魔法騎士団員たちは王都から数万㎞離れた平野へと転送され、まんまと敵の罠に掛ってしまった。
そんな王都から消えていった魔法騎士団たちの魔力消失に気付いたフエゴレオンとレオポルドとノエル。
「っ!? ‥他の魔法騎士団の魔力が消えた!?」
「どうなっている‥‥っ!?」
ノエルとレオポルドは魔法騎士団達の魔力消失に驚愕と困惑に襲われていた。
二人の呟いた言葉で魔力を全く持っていないが故に魔力感知も出来ないアスタは他の魔法騎士団に何かが起きた事を知った。
「────‥‥‥‥オレらの目的はな。お前だよ、フエゴレオン・ヴァーミリオン」
「なに‥?」
捕えたラデスがそう告げると、フエゴレオンの足下から先程魔法騎士団を空間転移させた空間魔法が彼を襲った。
黒い空間魔法に呑み込まれ行くフエゴレオン。
それを視認したレオポルドは拘束しているラデスの首元を掴んで、鬼気迫る気迫でラデスを尋問した。
「貴様アアアアア!! 兄上をどこへやったァ──────!!!」
「ハハハハハハッ!!!」
「何が可笑しい!?」
詰め寄るレオポルドにラデスは唯々笑うだけだった。
言うつもりなどないと、示しているかのように‥‥‥
「レオポルド! そいつは空間魔法の使い手じゃないわ!」
ノエルはレオポルドを冷静にさせる為に、ラデスの魔法ではないことを伝え、思考する。
ピンポイントでフエゴレオンを転移させたということは近くに術者がいるという事‥しかし、一体何処にいるのかわからずにいた。
しかし、アスタは迷うことなく、屍の山に走り出した。
「そこだァァ──────!!!」
断魔の剣で薙ぎ払られた屍の山から一体だけ、まるで避けるように飛び退き、上方向に空間魔法を開けて距離を取った。
屍の山に術者がいた事にノエルはとても驚愕していた。
「(死体の中に‥‥‥っ!?)」
「よく見破ったな。魔法で化ければ魔力で気付かれると思い、わざわざ小汚い格好に変装していたというのに‥‥獣のような奴だな‥だがもう‥終わったようだ‥」
空間魔法テロリストの言葉と同時に別の空間からアスタ達の前に何かが落ちてきた。
それに目を向けるアスタ達は、現実を受け入れられなかった。
「‥‥‥‥‥‥‥あ‥‥‥兄上ぇええええええ!!!」
「うぁああああああああ!!!」
レオポルドはフエゴレオンだと知り叫び、ノエルは悲鳴を上げた。
そしてすぐさまフエゴレオンの元へと駆け寄る二人。
しかし、フエゴレオンの右腕は切り落されており、別空間に落ちているのか、一緒に落とされる事はなかった。
フエゴレオンは右腕を欠如し、ダメージが大きく意識を失っていた。
ノエルは共に落ちてきたフエゴレオンの魔導書を見て、まだ生きている事を確認すると、彼女は着用している服の布を破り、彼の出血している部分に押し当てた。
回復魔法が使える者がいない為、応急手当しか出来ずにいた。
彼女の努力を無駄だと言わんばかりにフエゴレオンの魔導書の端が崩れ始めた。
「レオポルド手伝って!」
ノエルは魔導書が崩れた為に、時間がないことに焦りを感じ取り、レオポルドに手伝わせようとした。
しかし、レオポルドは兄が敗れた事に現実逃避という戦意喪失を起こし掛けており、動揺しまくっていた。
そんなレオポルドに拘束魔法が解けたラデスが魔力弾を放った。
「さっきはよくも嘗めた口利いてくれたなぁ‥‥!」
動揺しているレオポルドにラデスが襲い掛かり、魔力弾によってレオポルドは大きく壁に激突する。
「レオポルド!!」
次々に状況が悪化していく魔法騎士団。
「正しき心だぁ……!?俺はいつだって自分の心に正直に生きてるぜ……!!あの世でほざいてなフエゴレオン・ヴァーミリオン……!!」
「目的は果たした……他の騎士団員が来る前に行くぞ……ラデス……」
「……待ち……やがれ……!!」
王都を襲撃したテロリストは空間魔法を使って逃げようとした。
しかし、それを止めるべく行動を再開したアスタだったが、ラデスとの距離が大きく、走って間に合う距離ではなかった。
「アスタとか言ったな‥テメェはそのうち絶対殺して俺のオモチャにしてやる‥‥!!楽しみに待ってろクソガキィ────!!」
三流の負け犬が言いそうな台詞を残して逃げようとしたラデス。
そんなラデスを逃がさないために足を進めるアスタだったが、先程のラデスの操った死体の一体が持っていた呪力の効果が残っており、今尚出血しており、何時倒れても可笑しくない状態にいた。
「アスタ‥!もうムリよ!」
そんなアスタを思ってノエルは制止の声を上げるも、アスタは止まる事はなく、ラデスが逃げようとしている方法への対処法を考えた。
「(オレのこの剣は、反魔法!!)」
自身の手に持つ大剣を槍のごとく投げ飛ばし、ラデスの足下に突き刺さる。
すると、反魔法が付与された断魔の剣は空間魔法を消滅した。
それによってラデスはその場から逃げる事が出来ず、アスタは身体能力を駆使して迫り、彼の頬に片手剣の反魔法の剣───宿魔の剣を使い傷を付けた。
本当ならば、頭にぶつけて意識を刈り取るべきだったのだが、アスタが負った傷が痛み狙いがそれてしまった。
「ぎゃああああ!!いてぇえ────!何しやがるこのクソがぁああ」
「マズイな‥‥」
ラデスが斬りつけられた事で、これ以上の攻撃を受けるのは良くないと判断した空間魔法使いはもう一度空間魔法でラデスを逃がそうとするが、アスタは先程と同様に地面に反魔法の剣を突き刺すことで魔法を無効化した。
「人をあれだけ傷付けて……何言ってやがる──!!これが……痛みだ!!!お前が笑いながら罪の無い人に与えたモノだ──!!」
アスタは武器を離し、ラデスを殴りつけた。
殴られたラデスは更に傷を負う。
「‥‥やめろ‥傷負って血ぃ流すなんてのは弱者の証なんだよ‥‥!! 魔力で劣る奴は魔力で勝る者にいいようにやられりゃいいんだ‥‥特にお前のような魔力のないクズはなァァァアアア!!!」
ラデスは何度も傷を受けた事で逆上し、彼の有する膨大な魔力を使い、魔力弾でアスタを攻撃しようとするが、魔力弾を放つ前にアスタからの頭突きを受けた。
「それをさせねーために俺がいる!!そして‥‥魔力のない奴でも最強になれるって‥‥俺が魔法帝になって証明してやる!!!」
「ヴァルトス!! 何とかしろぉ──!!」
ラデスは自分の抵抗が空しくも終わっているが故に、仲間に助けを希う。
「出来たらもうしている‥‥反魔法‥思った以上に厄介だ。先にそいつ自体を片付ける必要があるようだな‥‥」
ヴァルトスはアスタを殺すべく、彼の背後の足下に空間を繋げて、魔力弾で殺そうとした。
しかし、それを阻止するべく復活したレオポルドの"螺旋焔"がヴァルトスを襲う。
ヴァルトスは間一髪の所を回避した。
「‥‥‥オレが‥取り乱してどうする‥‥!?どんな時でも冷静に‥‥ですねよ!兄上──────!!」
立ち直ってはいないが、それでも自らを奮い立たせ戦うために立ち上がった。
それも先程の空間魔法で逃げようとしたラデスを逃がさないアスタの行動を見たが故なのだろう。
「どうしたものか‥‥」
「クソがぁあ──────」
アスタとレオポルドに囲まれて逃げるに逃げられないラデス。
ラデスを逃がそうとするも反魔法で邪魔され、アスタを殺そうにもレオポルドが邪魔をする。
他の魔法騎士団を別の場所へと強制転移させ、フエゴレオンを瀕死へと追い遣って形勢が逆転されたかの様に見えても、傷を負った獣たるこの二人の前ではラデスとヴァルトスは刈られる時を待つ獲物と変わらなかった。
しかし、そんなラデスとヴァルトスを助けるかの様に、更なる逆転が起きてしまった。
「来るな‥‥来るんじゃねぇ────っ!!?」
『情けない』
この場にいない第三者の声が響き渡った。
アスタやラデスたちの位置、たれたフエゴレオンと応急処置するノエルを覆うように白色の風が吹き荒れる中、数名の人影が現れる。
風が止むと、白を基調としたY字の黒の線に胸元に一直線に伸びた金色の線と真ん中に三つの目を模した刺繍が付けられたローブを羽織った者達が現れた。
「あの方からの報を受けて来てみれば‥このような者どもを相手に‥情けない────‥‥」
どうやら彼等はラデスの仲間の魔導士のようだ。
新たな敵の増援に一気に形勢が逆転されたアスタ達。
同時にアスタは先程までの戦いにて受けた呪詛魔法によって血を流し続けてしまい、既に立つこともままならぬ状態にいた。
そんな彼は先程、フエゴレオンに言われた言葉を思い出した。
【豪快さはお前の一番の武器だろうが冷静さを持て!】
そう告げられた事を思い出したアスタは自身の両手に持つ反魔法の剣を自身が傷を負った箇所である右頬と左脇腹に剣を当てて、思いっきり引いた。
「アスタっ!?」
ノエルはアスタの所行に驚愕し、声を荒げる。
端から見れば自身を傷つける所行だが、彼の反魔法がラデスの屍霊魔法によって操られた屍の呪詛魔法の効力が消え去り、傷口から流れていた血が止まった。
「これで‥‥オレはまだ戦えます‥‥!!見ていて下さい‥!!」
倒れて生死の狭間にいるフエゴレオンに告げながら、アスタは戦意を剥き出しにしながら周りの敵を倒そうとしていた。
そんな彼に参加するかのように、上空からこの場所に降り立った者がいた。
轟音と共に現れたのはアーサーだった。
「アーサーッ!!」
「随分とボロボロだな。アスタ」
降り立ったアーサーは外見的な傷はなかった。
それは"再生"によって元に戻しているからだが、その代わりに膨大な魔力が消費してしまっている。
それ程までにファルザナスの奇跡魔法に苦戦したという事なのだろう。
アーサーの魔力量を知っているレオポルドからすれば、残り1/5ほどの魔力量しかなかった。
そんなアーサーは右腕を失い生死の狭間に迷い続けているフエゴレオンを見てしまった。
「‥‥‥‥」
「誰だ‥?」
「ハッ! そこに倒れてる[紅蓮の獅子王]の団員か。今まで隠れてただけの雑魚だろがァア────」
突然現れたアーサーに対して疑問に思った増援に来たテロリストの言葉にラデスが罵倒していた。
その罵倒にアスタが怒ろうとしたが、すぐさま今この場にいる全員が黙らされる。
それは、残り1/5ほどの魔力量しかないアーサーの魔力による圧だった。
忘れているとは思うが、アーサーの魔法属性は混沌。
混沌は世界を創造し、生物を創造し、大陸を四つに別けて国を創った意志ある魔力の塊。
光の神が崇拝する光にして、悪魔すら恐れ戦く闇。時間と空間すらも飛び越えて、全ての事象は混沌から生まれた。
‥‥‥謂わば、
混沌の真の力を発揮するには地球から太陽までの距離を一気に飛び越える様な覚醒が必要であり、一気に飛び越えるだけでも不可能に等しい困難な試練だ。
しかし、アーサーは混沌に選ばれた存在だ。逸れ即ち混沌の力を発揮させる
ファルザナスとの戦いで魔力量が1/5になろうとも、その魔力量は嘗て魔力に好かれたと言われる異種族と同等以上の魔力なのだ。
そんな膨大な魔力を持っていて、肉体と精神も代償無く戦い続けている彼の潜在能力は過去・現在・未来に至るまで最高の代物といっていい程であり、他者からすれば、正しく彼の魔力は‥‥‥‥
‥‥‥‥
「‥‥誰がやった?」
アーサーが問い詰めるように怒りに燃え、ボソリと呟くような泡のように脆く弾ける様な声が、沈黙に包まれたこの場所に響いた。
「‥兄上は‥‥空間魔法で何処かに連れて行かれ‥こんな状態になった‥っ!!」
そんなアーサーの言葉にレオポルドが悔しそうに呟くように教えた。
そんなレオポルドを見ることなく、唯々フエゴレオンを見つめるアーサーは右手を向けた。
同じ様に、傷ついているアスタに左手を向けた。
すると、フエゴレオンとアスタの身体が一瞬。霞の様な靄が起きると、負傷していた傷や服までもが元に戻り、フエゴレオンに関しては失っていた右腕が元に戻り、流れていた血までもが何もなかったかのように消えていた。
それを見たノエルとテロリストは驚愕した。
「うぉぉおおおお!!!!怪我が治ったぁぁあああ!!!サンキュー、アーサー!!」
アスタは怪我が治っている事にアーサーに感謝した。
(ウソでしょっ!?アスタは兎も角。フエゴレオン団長の傷は腕が無くなってるのよ‥‥一瞬で治療したなんてレベルじゃないわよっ!?)
ノエルはアーサーが行なった魔法が回復魔法である事は傷が癒えたアスタを見ればわかるが、腕を切り落されたフエゴレオンに関しては回復魔法では説明できない領域にいた。
斬られて何処にあるかわからないフエゴレオンの右腕が、何もなかったかのように元に戻り、出血すらも消えていたとなれば、一般的な回復魔導士の回復魔法の領域を逸脱していた。
「さて‥‥お前らの誰が
アーサーはそう言うや否や、強化魔法を使った。
───混沌太陽強化魔法"天日星"───
「‥‥ッ!?図に乗るな!」
テロリストがそう言うと、魔導書を開き攻撃を開始してきた。
しかし、アーサーは強化されたその身体能力がテロリストの動きを見抜いているかのように行動をしていた。
「チッ!?嘗めんじゃねぇ!」
───樹木魔法"引魔の根"───
地面から生やした無数の樹木の根がアーサーを捕えようとしていた。
しかし、"天日星"によって強化されて太陽の如き熱量を以て灰燼へと還すアーサー。
加えて、アーサーの攻撃に続くようにアスタとレオポルドも攻撃を続けた。
(この三人。手負いでここまで‥‥危険だ)
テロリスト達は三人を危険と判断し、魔力弾ではなく魔導書の魔法で殺す事に変えた。
度重なる交戦が続く中、戦況が一変する事になった。
───風魔法"穿通竜巻針"───
風で出来た細い竜巻の針がアスタとレオポルドの身体を貫いた。
二人は無数の針に突き刺され地に倒れる。
「アスタッ!レオポルドッ!!」
「チッ!?」
アーサーが二人の治療を行なおうとした時、ゲル魔法の魔導士とヴァルトスの空間魔法がアーサーの行動を妨げる。
「行かせん!」
「君、面白いねぇ!解剖した~い!!」
そう言いながら、ゲル魔法の魔導士がゲル魔法"ベトベトサラマンダー"で襲い、ヴァルトスがアーサーの魔法を空間魔法でアーサーに戻る様に仕向けていたが、アーサーの周りでアーサーの魔法やゲル魔法が消滅していった。
───混沌空間魔法"次元の歪"───
魔向かってくる魔法を触れるや歪の如く消滅させた魔法空間がアーサーを守った。
「邪魔だ」
───混沌魔法"殲滅の光"───
アーサーは"殲滅の光"を放った。
しかし、その巨大な光に小さな毒々しい紫のボールが斬撃に接触した。
すると、ドクンッ! とアーサーの心臓が大きくうねりを上げた。
「ッ!?‥‥ガハッ!!」
アーサーの心臓がうねりを上げると、アーサーは血を吐いた。
同時にアーサーが放っている魔法が全て解除された。
アーサーの足下は彼の多量の血によって広がっていた。
「アーサー!」
アーサーが吐血した事にノエルが騒いだ。
(‥‥毒?しかもこれは‥‥)
「いや~、危なかったねヴァルトス君達~」
そんな中、ヴァルトスの隣に立つ様に降り立った新たな増援が現れた。
「カル。お前はファルザナスと行動する様に言われていた筈だ」
「そのファルザナスさんが、そこにいる混沌の魔導士に殺されちゃったんだよね~」
「なにっ!?」
おどけた様な発言で現れたのは白黒の縞模様の様な髪の分け方をし、テロリスト達と同じローブを羽織った男が現れた。
ヴァルトスがカルと呼んだ事から名前はカルなのだろう。
そして、カルの魔法属性は毒魔法。
そんなカルの報告にヴァルトスたちが驚愕していた。
それはファルザナスの死なのか。
それとも、アーサーの魔法属性についてなのか‥‥‥
どちらにしろ。敵が驚愕している間に、アーサーはカルの毒魔法の特性をすぐさま理解し、解読した。
「‥‥致死量を‥操る毒‥か」
「正解。いや~凄いよ混沌の魔導士君。あの方が言った通り君は厄介だ。でも君の膨大な魔力は利用できるからね。この場にいる魔法騎士を殺した後、連れて行くよ~」
カルは語尾を伸ばしながらアーサーに話していた。
「‥‥笑わせるな」
───混沌回復魔法"混沌の再生"───
アーサーは自身の身体を"混沌の再生"させるが、毒の影響が戻らなかった。
「‥‥‥どういう事だ‥」
「無駄だよ~毒魔法"腐食の毒素"。この魔法に君が触れた時点で、君は回復魔法では治らないよ~」
回復魔法では治せない事を語るカル。
魔法名と自身の魔力量に関係している事を毒魔法である事に気付いた。
「回復魔法を・・・腐食させて・・いるのか・・?」
「またまた正解~素晴らしいよ~」
カルがアーサーの次々と自分の毒魔法を解読して出てきた解答に、カルは盛大に喜んでいた。
「そんな事より、止めだ」
アスタとレオポルドに止めを刺そうと風魔法の魔導士の"穿通竜巻針"が襲う。
「止めてぇぇぇええええ!!!」
ノエルの悲鳴が響く中、彼等の前に銀の球体が現れ、二人を護った。
銀の球体は水銀で出来ており、水銀が解かれるとそこにはヴァルトスによって転移された魔法騎士団がいた。
「みんな!」
ノエルはそれを見ると、歓喜した。
アーサーは今まで何をしていたのかと呆れたように、苦しみながらも魔法騎士団を見ていた。
「‥‥魔法騎士団‥‥」
「よくもあんな所まで
他の魔法騎士団と共に帰還してきたアレクドラが建物の屋上に立っているヴァルトスに臨戦態勢のまま近づいた。
「どうやってこんなに早く‥‥」
「バカな‥! あの距離をこんなにも早く‥‥‥‥!?」
彼等を転移させたヴァルトスは驚きを隠せずにいた。
彼が転移させた場所から王都までは短時間で戻れる距離ではない。にも関わらず、魔法騎士団は戻ってきた。
そんなヴァルトスにアレクドラが語る。
「不本意の極みだったが‥全員で協力し戻ってきた‥‥超複合魔法‥とでも言うべきか」
全員の魔法を合わせたが故に、「超複合魔法」と例えたアレクドラ。
「力を合わせるというのも‥‥良いものですねぇ」
「ま、男も捨てたもんじゃないっスね」
「フン。能力だけは認めてやる」
「協力なんざ二度とごめんだな」
「違う団とはやはり相容れないものだもの」
不本意だったのはアレクドラだけではなかったらしく、次々と不満を告げる魔法騎士団。
「────‥だが、我ら九つの魔法騎士団はただ一つ。クローバー王国の平和の為にある!!」
ノゼルはテロリストたちを冷たく睨み付けながらそう言い放った。
ヴァルトスはアレクドラの隙を付いて空間移動し、テロリスト達の元へと移動した。
「このまま戦えばただでは済まない‥‥退こう」
ヴァルトスは戦況を冷静に把握し、撤退する事を提案し、空間魔導士にとって固有の空間を空けて撤退するのならば、仲間が近くにいる方が効率が良いのだ。
敵からの妨害や短時間による空間移動に備えてもあるのだ。
「そう急ぐな」
───水銀魔法"銀の雨"───
ノゼルがテロリスト達の頭上から一匹逃さずこの場で一網打尽しようとする水銀で出来た雨を放つ魔法にカルとゲル魔法の魔導士が魔導書を開いき魔法を行使した。
───ゲル魔法"ベトベトサラマンダー"───
───毒魔法"腐食の毒素"───
アーサーはカルが魔法を使ったのを見て、毒に犯されながらも耐えてノゼルの魔法を強制解除する為に魔法を放った。
───混沌解除魔法"
アーサーが左手を挙げて水銀の雨に向けて魔法を放つと、水銀は一つ残らず消え去り、魔法自体が分解された。
ノゼルは驚きながらも、自身の行動を邪魔したアーサーに向けて殺気を込めて睨み付けながら問うた。
「貴様‥なんのつもりだ?」
「‥‥‥」
他の魔法騎士団もアーサーの行動がテロリスト達の補助‥‥つまり国への反逆に見える行いに同じく彼に視線を向けた。
ノゼルの問いにアーサーは息を切らしながら答えようとしない。
それは答えないのではなく、答えられないのだ。
彼の受けた毒魔法が致死量を操り、そして操作されている致死量は魔力であるが故に‥‥‥
「いやいや~彼を責めるのはお門違いだよ~銀翼の団長さん」
「なに‥‥?」
「彼が君を助けないと、君の魔法に僕の致死量を操る毒魔法に干渉されて君は死んでいたよ~。つ・ま・り‥‥君は彼に助けられたんだよ。僕の魔力の致死量を受けて死にかけている状態の彼にね」
『!』
カルがアーサーの行動を褒めながら、ノゼル達が魔法行使を迂闊に出来ないように脅した。
魔法自体に干渉し、その魔法に使われた
それはカルの毒魔法の性質であるのだ。
しかも、カルが設定した毒の部分は魔力の致死量。
つまり、魔力が高ければ高いほど毒牙強力であるという事だ。
カルがアーサーを擁護している間に、ゲル魔法の魔導士がサラマンダーを操りクラウスに抱きかかえられ、気を失っているアスタを捕えた。
「もぉ~~~らい」
アーサーはどうにかしてアスタを救おうとするが、カルの"毒入りボール"の影響が強く、ノゼルを助けた際の魔法でもう既に動けない状態にまで追い込まれていた。
アスタをゲル内に入れて拘束した魔導士は機嫌を良くした。
「どうするつもりだ‥‥ソイツ」
「秘密」
アスタが掴まった事にクラウスとノエルが騒いだ。
「アスタ‥!」
「ッ‥!?」
ヴァルトスの空間魔法が開かれ、黒い空間がテロリスト達を覆っていく。
「覚えておくがいい‥‥魔法騎士団の者どもよ」
フードを被った一人が魔導書を閉じて告げた。
「我らは[白夜の魔眼]。クローバー王国を滅ぼす者だ‥‥!!」
そう言い放つとヴァルトスの空間魔法でアスタを連れ去りながら、この場から消えていった。
「アスタぁぁぁああああああ!!!」
アーサー達はその場に立ち尽くしか無かった。